幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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生徒会長と戦友

「で、こっちが小学生の時のイッセーなのよー」

 

「あらあら、元気そうですわ」

 

「この頃から智代ちゃんとはいつも一緒でねー。一緒に写っているものばかりなのよー」

 

「…………仲良し幼馴染み」

 

…………何故こうなった。

 

いや、こうなった経緯は珍しく智代がいない事が関わっている。

 

今まで部室でオカ研会議を行っていたのだが、今日は旧校舎を業者さん(もちろん悪魔の)に頼んで清掃してもらうために代わりとして俺の家で会議を行うことになったのだが、其処に母さんがアルバムを持って乱入してきたせいでもう色々台無し。というか、滅茶苦茶恥ずかしい!

 

「可愛いですね、イッセーさん」

 

「そうね。こんなにも可愛いらしい子が数年経てば逞しくなっているのだから、『男児三日会わざれば刮目せよ』とはよく言ったものね」

 

うん?なにかそれはそれで違う気もする。というか、小学生の頃の幼さをこの年まで維持したままというのはそれはそれで嬉しくない。だって女子に恋愛対象として見られないんだぜ?割と男なら問題だ。

 

「つか、木場。なんでお前まで見てんだよ⁉︎」

 

「ハハハ、一度こういう事はしてみたかったからね。もう少しイッセーくんのアルバムを楽しませてよ」

 

「楽しむんじゃねえ!返せ!」

 

木場の手からアルバムを取ろうとするが、ひょいっと軽快な動きて躱された。

 

ぐぬぬぬぬ…………おのれ木場めぇ………

 

諦めずに取り戻そうと飛びかかるが、木場はなんでもないようにヒラリヒラリと避ける。

 

やはり神器抜きじゃ木場の動きには追いつけない。でもいつかは越えてやる………あれ?

 

木場が食い入るようにあるページを見入っていた。

 

また何か面白いものでも見つけたのかと俺も近づき見ているページに視線を落とす。そこには園児時代の俺の姿と同い年の園児とその親御さんが写っていた。

 

この女の子、覚えてるぞ。幼稚園時代、近所に住んでいた子だ。よくヒーローごっことかで遊んだっけ。

 

はじめはあまりにも趣味や遊びが俺に近いから男の子かと勘違いしてたけど、たまたま智代に指摘されて女の子って気づいたんだっけ。

 

でも、あの頃はまだ俺と智代は親しくなかった。いや、限りなく最悪の関係だと言っていい。

 

小学校に上がってから親しくなった智代とそれ以前に転校してしまった男の子と勘違いしていた女の子。接点といえば智代と親しくなるために策を弄していた時に写真の子と一緒に知恵を振り絞った一回だけだろう。そしてその時は突然の性別発覚にそれどころじゃなくなったし。

 

木場が写真に写る女の子の親御さんをーーーーというよりも、親御さんの持っている模造品を指差す。

 

「これ、見覚えは?」

 

「いや、かなりガキだったから覚えてないけどな……」

 

普段とは全く声のトーンが違う木場に違和感を感じつつも、俺はそう答えた。

 

「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて……」

 

一人ごちて、木場は苦笑する。だが、その目は寒気がするほど憎悪に満ちていた。

 

そしてその一枚の写真こそが今回の出来事の始まりだった。

 

「これは聖剣だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ最近、木場の様子がおかしいんだよ」

 

旧校舎に向かっていた俺は同じく旧校舎に向かっていた智代に相談をしていた。

 

アーシアには先に行ってもらっている。こういう話だと決まって二人でするのが定番になっているからな。

 

「球技大会の練習も上の空だし、同じクラスの女子達も授業中の木場は物思いに耽っていることが多いんだってさ」

 

「そうか。…………もうそんな時期か」

 

「?なんか言ったか?」

 

「いや、何でもない」

 

ポツリと呟かれた一言は俺の耳にしっかりと届くことはなかった。でもまあ、智代が何でもないって言ってるから大丈夫だろう。

 

「そういやさ。智代は幼稚園の頃、俺と仲の良かった子の事は覚えてるか?」

 

「イッセー。あの頃のお前と私の関係を思い出せ。覚えているはずがあるまい」

 

「………だな。悪い。変なこと聞いた」

 

あの頃の出来事は幼い俺にとって軽くトラウマものだった。それでもこうしてこういう関係を築くに至った俺の根性はなかなか捨てたもんじゃない。

 

