幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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ゲームの後に………

ライザーとのレーティングゲームが終わった後、俺とイッセーは二人仲良く病室にいた。

 

その原因はイッセーはフェニックスの涙を使用したとはいえ、擬似禁手を短時間で二回連続、しかもフルパワーで使用したことによる肉体的負担と疲労でひっくり返り、俺も俺で魔法力を限界消費した上で神器を使用したからひっくり返った。そういえばライザーの『戦車』。確かイザベラとかいう人の攻撃で骨にも罅はいってたし。

 

そんなこんなで二人部屋に二人仲良くぶっこまれた挙句、数日は安静にさせられる羽目になった。特にイッセーはドラゴン化した腕を戻す為にドラゴンの気を散らさなければならないのだが、数日は一時間くらいかけてゆっくりと散らすらしい。そういえば吸い出すとかしてたような気がするけど、最初は手から魔力で散らしてたもんな。

 

それにしても幼馴染みとはいえ、年頃の男女を一緒の部屋にするのはどうなのだろうか。俺は全く気にしないけど、イッセーは辛いだろう。いろんな意味で。ほら、下の世話に困るじゃん?一人部屋なら何とかなるかもしれないけどさ。

 

まあ、当分はそんな元気はないだろう…………と思っていた時期もあった。初日だけだけど。

 

「おはよう、智代」

 

「はぁ………おはよう、じゃない。またお前は人の話を無視して」

 

朝の散歩から帰ってくると病室の床で腕立て伏せをしているイッセーがいた。

 

こいつは目を覚ましてからというもの、大した怪我がないからといって、すぐに病室で身体を鍛え始めた。何でも「俺がもっと強ければ智代までぶっ倒れる事はなかった」だそうだ。いや、それはこっちの台詞だからね?とは流石に言えなかった。イッセーは凄く真剣だったし、女に護られるのは男のプライドが許さないんじゃないかな?わからないけど。

 

まあ、かくいう俺も傷はもう治っているのでイッセーと同じく筋トレをしていたりする。俺がここにいるのは限界消費してまで攻撃を行ったから、何か異常があるかもしれないというリアス部長の懸念もある。本当なら学園に行っている頃なのだが……………まあ、イッセーの居ない駒王は面白くないから別に構わないが。

 

「なあ、イッセー」

 

「なんだ?」

 

「今回の闘い。イッセーは左腕を犠牲にしてライザーを倒した。お蔭でライザーとリアス部長の結婚は免れた訳だが…………イッセーにとってリアス部長はどういう存在だ?」

 

なんとなく、そんな事を聞いてみた。

 

これといって深い意味はない。単に散歩していた時に「あ、そういえばライザー戦の後ってリアス部長がイッセーに惚れるフラグだよな」と思い出しただけだ。不幸中の幸い、イッセーはレイナーレと恋人関係にはなってないから無自覚の女性恐怖症にはなってないだろうし、あわよくば二人をくっつけられるのではないかと考えてみた。原作じゃリアス部長がイッセーを好きになった時点で両想いだし。

 

「部長?うーん、命の恩人で尊敬出来る人かな。あの人のお蔭で俺は今もこうして生きてる訳だし、あの人ってこうかっこいいだろ?性別は違うけど、俺もあんな風になれたらなぁって思うけど………それがどうかしたのか?」

 

あれ?イッセーってリアス部長の事を好きじゃないのか?原作は一目惚れした上、中身にもベタ惚れだったのに。今のを聞いてる限り、とても好意を抱いているような風じゃないし、好みが変わったか?

