幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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ドラゴンを宿す者

「では、俺はこれで。魔王主催のパーティーには俺も出席する。また会おう、兵藤一誠」

 

グレモリー本邸前。俺はタンニーンのおっさんの背中に乗って、帰ってきた。ドラゴンの背中というのは快適で圧倒的だった。短い空の旅行だったけど、最高だ。

 

「うん。おっさんありがとう!パーティーでまた!」

 

『すまんな、タンニーン。また会おう』

 

「ああ、俺も楽しかった。あのドライグに協力したのだからな。長生きはするものだ。そうだ、俺の背に乗ってパーティー入りするか?」

 

「本当に?いいの?」

 

「ああ、問題ない。俺の眷属を連れて、パーティー開催日にここへ来よう。詳しくは後でグレモリーに連絡を入れる」

 

おっさんは本当に話のわかるドラゴンだ。今から楽しみだなぁ。

 

「タンニーン殿。今回はイッセーをご指導していただいて感謝している」

 

「なに。俺も赤龍帝を鍛える良い経験が出来た。この半月の間はなかなか貴重な時間だった」

 

出迎えてくれた智代がそう言うと、タンニーンのおっさんがそう返した。

 

なんかこの構図だと智代は俺のお母さんかお姉さんみたいだ。もしくは冥界だから主さまかのいずれか。とにもかくにも、なんだかむず痒い。

 

……と、タンニーンのおっさんが飛び立とうとして、再度智代の方を見た。

 

「……何処かで見た事があると思えば……その銀髪と容貌、あの者の面影があるな。いや、生き写しと言っても良い」

 

「?なんの事だろうか?」

 

「いや、こちらの話だ。皮肉なものだな、ドライグ」

 

そうだけ言い残すとおっさんは翼を広げ、飛び去っていった。

 

「なぁ、ドライグ。おっさんがさっき言ってたのって……?」

 

『……さあな』

 

少し間をおいて、ドライグははぐらかすようにそういった。タンニーンのおっさんとドライグは時々、俺のよくわからない話をする。多分、昔のことなんだろうけど………そのうち話してくれるかな。

 

「やぁ、イッセーくん」

 

聞き覚えのある声に振り返るとーーそこにはボロボロのジャージ姿の木場がいた。

 

イケメンフェイスがさらに引き締まっている……人間界に戻ったらまた祭りだな、これ。

 

「どうだった?ドラゴンに追いかけ回される気分は?」

 

「最悪だったよ………お陰で強くなれたけどな」

 

「祐斗はまた動きに隙がなくなったように見えるな」

 

「師匠が厳しい人だからね」

 

そう言って木場は苦笑する。確かに言われてみれば、更に隙のない佇まいになったような気がしなくもない。

 

「おー、イッセーに智代に木場か」

 

今度は女の子の声。声からしてゼノヴィアなのはわかるけど………包帯がぐるぐる巻かれていて、一見誰だかわからなくなっていた。

 

まるでミイラのようだ。

 

「お、おまえ、なんだ、その格好?」

 

「うん。修行して怪我して包帯巻いてを繰り返していたらこうなったんだ。我ながら、手先が不器用でね」

 

「いや、不器用ってレベルじゃねえだろ⁉︎」

 

「ゼノヴィア。こちらへ来い。私が巻き直してやる」

 

「済まないな、智代」

 

出会った頃は智代と同じくらいのクールキャラだったのに、いざ眷属になって蓋を開けてみれば、アーシアと同じくらいに世間に疎いし、俺よりも脳筋傾向にあるんだから、よくわからない。

 

けど、身に纏うオーラは以前よりも静かで厚みがあるように見える。木場とは違うけど、強くなってるのは確か……あれ?そういえば、なんで俺はそう言う判断ができてるんだ?今までは雰囲気とかで判断してたのに。

 

あれか?冥界の自然と一体化したからか?魔力に対して感覚が鋭敏になったとか。

 

「イッセーさん!木場さん、ゼノヴィアさんも!」

 

