幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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天使長ミカエル

 

「そう………アザゼルはそう言っていたのね」

 

「はい……」

 

練習の途中、サンドイッチを作って、様子を見に来てくれた部長に俺は先ほどあった出来事を話していた。

 

絶妙なスパイスが効いていて、美味しいサンドイッチだけど、なんというか、事態が事態だけに微妙な感じになってしまっている。

 

「神器について造詣が深いアザゼルが言う以上、的外れな事はないと思うわ。悲しい事でしょうけど………」

 

「……わかってます。でも、アザゼルは三大勢力の会談後は体調が今まで以上に良くなるとも言ってました。それがどういう意味かはわかりませんけど………」

 

「今までの話からして、何か手を打ってくれる、という訳ではなさそうね。他には何か言っていなかったかしら?」

 

他に言っていたこと……うーん、粗方話したような気がするんだけどなぁ………あ、一つ忘れていた。

 

「アザゼルは『ご先祖様に救われた』とも言ってました。智代って特殊な家系なんですか?」

 

「………ごめんなさい、イッセー。心当たりはないわ。いえ、ひょっとしたら忘れているだけなのかも知れないから、私も一度調べてみるわ」

 

「ありがとうございます」

 

下僕の為にここまでしてくれるなんて流石は部長だ。この人には本当に頭が上がらない思いだ。

 

「おーい!兵藤ー!」

 

その時、少し離れた場所でギャスパー達とサンドイッチを頬張っていた匙がこちらに歩いてきた。

 

「リアス先輩が帰ってきたし、俺はそろそろ花壇の作業に戻るぜ。あんまし時間かかるとドヤされっから」

 

「匙くん。わざわざ私の下僕に付き合ってくれてありがとう。お礼を言うわ」

 

部長に礼を言われて匙は気恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 

「いいんスよ。兵藤も大神も、なんつーか、戦友みたいなノリがありますし、先輩も会長の大事なお友達じゃないっすか。棚ぼたで神器の事も知れたんで、俺も収穫はありってことで。兵藤、後は頑張れや」

 

「おう、サンキューな」

 

そう言って匙は手をひらひらとして、この場から去っていった。

 

匙を見送った部長は、木の陰で休んでいたギャスパーの元へと向かい、言う。

 

「ギャスパー。まだいけるわね?匙くんに吸われて、ちょうど力も良い感じに調整されたでしょうし、残りの時間は私も一緒に練習に付き合うわ」

 

おおっ、なんとも頼もしいことだ。

 

多分、他の上級悪魔の方々でも下僕のトレーニングや相談に付き合ってくれる方なんてそうそういないんだろうな。となると、ここにいる部長や会長はやはり素晴らしいお方なんだ。

 

「が、頑張りますぅぅぅぅ」

 

部長の声にヘロヘロになりながらもギャスパーは立ち上がった。

 

こうして、夜になるまでギャスパーの神器練習は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の休日、俺はとある場所へ向かっていた。

 

朱乃さんに呼び出されたんだが………

 

「ここどう見ても神社だよなぁ………」

 

言われた通りに町のはずれに歩を進めていた俺だったのだが、着いたのは赤い鳥居の立つ神社。

 

悪魔にとってはアウェーなんだが、本当に入っていいのか?

 

と、俺の目が石段の下に人影を捉える。凝らして見てみるとーー見知った顔が。

 

「いらっしゃい、イッセーくん」

 

「あ、朱乃さん⁉︎」

 

そこには巫女衣装を身に纏った朱乃さんの姿があった、

 

「ゴメンなさいね、イッセーくん。急に呼び出してしまって」

 

「あ、いえ。俺もたまたまやる事が無くて暇だったりしたんで。智代も休みの日は寝てないと辛いみたいで……いざとなったら、連絡するようにはいってますし。それと、部長は後から来るそうです」

 

「ええ、知ってますわ。リアスは会談の件でサーゼクス様と最終的な打ち合わせをしなければいけませんから」

 

しかし、朱乃さんは巫女服が似合うな。まさに大和撫子って感じだ。

 

もしかして『雷の巫女』の二つ名はここから?ていうか、悪魔が神社にいても問題ないだろうか。

 

「朱乃さんは部長と打ち合わせに行かなくていいんですか?『女王』の力が必要なのかなって」

 

「あちらはグレイフィア様がフォローしてくださるでしょうし、ある程度進行していれば私が抜けても大丈夫ですわ。それよりも私はこの上でお待ちしておられるお方をお迎えしなければならなかったものですから」

 

と、朱乃さんは石段の遥か先へ顔を向ける。誰か来ているのか?

