幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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禍の団襲来

 

外で轟音が響き、校舎が揺れる。

 

「なんだありゃ⁉︎」

 

外を見た匙が驚きの声をあげる。

 

校舎は結界に包まれている筈なのだが、結界で包まれている駒王学園の敷地内の空には幾百もの魔法陣が展開されていた。どれもこれも見た事のない代物だ。もっとも、俺の知ってるものなんてたかが知れてるが。

 

その様子にアザゼルは鼻で笑う。

 

「何時の時代も、和平結ぼうとすりゃ、それを邪魔する奴はいるもんだな。ま、それでなくても、ここには二天龍に大神がいるんだから、戦場になる要素は集まってるか」

 

魔法陣から現れたのはローブを着た魔術師達。

 

その者達はこちらへ向けて魔力の弾のようなものを放ってきているが、既に校舎には防御系の魔法陣が張られているらしく、全く効いていない。

 

「所謂、魔法使いって連中だな。悪魔の魔力体系を伝説の魔術師『マーリン・アンブロジウス』が独自に解釈し、再構築したのが魔術、魔法の類だ。……放たれている魔術の威力から察するに一人一人が中級クラスの魔力を持ってやがりそうだな」

 

「げっ、外にいる奴らって、素の俺より強いのかよ」

 

横でイッセーがそうごちる。事実といえば事実だが、今のイッセーなら一回倍化すれば余裕で勝てるけどな。強いって言ってもそんなに大差がないからな。

 

「ま、奴らの攻撃じゃ、この校舎には被害を出せないさ。俺やサーゼクスとミカエルで強力無比な防壁を展開してるからな。おかげでここから出られないが……」

 

「出る必要はないだろう。特にこちらに制限はない。親玉が出てくるまで立て籠もればいい」

 

こういう時のためにギャスパーは連れてきたからな。部長を説得した甲斐があるというものだ。

 

「確かにお前さんの言う通りだ」

 

アザゼルは窓の外に手を向けて下げると、外に無数の光の槍が出現し、雨となって降り注ぐ。

 

魔術師達は防壁を張るものの、力の差が圧倒的なせいか、一瞬も止まることなく、防ぎ、魔術師達の身体を貫いた。

 

下手なスプラッター映画よりも凄惨な光景だな。俺は相手を凍らせてから殺す分、グロくないからこういうのを見ると気持ち悪くなる。

 

と、またもや校庭の各所に魔法陣が出現し、先程アザゼルに倒された魔術師集団と同じ格好の者達が現れる。やれやれ、キリがないぞ。

 

「チッ。こりゃ、相当な数の兵力を注ぎ込んでやがるな。しかし、このタイミング、ひょっとすれば、こちらの内情に詳しい奴がいるのかもな。案外、ここに裏切り者がいるのか?」

 

呆れる様子でアザゼルは息を吐く。

 

俺は横目でヴァーリを見ると、どうやらヴァーリもこちらを見ていたらしく、目が合うとヴァーリは不敵に笑う。

 

「さて、ここで問題だ。俺たちトップは結界張ったり、下調べで動けない。別に痛くも痒くも無いが、下手に長引かせて別の手を打たれると厄介だ」

 

「ならヴァーリ辺りに蹴散らしてもらえ。白龍皇なら瞬殺だろう」

 

ギャスパーの利用を防いだ時点でこいつらの計画は失敗したも同然。どう出てくるか、わからない以上、ヴァーリは原作通りに敵を撹乱させる役目に当てさせたい。

 

「ま、それも一つの手だろうな。俺もそう思っていたところだーーヴァーリ。そういうことだ。お前が動けば何かが動くかもしれん」

 

「俺がここにいるのはあちらも承知なんじゃないかな」

 

「だとしてもだ。お前がここを離れれば、逆に手薄になったと思って、こちらへ親玉が仕掛けてくる可能性もある」

 

「それは一理あるかな。了解」

 

アザゼルの意見にヴァーリは息を吐き、同意する。

 

カッ!

