幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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さて今回からコカビエル戦です!

少し長くなるので二つに分けます!

そして予想以上にフリードとコカビエルのウケがいいのでびっくりしています。皆様、これからもこの二人のことを応援してくださいね!(永遠にお別れするわけじゃないよ!)


平和を謳う者

「来い!そして止めてみせろ!止められるものならな!」

 

十枚の漆黒の羽を広げた堕天使コカビエルはそう叫んだ。

 

俺達はこの人を止めなきゃいけない。それがこの人の望む結末であり、それ以外は決して選べない。

 

俺は止めてみせる。他でもない、誰よりも平和を望んでいるあの人を……ッ!

 

「ドライグ。確か身体半分をドラゴンにすれば、あの人を倒せるんだよな?」

 

『ああ。少なくとも、戦闘不能には出来るだろう。だが、見立てに過ぎん。もしかしたら過剰かもしれんが、足りない可能性もある』

 

過剰ならそれでもいい。命を差し出そうとしている人が目の前にいるんだ。気を散らせば戻るドラゴン化の方がはるかにマシだ。それに足りない分は皆が補ってくれるさ。俺は一人じゃないんだ。

 

「……本当は私はお前の疑似禁手には反対だ。だが、今はそうも言っていられない状況だ。この中で一時的にでもコカビエルと対等に渡り合う事の出来る存在はイッセーだけなのだからな」

 

心底悔しそうにいう智代。ライザーの時も俺が左腕をドラゴンに差し出した時の智代は自分が弱いからと言っていた。

 

でも、俺は正直智代が強くても弱くてもどちらでもいい。

 

例えどちらであっても俺のやる事は変わらない。護るってそう決めているから。

 

「行くぜ、ドライグ。オーバーブーストォッ!」

 

『Welsh Dragon over booster‼︎』

 

宝玉から機械音声が流れ、俺の全身を赤い鎧が包む。

 

そしてそれと同時に身体の左半分が己のものとは別に違うものになる感覚がした。これで俺の左半分はドラゴンになった。光の攻撃は弱点ではないし、多少の無茶は効く。また当分学校休まなきゃいけなくなるかもしれないし、ドラゴンの気を散らしてもらわないといけない。その時はまた智代にお願いしよう。

 

「ほう。鎧を纏ったか。見た所、不完全な禁手のようだな」

 

「最近目覚めたばかりでね。まだ至るには力も変化も足りないらしいんだ」

 

「だが、その不完全な状態でもわかるぞ。お前から発せられるプレッシャーが格段に増した。俺と闘うには十分な戦闘力はありそうだ」

 

「あんたを倒せないと意味がないからなッ!」

 

背中の噴出口から魔力を噴き出し、一気に詰め寄る。

 

ライザーの時はこのままタックルをかませば大ダメージを与えられたけど、相手はライザーよりもはるかに強い。俺も強くなったけど、それでも足りないのはわかってる。

 

けど、それでも引くわけにはいかない!

 

『Boost!!』

 

力の高められた拳をコカビエルの鼻っぱしら目掛けて振り抜く。

 

だが、コカビエルはそれを片手で受け止めた⁉︎

 

「ふむ。力と意志の籠ったいい拳だ。だが、この程度では俺は倒せんぞ!」

 

俺は咄嗟にバックステップで距離をとるが、コカビエルは空いていたもう片方の手に光の槍を作り出すとそのまま俺目掛けて投擲してくる。

 

かなりデカい。レイナーレのものしか見たことはないし、あれも人間の時だけだったが、比較にならないほどデカい。当たれば即消滅だ。

 

『Boost!!』

 

「どらぁぁぁぁ!」

 

ドラゴン化した左腕でその光の槍を正面から殴り壊す。

 

良かった。力が足りなければ即死だった。

 

「あれを一撃で砕くか。ならばこれはどうだ!」

 

今度はそれよりも更に巨大な光の槍を作り出した。ゆうに六、七メートルはあるのではないかという代物だ。止められるのかよ、あんなの!

 

『相手は堕天使の幹部だ。あれくらいは出来るだろう。怖いか?』

 

「怖いね。もしかしたらまた死んじまうかもしれないって思うのもそうだけど、ここで死んじまったら大切な人を護れなくなっちまうって事がな」

 

それだけは嫌だ。絶対に護り抜いてみせる。彼女は人間で俺は悪魔だ。悪魔の生の中では彼女の人生は瞬き程度かもしれない。なら俺はその僅かな時を必ず護ってみせる。でないとこんな力はあっても意味がない!

