ちょっと無理矢理感もあるかもしれませんが、まあそこは目を瞑っていただけると助かります。
ここだけの話、これを書き始めた時はそういう設定は無かったものですから、かなりやっつけ感が出てしまうんです。すみません、書いてると話がどんどん飛躍して行っちゃうタイプなんです。
後、Twitterで作家名と同じ名前でアカウント作りました。また何かあればそちらでも受け付けますので、遠慮なく言ってください。
「アザゼル、明日の会談、俺も出席して構わないか?」
「初めからそのつもりだよ。つーか、お前にしては珍しいな。てっきり参加したくないと言うつもりかと思ってたが」
「参加するだけの理由が出来ただけさ。………なぁ、アザゼル。もう、戦争は起こらないのかな?」
「ただ戦いを求める。典型的なドラゴンに憑かれた者だな、お前は。長生きできないタイプだ」
「いいさ。長生きする事に興味はない。ただ、この時代に生まれたのは嬉しくもあり、残念だと思うよ。神がいない世界ーー俺は神を倒してみたかった」
「白龍皇らしい限りだ。で、強い奴を倒した後、お前はどうするんだ」
「ーーそうだな。その時は家族ごっこにでも興じてみるよ。強者がいなくなった世界ーー俺は俺の子に殺されよう」
「さて、行くわよ」
部室に集まるオカルト研究部の面々。部長の言葉に頷いた。
そう、今日は三大勢力の会談の日。ついにこの日が来てしまった。
会場となるのは、駒王学園の新校舎にある職員会議室。今日は休日で時間帯は深夜。誰もいない。
既に各陣営のトップ達は新校舎の休憩室で待機しているらしい。
そして、何よりもこの学園全体が強固な結界に囲まれ、誰も中へ入れなくなっているので、間違えて誰か入ってくることはない。
結界の外には、天使、堕天使、悪魔の軍勢がぐるりと囲んでいる。一触即発の空気だと様子を見てきた木場が言っていた。もし会談に失敗した暁にはここが焦土と化す可能性もある。それだけは嫌だ。
『ぶ、部長!み、皆さぁぁぁぁぁん!』
部室に置かれた段ボール。もちろん、中には引きこもりヴァンパイアが。
「ギャスパー、今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器を使いこなしていない貴方は参加できないのよ」
と、部長は優しく告げていたのだが………
「はふぅ………やっぱり落ち着きますぅ……」
そのギャスパーは今智代の背中に抱きついている。
確かに未だ神器が使えないギャスパーが何かの拍子に会談中の皆さんの邪魔をしたら、大変な事になる。そんなわけで部長はギャスパーにお留守番を言いつけたんだが……
『いや、ギャスパーも連れて行ったほうが良いと思う。何かあったときのためにギャスパーが危険だ』
と智代が部長に進言したため、ギャスパーは智代監視のもとに連れて行くことになった。流石に段ボールを持って行くことは出来ないので、智代がギャスパーの面倒を見る事でなんとか了承を得た。智代がいれば、ギャスパーは安心感を得ているから暴走はしないはずだ。
「ギャスパー。平静を保つんだぞ。何があっても、私がお前を守ってやるからな」
そう言って智代は微笑んだ。
強がってはいるが、智代だって、今は全然闘えない状態だ。それでもギャスパーを安心させようと言っている。………二人は俺が守る。例えここが戦場になっても、全身がドラゴンになってもだ。
コンコン、部長が会議室の扉をノックする。
「失礼します」
部長が扉を開くと、そこには豪華絢爛そうなテーブルとそれを囲むように見知った人たちが座っていた。
空気は静寂に包まれており、全員真剣な面持ちだった。
俺はあまりの緊張感に生唾を飲み込む。アーシアも不安そうに俺の服の端を掴むので、安心させるように俺はアーシアの手を軽く握ってやった。
悪魔側はサーゼクス様とレヴィアタン様、そして給仕係にグレイフィアさん。
天使側がミカエルさんとイリナだった!あれか、やっぱり事情を知っているからか?何時もなら俺を見るなり笑顔で手を振ってくるイリナも今回は真剣な表情で座っていた。
堕天使側、アザゼルと『白い龍』ヴァーリ。今回はさすがに浴衣じゃなくて、装飾の凝った黒いローブだった。それはサーゼクス様も魔法少女コスをしていたレヴィアタン様も該当するが。
「私の妹と仮を含めたその眷属だ」
サーゼクス様が他の陣営のお偉いさんに部長を紹介すると、部長も会釈を返す。
智代は今回に限り、仮の眷属という形で参加している。そうでないとややこしい事になるからだそうだ。
「先日のコカビエルの一件では彼女の眷属達が活躍してくれた」
「報告は受けています。改めて御礼を申し上げます」
ミカエルさんは部長へと御礼をいう。部長は冷静に振る舞い、再度会釈するのみにとどまっていた。
「悪かったな。俺の所のコカビエルが迷惑をかけた」
別段悪びれた様子もないアザゼルにさしもの部長も口元をひくつかせていた。いい加減すぎる態度だが、きっとその分周りがしっかりしているに違いない。じゃないと組織崩壊してそうだ。
「そこの席に座りなさい」
サーゼクス様の指示を受け、グレイフィアさんが俺達を壁側に設置された椅子に促してくれる。その席にはソーナ会長と匙が座っていた。おそらく会長は魔王の妹で、今回の一件に関わった匙の主だからだろう。匙は一緒にコカビエルと戦ったしな。
「全員が揃ったところで、会談の前提条件を一つ、ここにいる者達は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」
サーゼクス様が周囲を確認すると別段驚いた様子の者はいない。まぁ、ここにいる以上、それは周知の事実なんだろう。
「では、それを認知しているとして、話を進める」
こうしてサーゼクス様のその一言で三大勢力の会談が始まったのだが…………。
ミカエルさんがしゃべり、サーゼクス様が発言し、時折レヴィアタン様も添えるように発言する。
トントン拍子で進んでいく中、アザゼルは暇なのか、適当な事を言って場が凍りつく場面もあった。狙ってやってるだろ、あのおっさん。
サーゼクス様に促されて、部長が先日の一件の概要を説明する。
といっても、実際は部長は参加していない。