 

ヴァーリの背中に光の翼が展開する。

 

「ーー禁手化」

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

音声の後、ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆い、光が止んだ時、ヴァーリの体は白い輝きを放つ全身鎧に包まれていた。

 

これがヴァーリの禁手化か。実際に見るのはこれが初めてなんだが…………どういうわけだ?思ったよりも威圧感を感じない。あの時、ヴァーリが俺に向けた殺意よりも圧倒的な威圧感がある分、見るだけでも精神にかかる負担は大きいはずだが……強過ぎて感覚が麻痺したのか?

 

ヴァーリはこちらを一瞥すると、会議室の窓を開き、空へ飛び出していった。

 

刹那ーー。

 

ドドドドドドドンッ!

 

外で巻き起こる爆風。見れば、魔術師の群れが白い閃光によって蹂躙されていた。

 

例え、相手が協力者であっても容赦ないな。まぁ、バレれば一巻の終わりだもんな。

 

しかし、消滅させられてもすぐに魔術師達は現れる。ここまで湧いてくるとなんかウザいな。

 

「アザゼル。一つ聞いておきたいことがある」

 

「あー、なんだ?」

 

「神器を集めて、何をしようとしていた?『神滅具』の所有者も何名か集めたそうだな?神もいないのに神殺しでもするつもりだったのかな?」

 

「備えていたのさ」

 

「備えていた?戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いです」

 

ミカエルが呆れるように言う。

 

「言ったろ。お前らに戦争はしない。こちらからも戦争を仕掛けない。ーーただ、自衛の手段は必要だ。って、お前らの攻撃に備えているわけじゃねえぞ?」

 

「では?」

 

「ーー『禍の団(カオス・ブリゲード)』」

 

「カオス・ブリゲード?」

 

「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からもうちの副総督シェムハザが不審な行為をする集団に目をつけていたのさ。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ。中には禁手に至った神器持ちの人間も含まれている。『神滅具』持ちも数人確認してるぜ」

 

「その者達の目的は?」

 

「破壊と混乱。単純だろう?この世界の平和が気に入らないのさ。ーーテロリストだ。しかも最大級に性質(たち)が悪い。おまけに組織の頭は二天龍よりも強大で凶悪なドラゴンだよ」

 

「………『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス」

 

『ーーッ⁉︎』

 

あ゛っ。

 

うっかり口からそんな言葉が出てしまった。わかってると自然に口から言葉が出てしまうのが俺の悪いところだ。

 

「驚いたな。お前さんも知ってるとは」

 

「……大まかな事は知っていなければな。馬鹿扱いされるのは気に触る」

 

目を丸くして聞いてくるアザゼルに俺はそっぽを向きながら、答える。オーフィスは有名だからな。勉強していたで通じるが、なかなかにマズかった。

 

「………まさか彼がテロリストの親玉とは……確か彼は次元の狭間で何者にも干渉せずに泳いでいるはずだが」

 

「ですが、それが本当ならば厄介では済みませんね。もしもこの場に来て、私達の命を狙っているのであれば、私達は逃げることしか出来ません」

 

まぁ、相手は無限の龍神だからな。勝てる相手は限られているし、サーゼクス・ルシファーが真の姿になっても勝てるかどうかはわからないし、多分負ける。オーフィスが全力で殺しに来たら、俺たちは生き残れる確率すら一パーセントを切っている。そう、全力で殺しに来たらの話だ。

 

「真意はわからないが、無駄に兵力を投入してきている辺り、オーフィスはここには来ていないんだろう。じゃなきゃ、あの魔術師共は攻撃にじゃなく、閉じ込めるのに全力を費やしただろうからな」

 

そう。ここにオーフィスは来ない。あいつに何かをしようと言う気はない。ただ、静寂が欲しいだけなのだから。

 

「……と、話してたら、どうやら黒幕の方が痺れを切らしたようだぜ」

 

「ーーレヴィアタンの魔法陣」

 

サーゼクスは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

それもそうだ。このレヴィアタンの魔法陣。現魔王レヴィアタンによるものではない。

 

リアス部長達が訝しんでいると、ゼノヴィアが告げた。

 