城門から出てきたのは、シスター服のアーシア。そういえばアーシアもグレモリー本邸での特訓が中心だったっけ。

 

「アーシア、久しぶり」

 

「はい。お久しぶりです。皆さん、お元気そうで何よりです」

 

そう言ってにこっと嬉しそうに笑う。

 

なんていうか、こうして久々に会うとアーシアのオーラに癒される……なんていってもドラゴンに追いかけ回されていたから、素直な優しさが心に染みるもいうものだ。

 

「?どうした、イッセー。その物欲しそうな目は?」

 

その点、うちの幼馴染はあまり労いの言葉とかはかけてくれない。いや、なんというか、そこには言葉なんていらないくらいの信頼関係があるからって意味なんだけど、言葉があったほうが嬉しいのも事実だ。

 

「あら、外出組は皆帰ってきたみたいね」

 

「部長。只今帰りました」

 

「皆、随分逞しくなったわね。顔つきやオーラを見ればわかるわ」

 

俺達を見回して部長は言う。自分のはあまりわからないから、こうして他人から言ってもらえると成果が出ているのを確認できて嬉しい。

 

「さて、皆。入ってちょうだい。シャワーを浴びて着替えたら、修業の報告会をしましょう」

 

それはさておき、久々に文化的な生活を送れそうなことに心底ホッとする。

 

俺の修業の成果。皆に教えてやるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達グレモリー眷属が全員集合したのは実に二週間以上ぶりだった。

 

アザゼル先生から修業プランを貰った後、俺はドラゴンに連れ去られたけど、皆もあの後解散して、一部の人間以外はそれ以来の解散となる。

 

外で修行していた俺、木場、ゼノヴィアの三人はシャワーを浴びてから着替えた後、俺の部屋へ。部長の部屋が良いと思ったのだが、何か問題があるらしい。

 

で、集まって修行内容を話していた。木場は師匠と修業顛末。ゼノヴィアもデュランダルをより正確に強く扱えるように修業を、俺もタンニーンのおっさんとのサバイバル生活を話したのだが、軽く皆引いていた。だって、木場やゼノヴィアは外で修業していても、野宿したり、動植物をハンティングしてたりはしなかったのだから。

 

「……先生。俺だけ生活酷くないですか?」

 

「俺もお前が山で生活できてたから驚いたよ。肝が据わってるとは思ったが、普通に生活を送っているとは思わなかった。予想以上の適応力だ」

 

「……………」

 

泣いていいですか?

 

いくら強くなるためだからって人権を無視して良いわけじゃないんだ!てっきり俺はそれすらも修業の範囲だと思って、自分を納得させてきたのに!あんまりだ!

 

「智代。慰めておあげなさい。今回ばかりはイッセーがあまりにも不憫だわ」

 

「……済まないな、イッセー。これもイッセーの為だと思って、何も言わなかった」

 

「いや、いいんだよ……本当に」

 

強がってはみるものの、優しさと同情の混じった智代からの頭ナデナデが心に染みる。これが人の温もりか。最近は人というか、火の熱さしか知らなかったから、思わず涙が出そうになる。

 

「まぁ、恐るべき適応力なのはともかくとしてだ。これで禁手になっても鎧を着ている時間は格段に伸びたはずだ。今の苦労が、後々になって身を結ぶんだ。悪いことじゃないだろう?」

 

……そう言われればそうだけど……先生に言われるとイマイチ納得が出来ない。

 

「さてと、報告会は終了だ。明日はパーティー。今日は疲れを取るために解散しろ」

 

先生の一声に報告会は終了した。

 

こうして、俺のサバイバル生活は完全に終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の夕刻、俺は駒王学園の夏の制服に身を包んで客間で待機していた。今日はパーティーだから、半日たっぷり寝た。おかげで大分疲れは取れた気がする。

 

久々に制服を着たけど、やっぱりしっくりくるなぁ。

 

一応、グレモリーの紋様付きの腕章をつけて俺はOKらしい。本当なら今のうちに正装も着こなせるようになっておいたほうがいいらしいんだけど……俺は山籠りが長すぎたせいで、合わせる時間がなかったらしい。