そうこう話しているうちに部室に着く。

 

ノックした後、部室に入ると、既に俺たち以外のメンバーは顔を揃えていて、其処には部員じゃない方がソファーに二人座っていた。

 

「生徒会長……」

 

ソファーに座っているうちの一人はこの駒王学園の生徒会長様だった。女性の会長で、冷たく厳しいオーラを発している。知的でスレンダーな女性。名前は支取蒼那先輩。三年の上級生で部長、朱乃さんに次いで人気の高い人だ。

 

隣の付き添っている人物の方に視線を送るとそいつは露骨に嫌そうな表情を浮かべた。

 

「げっ、ひょ、兵藤……」

 

「匙じゃねえか。久しぶり」

 

生徒会長に付き添っているこの男子の名は匙元士郎。最近生徒会の書記として生徒会入りを果たした男子だ。確か、生徒会は女子しかいなかったから匙が記念すべき一人目って訳だな。

 

「む?匙か。奇遇だな、こんな所で出会うとは」

 

「大神までいるのか…………」

 

「イッセーも智代も匙くんの事は知っているの?」

 

俺たちが面識があった事が意外だったのか、部長がそう問いかけてくる。

 

「知り合いっていうか、まあなんというか……」

 

「昔、少しやんちゃをしていたというか……」

 

「そういえば、私がこの学園に入学したての頃に妙な噂が流れていたわね。なんでもこの町には絶対に敵に回してはならない三人の男女がいるって」

 

「懐かしいですわ。部長はなんとしてでも眷属にすると聞かなかったものですから」

 

「結局あの時は朱乃に言いくるめられてしまったけれど…………もしかしてその三人というのは貴方達の事?」

 

「ええ、おそらく」

 

「少なくとも私達以外では聞いた事はないな」

 

「…………」

 

部長の冗談交じりの発言を肯定するとさしもの部長も驚きに目を見開いた。そしてそれを暴露した途端、匙のテンションが見る見るうちに下がっていた。

 

「まだ引きずってるのか?」

 

「寧ろあれを引きずらない方が無理だろ…………死にてえ……」

 

「ダメですよ、サジ。死ぬ事は許しません」

 

「わかってますって…………はぁ」

 

ソファーに座っている匙は黒歴史を思い出したのか、頭を抱えて項垂れる。その様子が気になったのか、アーシアは不思議そうな表情を浮かべ、訊いてきた。

 

「匙さんは何かお悩みでもあるんですか?」

 

「あー、悩みっていうか、黒歴史の方があってるな」

 

「………黒歴史ですか。気になります」

 

予想外に小猫ちゃんまで食いついてきた。まぁ、人の黒歴史って結構気になるよな。因みに俺は最近黒歴史を更新したばっかだけどな。

 

「だそうだぞ。匙」

 

「勘弁してくれないかな………小猫ちゃん。極力、昔の事は話したくないんだ」

 

乾いた笑みを浮かべてそう言う匙に小猫ちゃんも追求するのはやめた。こうして見るとあの時に比べて匙は落ち着いたなぁ。昔なんて滅茶苦茶ガラが悪かったもんな。

 

「それにしても何で生徒会長がここに?」

 

「それはね、イッセー。彼女も悪魔だからよ」

 

「え?悪魔……って、ええ⁉︎」

 

どういうことだ⁉︎部長以外にもこの学園には悪魔がいたのか⁉︎

 

「この学園の生徒会長、支取蒼那様の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」

 

上級悪魔⁉︎しかもシトリー家って!確か部長に匹敵するだけの由緒ある家系だったはずだ。

 

「シトリー家もグレモリーやフェニックス同様、大昔の戦争で生き残った七十二柱の一つ。この学校は実質グレモリー家が実権を握っていますが、『表』の生活では生徒会ーーーつまり、シトリー家に支配を一任しております。昼と夜で学園での分担を分けたのです」

 

「ま、学園の平和を守るために日中は俺達が動き回ってるってわけさ。お前らみたいにはぐれ悪魔の討伐とかをしてる訳じゃないが、こっちもこっちで結構疲れるんだぜ?因みに俺は『兵士』だ」

 

「奇遇だな。俺も『兵士』なんだ」

 

「知ってる。駒八つ消費であのライザー・フェニックスを倒したんだってな。まだお互いに悪魔になって間もないのに随分と差がつけられたもんだ。つーか、俺も早くゲームとかしてみてえよ。はっきり言ってデスクワークとか得意じゃないんだ」