「ヴァチカンの書物で見たことがある。ーーーあれは旧魔王レヴィアタンの魔法陣だ」

 

直後に魔法陣から現れたのは一人の女性。胸元が大きく開いていて、深いスリットの入ったドレスに身を包んでいる。

 

「御機嫌よう。現魔王のサーゼクス殿」

 

不敵な物言いで、女性はサーゼクスに挨拶をする。

 

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」

 

彼女は旧魔王レヴィアタンの血のもの。つまり、本家魔王の一族。

 

旧四大魔王が滅び、新しく魔王を立てようとした時、徹底抗戦を最後まで唱え、最後の力を持って新しい魔王を立てようとした悪魔達が旧魔王軍の一門全てを冥界の僻地へと追いやった。

 

その後、種の存続を旨に新政権が樹立した。それが今の四大魔王だ。

 

カテレアは挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「旧魔王派の者達は殆どが『禍の団』に協力することを決めました」

 

「悪魔も大変だな。これで新旧の魔王サイドの確執は本格的になったわけだ」

 

カテレアの一言にアザゼルは他人事のように笑う。まぁ、実際他人事だ。

 

「カテレア。それは言葉通りと受け取っていいのだな?」

 

「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っております」

 

クーデター。

 

これは現魔王派に対する旧魔王派の反乱だ。

 

数百年の時を超えて、現魔王と旧魔王の立ち位置が逆転し、再現される。

 

「……カテレア、何故だ?」

 

「サーゼクス。今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました」

 

「オーフィスの野郎は其処まで未来を見ているのか?そうとは思えないんだがな」

 

アザゼルの問いかけにカテレアは息を吐く。

 

「彼は力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけです。彼の力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。ーー新世界。私達が取り仕切るのです」

 

「くくく……」

 

思わず笑いがこぼれてしまった。

 

世界を滅ぼし、世界を構築する。

 

本人は至って真剣にその目標を口にしただけに過ぎない。本人達にとって、この世界は間違いだらけ、破壊と混乱に塗れた混沌の世界を作るため、平和の道を辿っている今を壊さなければならない。

 

だが、だからこそ、おかしい。

 

笑わせてくれる。今の世界が間違っている?世界を滅ぼす?新世界の構築?厨二病でも拗らせたのかよと言いたくなる内容ばかりだ。

 

所詮は一度敗北した魔王の血族。そしてその日から身を焼き焦がすほどの憎悪を宿していたにもかかわらず、『何一つ』その努力をしてこなかったこいつらにテロリストたる資格なんてない。だから噛ませ犬になる。

 

「ッ。何かおかしいかしら?お嬢さん?」

 

「ああ、おかしいな。世界の変革だと?笑わせる。変革すべきはお前達の脳みその方だ」

 

悪魔だから負の感情に溢れた世界を作ろうだなんてのが、そもそもの間違いだ。平和より尊いものなんて存在するはずがないだろう。

 

俺の宣言にアザゼルが腹を抱えて大笑いした。

 

「ははははは!確かにな!違いない!お前らの目的は陳腐で酷すぎんだよ。レヴィアタンの末裔、お前の台詞。一番最初に死ぬ敵役のそれだぜ?」

 

「貴方達はどこまで私達を愚弄する!」

 

カテレアは激怒し、全身から魔力のオーラを迸らせる。

 

うん。やっぱり恐怖を感じない。寧ろ心地よさすら感じる………何故だ?

 

「サーゼクス、ミカエル。俺がやる。手を出すんじゃねえぞ」

 

アザゼルが立つ。体には薄暗いオーラが立ち始めた。

 

「カテレアちゃん……」

 

「忌々しい偽物のレヴィアタン。この男を殺した次はあなたの番です。あなたを殺して、私は魔王レヴィアタンとなる。真の魔王として」

 

カテレアはセラフォルーを一瞥した後、アザゼルの方へと向く。

 

アザゼルは窓の方へと手を向けると、そのまま窓際全域を吹き飛ばした。おいおい、普通に出ていけよ。

 

「旧魔王レヴィアタンの末裔。『終末の怪物』の一匹。相手としては悪くない。カテレア・レヴィアタン。俺といっちょハルマゲドンでも洒落込もうか?」

 

「望む所よ、堕ちた天使の総督!」

 

ドッ!