 

女子は着替えに準備がかかるとの事で、智代も含めて連行されていった。

 

あの時の智代の「何故私まで」という顔は忘れられない。完全に今回も部外者だろうと決め込んでいる顔だった。

 

「兵藤か?」

 

聞き覚えのある声に振り返ればーー匙がいた。

 

「あれ?会長達は?」

 

「リアス先輩と会場入りするってんでついてきたものの、先輩に会いに行っちまったもんだから、適当に歩いてたら、兵藤を見つけたってわけだ」

 

そう言って俺から少し離れた席に座る匙。よく見ると、匙も雰囲気が変わった?なんとなくだけど、ドラゴンのオーラが増したような気がする。

 

「もう直ぐゲームだな」

 

「ああ」

 

「俺は俺なりに死ぬ気で鍛えたつもりだけどよ………兵藤。一目見てわかったぜ、今のお前は俺よりもずっと強い」

 

真剣な面持ちで匙は言う。

 

別に俺はそれを否定しない。自惚れや慢心に聞こえるかもしれないが、事実だ。禁手になれば俺は並の悪魔なら圧倒できるとおっさんも言っていた。

 

しかし、匙は好戦的な笑みを浮かべて言う。

 

「けどよ。勝敗は別だぜ。あの、融通の利かない頑固頭の主様の夢は、きっと俺達だけじゃなく、今の悪魔達も望んでる。差別やら伝統やらを優先するクソみてえな世界だから、誰かが変えてやらねえとダメだ。ゲームは誰にでも平等じゃなきゃいけない。そう言ったのは今の魔王サマ達だぜ?なのに、未だにあんなクソジジイ共が我が物顔で居座ってるっつーことに俺は納得いかねえ」

 

匙の真剣な意見に俺は驚きとともに感嘆していた。

 

匙も匙なりに将来を真面目に見ているんだ。口は悪いし、一見不真面目そうだけど、匙も本当に会長を慕っていて、慕っているからこそ、あの時お偉いさん方に噛み付いたんだ。

 

「あの会長サマはそれをなんとかしてぇっつってた。実力さえありゃ、才能も血統も関係ねえって事を伝えたいってな。そのために人間界で勉強してるんだと。あの馬鹿真面目な会長サマらしいぜ。だから俺は……いや、俺達はそれを支える。そこで先生になってくれねえかって会長サマにも言われたよ。こんなヤンキー崩れに先公になれって何考えてんだか、なんて思ったけどよ。ま、それも悪くねえかって最近思い始めてきたよ。今までは親にも周りの奴らにも迷惑ばっかかけてきたけどよ、そういう経験持ってる先公っつーのもアリだろ?あんな馬鹿正直に夢に向かって突っ走られると見捨てらんねえしな。今んところはあの会長サマの夢を叶えることが俺にとっての目標で、俺なりの恩返しなんだ。あの人には色々借りがある。それを返さねえってのは流儀に反するからな」

 

それが匙の夢ーーいや、目標か。

 

俺は……まだそういう夢みたいなものはない。

 

部長に助けられて、俺はこうして生きていて、助けてくれた部長の為に頑張っているけど……。

 

「ガラじゃねえ……って思うだろ?」

 

「そんな事ねえよ。立派な目標だと思うぜ、匙。良い先生になれよ」

 

「ま、その為に目下お前ら倒す事が目標だけどな。首洗って待っとけ、赤龍帝」

 

「ああ。でも勝つのは俺たちだけどな!」

 

お互いに笑いながらも瞳は真剣そのもの。

 

そうさ。例えどんな理由があっても、負けるわけにはいかないんだ。

 

「イッセー、お待たせ。あら、匙くん来ていたのね」

 

振り向くとーードレスアップした部長達!

 

凄い!皆、化粧してドレス着込んで、髪も結ってる!