 

昔の事を黒歴史とか言っている割に匙はあんまり昔と変わってないのかもしれない。だって金髪のままだし、髪の毛は立ってる。目つきの悪さは大分治ってるが、口調も雑だしな。

 

「学園を根城にする上級悪魔同士、最近下僕にした悪魔を紹介し合う為にここに来たのですが、兵藤くんとは既に知り合いだったようですね」

 

「まぁ、偶然とはいえ、死線を潜り抜けた戦友って奴ですかね。兵藤と大神と俺は。出来ればこの二人とは二度と敵対したくはないですし」

 

「私とて二度と御免被る。お前のような奴を一方的に攻撃すると心が痛むからな」

 

「何はともあれ、これからよろしくな、匙」

 

「おう!」

 

そう言って俺と匙は固い握手を交わした。

 

「男同士の熱い友情というやつかしら?いいと思わない?朱乃」

 

「あらあら、羨ましいですわ」

 

「…………とても良いと思います」

 

そんな声が部長たちから聞こえた。まぁ、友情かどうかはわからないけど、信頼は出来る。匙は知り合った時から義理と人情で動くタイプの人間だったし。

 

「アーシア?」

 

と、其処でアーシアが智代の後ろに隠れて様子を伺っているのが見えた。あー、そういうことか。

 

「別に大丈夫だぞ、アーシア。匙は見た目はキツいけど、凄えいい奴だからな」

 

「そうだぞ。見た目はあれだが、別にとって食いはしないさ」

 

「何かイマイチ納得出来ない説得だが、アーシアさんだっけ?俺は基本的に『ダチのダチは俺のダチ』って心情でね。何か困った事があれば何でも相談に乗るぜ?」

 

すっと自然に差し出された手にアーシアも恐る恐るではあるものの握り返す。

 

「よ、よろしくお願いします……えーと、あの匙……さん」

 

「おう。よろしく、アーシアさん」

 

うーん。こうやってみると匙はやっぱり兄貴肌って感じだよな。面倒見が良さそうっていうか、見た目が若干キツいせいで怖く見られる事が多いって言ってたが、少しでも話すと凄えいい奴なんだよな。

 

俺達のやり取りを部長と会長が微笑ましそうに見ていた。

 

「お互いのルーキー紹介はこれで十分でしょうね。では、私達はこれで失礼します。お昼休みに片付けたい書類がありますから」

 

「マジですか?昨日あんなに片付けたのに……」

 

「昨日のものは昨日のものでしかありませんよ。サジ。貴方もやる気を出せば手際は良いのですから」

 

「はぁ………もっと肉体労働の方がしてえよ」

 

などとボヤきながら匙は立ち上がった会長の後をついていく。因みに手はポケットに突っ込んだまま。あ、会長に注意されて直させられた。生徒会って厳しいんだな。

 

「そうそう。忘れていました。リアス、球技大会、楽しみにしていますよ」

 

「えぇ、それはこちらも同じよ」

 

今までの何気ないやり取りで気付いたけど仲良いな、この二人。性別が異なるとはいえ、俺と智代みたいなものなんだろうな、きっと。ライザー戦の時にも何も介入してこなかったのは部長なら勝つって信じてたからかな?

 

「イッセーと智代はともかく、アーシアも普通に匙くんと仲良く出来るように頑張りましょうね。他の生徒会メンバーともいずれ改めて悪魔として出会うでしょうけど、同じ学び舎で過ごす者同士、仲良くね」

 

「「「はい!」」」

 

微笑みを浮かべてそう言う部長に俺達は力強く返事を返した。

 

 




というわけで今まで謎の三人目として挙げられていたのは匙くんでした!

わかった人はいましたか?いたら正直凄いと思います。わかるようには全く書いていなかったので。

匙の設定は元不良キャラ。過去にとある勘違いで智代とバトった直後、集団リンチに巻き込まれて共闘したという過去を持っています。同じ死線を潜り抜けた仲なので二人との仲は良好。但し、智代には少し畏怖している感じです。更生するキッカケを作った会長には終始頭が上がらない感じです。原作よりも強いです。

三巻の内容を書きたくて使い魔のくだりを飛ばしてしまいましたが、何れ必ず投稿します。放置はないのでご安心を。それではまた。

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