 

鳥居が目の前に迫ってきた。悪魔はこれを越えようとするとダメージを受けてしまって、神社へ近づけないというが……

 

「ここは大丈夫ですわ。裏で特別な約定が執り行われていて、悪魔でも入る事が出来ます」

 

言うや否や朱乃さんは何事もなく鳥居をくぐった。俺と恐る恐るくぐる。あ、本当に大丈夫だ。

 

「朱乃さんはここに住んでいるんですか?」

 

「ええ、先代の神主が亡くなり、無人になったこの神社をリアスが私のために確保してくれたのです」

 

「彼が赤龍帝ですか?」

 

その時、第三者の声に気づき、そちらへ振り向くと、そこにはーー。

 

輝くまでに金色の羽が俺の前で舞う。端整な顔立ちの青年が俺へ視線を送っていた。

 

豪華な白ローブに身を包み、頭部の上に金色の輪っかが漂う。って輪っか⁉︎

 

「初めまして、赤龍帝、兵藤一誠くん。私はミカエル。天使の長をしております。なるほど、このオーラの質、まさしくドライグですね。懐かしい限りです」

 

その人は超大物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃さん先導の元、俺とミカエルさんは神社の本殿へ。

 

輪っかはともかくとして、天使は白い羽が特徴と聞いていたのだが、ミカエルさんは金色の羽だった。大物感が漂うぜ。

 

かなり広めの本殿内はでかい柱が何本も立っている。中央から、言い知れない力の波動を感じ、俺の肌をピリピリと刺激していた。このオーラ、なんだ?危険信号が出まくってるんだが。

 

「実は貴方にこれを授けようと思いましてね」

 

ミカエルさんが指差す方。そこには聖なるオーラがにじみ出る一本の剣が宙に浮いていた。

 

……この波動、この感じ方は聖剣だ。エクスカリバー、デュランダルと見てきたから聖なるオーラはよくわかる……けど、それよりももっと危なさを感じる。あれには触れてはいけないような……

 

『それはそうだ。あれは有名な龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の剣、名をアスカロンと言うものだからな』

 

と、ドライグが説明してくれる。

 

「アスカロンって……確か、ゲオルギウスが持っていた龍殺しの聖剣ですよね?」

 

「はい。よくご存知ですね」

 

「なんというか、趣味の延長で……」

 

悪魔とか天使とかの世界や事情はよくわからないが、そういう英雄の方々なら知っている。ゲオルギウスは聖ジョージとしても有名だし。

 

「特殊儀礼を施しているので悪魔の貴方でもドラゴンの力があれば扱えるはずです。貴方が持つというよりは、ブーステッド・ギアに同化させるといった感じでしょうか」

 

って言ってるけど出来るのか?

 

『お前次第だ。神器は想いに応える。今までもそうだっただろう?』

 

……そういや、そうだったな。今までもそうやって俺は闘ってきたんだ。

 

「ところで、何故これを俺に?大切な物のはずじゃ……」

 

どうしても訊かずにはいられなかった。

 

こんな貴重なものを、悪魔でドラゴンの俺に渡すというのは何かないとするような事じゃない。

 

すると、ミカエルさんは微笑みながら答える。

 

