幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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聖剣使いとの邂逅

「では、始めましょうか。イッセーくん、智代ちゃん」

 

「は、はい。よろしく………智代」

 

「…………」

 

何故こうなった。

 

今、俺の格好は制服姿ではなく、白装束姿だ。

 

けれど、その白装束は完全に濡れていて、肌に張り付いている。というか透けている。

 

というか、イッセーの視線が露骨に胸の辺りを注視していた。おっぱい魔人は原作でもこちらでも変わりない。流石の俺も殆ど裸に近いこの状態は少し恥ずかしかった。

 

こうなった経緯は元はと言えば俺がイッセーの為に何か出来ることはないかとボヤいていた事が原因だった。

 

それを偶々近くにいた朱乃先輩が聞き取り、『お昼休みに部室へ来てください』と言われたので来てみればこの格好だ。

 

そういえばこの格好。今思い出したが、ドラゴンの気を吸い取る時に朱乃先輩が原作で着ていた衣装だった気がする。

 

何でもドラゴン化した左腕を元に戻すには高位の魔力、或いは魔法力保有者によってドラゴンの気を吸い出すという方法だ。それによって一時的にドラゴンの腕は元に戻る。完全に治すにはそれを定期的に何回もする必要があるのだとか。今までは部長や朱乃先輩がやっていたそうなのだが、今回は何故だか俺がやる羽目に。

 

俺の為に左腕を犠牲にしてくれた以上、やるのは当然の義務ではあるのだが…………なんというか、複雑な気分だ。

 

「い、行くぞ、イッセー」

 

「お、おう」

 

意を決して前に差し出されたイッセーの左手の人差し指を口に含んだ。

 

吸い出すのだから当然吸わなきゃいけないよな…………

 

とりあえず口に含んだイッセーの指先を吸ってみる。

 

「くぅ……」

 

へ、変な声出すなっ⁉︎というか、その露骨に気持ち良さそうな表情はやめてくれっ!そういう事をしていると勘違いしてしまうだろうが!

 

「あらあら、智代ちゃん。初めてなのにお上手ですわね。ですが、時間も時間ですのでもう少しペースを早めましょう、えい」

 

可愛いらしい掛け声の割にはかなり強めに押され、イッセーの人差し指が完全に口の中に入った。

 

しかもバランスを崩したのを支える為に左腕を使おうとしたせいで胸でイッセーの左腕を挟むようにしてしまった。

 

「だ、大丈夫か?智代」

 

「問題な………い、イッセー⁉︎鼻血!」

 

「大丈夫だ。これぐらい」

 

と言いつつもイッセーの鼻からはぼたぼたと鼻血が。多分極度の興奮状態が原因だと思う。そしてそれを作ったのは今のこの状態に違いない。すぐに離れなければ……

 

「智代ちゃん。イッセーくんの方はこちらでしておきますから、ドラゴンの気を吸い出す事に集中してください」

 

「で、ですが……」

 

「任せてください」

 

なんだろう。ものすごいプレッシャーが後ろから飛んでくる。有無を言わせないというか、もっとやれ的なものを感じる。

 

早く終わらせなければと思い、先程までよりも強くドラゴンの気を吸う。

 

またイッセーが変な声出すを上げる…………のかと思いきや、何故だか項垂れていた。

 

?よくわからないが、早く吸い出すに限る。もし誰かが部室に来たら絶対に勘違いーーー

 

「朱乃。イッセーのドラゴンの気を吸い出すのは…………あら」

 

…………来てしまった。よりにもよってリアス部長か。

 

「智代もしていたのね。朱乃が監修しているところを見ると今日が初めてかしら?」

 

う、うん?意外にも普通に何をしているのかわかってくれたようだ。今も現在進行形でドラゴンの気を吸い出しているというのに。

 

「ゆくゆくは智代ちゃんに任せますわ。その方が二人にとって都合が良いでしょうから」

 

「良かったわね、智代、イッセー…………イッセー?」

 

項垂れたままのイッセーを見て、リアス部長は訝しむ。

 

リアス部長が肩をつついてみるとイッセーはそのままソファーに倒れこんだ。

 

