幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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体育館裏のホーリー
天の使いとアスタロト


夏が明け、既に新学期を迎えた今日この頃。

 

始業式もとっくに終えて、駒王学園は九月のイベント、体育祭の準備へと入っていた。

 

この時期になると一部の人間が非常に騒がしくなる。というのも、高校デビューならぬ夏デビューとやらをする輩がいるらしい。

 

一年の頃に比べれば少なくはあるものの、それでも今年もそういう人間はいるそうで、松田や元浜はそれらの情報集めに東奔西走しているらしい。

 

因みにイッセーもイッセーで始業式当日に松田や元浜に詰め寄られていた。それも仕方ない。イッセーは面倒見が良く、普通にかっこいい。モテない理由はないし、事実祐斗ほどではないにしてもモテているが、イッセー本人は知らないらしく、自分が非モテ側の人間と思っているらしい。

 

おそらくは裏で蔓延している『イッセーと私が交際している』という噂話が原因なのだろう。とても申し訳ない。

 

まあ、それはそれとしてだ。

 

今はそれよりも遥かに気になることがある。

 

それは次の部長達の対戦相手となるであろう上級悪魔ディオドラ・アスタロトの存在だ。

 

原作では生粋の上級悪魔の価値観と素晴らしい外道っぷりを見せたディオドラ。奴はアーシアをものにするために禍の団と手を組み、リアス・グレモリーとその眷属を抹殺しようとしていた。最初の接触は冥界から人間界に帰ってきた時だったような気がするのだが、冥界の遊園地で私とイッセーが出会って以降、ディオドラは一度も姿を見せてはいない。

 

何を考えているのかわからないが、襲ってくるというのなら叩き潰すまで……といいたいが、どうしたものか。事前に対策しようにもディオドラを警戒するに足る理由を見つけておかないと……いきなり禍の団と繋がっていると言っても不審がられるのは寧ろ私になるわけだし。

 

と、その時、クラスの男子の一人が急いで教室に駆け込んできた。む、何事だ。

 

「お、おい!大変だ!このクラスに転校生が来る!女子だ!」

 

その言葉にクラスの全員は一拍空けて………。

 

『ええええええええええっ!』

 

驚きの声を上げた。もちろん、私とイッセー以外。たかだか転校生で驚くか普通。

 

しかし、転校生というものには驚かなかったものの、その転校してきた人物にイッセー、アーシア、ゼノヴィアは驚き、私はそういえばそんな事もあったと思い出す事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫藤イリナさん、あなたの来校を歓迎するわ」

 

放課後の部室。オカルト研究部メンバーとアザゼル、そしてソーナ会長が集まり、イリナを迎え入れていた。

 

そう、何を隠そう転校生とは紫藤イリナだった。

 

天界からの支援メンバーとして、この地に派遣されてきたという理由だ。一応、天界からのバックアップは受けているものの、この地に天界の者はいなかったな。

 

「皆さん、お久しぶりです!天使様の使者として駒王学園に馳せ参じました!」

 

イリナの挨拶に全員が拍手をする。

 

相変わらず、元気だな。明朗快活というかなんというか、まあ、これはこれでイリナの良いところだ。

 

「ミカエルの使いって事で良いんだな?」

 

「はい、アザゼル先生。ミカエル様はここに天使側の使いが一人もいない事に悩んでおられました。現地にスタッフがいないのは問題だ、と」

 

「ああ、そんな事をミカエルが言ってたな。ここには天界、冥界の力が働いているわけだが、実際の現地で動いてるのはリアスとソーナの眷属と、俺を含めた少数の人員だ。まあ、それでも十分機能してるんだが、ミカエルの野郎、律儀なことに天界側からも現地で働くスタッフがいたほうが良いってんで、わざわざ送ってくるって言ってきてたのさ。ったく、ただでさえ、お人好しを超えたレベルのバックアップ態勢だっつーのに。強引に送り込んできやがって」

 

溜息を吐きながらアザゼルは言う。

 