 

「行くぜぇぇぇぇ!」

 

『Boost!!』

 

俺は拳に魔力を溜めてから光の槍を殴りつける。

 

拳と槍が衝突して激しい風が吹き荒れる。じりじりと押されてはいるが、一瞬で押し負けていないなら、俺の勝ちだ。

 

俺は拳に溜めていた魔力をゼロ距離から槍へとぶちかます。すると拳とぶつかりあった事で威力が減少していた槍は一瞬で砕け散り、コカビエルの方へと飛んで行った。

 

コカビエルはそれを右手を前に突き出して受け止めるとそのまま握り潰す。手からはプスプスと煙が上がっているが、大したダメージは無いように見える。

 

「やはりその力は恐ろしい。流石は三大勢力に逆ギレで喧嘩をふっかけただけはある」

 

ククク、と愉快そうにコカビエルは笑う。そういえばそんなことをドライグも言ってたな。それで最終的にはバラバラにされて神器に封印されたとか。

 

「だが、恐ろしいと同時に俺はその力を、赤龍帝という存在を感謝している。あの時、もし二天龍がそうやって乱入して来なければあの戦争は止まりはしなかったのだからな」

 

憂いを帯びた表情でコカビエルは話す。次の攻撃を仕掛けようとした俺は拳を解いた。

 

「あの戦争はまさしく地獄だった。誰もが相手を憎み、相手の存在を滅ぼすために己が力を振るった。理由なんてなかった。悪魔だから、天使だから、堕天使だから、そんなくだらない理由で相手を滅そうと俺達は闘った。あの時の俺は馬鹿だったよ。堕天使こそ最強の存在と信じて疑わなかった。戦闘を愉しんでいた。けれどな、ある時気がついたんだ。俺はなんて虚しい事をしているんだ、とな」

 

手に光の槍を生み出したコカビエルが今度は仕掛けてきた。そしてその光の槍を俺目掛けて振るう。

 

「必ず勝てるなどと馬鹿な妄想を信じていた!数千もの仲間の亡骸を踏み台に俺達は戦争を続けた!止まることなど出来るはずもなかった!止まれば仲間の死は無駄になる!多くの仲間が死ぬ!俺は幹部として仲間をこれ以上死なせるわけにはいかなった!だが、止められなかった!わかるか、赤龍帝!昨日まで夢を語らい、自らの生きる道を語った相手が目の前で滅されていく光景が!そしてその者を愛した者にその者の死を伝えなければならない苦しさが!もうあの大戦は起こしていけないのだ!例えどの勢力が勝利を得たとしても残るのは悲しみだけだ!ならば俺はそれを止めるために命を賭ける!俺の命程度で!何度も何度も失いかけては仲間の犠牲で成り立ったこの命程度であの悲劇が止められるなら俺は喜んで死んでやる!」

 

コカビエルは怒涛の勢いで攻め立ててくる。そのどれもが鋭く当たれば戦闘不能にされてもおかしくはない一撃だ。 俺はそれを必死に捌く。目で追ってはいない、殆ど本能的に避けている。でないと対応出来ないんだ。目で追ったら確実に追いつかずに仕留められる。

 

「もしも俺を止めると言うのなら止めてみせろ!あの時、誰も止められなかった戦争を三大勢力の結託という形で終わらせたあの時のように!」

 

ガギンッ!

 

ついにコカビエルの一撃が鎧の一部を破壊して、俺の肩を貫いた。

 

幸いなのは貫かれたのがドラゴン化した左肩だった事。死ぬほど痛いが、全身が焼きつくような痛みはない。やっぱりあれは悪魔が光によって与えられるダメージによるものらしい。

 

『Boost!!』

 

俺は肩を貫いたコカビエルの右腕をガッチリと掴む。これで避けられる事はまず無くなった。

 

「止めてやる!あんたや俺の望む平和の為に!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

今までとは違い、全身の宝玉から機械音声が流れ、力が跳ね上がった。

 

「おおおおおっ!」

 

ゴッ!

 

俺の拳がコカビエルの顔面を捉え、鈍い音が響き、コカビエルは吹っ飛んだ。

 

手応えはあった。掴んでいた手を反射的に放したけど、ダメージはあるはずだ。

 

吹っ飛んだコカビエルは立ち上がると地面に血を吐き捨てて、口元を拭う。

 

「まだだ!まだ足りんぞ、赤龍帝!俺を沈めたいならもっと強くなってみせろ!」

 

コカビエルが指を鳴らすと無数の光の槍が現れた。質より量ってか!

