幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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久しぶりの連続投稿です。

つい気合いが入って書ききってしまいました。

皆様がご期待されているような展開になるかはわかりませんが、面白いと思っていただけると幸いです。


漢の意地

ガンッ!

 

鈍い音がして、俺の身体は軽く後ろにのけぞった。

 

「はっ!相変わらず良いモン持ってやがるぜ、兵藤!」

 

お返しとばかりに俺は兵藤のボディーに拳を叩き込む。

 

「お前もだよ、匙!でも、こんなモンじゃねえよな!」

 

「当たり前だろうが!」

 

お互いに拳を強く握り、相手をぶちのめさんが為に只管拳を振るい、足を使う。

 

レーティングゲームなんてのは俺達にとっては名ばかりのものだ。今の俺達がやってるのは純粋な喧嘩。ルール無用。勝った方が強い。ただそれだけのシンプルなモンだ。

 

「おらぁっ!」

 

「甘え!」

 

兵藤の足払いを跳んでかわし、そのまま回し蹴りを顔面めがけて放つ。

 

すんでのところで防がれたが、それでも遠心力に俺の全体重の乗った蹴りは重かったらしく、兵藤は近くにあった店舗に吹き飛んだ。

 

「どうした、兵藤。あれは使わねえのか?」

 

「……『赤龍帝の鎧』にはなるのに時間が少し必要なんだ。その間は倍化出来ない」

 

「なんだ、てっきり手を抜いてんのかと思って、キレそうだったぜ」

 

「お前相手にそんな事、出来るかよっ!」

 

勢いをつけて、飛び蹴りを放ってくる兵藤。

 

俺はそれを紙一重で躱し、頭を掴んで、そのまま床に投げつける。

 

「まだまだぁっ!」

 

「ごはっ!」

 

だが、兵藤は両手で受け身を取ると、全身のバネを使って、そのまま俺の顎を蹴り上げる。

 

「こ……れならどうだっ!」

 

俺はよろめきながらも、兵藤の足を掴み、そのまま投げ飛ばす。

 

ここからだ。俺が人間のままなら出来なかった事で、悪魔になったから出来るようになった事があるのは。

 

俺は右手にハンドボールサイズの魔力の球体を作り、そのまま兵藤目掛けて投げる。

 

「ッ⁉︎」

 

空中では流石に身動きが取れず、兵藤に魔力の球体は直撃……したかに見えた。

 

「あ、危ない危ない。後、ほんの一瞬でも遅れてたら、やばいダメージ貰ってたぜ」

 

魔力の爆発で起きた煙の中から現れたのは、全身に鎧を纏った兵藤。

 

あれが禁手か。こうして敵対すると、絶対に相手にしちゃいけねえ奴だってのがよくわかる。冷や汗が止まらねえ。

 

だが、武者震いも半端ねえ。これからようやく、俺と兵藤の真剣勝負が出来るんだからなぁっ!

 

「ここからが本番だぜ、兵藤ォ!」

 

俺は兵藤に接近し、拳を叩き込む……が。

 

「ちっ、なんつー硬さだよ。全然効かねえじゃねえか」

 

「まあな。これが俺の全力だ。受け取れ、匙!」

 

振り抜かれた拳はさっきよりも圧倒的に速かった。

 

咄嗟に腕を交差してガードし、後方に跳んでクリーンヒットを避けるが、完全には殺せず、俺は吹っ飛ばされた。

 

あれだけの事をしても、軽いジャブみてえなパンチでこの威力かよ……トラックにでも撥ねられたのかと思ったぜ。

 

「さあ、来いよ、兵藤。これは俺とお前が望んだ喧嘩だ。力の差なんて関係ねえ。例え、てめえが神をブッ殺せる力を持ってて、俺にはそんな大層なモンが無かったとしても!俺はてめえをぶっ倒すぜ!兵藤!」

 

それに俺だって、何の考えもなしにあいつの前に立ってるわけじゃねえ。こっちにも考えくらいはあるんだよ!