「私は今度の会談、三大勢力が手を取り合う大きな機会だと思っているのですよ。既に知っているからお話ししますが、我らが創造主ーー神は先の戦争でお亡くなりになりました。敵対していた旧魔王達も戦死。堕天使の幹部達は沈黙、アザゼルも戦争を起こす気はないと建前上は口にしています。これは好機なのですよ。無駄な争いを無くすためのチャンスなのです。このまま小規模な争いが断続的に続けば、いずれ三大勢力は滅ぶ。そうでなくても、横合いから他の勢力が攻め込んでくるかもしれません。その聖剣は私から悪魔サイドへのプレゼントです。もちろん、堕天使側にも贈り物をしました。悪魔側からも噂の聖魔剣を数本いただきましたし、こちらとしても有難い限りです」

 

そうか………やっぱり、この人達もタイミングが難しくて、迂闊に動けなかっただけで和平を結びたいとは思っていたのか。

 

コカビエル………あんたの行動は何一つ無駄じゃなかった。あんたのその行いがこの人達が動けるキッカケを作ったんだ。

 

「過去、我々と敵対していた『赤い龍』が悪魔になったことを知りましてね。ご挨拶と共に悪魔側へ私からのプレゼントの一つとして貴方にその剣をお渡しするのです。貴方はこれから龍王クラスのドラゴンや『白い龍』に狙われるでしょう。『歴代の中でももっとも宿主が弱い』と噂の貴方にとって補助武器となるのではないかと思いまして」

 

うっ……なんかそんな良い笑顔で言われると余計に傷つく。

 

けど、確かにこれがあればあの『白い龍』に対する切り札として使えるかもしれない。

 

「俺でいいんですか?」

 

優秀な剣の使い手なら数多といるだろうし、実際木場かゼノヴィア辺りの方が上手く使えそうだ。

 

「一度だけ三大勢力が手を取り合ったことがあったのですよ。それは赤と白の龍を倒した時です。我々の戦争に乱入してきた二匹のドラゴンは戦場を乱しに乱してくれましたから。ですから、あの時のように再び手を取り合うことを願って、貴方にーー赤龍帝に願いをかけたのですよ。日本的でしょう?」

 

この人的には多分善意とかからそう言ってくれてるんだろうけど、めちゃくちゃ皮肉にしか聞こえない。

 

俺は件の聖剣に体を向け、宙に漂う聖剣を左手に取る。

 

あれ?何も起きないぞ?

 

『相棒、ブーステッド・ギアに意識を集中しろ。後は俺がフォローする。ーー手に持っている剣を神器の波動に合わせてみろ」

 

そうは言うけどな。

 

とりあえず俺は神器を発動させ、ブーステッド・ギアを手に持った聖剣の波動に合わせようと試みる。

 

聖なるオーラが神器に流れ込んでくる。悪魔であるからか、神器を通して、気味の悪い波動が流れ込んでくるけど………徐々に馴染んできて、ドライグの力に取り込んでいくような感覚が襲う。

 

カッ!

 

赤い閃光を走らせるとーー俺の左腕に手の甲の先端から刃を出した籠手が存在していた。

 

「……マジで合体しやがった」

 

神器って凄いな。聖剣と合体も出来るのか。

 

それを確認するとミカエルさんがポンと手を叩く。

 

「と、時間です。そろそろ私は行かねばなりません」

 

あっ。この人にはどうしても一つ聞かないといけないことがあったんだ。

 

「すみません。一つだけ聞いてもよろしいですか?」

 

「ええ。出来れば手短にお願いします」

 

「大神っていう姓は知っていますか?」

 

これはどうしても聞いておきたかった。

 

これでわからないと言われれば、サーゼクス様にでも聞いてみようかと思っていたら、ミカエルさんが目を見開く。

 

「驚きましたね。まさかこの地でその名を聞く事になろうとは。何処でその名を?」

 

「実は俺の幼馴染みが大神の姓なんです。何かご存知ですか⁉︎」

 

「すみません。知ってはいますが、ここで話すと長話になる。またその大神の姓を名乗る方を交えてお話ししましょう」

 

そう言うとミカエルさんは魔法陣を足元に展開させた後、フッと消えた。

 

また智代も交えてか………となると会談の時しかないな。その時は必ず聞こう。

 

俺はそう誓った。

 

 

 

 


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