「救いこそが私達天使の本懐ですけど、それ以前に災いの種を摘むのも役目でもありますから」

 

イリナが祈りのポーズを取ると、身体が光り輝き、背中から白い翼が生える。

 

それを見て、アザゼルがイリナに問う。

 

「紫藤イリナ。お前、天使化したのか?」

 

「はい。ミカエル様の祝福を受け、私は転生天使となりました。なんでもセラフの方々が悪魔や堕天使の用いていた技術を転用してそれを可能にしたと聞きました。四大セラフ、他のセラフメンバーを合わせた十名の方々は、それぞれ、エースからクイーン、トランプに倣った配置で『御使い(ブレイブ・セイント)』と称した配下を十二名従えています。ゆくゆくは悪魔のレーティングゲームの異種戦として悪魔と天使のゲームも見据えているとのことです。因みに私はミカエル様のエースです!」

 

そう言ってこちらに左手の甲を見せてくるイリナ。そこには『A』の文字があった。

 

「成る程。考えたな。代理戦争を用意してお互いの鬱憤を晴らそうって魂胆か」

 

命懸けで殺し合いをしてきた相手といきなり手を組んでも恨みつらみはあるのは当然だな。しかし、思うのだが、悪魔と天使。ゲームをしたらどう考えても悪魔の方が不利だと思う。光対策していないと多少の実力差は普通に埋まるどころか超えられてしまう。

 

「そのあたりの話はここまでにしましょう。今日は紫藤イリナさんの歓迎会なのですから」

 

「それもそうね。紫藤イリナさん。私達はあなたを歓迎するわ」

 

ソーナ会長とリアス部長が言うと、イリナは笑顔で頷いた。

 

その後、生徒会のメンバーも合流して、イリナ歓迎会が行わたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリナが転校してきて数日。

 

学園全体では体育祭の練習が本格的に始まっていた。

 

私のクラスも体操着に着替え、男女合同で競技の練習をしている。

 

イリナとゼノヴィアは早速駆けっこで人外スペックを生かして競い合っている。去年は走る系の競技に大体出場させられていたものの、あの二人のおかげで大幅カットとなった。感謝するばかりだ。

 

今年出るものといえば、全員参加物を除けば綱引き、障害物競走、騎馬戦、そして……。

 

「智代ー。二人三脚の練習しようぜー」

 

……何故か二人三脚である。

 

いや、去年も確かにイッセーと出場はしたが、原作ではアーシアとしていたはずだ。何故私と……などと思ったものの、桐生に『ほら、二人とも去年は息ぴったりだったし、勝つためには最善の手を尽くさないと』と言われた。これではぐうの音も出ない。

 

「今年も智代と一緒か。この調子だと来年も同じだな」

 

「なんだ、不満か?」

 

「不満なわけあるか。智代と一番息を合わせられるのは俺だけだからな」

 

…………こいつ、言うようになったな。

 

しかし、イッセーが言っていることもあながち的外れでもない。というか、真実だ。私とてイッセーに一番息を合わせられると自負している。

 

「お前ら、本当に仲良いのな。今回も二人三脚のペアか?」

 

と、私達に話しかけてきたのはメジャーなどの測定器を手に持った匙だった。

 

「ああ。勝つ為の最良の手段だ。そっちはどうだ?」

 

「俺も去年と同じで仁村と一緒だ。違うのは俺も悪魔として走れる分、去年みてえに足を引っ張らねえってとこだな」

 

「あー、そういえば去年は俺も匙も人間だったもんな」

 

「慣れってのは怖えよな。人間と悪魔の違いなんてなんだったのかもう忘れそうだ」

 

笑いながら、匙は言う。

 

悪魔と人間の明確な違いなんて、普通の生活じゃわかったものじゃない。怪我をしたり、力を使ったりすればよくわかると思うが、こうしていれば普通の人間と大差ない。

 

「ところで匙。その腕の包帯はどうした?」

 

「ん?ああ、これな」

 

包帯を少し外すと、そこには黒い蛇の紋様が幾重にも腕に現れていた。

 