 

「いや、別にこれといって深い意味はない。ただなんとなく、イッセーがどんなタイプの女性が好みか気になった時に真っ先にリアス部長が思い浮かんだだけだ。リアス部長は綺麗だし、私みたいにサバサバしていないからな」

 

「そうか?智代はクールでかっこいいと思うぞ。実際男子にも告られてるだろ?」

 

「女子はその三倍してきたがな」

 

それに告白してきた男子も対等に接してこようなんて奴はいなかった。しかも中には蹴って欲しいとかいう特殊な性癖のやつまでいる始末。勘弁してくれ。

 

「で、智代はどんな男子がタイプなんだ?」

 

「む。其処で何故私の話になる?」

 

「いや、俺も聞かれたし、智代も答えないと不公平だ」

 

そう言われると黙ってるわけにいかないな。

 

ふむ。どんな男子がタイプか…………。考えたこともなかったな。

 

だって中身男子だし?男と付き合うなんて考えられない。

 

だが、ここでそう答えてもはぐらかしているだけと思われかねないし……………考えろ。頑張って思考を女子っぽくいくぞ。いくら男子歴の方が長く、男子思考でも俺はかれこれ十七年女として生きているんだ。出来ないなんて道理はない。

 

「………イケメン……じゃなくてもいい。女子の為に体を張れるような奴だな。格好良さは求めないし、泥臭くても漢気のある奴がいいな」

 

「へぇ。意外だな。てっきり木場みたいなのかタイプだと思ってた」

 

「祐斗は確かにイケメンではあるが、あれは押しに弱そうだ。どちらかと言われればグイグイ来る方が男らしくていい」

 

「確かに木場はついてこいって感じよりもエスコートするタイプだよな。でも女子は基本的にそういうのが好きなんじゃないのか?」

 

「私と一般女子を同じ定義で測ること自体がそもそも間違いだ」

 

それにそういうのは少女漫画思考の女子が大半だ。あの手のタイプは万人に対してそういう対応をしていると考えると自分の為に漢気を見せる奴の方が良い。

 

「ま、そうなるとやっぱり智代がライザーの眷属にならなくて良かったよ。あいつ、見た目は良い感じだけど、智代の言う様なタイプじゃないし」

 

「そもそも私はハーレムの一員にされるのだけはごめんだ」

 

そんな女性を取っ替え引っ替えするような奴の女になったところで碌なことにならない。愛なんてなさそうだし。そりゃ全員を愛せるような奴なら考えなくもないが、そんなのは極少数だろう。

 

「でも、次からはああいう事しないでくれよ?」

 

「ああいう事?」

 

「ライザーに喧嘩売った時だよ。俺達が負けるかもしれないと思って、参加してくれたんだろ?嬉しかったし、実際智代がいなきゃ勝てなかったかもしれないけど、そうだとしても俺は智代に傷ついて欲しくない」

 

「だが、あの時はあれが最善だった」

 

「わかってる。智代は無駄な事はしない。でも、最善とかそういうのじゃないんだ。俺が智代に傷ついて欲しくないってだけだ。理屈とか根拠とかはない。もし、智代が闘わなきゃいけなくなったら俺は全身ドラゴンになってでも敵をぶっ倒すからさ。お願いだから、あんまり無理しないでくれよ?」

 

「………善処する」

 

「其処はわかったって言って欲しいよ」

 

頷けるわけないだろ。今の所、俺はイッセーに対して何もしてやれていないんだ。

 

堕天使には殺され、悪魔になった。

 

ライザーを倒すために左腕はドラゴンになった。

 

何れも原作の流れからは離れる事はなく、道に沿っている。

 

けれど、其処には私も介入している。なのにイッセーが原作で立たされた大きな分岐点には全くと言っていいほど影響を与えられていない。一度目は私自身の浅慮な考えが原因だった。二度目は私も参戦し、強くなってなお、イッセーに敗北の危機を持たせてしまった事が原因だ。

 

どちらも私が強ければ全て解決できた問題だ。

 

レイナーレもライザーも。私が一人で圧倒できる程の強さを持っていれば大丈夫だった。

 

もしこのままいけばイッセーは何処かで原作の道から逸れて死んでしまうかもしれない。現時点でのイレギュラーは微々たるもので大部分には殆ど影響を与えていないものの、何れはそちらにも影響は出るだろう。

 

イッセーを生き残らせるには私自身が強くなるしかない。

 

そう。例え、私の命すら投げ打ってでも。

 

イッセーは私が「おーい、智代?」

 

「きゃっ!」

 