俺、智代、木場、ゼノヴィア、匙の話から部長がまとめてくださって、こうして代表として話してくださっている。
本来なら五人のうち誰かが話すべきらしいんだが、今回は事情も事情で、全員まだ下級悪魔と人間で未熟だからということもあってか、部長が代わりに話している。
「以上が、私、リアス・グレモリーの眷属悪魔が関与した事件の報告です」
全てを言い終えた部長はサーゼクス様の『ご苦労、座ってくれたまえ』という一言でやっと着席できた。お疲れ様です、部長。
「ありがとう、リアスちゃん☆」
レヴィアタン様もウインクを部長に送っていた。ああ、そういうところはいつも通りなんですね。
「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
サーゼクス様の問いに全員の視線がアザゼルへ集中する。
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『
そこでアザゼルは言葉を濁らせ、真剣な面持ちで再度話し始めた。
「今回に限って、事情が事情だけに不問にした。責任転嫁に聞こえるようで悪いが、今回の一件。監督不行き届きだった俺自身に大いに責任はある………が、あいつを追い詰めたのは未だ燻っている戦火だ。いつ、誰の行動で起きるかもわからないような一種の冷戦状態にあいつも限界だったんだろうな」
「つまり、それは私達にも非があるといいたいのですか?」
「一概にないとは言い切れないな。まぁ、俺が始めからこうしてりゃ済むことだったんだがな。下の奴をまとめねえ事にはこういう事は出来なかった。ーー和平、結ぼうぜ」
アザゼルの一言に各陣営は少しの間、驚きに包まれていた。
周囲の反応から察してみるにアザゼルの和平発言はかなり驚くべきものだったようだ。
コカビエルのあの時の発言から考えても、冷戦状態だった勢力のトップが自身から和平を提示するというのはかなり驚くべき事だ。まさしく歴史的瞬間だ。
「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このままこれ以上三竦みの関係を続けていても、今の世界の障害となる。天使の長である私が言うのもなんですがーー戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」
「ハッ!あの堅物ミカエル様が言うようになったね。昔は神、神、神様だったのに」
「……失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方ありません。人間を導くのが、我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事なことだと私達セラフのメンバーも意見も一致しています」
「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?ーーーーと思ったが、今は『システム』はお前が受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」
「我等も同じだ。魔王がなくとも種を存続する為、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我等も望むべきものではない。ーーー次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」
「そう。次の戦争をすれば、三竦みは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも影響を大きく及ぼし、世界は終わる。その事に誰よりも早くに気づき、和平を訴えていたあいつを危うく大罪人にしちまうところだった。
ーーーーその辺は礼を言っとくぜ、赤龍帝に氷姫。お前らがいなけりゃ、あいつは止められなかっただろうさ。神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃない。俺もお前達もこうやって元気に生きている」
アザゼルは腕を広げながら、こういった。
「神がいなくても世界は回るのさ」
俺はその言葉の意味がなんとなくわかった気がした。
神がいなくても、俺はこの世界で生きている。それは智代だってそうだし、他の転生悪魔の眷属だってそうだ。
神がいなくても、人は強く生きていけるんだ。
「ーーと、こんなところだろうか」
サーゼクス様のその一言で、お偉い方々が大きく息を吐いていた。どうやら、一通りの重要話が終わったようだ。
大体会談が始まって一時間くらいだったのに、いやに長く感じた。俺も匙みたいにこういうのは苦手だし、身体を動かしていた方が楽だ。
と、ミカエルさんの視線がこちらへ向いた。
「さて、話し合いもだいぶ良い方向に片付いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いてもいいかな」
全員の視線が俺に集まる。前の神社で話した事だろう。智代の姓でかる『大神』について。詳細を聞かなければならない。
「あの……以前お話しした『大神』の姓を名乗っているのは彼女です」
俺がそう言うとミカエルさんの視線が智代へと向けられる。
「貴女が大神智代さんですね。なるほど、確かに貴女からは『大神』の血が感じられる」
「……済まない。一体何の話をしているのか、私にはわからないのだが……」
そういえば智代には何も言ってなかった。出来れば俺が確証を得てから、智代に話したかったんだけど、こうなってしまっては仕方がない。
「……智代。前にアザゼルが言ってたこと、覚えてるか?」
「……『血に救われた』というやつか。それがどうした?」
「その事でミカエルさんに訊いたら、心当たりがあるらしいんだ。それで、今から説明してくれるって」
「……そういう事か……。事情は初めのうちに説明しておいて欲しいものだ」
一つため息を吐いた後、智代は嘆息する。ごめんな、急な展開で。
「よろしいですか?」
「あ、すみません。続けてください」
「はい。では続けます。大神という姓は元来、神が与えし、ある種の役割のようなものでした」
神が与えた役割?どういう事だ?