「黒龍波の影響らしい。アレで俺の中のヴリトラが起きようとしてるらしくてよ。腕以外にも背中とか見えねえところに出てきてるんだよ」

 

「……呪われた可能性は?」

 

「ばっ、ちょっと気にしてんだから言うなよ。ヴリトラってそういう伝承が多いから、可能性がゼロじゃねえんだ」

 

イッセーの問いに匙は苦々しい表情で答えた。

 

「サジ、何をしているのです。テント設置箇所のチェックをするのですから、早く来なさい」

 

「我が生徒会はただでさえ男子が少ないのですから、働いてくださいー」

 

ソーナ会長と、副会長の真羅先輩が匙を呼んでいる。

 

「へいへい、わかってますよ」

 

頭をガシガシとかいて、気だるそうにそちらへと行ってしまう。

 

『ーーヴリトラか』

 

ふとドライグの声が聞こえた。

 

「どうした、ドライグ。こんなに人がいる時に急に」

 

こんなに一般人がいる時に出てくると、少し問題があるような気がするのだが……。

 

そう思っているとイッセーが首をかしげる。

 

「ん?智代にもドライグの声が聞こえたのか?」

 

「ああ。それがどうかしたのか?」

 

「いや、さっきのドライグのは俺の中で話しかけてきてるはずだったから」

 

「なに?」

 

そんな馬鹿な。確かに私にも聞こえた。

 

気のせい……というわけでもないだろう。あの声を聞き間違えるわけもないし、何か思い詰めるような事があるわけでもない。

 

……不思議な事があるものだ。

 

「まあいい。イッセー、練習をするぞ」

 

「そうだな。今年も勝とうぜ」

 

私とイッセーの足に紐を結ぶ。

 

既に他の何組か練習している男女がいるが、上手い人間と下手な人間の差はそこまでないが、強いて言うなら友達か恋人かぐらいの差だ。こういう男女共同を強いられる競技では、色々なお節介がついて回る。そうなると組まされている男女は大体友達以上恋人未満の者達が多い。

 

尤も、私達のような例外もいるわけだが。

 

「せーの、いち、に、さん、し」

 

……しかし、こうして密着して思う事があるが、去年と比べてイッセーは筋肉質になったな。

 

顔つきも良くなった。何度も死線を越えてきたからだろう。百戦錬磨とまでは言わないまでも、それ相応の経験をして、イッセーも戦士として風格を身につけたというか……あまり喜ばしい事ではないが。

 

イッセーは原作通り、どんどん強くなっている。いや、原作以上と言ってもいい。相手の性格や思惑の違い、そこから生まれる強さの違いの中でも、イッセーは負けなかった。相討ちはあったけど。

 

だが、果たしてこれを喜んでいいのか。

 

少し前までただの人間として生活ができていたのに、今では生きるか死ぬかの闘いに巻き込まれたり、そうでなくともボロボロになってしまうような状況に直面している。普通の人間ならまず経験することのない世界だ。

 

それをイッセーはどう思って………。

 

「うおっ」

 

「きゃっ」

 

がくん。

 

突然、体勢が崩れ、足を取られる。

 

倒れそうになったところで、イッセーが私の体を捕まえる。

 

「ふぅ……間一髪だった。大丈夫か、智代?」

 

「ああ、すまない。私のミスだ」

 

さっき悩むような事は特にないと宣っておきながら、すぐにその悩みの種を見つけてしまった。実に私らしくない。これを考えるべきは今ではない。今は競技に集中しないと。

 

………ところで。

 

「イッセー。助けてくれた事には感謝する。しかし、この手はなんだ?」

 

「へ?…………あ」

 

私が指差したイッセーの手は……見事に胸を鷲掴みにしていた。

 

「ご、ごめん!わざとじゃないんだ!」

 

言い訳をするものの、体勢が体勢だけにその手は離れない。ふむ、こういう時にイッセーもやはりラノベ主人公であると実感させられる。

 

「イッセー。歯を食いしばれ」

 