 

皆お姫様みたいで可愛い。なんでギャスパーも着てるのかはスルーだ。

 

……あれ?そういえば。

 

「部長。智代の姿が見えないんですが……」

 

「あら。まだ恥ずかしがっているのかしら。智代、折角着替えたのだから、こちらに来なさい!」

 

そう言って部長が後ろを見て、智代の名前を呼ぶ。

 

すると、ひょっこりと智代が頭だけを出した。

 

「……どうしても行かなければならないのだろうか」

 

「当たり前よ。貴方も将来的に私の眷属となるのだから、わざわざ次回に持ち越す必要はないもの」

 

「うう……了承した」

 

そういうと、智代が扉の影から姿を現す。

 

それを見た瞬間、俺は言葉を失った。

 

部長達同様に西洋ドレスを着て、長い髪を後ろで結っている。

 

その姿はまさしくお姫様。日頃のクールな印象でかっこいい幼馴染の姿はどこにもなく、そこにあったのは深窓の令嬢を思わせる美しさを感じさせる一人の女の子だった。

 

「どうかしら?似合ってると思わない?イッセー」

 

「………」

 

「な、何か言ったらどうだ、イッセー」

 

「………………………あ、ごめん。見惚れてた」

 

って、何言ってるんだ、俺ぇぇぇぇ⁉︎

 

完全に思考がとんでた。

 

言ってる事は本音だけど、こんなストレートに言ったら智代に蹴飛ばされる。

 

だって、今も俯いて肩を震わせてるし、耳まで真っ赤になって。

 

「良かったわね、智代。着た甲斐はあったでしょう?」

 

「……そんな事はない。恥ずかしいだけだ」

 

「へぇ〜、随分似合ってるじゃねえか、大神。日頃からお前もそうしてりゃ……げふっ⁉︎」

 

「うるさい。誰がこんな恥ずかしい格好をするものか」

 

あ、何時もの智代に戻った。

 

さっきの表情も可愛かったけど、やっぱりこれが一番智代らしいかも。

 

「サジ。何を遊んでいるのですか?」

 

腹部に膝蹴りをくらい、悶絶している匙に同じくドレスアップしているソーナ会長は怪訝そうに見ていた。

 

「タンニーンさまとそのご眷属の方々がいらっしゃいました」

 

ちょうどその時、執事さんが来て、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

庭に出てみると、圧巻の一言だった。

 

タンニーンさんと同じサイズのドラゴンがタンニーンさん含め十体程。ドラゴンだけで形成されている眷属というのも悪くなさそうだ………。

 

「約束通り来たぞ、兵藤一誠」

 

「ありがとう、おっさん!」

 

「お前達が背に乗っている間、特殊な結界を背中に発生させる。それで空中でも髪や衣装やらが乱れないだろう。女はその辺大事だからな」

 

そういうとタンニーンさんが私の方を見て「ほう」と声を上げた。なんだ?

 

「リアス嬢も美しい限りだが……そちらも見目麗しい」

 

「お褒めにあずかり光栄の極みだ………しかし、そういうのは恥ずかしいのであまり言わないでほしい」

 

いや、本当に恥ずかしいです。さっきは匙が茶化してきたおかげで何とか気を持ち直したものの、イッセーの所為で、恥ずかしさに身悶えしそうだった。

 

「ふむ。そういう所は違うのか。まあいい。リアス嬢、そちらにいるソーナ嬢とその眷属の者も連れて行けば良いのだろうか?」

 

「ええ。お願いするわ」

 

かくして私達はドラゴンの背に乗り、冥界の大空へと飛び出した。

 

イッセーはタンニーンさんの頭の上に乗り、他の皆は別々のドラゴンの背にのる。

 

かくいう私もイッセーとは別のドラゴンに乗っている。さっきの今でイッセーと同じ場所にいるのはなかなか辛い。

 

「どうッスか。ドラゴンの上から見る景色は?」

 

「絶景だ。人間のまま冥界に来ることもそうだが、生きているうちにドラゴンの背中に乗って空を旅するというのは貴重な経験だ。この度は本当にありがとうございます」

 

「いやいや、自分も人間の可愛い女の子を乗せられて嬉しいッスよ。それにお嬢さんを乗せてると、何時もより心地良いッス。ゲームで初めて勝った時みたいな感じッスね」

 