「イッセーったら座ったまま、気絶してるわ」

 

「あらあら、イッセーくんには刺激が強すぎたかしら?」

 

幸せそうな表情を浮かべたまま、イッセーは気を失っていた。それを見て、一瞬だけ嬉しいと思ってしまった俺はそろそろ末期なのかもしれないなぁ。と色々複雑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「どうしんですか、智代さん?溜め息なんて」

 

「なんでもない、アーシア。ああ、本当に何でもない……」

 

「どう見ても何でもないようには見えないぞ?何かあったのか?」

 

心配そうに聞いてくるアーシアとイッセー。原因は昼休みの事なんだが…………それは今言うまい。確実にイッセーとの間で微妙な空気になる。

 

「ま、何かあるなら相談に乗るからさ。何時でも言ってくれよ?」

 

「イッセーさんの仰る通りです。お悩みがあれば何時でも相談に乗りますから」

 

二人の優しさが痛い。かといって、素直にいうわけにもいかない。言ったら色々と取り返しのつかないことになりそうだから。

 

「ッ⁉︎」

 

「イッセー?どうした?」

 

玄関の扉に手をかけたイッセーがギクリと身をこわばらせた。いや、イッセーだけじゃない。アーシアの顔色も悪く、俺の服の裾をぎゅっと握ってきた。

 

俺が何も感じないとなると、悪魔特有の嫌悪または畏怖を感じる対象が中にあるということか?

 

顔色を変えたイッセーは勢いよく扉を開いて、中に入る。

 

一足遅れで俺とアーシアもイッセーの後を追うように向かう。

 

悪魔だけが感じ取れるものといえば、光を武器にする天使や堕天使、教会の人間である可能性が高い。そしてその者達は悪魔と関わっているものを問答無用で殺す。フリードの時のように。

 

最悪のビジョンを脳内に浮かべたまま、イッセーの後を追う。

 

リビングの入り口に立ったイッセーは呆然としていた。

 

中を覗いてみると…………ローブを着た二人の女性と叔母さんが楽しく談笑をしていた。

 

「あら、イッセー、智代ちゃん、アーシアちゃん、お帰りなさい」

 

「はぅぅぅ。良かったですぅ」

 

俺の後方でアーシアが安堵の息と共にペタンと床に座り込んだ。

 

とはいえ、油断ならない事態である事は変わりない…………何せ相手は教会関係者……っあれ?そういえばあの二人何処かで見た事あるぞ?

 

「久しぶり!イッセーくん!」

 

「…………誰?」

 

満面の笑みで迫る栗毛の少女にイッセーは間をおいて疑問の声を上げた。それに少女は思わずずっこけそうになっていた。

 

「わ、私のこと覚えてない?」

 

「ごめん。覚えてな…………あ」

 

そこでポンとイッセーは思い出したように手を叩いた。

 

「もしかして………紫藤イリナ?」

 

「そう!貴方の幼馴染の紫藤イリナよ。やっと思い出してくれた!」

 

心底嬉しそうにイリナはぴょんぴょんと跳ねる。そうか、こいつが紫藤イリナだった。ということは後ろにいるのはゼノヴィアか。隣に置いてある巨大な布に包まれたものが聖剣ということだな。

 

「もう!イッセーくんたら酷いんだから!こんなに可愛い幼馴染の事を忘れて、二人も女の子を侍らせてるんだもんっ」

 

頬を膨らませて抗議するイリナ。あれ?こんなキャラだったっけ?俺は昔のイリナはわからないけど、原作のイリナは出会った当初、こんなキャラじゃなかったような気がする。

 

「侍らせてるって人聞きの悪い。智代もアーシアもそんなんじゃないぞ」

 

「智代?もしかして貴女、あの大神智代さん?」

 

「ああ」

 

何が引っかかったのか、イリナは俺の名前を確認するとこちらの方に歩いてきた。

 

「紫藤イリナです。よろしくね、智代さん」

 

「あ、ああ。よろしく」

 

「しばらく見ないうちに色々と変わっちゃったみたいだけど、私負けないからね、智代さん」

 