「は?え、ちょっと待った!流石に智代の蹴りはマズイって!」

 

「安心しろ。蹴りじゃない。殴り抜くだけだ」

 

「ああ、確かにそれなら……って、殴るじゃん!?」

 

「イッセー………セクハラは悪だ。悪とは罪だ。そして罪には罰があって然るべきとは思わないか?」

 

握りこぶしを作って答えると、イッセーは唸って、がくりと肩を落とした。

 

「……わかった。いや、今まで散々ラッキースケベなこともあったけど、これが普通なんだよな」

 

そういえばそうだったか。

 

今の今まで着替えの最中に訪問してこようが、ラッキースケベをしてこようが特に何もしてなかった事に気がついた。その度にイッセーには『貞操観念がヤバい』って怒られてたっけ……あれ?私が怒られるのか?

 

目をつぶり、罰を受け入れる姿勢になったのを見て………私は拳を軽く頭に落とした。

 

「智代?」

 

「今更こんな事で私が怒るわけないだろう。第一、狙ってしてきたのならともかく、事故なんだ。偶然起こった事に対して一々腹を立ててはキリがない。特にお前の場合はな」

 

「……言い訳できない」

 

「取り敢えず、再開するぞ。次はミスしないようにするからな」

 

「ああ、俺もミスしないように頑張るよ」

 

元々、コンビネーションはバッチリだ。さっきみたいに余計な事さえ考えなければ、スムーズに行えるはずだ。

 

私の予想通り、この後の練習はミスをすることなく、滞りなく行えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後。

 

イッセー、アーシア、ゼノヴィア、イリナと共に部室に顔を出すと、先に来ていたリアス部長と他メンバー、そしてアザゼルが顔を顰めていた。

 

「えーと……どうかしたんですか?」

 

イッセーが訊くと、リアス部長が言う。

 

「若手悪魔のレーティングゲーム、私達の次の対戦相手が決まったのよ」

 

「へぇ……どこなんですか?」

 

「次の相手はディオドラ・アスタロトよ」

 

…….やはりか。この辺りは特に変化はないから、こうなるとはわかっていた。

 

「そして、これが若手悪魔の試合記録なのだけれど……」

 

「何か問題が?」

 

私が聞くと、アザゼルが巨大なモニターの前に立って言う。

 

「問題というよりもな。今回のレーティングゲーム。バアルとグラシャラボラス、アガレスとアスタロト、それぞれがお前らの対決後に試合をしたわけだが……どっちも今回のゲーム。一方的な試合だった」

 

モニターに映し出されたのはまずバアルとグラシャラボラスのゲーム。

 

ダイジェストのものだが、その内容はアザゼルの言う通り、バアルの一方的な試合だった。

 

眷属同士はお互いに強力で拮抗していたものの、試合巧者はバアルの方で結果的に誰一人脱落していない。

 

そして最後の最後で駒を全て無くしたゼファードルがサイラオーグを挑発、タイマンに持ち込むものの、ゼファードルの攻撃は全て弾かれ、サイラオーグの一撃は防御術式を粉砕、たったの一撃でゼファードルはくずおれ、悶絶していた。

 

「凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラスの次期当主候補がまるで相手になっていない。ここまでのものか、サイラオーグ・バアル」

 

祐斗もその光景に目を細めていた。

 

強いということは知っていたが、その一言で片付けていいようなレベルではなかった。レベルがあまりにも違いすぎる。

 

「あのヤンキー悪魔って、どのくらい強いんですか?」

 

「今回の六家限定にしなければ決して弱くはないわ。といっても、前次期当主が事故で亡くなっているから、彼は代理ということで参加しているわけだけれど……」

 

「若手同士の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングでは、一位がバアル、二位がアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、六位がグラシャラボラスでしたわ。『王』と眷属を含み、平均で比べた強さランクです。それぞれ、一度手合わせして、一部結果が覆ってしまいましたけれど」

 

「しかし、このサイラオーグ・バアルだけは抜きん出ていると?」

 