 

「今度は捌き切れるか!」

 

一斉に飛来する光の槍。俺は全力でその全てを叩き落とそうとする。

 

だが、幾ら何でも数が多すぎた。拳で砕きながら右半身に飛来してくるものは全部防ぎきってはいるものの、左半身に飛来してくるものはあまり防げていなかった。何本も鎧に突き刺さり、その度に徐々に動きが悪くなってくる。そしてついに膝をついてしまった。

 

「終わりだ、赤龍帝!」

 

ここまでか。そう思った時、急に右方向に思いっきり引っ張られ、俺は一瞬宙を舞った後にゴロゴロと転がった。

 

「はぁはぁ……お前、重すぎるだろ。肩外れっかと思った」

 

「さ、匙?」

 

気がつけば『黒い龍脈』を発動させた匙が少し離れた位置にいた。どうやらあの触手を俺の腰に巻きつけて思いっきり引っ張ったらしい。

 

「僕達の事も……」

 

「忘れてもらっては困るな、コカビエル」

 

「イッセーくんだけに闘わせないんだから!」

 

視線をコカビエルの方に向けると木場、ゼノヴィア、イリナの三人がコカビエルへと斬りかかっていた。

 

「ほう。聖魔剣、エクスカリバー、デュランダルの連携攻撃か。これは面白い。アザゼル辺りは狂喜乱舞しそうだな。だが!」

 

コカビエルはデュランダルとエクスカリバーを両手に作り出した光の剣で受け止め、黒い羽を刃物のようにして木場の聖魔剣を防いだ。

 

「まだまだ未熟だ。お前達では俺は倒せんよ!」

 

ドンッ!

 

コカビエルの全身から発生した衝撃波に三人はなす術もなく、吹き飛ばされる。なんとか態勢を立て直す。

 

クソ……やっぱり強えよ。

 

鎧を着てもあの人を一発しかぶん殴れない。このままじゃコカビエルの言う通り、倒す事は出来ない。

 

でも、何としてでも俺たちの手で倒さなきゃいけないんだ。部長達に知れて魔王様を呼ばれればあの人は絶対に殺される。それがあの人にとっては望みで事は順調に進むだろう。でも、それじゃあまりにも可哀想だ。今まで誰よりも平和を望み、和平を唱えてきた人が最後の最後で戦争を始めようとした愚かな堕天使として皆の記憶に刻まれるのは。そんなの不憫すぎる。

 

「うおおおおっ!」

 

光の槍を引き抜き、俺は立ち上がる。鎧の具現出来る時間は限られてるんだ。寝ているわけにはいかない。

 

「ドライグ。後どれくらいなんだ?」

 

『二分ぐらいだ。身体の半分を代価にしたからな。それなりに時間はある。だが、あまりダメージを貰うようなら以前のように強制的に解かれる場合もある』

 

そうか。でも一分あれば上等だ。

 

それは俺が一分あれば勝てるとかそういう確信じゃない。どちらにしても一分以内に勝負はつく。勝ち負けはわからないけどな。

 

ボロボロになってもなお立ち上がる俺を見て、コカビエルは怪訝そうな表情でこちらを見る。

 

「何故立ち上がる?俺は何もお前達を殺そうなどとは考えていない。戦争を起こそうとしたという事実が欲しいだけだ。お前達に得はあれど損はないはずだ。ましてや、仕えるべき主を亡くしているというのに、何故其処まで抗う?」

 

「何?それはどういう事だ?」

 

コカビエルの言葉にゼノヴィアが疑問の声を上げるとコカビエルはストレートに真実を告げた。

 

「そうだったな。お前達下々の者まであれの真相は語られていなかったな。なら、教えてやる。先の戦争でな、魔王だけではない。神も死んだのさ」

 

ッ!な、何だって⁉︎

 

この場にいた全員が信じられない様子で目を見開いていた。

 

「知らなくて当然だ。人は神の存在無くして心の均衡と定めた法も機能しない者達が多い。混乱を防ぐため!その真相は我ら堕天使、悪魔さえも教えるわけにはいかなかった。何処からそれが漏れて人間界が混乱に陥るかわからなかったからな。三大勢力でも知っているのはトップとごく一部のもの達だけだ。そして、戦後残されたのは、神を失った天使。魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔。幹部以外の殆どを失った堕天使。最早、疲弊どころではなかった。どの勢力も人間に頼らねば種が存続出来ないほどにな。特に天使と堕天使は人間と交わらねば種を残せない。堕天使は天使が堕ちれば数は増えるが、純粋な天使は神を失った今では増える事は出来ない。悪魔とて純血種は希少だ。だというのに、まだ三大勢力の間では冷戦状態が続いている。あの戦争でどの勢力も泣きを見たはずだというのに。お互い争い合う大元である神と魔王が死んだのにだぞ?今更戦争を続ける理由が何処にある?俺達は争う前に自分達の種を存続させる事を考えるべきだ。その為には悪魔、天使、堕天使などという枠組みを気にしている場合ではないんだ」