 

アザゼルとカテレアがこの場から飛び立ち、校庭の遥か上空で光と魔の攻防戦を繰り広げ始めた。

 

どちらも凄まじいオーラの質量だ。次元が違いすぎる。

 

そこへサーゼクスが私達へ告げる。

 

「リアスとソーナ、そしてその眷属達。私とミカエルでこの学園を覆う結界を強化し続ける。アザゼルとカテレアが暴れる以上、被害は大きくなるかもしれない。出来るだけ外へ被害を出したくないからね。悪いのだが、グレイフィアが魔術師転送用の魔法陣の解析が済むまでの間、外への魔術師達を始末してくれないか?」

 

「魔王様直々の命令とあらば」

 

「断るはずも出来ません。光栄の極みです」

 

リアス部長とソーナ会長はそう言って承諾した。

 

「ところで大神智代さん。体調はどうかね?」

 

体調?……そういえば。

 

「ここに来て随分マシになっている。本来ならば、そろそろ意識が朦朧として来るはずなのだが……」

 

寧ろこれ以上にないくらい目が冴えている。今までの眠気が嘘みたいだ。

 

「ふむ。ひょっとすれば、神器も使用できるのではないかね?」

 

「な⁉︎」

 

サーゼクスは顎に手を当てて、提案してくると、イッセーが驚きの声を上げた。

 

「ちょっと待ってください!サーゼクス様!確かに今は元気そうですけど、智代はつい昨日までマトモに生活することすら困難だったんです。神器の使用なんて……」

 

「イッセーくん。私は何も彼女を戦わせようという訳ではないよ。ただ、私の見立てが正しいなら、彼女はもう神器を使用しても何ら問題はないはずだよ」

 

サーゼクスの言葉にふと、少し前のアザゼルの台詞を思い出した。

 

確かこの会談が終わった後くらいからは今までよりもかなり元気になるんだったっけ?もしや、サーゼクスも同じことを言っているのではなかろうか。

 

どれ、試しに外にいる奴らに向けて神器を………ん?

 

「?どうした、智代?やっぱり神器は……」

 

「違う。なんというか……」

 

上手く制御出来ない。取り敢えず今まで通り、腕に力を込めてそのまま横に薙いだ。

 

すると………

 

魔術師達がいる校庭に横一直線に今までとは比較にならないほどの氷柱が出来た。無論、魔術師達をまるごと凍らせてだ。ついでにヴァーリも………あ、出てきた。

 

ていうか、凄い威力だ。感覚的にはレイナーレを殺した時よりも力を込めてなかったのに、威力はライザーの眷属を丸ごと凍らせてリタイアさせた時よりも高い。回復っていうか、強化されてる。

 

「ハハハ!なんだよ、ありゃ!予想以上じゃねえか!」

 

「ッ⁉︎転移魔法陣ごと凍らせた?まさかあのお嬢さんも神滅具所有者……!」

 

俺の起こした出来事にアザゼルやカテレアも手を止めて見ていた。

 

というか、驚いていないのはヴァーリくらいだな。全力でアザゼルの元へと向かっている辺り、今から仕掛けるってことだろうな!

 

「やらせるか!」

 

俺は手を上げて、振り下ろす。

 

すると上空から鋭い氷柱が降り注ぐ。

 

それは所狭しと空を埋め尽くす程の物量で校庭にいるもの全てに降り注ぐ。

 

………ヴァーリどころか、アザゼルとカテレアも巻き込んで。

 

ドドドドドドドドドドッ!

 

降り注ぐ氷柱は転移してきた魔術師達もついでに始末し、校庭に突き刺さる。

 

数十秒にも及ぶ氷柱による絨毯爆撃の後、校庭は見渡す限り、氷柱で埋め尽くされていた。

 

結論から言おう。加減を間違えた。

 


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