 

「おおおおおおおおおっ!」

 

心臓に繋がるラインから、右腕に魔力を集中させる。元々、俺には魔力の才能が欠片しかない。なら、足りねえ分は気合と根性で補う。それでも足りねえなら生命だ。

 

「ッ⁉︎匙、それは……!」

 

俺の右腕が纏っている黒い炎(・・・)をみて、兵藤は驚きの声を上げた。

 

「どうよ?俺が一日に一発だけ使える。とっておきだ。全魔力をヴリトラの黒炎に変換して撃つ一撃。もちろん呪いをたっぷり含んでる。直撃すりゃ、生命の概念がねえ奴ですら、呪いに侵食されるぜ。……これを受け切れるか、兵藤?」

 

「ああ、来いよ!」

 

はっ!受け切れるかって聞いて、受け切るって答える馬鹿野郎はお前ぐらいだよ、兵藤。

 

だからこそ、俺は、俺しか知らないこの一撃をお前を信じてブチ込めるんだ!

 

「行くぜ!邪王炎殺黒龍波ぁぁぁぁぁ!」

 

俺の右腕から放たれた巨大な黒炎は、龍の形となり、兵藤目掛けて突き進んでいく。

 

兵藤は逃げない。逃げても当然追いかけていくが、そんな事を知らなくても、兵藤は避けなかった。

 

「受け切るぞ、ドライグ!」

 

『おうっ!』

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

俺の黒龍波は兵藤に当たると、その呪いの炎で相手を飲み込もうと突き進んでいこうとする。

 

だが、数メートル退いたところで、完全に兵藤は止まり、徐々に押し返し始めた。

 

は、はははっ……マジかよ。まさか、俺の必殺技もあっさり受け止めやがるなんてよ。

 

「お、おおおおおおりゃぁぁぁぁ!」

 

バシュンッという音と共に黒龍波は兵藤から外れ、俺の元へと向かってきた。

 

そう。この黒龍波は俺がネタにしたものと同様で、防がれれば放った者に帰っていく。

 

そして防がれた今、黒龍波はその膨大な力を俺へ目掛けて突っ込んでくるんだ。

 

だがそれでいい。俺の黒龍波の真骨頂はそれにある。

 

魂までも焼き尽くしそうな黒炎。それを真正面から受け止め、ラインから再度吸収。一度はヴリトラの黒炎として放ったものを、再度魔力として全身に漲らせる!

 

「ふぅ……よし、なんとか成功したってとこだな」

 

「ッ!何をしたんだ、匙⁉︎」

 

「なんて事ねえよ。ただ、もう一回同じ容器に閉じ込めただけだ。俺の魔力だからな、やってやれねえ事はねえ。そのお蔭で……」

 

ダンッと床を蹴り、今までとは比にならない速度で詰め寄り、兜越しに顔面を殴る。

 

兜は壊せない。だが、わかるぜ。兵藤。

 

確かに、この一撃がてめえに対してダメージになってるって事がよ!

 

思い切り殴り抜くと、今度は兵藤が吹っ飛んだ。

 

数メートル後方へと吹っ飛んだ後に受け身を取り、そのまま立ち上がる。

 

「ゲホゲホッ!なんだ…急に匙のパワーが上がったぞ、ドライグ⁉︎」

 

『俺にも原理はわからん。だが、あの小僧は一度はなった魔力を再度吸収する事で魔力を除く全ての能力を爆発的に向上させているようだ。今のところ、瞬間的な攻撃力こそ劣るが、相棒に匹敵する力を得ている』

 

「兵藤。お前も知ってるだろう?『黒龍波は単なる飛び道具じゃない』だぜ?」

 

「そういえばそうだな。じゃあ、条件が対等になったところで……」

 

「おう!続きをやろうぜ!」

 

俺達は再度お互いに詰め寄り、そこから一歩も引かない殴り合いを始める。

 

条件が対等になった……か。

 

いや、俺のこれはそんなに使い勝手のいいもんじゃない。

 