「?」

 

握手をした後、軽くウインクしながらそういうイリナに俺は首をかしげるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく無事だったわね」

 

あの後、念の為にリアス部長に報告を入れると血相を変えて魔法陣で飛んできた。

 

当然といえば当然だ。グレモリーは特別情愛の深い悪魔。下僕に何かあったとあれば何をするかわからないだろう。とはいえ、もしあの二人がイッセーやアーシアに何かしようとしていたのなら、俺が二人を殺す。最悪俺も死ぬかもしれないが、イッセーとアーシア、そして俺。この世界にとって重要なのはあくまでイッセーやアーシアの方だ。俺が死んだところで特に変わりはしない。

 

「怪我はない?何もされなかった?」

 

「大丈夫です。俺達のことを悪魔って認識してたみたいですけど、流石に一般家庭で、母さんも普通の人間だったから手を出しづらかったんだと思います」

 

「私もイッセーさんも智代さんも無事です。部長さん」

 

「それに安心してほしい。何があっても私が全身全霊でイッセーとアーシアを護ろ……痛っ」

 

折角かっこよく宣言しようとしたら、隣にいたイッセーに小突かれた。何をすると視線で訴えるとイッセーは半目ではぁっと溜め息を吐いた。

 

「あのなぁ。俺との約束をいきなり破る宣言しないでくれよ。俺は智代に闘って欲しくないの。良いとか悪いとかの問題じゃない。だからそういうのはダメ。わかった?」

 

「むぅ。善処「わ・か・っ・た・?」…………わかった」

 

おかしい。イッセーは笑顔のはずなのに凄まじい威圧感だった。笑顔は元来威嚇行為だと言われているが、その片鱗を味わった気がする。

 

「夫婦漫才はその辺にしておいてちょうだいね。話が進まないから」

 

俺達のやり取りを見て、リアス部長は苦笑する。夫婦漫才って、いやはたから見ればそう見えなくもないかもしれないけどね。断じて違うから。

 

「実はね。貴方達が接触した二人の教会の人間は昼間のうちにソーナに接触していたらしいの。何でもこの町を縄張りにしている私ーーーリアス・グレモリーと交渉がしたいらしいわ」

 

「教会の者が、悪魔と?」

 

イッセーの問いにリアス部長が頷く。

 

イッセーが驚くのも無理はない。敵対しているはずの悪魔とキリスト教徒。それだというのに向こう側から交渉を持ちかけてくるのだから。

 

「どういうつもりかはわからないけれど、明日の放課後に彼女達は旧校舎の部室に訪問してくる予定よ。こちらに対して一切の攻撃を加えないと神に誓ってね」

 

「信じられるんですか?」

 

「信じるしかないでしょうね。彼女達の信仰を。信徒にとって邪悪な存在である悪魔に依頼をするぐらいなのだから、相当切羽詰まっていて、かなりの厄介ごとであるのは確実かしら。話ではこの町を訪れてきた神父が次々と惨殺されているそうだから、おそらくそれに関係することでしょうね」

 

………フリードか。

 

確かあいつは今回の一件に一枚噛んでいたはずだ。神父を殺して回っているのもフリードだろう。

 

「智代。あなたも明日は参加してちょうだい。念の為………ということもあるけれど、神滅具を宿しているあなたなら今回の一件に巻き込まれる可能性もあるわ。その時に何が何だかわからないというのは困るでしょう?」

 

確かに神滅具所有者は争い事に巻き込まれやすい傾向にある。そして近くには戦を呼び寄せるドラゴンを宿すイッセーがいる。そうなると否が応でも俺はそれに巻き込まれるだろう。今回も、そして今後も。

 

だが、まあいい。俺としても個人的にフリードには用があるし、俺のうろ覚えな記憶では細部に誤差が発生していた時に対処が遅れる。

 

「では参加させてもらおう。訳も分からず、襲われるのはゴメンだ」

 

わけはわかるんだけどね。そういったほうが都合が良いだろう。

 

………それはさておき、どうにも嫌な予感がするな。何もないことを願おう。

 

 

 

 


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