そういうと私を乗せていたドラゴンは鼻唄を歌い始めた。

 

成る程、ドラゴンが相手でも『大神』の力は発動しているのか。

 

「そういや、自分がまだ子供だった頃に不思議な話を聞いた事があるッス」

 

気分を良くしたドラゴンは不意に昔話を語るように言い始めた。

 

まあ、特にすることもなかったし、昔話はそれなりに気になる。

 

「どのようは話なのだろうか?」

 

「その昔、またあの三大勢力が大きな戦争を始めて間もない頃ッス。基本的に他種族の争いは不干渉のドラゴンなんスが、交換条件の元に悪魔や堕天使に加担するドラゴンもいたんス。そうなると当然、悪魔や堕天使は勢いを増して、天界は早くも劣勢に立たされた訳なんスが……」

 

「何かあったのか?」

 

「どういう訳か、ドラゴン達は天界に攻め込む事だけは出来なかったんス。それどころか、ある時を境にドラゴン達は天界だけは攻め込む事を良しとしなくなったんスよ。そしてちょうどその時に流れた噂がーーーー『龍の巫女』ッス」

 

「『龍の巫女』?」

 

初めて聞いたな。いや、別に元々そちらの素性に対して詳しいわけではないので、知らないのも当然だが……。

 

「なんでもその人はどれだけ凶暴な龍もその歌声で鎮めたそうッス。タンニーンの親分は交換条件で悪魔に転生してたッスから、出会ったことがあるらしいんスけど、その人の唄を聞くだけで闘争心やらを全部奪われたらしいんスよ」

 

「……凄いな、その人は。何か特殊な能力を持っていたとか?」

 

「それもあるらしいんスけど、その唄には何より優しさに溢れてたんだとか。噂じゃ、あの二天龍や邪竜ですら、その人のいる場では争う事をしなかったらしいッスけど……戦争の結果は知るところ。本当にそんなことが出来たのかはわからないッス。自分も一度聞いてみたかったんスけどね〜」

 

二天龍や邪竜すらも?なんだそれ。殺せはしないけど、完全なドラゴンキラーじゃないか。

 

しかし、唄か。あまり人前では歌わないし、歌っても結構ノリノリな歌が多いしな。それに半分くらいはアニソンだし。

 

女になってこれだけは非常に感謝している。好きなアニソンの大半が女性曲だったので、男だった頃は歌えなかったものも、バリバリ歌える。もっとも、見た目に反して歌う曲が曲なのでイッセー以外が相手だと確実に最初は驚かれるが………うん?

 

「唄か。即興で良いなら、私でも構わないが」

 

「おっ、良いッスね。可愛い女の子の唄を聴きながら空の旅。映えるッスね〜」

 

「〜〜〜〜♪」

 

なんとなく、それらしいものが浮かんだので、試しに歌ってみる。

 

歌といっても歌詞はない。こうなんというかメロディーだけみたいなやつだ。

 

しかし、メロディーだけだと思っているのに、それには何か深い意味がある……ような気がする。

 

まさかここに来て私の才能が開花したのか?それは素晴らしい。

 

気分も上がってきて、気持ち良く歌っていた私だったが……不意にドラゴンの身体ががくりと傾き、持ち直す。感覚でいうなら、座ったまま寝ようとして、身体が落ちそうになってから目が醒めるアレのような感じだ。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ごめんなさいッス。よくわからないんスけど、なんだか急に眠気がしてきたんス」

 

「寝不足なのか?」

 

「いや、そういう事は無いんスけど……なんだか、お嬢さんの唄を聴いてたら、妙に和んじゃって……」

 

私のせい……なのか?一応。

 

「これは済まない。歌うのはまた今度にさせてもらうとする」

 

「その時は親分や他の眷属の皆も一緒にお願いするッス」

 

「そのくらいはおやすい御用だ」

 

そうやって雑談しているうちに眼下に光明が広がってくる。

 

どうやら、会場となる場所へ着いたようだった。


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