確かに能力は上がる。これなら最初のうちに使えば、兵藤を圧倒出来ただろう。

 

だが、それは俺に返ってきて初めて意味を成すものだ。

 

おまけにこれは……ヴリトラの黒炎は例え放った本人だろうが、容赦なく身を焦がし、魂も燃やす。

 

体力を大きく消費する上に俺自身の身体は急激な負荷がかかり、一発一発の攻撃で体中が悲鳴をあげる。

 

そして今、俺は炎の中にいるように身体の内側から燃え滾っている。

 

本来なら闘いどころの騒ぎじゃねえ……が、それでもそんな事など御構い無しにやりあえているのは、この言いようのない高揚感と、絶対に負けられねえっていう男の意地だ。

 

「ごふっ!」

 

何十回目になるかわからないやり取りの中で俺の腹に入った兵藤の拳に、俺は口から血の塊を吐いた。

 

チッ、内臓がやられたか。でも、まだまだだ!こんなのじゃ、この程度じゃよ!

 

「俺は倒れるわけにはいかねえんだよ!」

 

バギンッ!

 

俺の左拳がついに兵藤の兜を壊した。そして兵藤の額からは血が流れているが、俺は構わずに続ける。

 

「あの会長サマはアホみたいに真面目で、その癖時々訳のわからないところで抜けてるとこがあるような変わった人だ!はっきり言って、俺は会った時から苦手だったけどよ!それでもあいつが掲げてる目標を聞いた時、俺は心底尊敬した!俺みたいなどうしようもねえヤンキーなんかを眷属にして、正気じゃねえとすら思ったけど、それでもあいつが掲げた目標を笑うのだけは許さねえ!何も知らねえ奴らに!ソーナ・シトリーの抱いた夢を笑う資格なんてねえんだ!」

 

「ああ!わかってるよ!だからお前は俺と闘うんだろ!」

 

「そうだ!俺個人として闘いたくもあった!だが、俺が赤龍帝を真っ向から倒せば、あの老害共だって黙るからな!」

 

俺個人の意思を抜きにしても、赤龍帝だけは同じ新人の『兵士』として、倒さなきゃならなかった。同じ時期に悪魔になりながら、フェニックス、堕天使の幹部、そして白龍皇を倒した赤龍帝を倒したとなれば、その『兵士』を持つ会長の評価に繋がる。

 

なら、俺は兵藤を倒すまで!倒れるわけにはいかねえのよな!

 

それが、俺があの会長サマにしてやれる唯一の恩返しだからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇二年前◇

 

まだ兵藤や大神と出会う前の頃。

 

当時の俺は所謂不良を束ねるリーダーのようなものをしていた。

 

そんなものになるつもりはなかったが、一々口先だけの連中に絡まれるのも面倒で、特にする事もなかった俺はルールを作り、統制していた。

 

つっても、当然それに反発してくる奴らは出てきたし、闇討ちなんかにあった時は問答無用で全員をぶちのめした。

 

それがどいつの恨みを買ったかは知らねえ。

 

だが、殺したい程に憎んでたんだろう。そいつは……悪魔を呼び出した。

 

悪魔っつってもあまり悪業を働いてないものは人の形からかけ離れていねえって事を悪魔になってから知った。

 

当然、その時の俺が知るはずもなく、舎弟とゲーセンで遊んでる時にボコボコにされた。

 

死ぬ覚悟がなかったわけじゃない。その場にいた舎弟は全員逃したし、あっちも標的は俺だけってんで、見逃してくれた。

 

正直、俺は何もしてこなかった。生きる意味も見出せなかったし、その時その時を自由きままに生きてきた。

 

だから、そこで俺が死んだところで何も変わらないんだろうとタカをくくっていた。

 

そうやって、俺が何もかも諦めた時にあの人は現れた。

 

『他の悪魔の気配があるかと思って来てみれば、これは一体どういう状況なのかしら?』

 

『おい、ネーチャン!その服、駒王だな?とっとと逃げねえと殺されるぞ!』

 