気づくと目の前にイッセーがいた。私は女々しい悲鳴を上げてその場でひっくり返ったのだが、その際にどういう訳かイッセーの着ている服の襟を掴んでいた所為でイッセーも引き倒してしまった。

 

「と、智代……」

 

「イッセー……」

 

目の前にはイッセーの顔。

 

少し顔を動かせば触れてしまいそうな程の距離。普段の私ならすぐにでも押し退けられるはずだ。

 

なのにどういう訳か、身体は硬直したままで私とイッセーはその姿勢のまま互いを見つめるばかりだ。

 

どういう訳だろう。最近、徐々にイッセーに抵抗出来なくなっているような気がする。

 

落ち着け、俺………心頭滅却すれば「入るわよ、二人とも………あら」…………。

 

「二人とも、元気そうね。ついでに言わせてもらうと元気なのは良いのだけれど、公共の場でそう言うのはマズいと思うわよ?」

 

「ぶぶぶぶ部長⁉︎いえ!決して部長がご想像しているような事は何一つございません‼︎これはちょっとした事故というかなんと言うか!」

 

「イッセーの言う通りだ!これは事故以外の何ものでもない!なんの他意もないぞ!」

 

「ふふ、必死さが逆に怪しいわね」

 

姿勢は変わらないまま、必死に弁明してみるもリアス部長は悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言う。いや、本当に他意はないんだ。

 

「それはさておき。今回のレーティングゲーム。二人には本当に感謝しているわ」

 

コホンと一つ咳払いした後、リアス部長は本命であろう話を切り出した。

 

「智代は殆どの眷属を、イッセーはライザーを。二人がいなければ私達は確実に負けていたでしょうね。それが少し悔しいのだけれど、あなた達のお蔭で私とライザーの婚約の話はなくなったわ。ありがとう」

 

「そんな。俺は部長の眷属ですから当然の事をしただけですよ」

 

「私も勝手に参戦しただけだから礼を言われるような事は何も」

 

「ふふ、そう言うと思っていたわ。けれどね、これは私個人としてどうしても二人には感謝の言葉を言っておきたかったの。それに私から二人に渡したいものがあるの。少し其処に座ってくれるかしら?」

 

リアス部長に促され、俺とイッセーは事故った態勢からベッドの上に座りなおす。

 

「目を瞑ってもらえるかしら」

 

言われるがままに眼を閉じる。もし俺が男のままだったら、もしもを考えてドキドキしていたのだが、今は全くしない。いや、全くは言い過ぎかな。どちらにしても期待とかはない。

 

ふと首筋にひんやりと冷たい感覚がした後、リアス部長は良しと呟いた。

 

「目を開けてもいいわよ」

 

目を開けると俺は首から下げられているネックレスを手に取る。

 

リアス部長の髪色と同じ真紅の鎖の先には悪魔の羽を模したようなものが付いていた。

 

それはイッセーの首からも下げられていて、イッセーはそれを手に取り、部長に問う。

 

「部長?これは?」

 

「それはグレモリーに伝わる大切な家宝の一つ。私からあなた達へのプレゼントよ」

 

「か、家宝ですか⁉︎」

 

「そう。大事にしてちょうだいね」

 

「何故そんな大切なものを私達へ?良かったのですか?」

 

「安心してちょうだい。それは既に私のものになっているから、私の家に迷惑はかからないわ。あなた達に渡したのは私が持っているよりもあなた達の方が相応しいと思ったのよ。少なくとも、今の私にそれを持つ資格はないから」

 

グレモリーの家宝なのにリアス部長に持つ資格がないとはこれいかに。何はともあれ、貰い物だし、大切にしないとな。

 

「今日はお礼も兼ねてこれを渡しにきただけだから。これで失礼するわね。学園の方は私が融通を効かせておいたから。心配せずにゆっくりも休むといいわ」

 

「「ありがとうございます」」

 

そう言うとリアス部長は病室を出て行った。

 

首から下げているこのネックレスが後に俺達を救う事になる事を今の俺達は知る由もなかった。


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