 

強く持論を語るコカビエル。

 

確かにあんたの言う通りだ。このまま争い合い続けても何も残らない。あるのは滅亡の道だけだ。

 

三大勢力は全てを受け入れて、手を取り合うべきなんだ。

 

「……ウソだ。……ウソだ」

 

「そんな……主がいないなんて……」

 

少し離れたところで力を抜けうなだれるゼノヴィアとイリナの姿があった。

 

その表情は見ていられないほど、激しく狼狽していた。

 

あの二人は現役の信仰者。神の下僕、神に仕えることを使命として生きてきた存在なんだ。

 

ならその存在を否定されるのは自分の生きてきたものを否定されるのと同義だ。

 

木場ですら、苦々しい表情で歯噛みしていた。

 

絶対にアーシアには教えられない。アーシアもきっと知れば凄くショックを受けるはずだ。そんなの俺は見ていられない。

 

事の真相は予想以上に俺達に衝撃を与えていた。

 

「本来なら聖と魔が混じり合う事はない。其処の悪魔が聖魔剣などという特異な禁手に目覚めたのも聖と魔を司る神と悪魔がいないからだろう。ミカエルはよくやっている。神の死後、神に代わって『システム』を動かし天使と人間をまとめているのだから。あれさえ動けば神への祈りも祝福もある程度発動する。ただ、それでも切られる信徒の数は格段に増えてしまったがな」

 

木場の聖魔剣が出来たのも偶然や奇跡じゃなく、神も魔王も死んでるから誕生したのか。何とも皮肉な話だ。

 

「今こそ種の壁を越え、昔のわだかまりを捨て、手を取り合うべきだ!それが出来ないのなら出来るようにしてやる!サーゼクスもミカエルもアザゼルも!戦争をしたがらない癖に何故重い腰を上げようとしない!立場など気にしている時ではないのだ!」

 

「そうだな。コカビエル。お前の言う通り、どいつもこいつも体裁を気にしてばかりで和平を結ぶ為の努力を何一つしていない」

 

コカビエルの持論に同意したのは今まで魔法力の回復に努めていた智代だった。

 

陣を破壊する折、智代は全力で時間稼ぎをするためにかなりの魔法力を消費した。七割か八割くらいだろう。だから先程の攻撃にも参加していなかったし、何も言わなかった。全ては来るべき時のために。

 

「真に種の安寧を願うのならなり振り構ってはいけないんだ。その点でいえば、現魔王は良い悪魔であるが、少々慎重すぎる。天使長であるミカエルもまた同じだ。アザゼルにしても堕天使の長としておそらく離反者が出て制御が取れなくなるのを避けているのだろうが、それではいつまで経っても和平など結べるはずなどない。だから、お前の言っていることは全て正しいし、この行動もお前がそう遠くない未来を憂いて行った事だ。本来なら止める権利などあるはずがない……だがな」

 

一呼吸置いて、智代は手を胸に当てて告げる。

 

「お前が本当に平和を望むなら生きてそれを護る義務があるはずだ。お前が死してしまえば何の意味もない」

 

「大神智代。確かにお前の言う通りやもしれん。だがな、俺を殺さずに止める事をお前達に出来るのか?」

 

無理だ。

 

誰もがそう思った。

 

殺す事すらも今の俺たちにはかなり難易度が高い。確率にして僅か二割程度だろう。

 

それが殺さないとなれば更にハードルが上がる。下手をすれば一割にも満たない。

 

そして今はイリナとゼノヴィアが戦闘続行不能になっている分、確率はもっと下回る。

 

だが、そんな俺達の考えとは裏腹に智代は断言した。

 

「出来る。私達にーーーー私とイッセーが揃って出来なかった事などありはしない」

 

「ククク。ならば見せてみろ、あるのだろう?そう断言できる策が?」

 

智代の言葉にコカビエルは笑みを浮かべて問いかける。

 

まだ何か策があるのか?俺の幼馴染みは何時も想像の遥か上を行くな。

 

「良いぞ。イッセーも身体半分を犠牲にしたのだ。私とて何かを犠牲にするくらいの覚悟は必要だろう」

 

数度の深呼吸をした後、確かに智代はこう告げた。

 

禁…手…化…(バランス・ブレイク)

 

 




とここで一旦区切りました。

智代の禁手とは如何に⁉︎という感じです。

因みに智代は至ってません。イッセー同様に未完成の禁手として発動させます。

世界の流れに逆らって、という描写がないので。

ついでにいうと本来の禁手ではなく、亜種のオリジナル仕様にします。どうするかは既に決めているので当てられる人もいるかなあ?

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