『不要な気遣いです。年下に心配される程、柔な生き方はしていませんから』

 

俺の心配をよそに、いきなり現れたそいつは俺をボコボコにしていた男の目の前まで行くと、何やら話をしていた。

 

上手く聞き取れなかったが、少なくとも怯えていたのは俺をボコボコにしていた方だったのは確かだ。

 

数回やり取りをすると、男は一瞬光に包まれて、その場から消えた。

 

『大丈夫。立てますか?』

 

『あ、あんたら、何者なんだ?さっきの奴は人間じゃなかった……まさか、あんたみたいな綺麗なネーチャンまで、人間じゃねえのか?』

 

『さあ、それはどうでしょうね』

 

『はぐらかさないでくれ!あんたら、一体……』

 

『もし貴方が私と同じ学び舎に来る事があれば、その時に教えます。ちょうど私達の年から駒王は共学になりましたからね。名前もその時に』

 

微笑を浮かべ、それだけ言うとそいつは去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時からだ。

 

俺が明確な目的を持って動くようになったのは。

 

始めは駒王に入学するため、そしてその次はあの時救ってくれた人ーーソーナ・シトリーに会うため、そして今は俺を救ってくれた恩人を……俺が惚れた女の夢を叶えてやりたい!

 

「だから、俺は今日お前を越えていく!」

 

どれだけ俺の身体が壊れようが関係ねえ!俺が倒れるよりも早く、兵藤を倒す!

 

「俺だって倒れるわけにはいかない!そういう約束だからなあっ!」

 

「はっ!お互い苦労するよな!兵藤!俺達の勝利を待ってる奴がいて、それ全部背負って立ってんだからよ!」

 

「ああ!だからこそ、俺達は意地でも勝たなきゃいけないんだよな!」

 

右ストレートが俺の顔面を捉える。

 

そこでついに俺の身体の方にガタがきた。

 

体の芯がブレ、膝が折れそうになる。

 

やべえ……意識が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サジ』

 

『なんすか、会長。俺、今日はまだ何もやらかしてないんすけど』

 

『失敗する事前提で話を進めてはいけません。そもそも、貴方の場合はやればできるのですから、しっかりしなさい』

 

『ていってもなぁ。肉体労働はともかく、こういうのは苦手なんすわ。失敗すんのも癪だし』

 

『失敗を恐れてはいけません。それから学ぶ事もあります』

 

『いや、そうは言うけどよ……』

 

『最後まで聞きなさい。例え、失敗してもいい。負けてしまってもいい。ただ、その失敗や敗北の時にどれだけ前へ進めたか、一センチ、一ミリでも、前に進めば、それは無駄な行為ではなくなるのですから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、りゃぁぁぁ!」

 

飛びかかっていた意識を無理やり繫ぎ止め、頭突きをかました。

 

「なあ、匙。そろそろ終わりにしようぜ」

 

「ああ、俺もお前も、そろそろ限界だろうからな」

 

特に俺なんかは身体が攻撃のたびに自己崩壊をしている分、骨や筋肉がズタズタだ。兵藤とは訳が違う。

 

「「おおおおおおおおおっ!」」

 

最後の殴り合いは殆ど気合だけで行っていた。

 

叫んだのは、その勢いに任せていないと、拳が止まりそうだったから。

 

俺が拳を止めないのは、歩みが止まりそうだから。

 

歩みを止めるわけにはいかない。例え負けようが、それでも前に進むために。

 

何より、負けないために!

 

ゴッ!

 

ふと目の前が真っ暗になった。

 

何も見えねえ……身体から力が抜けていく。

 

何が起きたんだ?勝ったのか?負けたのか?何もわからねえ。

 

だけと、また腕にだけは力がこもる。

 

なら、何も見えなくても。何もわからなくても。

 

俺は………この拳を突き出すだけだ!

 

『ソーナ・シトリー様の『兵士』一名。リタイア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『リアス・グレモリー様の『兵士』一名。リタイア』


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