「ええ。彼は怪物よ。はっきり言ってどの若手悪魔も今のままでは勝つのは不可能に近いわ……ただ一人、アスタロトを除いて」

 

映像が切り替わり、映し出されたのはアガレスとアスタロトの試合。

 

両家の試合は……はっきり言って、アガレスが押していた。

 

アスタロトの眷属は倒されていないものの、個の力ではアガレスに勝てず、撤退する場面が多く見られている。

 

これをもって、何故アスタロトがバアルに勝てるのか、見ていた私達が疑問を感じながら見ているとーー。

 

カッ、と映し出された映像が白く光った。

 

そして次の瞬間には……アスタロトの勝利を告げるアナウンスが響いていた。

 

何が起こったかわからなかった。

 

わかるのは、あの光った瞬間、アスタロトが何かをしたことだけだ。

 

「今の映像で何かおかしいと思ったことはないか?」

 

アザゼルの問いに祐斗が顎に手を当てて答える。

 

「全員、闘っている場所は違いました………でも、意図的にその場に誘導されていたようにも見えます」

 

「……私もそう思います。それに、ディオドラ・アスタロトの姿が見えませんでした」

 

続いて小猫が言うと、アザゼルは頷いた。

 

「それで大体合ってる。アガレスとその眷属は見事にアスタロトの策にはまった。正直、途中までは俺も気がつかなかった。レーティングゲームじゃ、『王』は動かず、駒を進軍させて頭を取るのが定石だ。だから見てるやつも、やってる奴も気付かなかった。アスタロトが追い詰められているふりをしてる事にな」

 

「え?じゃあ、アスタロトは初めからこれを狙ってたってことですか?」

 

「ああ。誰一人脱落していないこと、ディオドラがゲーム終了時まで姿を見せなかったことを鑑みて、あいつは眷属に指示を出しながら、着々と作戦を進めてたってわけだ。味方が巻き添えを喰わなかった辺り、あいつも兄に負けず劣らずの天才だって事だな」

 

「こんな試合を観たからにはそれ相応に対策をしておきたかったところだけれど、先のサイラオーグとの試合でゼファードルが潰れてしまったわ。だから、私達の次の対戦相手はアスタロトになったわ」

 

「リアス部長。私が言えた義理ではないが、アスタロトと私達の相性はかなり悪いのではないだろうか?何せ、テクニックタイプが木場しかいない」

 

「ゼノヴィア。そう思うなら、少しはテクニックタイプとしての僕の意見を聞いてくれないかな……」

 

ゼノヴィアの提言に祐斗が苦笑しながらつっこむ。そういえば、グレモリーは脳筋パーティーだからな。力業で押し切るスタイルで、テクニックは祐斗しかいない。

 

「ああ、ゼノヴィアの言う通り、グレモリー、バアルはアスタロトとの相性は最悪に近い。力業でどうにか出来る可能性もなくはないが、見ての通り、アスタロトは搦め手を得意とする。押しているかと思えば、いつの間にか『王』が取られていた、なんて事もあるだろうな」

 

アザゼルの言葉に全員が沈黙する。

 

確かにアスタロトとリアス部長達の相性は悪い。テクニックタイプの構成であるアガレスでさえ、あの結果。同じく搦め手を得意とするソーナ会長か、パワー特化のサイラオーグしかないだろう。

 

普通にゲームが進行すれば、の話だが。

 

「しかし、最近の悪魔も随分変わったな。元々、才能がなく努力せざるを得なかったサイラオーグはともかく、ディオドラには才能があった。だが、聞くところによると奴もまた血の滲むような努力を重ねたらしい。『王』個人の能力でいえば、タイプは違えどサイラオーグとディオドラはほぼ互角だ。何が奴をそうさせたのか……」

 

「ーー些細な事ですよ。僕にとっては忘れられない出来事ですがね」

 

アザゼルの独白に答えるように部室の一角が淡く光る。

 

そしてその中から出てきたのは……。

 

「突然の訪問、申し訳ない。アスタロト家次期当主、ディオドラ・アスタロトです」

 

 


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