幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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悪魔のお仕事 その2

 

ある日の深夜。

 

俺、兵藤一誠は涙を流しながら、智代と共に目的地まで走っていた。

 

何時ものように自転車には乗っていないのはチラシ配りをしていないからだ。

 

つまり、俺の下積みは一応終わりを迎えた訳だ。そして今は契約取りに向かっているのだが………わかってるよ!何で俺が魔法陣からじゃなくて足で向かってるのかって聞きたいんだろ⁉︎

 

「チクショウ………何で俺はこんな惨めな想いをしなきゃいけないんだ……」

 

「人間……いや、今は悪魔か。得手不得手は存在する。其処まで落ち込む必要はない」

 

「だからって……だからって……魔力が低すぎて依頼主の元まで跳べないとかあんまりだぁぁぁ‼︎」

 

本当なら俺もカッコよく魔法陣から現れて「貴方の願いを叶えに来ました」的な事を言いたかったさ!だけどいざ依頼主の元まで跳ぼうとしたら移動できてないし、目の前にいた皆は「あーあ」って顔してるし、部長は部長で「イッセーの魔力が低すぎて魔法陣が反応しないから、足で現場に向かいなさい」って言うし!おかしい!何かがおかしいよ、これ!しかも何が悲しかったかって、皆に同情された事だ!木場も何時もの爽やかな笑顔が引きつってたし、朱乃さんもニコニコ顔じゃなくなってた。トドメに何時も無表情の小猫ちゃんですら悲壮感漂う表情になってた。小猫ちゃんの感情を垣間見たのが俺に対する同情とか男として失格どころか、死にたくなってきた!チクショー!涙が止まんねえよぉぉぉ‼︎

 

学園から十五分の位置にあるアパート。色々とショートカットしてきたけど、デリバリーサービスならキレられてもおかしくない時間だ。普通は瞬間移動で待たせても五秒くらいなのに………考えるとまた涙が出てきた。

 

「こんばんは!悪魔グレモリー様の使いの者ですが、すみません!召喚された方はこのお家ですよね!」

 

深夜に何大声出してんだと思うかもしれないが、悪魔は契約した人間にしか認知されないので、関係のない人間には何も起きていないので、今の言葉も依頼主以外には感知されていないそうだ。悪魔の仕事中は特殊な魔力が働くのだとか。

 

「だ、誰だ⁉︎」

 

中から聞こえてきたのは、狼狽した男性の声。そりゃ深夜にいきなり「悪魔が来ました」って言っても頭のおかしい奴が来たとしか思えないよな。普通は魔法陣からなわけだし。

 

「悪魔です。新人なんですけど、他の依頼で来れない小猫ちゃんの代わりにここに来ました」

 

「う、嘘つくな!玄関を叩く悪魔なんているもんか!悪魔はこのチラシの魔法陣から出てくるだろうが!」

 

「すみません。俺、魔力が足りないみたいで魔法陣から出ていけないみたいなんですよ」

 

「ただの変態なんじゃないのか⁉︎」

 

ただの変態だと⁉︎クソ、頭にきた!

 

「変態ちゃうわい!俺だってカッコよく魔法陣から出てみたいわ!何が哀しくて悪魔になってまで依頼主の元まで走っていかにゃならんのだ!」

 

「逆ギレするなよ、ど変態!」

 

「ど変態⁉︎ふざけんな!あんたに夢を壊された俺の気持ちが……ううっ、わかってたまるか………」

 

「落ち着け、イッセー。ほら、涙をふけ」

 

そう言って智代がハンカチを渡してくれる。ううう………こんな時でも我が幼馴染みだけは俺の味方だ。

 

「…………泣いてんの、キミ?」

 

ドアを開けて出てきたのは痩せ型の不健康そうな男性。さっきまでの怒り声は何処へやら男性は困り果てたような表情で俺を見ていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうかい。魔法陣から出て行けなくて、涙ながらに僕の所へ……」

 

「はい………」

 

なんやかんやで結局俺とイッセーは室内に入れてもらっていた。

 

おまけにお茶まで出されている。イッセーの依頼主ーーー森沢さんはイッセーに同情して部屋へと入れてくれたのだった。何というか、悲しいところで原作通りだ。

 

「小猫ちゃんじゃないんだね……」

 

「すみません。あの子、人気らしいので」

 

チラシに願いを込めれば来て欲しい悪魔を呼び出せるのだが、こうして被った時は例外で、何方に行くかは小猫か或いはリアス部長の判断で決まる。

 

「というか、キミ。彼女同伴で依頼主の所に来るなんてなかなか肝が据わってるね」

 

「彼女じゃないっすよ。幼馴染みです」

 

「はっはっはー。美少女の幼馴染みとは羨ましいじゃないか、もしここに祝福された銀作りの剣があったらぶっすりどころか細切れにしていたよ!」

 

笑ってはいるが、目がマジだ。まあ、嘗ては俺もそんな幼馴染みが欲しいとは思っていた訳だから気持ちは分からなくもない。因みに森沢さんの手元に銀作りの剣があってイッセーを襲った場合、空を舞ってもらう事になるが。

 

「因みにお聞きしますけど、小猫ちゃんを呼んで何を願うつもりだったんですか?」

 

「ああ、これを着てもらおうと思って」

 

おそらくイッセーの今の質問は自分が代わりに出来ないかという意味合いも含めてのものだったのだろうが、それも儚く散った。何故なら出てきたのは女子の制服だからだ。

 