「現魔王と同じです。とある特殊な力、体質を受け継ぐ者達の事を総じて『大神』という姓で一括りにしました。その特殊な力や体質というのは幾つかあります。邪を打ち払うもの、取り入れるもの、変換するもの、呼び寄せるものの四つです。本来ならば、それらは一つの血筋に絞られますが、彼等の力は不特定多数の者に宿る。それ故に力を宿した者の子が力を宿すとは限らなかった。だから主は自らが姓を与える事で持つ者を判別したのです」
「主……って事は聖書の神様ですよね?何で名前が和名なんですか?」
「詳しい事はわかりませんが、おそらく力を宿す者の多くが日本人だったからでしょう。それにこの国には天照大神と呼ばれる太陽を司る神がいます。太陽は正の力。謂わば悪魔にとっての夜のようなもの。光の加護を得るという意味合いを持ってつけられたのだと思いますよ」
「なら、私の両親も特殊な体質ということになるのだろうか?」
「一概にそうは言えません。それも太古の昔、我々が戦争を行っていた際に彼等も駆り出され、その多くは死に絶えました。そして主が死した後、大神を見つける事は困難になりましたし、時代が移りゆくに連れて、その名を使う者も多くなりました。…………ですが、貴女の力は本物です。紛れもなく、その血を宿す者だ」
まさか、こんな近くにそんな凄い奴がいるなんて。我が幼馴染みは腕っぷしもさる事ながら、その血も凄いらしい。
と、そこでアザゼルが口を挟んだ。
「それよりもだ、納得出来ないのはなんでそいつは大神の特性
「ええ。それは私も思っていました。それに打ち払う力は男性しか得られない力でした。それ故に常に呼び寄せるものの近くには打ち払う者がいた」
「突然変異って奴かね。ったく、こんなのがあの大戦中にいなかっただけ喜ぶべきか。ただでさえ、呼び寄せる力に魅入られて、うちの部下は数多くやられてるってのに、神滅具も持ってるんじゃ、大戦中にそいつがいたら、天界の独り勝ちだったな」
「そうだな。彼らの力はまさしく魔を象徴する我等の天敵のようなものでもあった。彼女がいれば、今頃我々は根絶やしにされていたかもしれん」
呆れた様子で呟くアザゼルに朗らかに笑いながら同意するサーゼクス様。
確かに呼び寄せられて打ち払われるって凄いコンボだよな。そこに神滅具が入ってきたら、悪魔や堕天使にとっては悪夢以外の何物でもない。
「私から教えられるのはそこまでです。何か質問はありますか?」
「………申し訳ない。少し頭が混乱しているので、時間をいただけないだろうか」
「ええ。いいですよ」
智代からすればいきなりそういう話をされても頭が混乱するよな。
「話が終わったとこで、俺達以外に世界に影響を及ぼしそうな奴らへ意見を聞こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前はどうしたい?」
「俺は強い奴と闘えればそれでいい」
ヴァーリは淀みなく、そう答えた。
やっぱりこいつ危ないな。闘って死ねるなら本望だとかそういうタイプだ。傍迷惑なことこの上ない。
「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」
うーん、そんな事訊かれてもなぁ。
はっきり言って、この世界のこととかあんまりよくわかってない。今までは目の前のことを精一杯やってきただけだし、これからも多分そうだ。見えない先行きのことなんて考えても無駄だ。
だから、こうとしか言えない。
「俺はただ、護りたい人を護るだけです、出来れば、そうならないように平和が一番ですけど」
「はぁ……こりゃまた何もかも正反対のライバルだな」
溜息交じりにアザゼルがそう言った時だった、
ドオオオオオオオオオオォォォォォンッ!
校舎の外で轟音が響いた。