「これは短門キユの制服だよ」

 

「短門……あっ!暑宮アキノの」

 

暑宮アキノシリーズ。この世界では昨今話題になったアニメだ。割と面白かったのでイッセーと一緒に見ていた。因みに決して○宮ハルヒなどではない。名前がそれっぽいけど断じて違う。

 

「悪魔くん。キミは短門が好きかい?」

 

「いえ、俺はメインのキャラじゃなくて、夜倉涼子派です」

 

「ほう。また珍しいタイプだね」

 

イッセーの返答に森沢さんは感心の声を上げた。

 

夜倉涼子。暑宮アキノシリーズで何かと重要なポイントで関わってくるキャラで、ストーリー序盤で主人公を殺そうとした奴で、人間ではない。序盤で短門キユと戦闘し敗北してからはあまり登場することの無かったキャラだが、イッセーはどういう訳か気に入っている。

 

「そういえばキミの幼馴染み、どことなく夜倉涼子に雰囲気が似ているね」

 

「こういう話をした時、よく言われます」

 

「本当なら小猫ちゃんにこれを着て欲しかったんだけど……………実は夜倉涼子のものも持っていてね。もし良かったらキミの幼馴染みに是非とも着て欲しい」

 

そう言って森沢さんが出したのは先程の制服と同じもの。だが、一つ大きめのサイズだ。確かに着れる事には着れるな。

 

「付き添いみたいなものですから、それはちょっと「良いぞ、そのくらいなら」智代?」

 

「コスプレのようなものだろう。それで済むなら安いものだ」

 

「智代が良いなら別に良いけど………」

 

何処か納得のいかない様子で唸るイッセー。自分の力で解決出来ないというのが嫌なのかもしれない。まあ、こういうときくらいは俺がどうにかしてやろう。別に見られた所で恥ずかしくもなんともないしな。

 

「では早速着替えるから、目を瞑っていてほしい」

 

恥ずかしくもなんともないが、痴女だとは思われたくないので言う。まあ、普通の感性なら俺は別の部屋で着替えるべきなんだろうが。面倒だ。それに俺は着替えが早い。

 

「着替え終わった。もう目を開けても大丈夫だ」

 

「おおっ!凄く似合ってるよ………えーと、何だっけ?」

 

「大神智代です。好きに呼んでくれて結構です」

 

「智代ちゃんかい。キミの特技は何かな?」

 

特技?うーん、特技ねぇ…………

 

「氷系の能力が使えます。小猫程ではないにしろ、森沢さんくらいなら持ち上げることも出来ますが」

 

「へぇ、まさかとは思うけど趣味は拷問とかじゃないよね?」

 

「違います」

 

誰がエス○スだ。確かに身体能力が高くて氷系の能力者ならそう思うかもしれないけど、残念ながら違います。

 

「折角だし、智代ちゃんには夜倉涼子の再現でもしてもらおうかな。主人公役は悪魔くんで」

 

「俺ですか?」

 

「怪我すると明日の仕事に響くし、キミ達幼馴染み同士なら加減もバッチリだろう?」

 

イッセー相手なら確かに加減はバッチリだ。それに多少の怪我ならイッセーの打たれ強さと回復力を持ってすれば即時復活可能だ。

 

こうして俺とイッセーは森沢さんの家で暑宮アキノシリーズのシーンをリアル再現する事となり、初めての契約取りは成功に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、何か疲れた」

 

「そうか?私はそれなりに楽しかったぞ」

 

帰り道。来た時とは違って走る事なく、帰路についていた。

 

時間も時間なので依頼が終われば家に帰っても良いかと予めリアス部長にきいていたのが功を奏した。

 

「初めての契約はなんとか取れたけど、次は俺の力で契約をもぎ取りたいもんだ」

 

「ああ、あくまで私は付き添っているだけだからな。毎度手伝っては一体どっちが呼び出されたのかわからない。今回に限っていえば、イッセーにはどうにもならなかったかもしれないがな」

 

「そうだよなぁ………どうしよう。また次の人が女キャラの服を着てくれとかだったら……俺何も出来ないじゃん」

 

「その時はその時だ。違う内容にしてもらえばいい」

 

「それ用の機械もあるといえばあるし、その時はそうするかぁ」

 

イッセーはポケットから取り出した悪魔用の携帯機器を眺めながらそう言った。

 

その機械は人間の願いを叶えるときにどんな代償を支払えば良いかというものを教えてくれる。因みに命を払わなければならない程の代償を払っても身にあまりすぎる願いだと命を払っても中途半端にしか叶えられない。森沢さんは試しにやってみたら金持ちの場合は札束が天から降ってきたのを視界に入れた瞬間に死に、酒池肉林に関しては女性が視界の端に映ったら死ぬ。後者に関しては果たして美女なのかどうかすらわからない。人の命は平等ではない。が悪魔のモットーらしいが酷いの一言に尽きる。

 

そうこうしているうちに家に着いた。これはまた一段と朝が眠いかもしれないなぁ。

 

「それじゃあおやすみ、イッセー。また朝でな」

 

「おう、おやすみ………あ、そういえば一つ言い忘れてた」

 

「?」

 

「今日はありがとな、智代。後、夜倉のコスプレ凄え似合ってたぜ。じゃあな!」

 

そう言って逃げ去るようにイッセーは自分の家へと帰っていった。恥ずかしいなら言わなければ良いのに………。と思ったが、お礼を言われて悪い気はしないので素直に受け取っておくか。

 

 


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