幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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幼馴染み二人

 

「通信で悪いな、サーゼクス。例のグラシャラボラスの次期当主の不審死とディオドラ・アスタロトの言っていた禍の団の件だが……」

 

『やはり、繋がったか。彼の行動には感謝しているが……些か無謀にも思える。下手をすれば、同じ仲間に討たれる可能性すらあるというのに』

 

「違いない。どいつもこいつも、若い奴らは自分を顧みなさすぎるのが問題だな。その癖妙に吹っ切れてやがるから、見てる方としちゃ溜まったもんじゃない……ったく、頭が痛いぜ。ただでさえ身内のイベントでテンション低いのによ」

 

『聞いているよ。グリゴリの幹部がまた一人婚姻したようだね』

 

「どいつもこいつも焦りやがって。何より俺に黙って他勢力の女とよろしくやっていたなんてな。……そろそろ独り身は俺だけってことか」

 

『ふふふ、アザゼルも身を固めたらどうだ?』

 

「それも考えたけどな……どうも、俺にはそういうのは合わん。第一、教え子に負けるのも気に食わんしな。良い女がいたら、紹介してくれよ」

 

『そうだな。考えておこう。……さて、例の案。後はリアス達次第だ。出来れば、こういうことはしたくないのだがね』

 

「仕方ないさ。そういう時代なんだからよ。ま、あいつらのことは任せろ。いざって時は俺の命ぐらいなら張ってやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディオドラ訪問から数日。

 

俺達グレモリー眷属は冥界にある大きなビルの地下に着ていた。

 

転移用魔法陣のスペースが設けられた場所で、そこに着くなり、待機していたスタッフの皆さんに温かく迎え入れてもらった。

 

「お待ちしておりました。リアス・グレモリーさま。そして、眷属の皆さま。さあ、こちらへどうぞ」

 

プロデューサーの人に連れられて、エレベーターを使って上層階へ。

 

ビル内、人間界とあまり変わらない作りだと思うけど、細かい点で差異があったりする。魔力で動くであろう装置と小道具とかが建物のあちらこちらに存在しているもんな。

 

廊下には部長のポスターが貼ってある。さながらアイドルのそれは、部長の人気がどれほどのものであるかを示している。

 

と、廊下の先から見知った人が十人ぐらい引き連れて歩いてくる。

 

「サイラオーグ。貴方も来ていたのね」

 

部長が声をかけたその人はバアル家の次期当主サイラオーグさん。

 

貴族服を肩へ大胆に羽織り、ワイルドな様子はお変わりないようで。ていうか、何度見てもこの人は隙がないし、勝ち目が見えない。こんな人とゲームをしても果たして勝てるのか……いや、勝たなきゃいけない。部長の夢のためにも。

 

「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」

 

「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」

 

「これからだ。おそらくリアス達とは別のスタジオだろう。ーー試合、見たぞ」

 

サイラオーグさんの一言に部長は顔を少しだけしかめた。

 

「お互い、新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな」

 

サイラオーグさんは苦笑する。部長を励ましてくれたのかな?

 

「どんなにパワーが強大でも型に嵌れば負ける。相手は一瞬の隙を狙って全力で来るわけだからな。とりわけ神器は未知の部分が多い。何が起こり、何を起こされるかわからない。ゲームは相性も大事だ。お前達とソーナ・シトリーの戦いは俺も改めて学ばせてもらった。特に、ディオドラには恐れ入る。おそらく、俺達の中で最もプロに近いだろう」

 

「そうね。ディオドラの戦闘スタイルは私達にとっては天敵ね」

 

ふと、視線が俺に移る。

 

「それもあるがな。奴には迷いがない。俺も覚悟はしていたつもりだがな……奴にも背負っているものがあるということだろう。お前のように」

 

「お、俺……ですか?」

 

「匙元士郎もそうだ。……全く、これ程までに血湧き肉躍るような相手がいると思うと、平時も拳が疼いて仕方がない。出来るなら、お前達とは理屈なしの殴り合いをしたいものだよ」

 

サイラオーグさんはそれだけ言うと去っていく。

 

軽くポンと肩を叩かれただけなのに、すごい重みを感じた気がする。

 

サイラオーグさんとの挨拶の後、一度楽屋に通され、そこに俺達は荷物を置いた。

 

アザゼル先生はほかの番組に出演らしいのでついてきてない。智代とイリナはお留守番。今回の催しはあくまで正規のグレモリー眷属のみだから。

 

その後、スタジオらしい場所に案内され、中へ通される。まだ準備中で、局のスタッフさん達が色々と作業をしていた。

 

先に来ていたであろうインタビュアーのお姉さんが部長に挨拶をする。

 

「お初にお目にかかります。冥界第一放送の局アナをしているものです」

 

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」

 

部長も笑顔で握手に応じた。

 

「早速ですが、打ち合わせをーー」

 

と、部長とスタッフ、局アナのお姉さんを交えて番組の打ち合わせを始めた。

 

スタジオには観客用の椅子も大量に用意されている。お客さんありでの放送か……なんだか、芸能人みたいだ。

 

やべ。かなり緊張してきた。いくら部長メインで展開されているとはいえ、俺達も本番はこのスタジオにいるわけだからな。

 

「……ぼ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼぼ、僕、帰りたいですぅぅぅぅ……!」

 

俺の背中でブルブル震えるギャスパーは今にも泡吹いて失神しそうだった。今回は智代もいないし、ギャスパーにとっての安全基地が存在しないわけだから、ものすごいプレッシャーなんだろう。

 

「眷属悪魔の皆さんにも幾つかインタビューがいくと思いますが、あまり緊張せずに」

 

スタッフの方が声をかけてくれるものの、やはり難しい。こういう注目されるのは一般庶民の俺的には馴染みがないものだし。そう言う意味では俺も智代が恋しいよ。

 

「えーと、木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいますか?」

 

「あ、僕です。僕が木場祐斗です」

 

「私が姫島朱乃ですわ」

 

二人が呼ばれ、手を挙げる。

 

「お二人に質問がそこそこ行くと思います。お二人とも、人気上昇中ですから」

 

マジか。

 

うーん、でもわかる気がするぞ。木場はイケメンで『騎士』だし、朱乃さんは美人で『女王』。人気が出るのも当然だ。前のゲームでも結構活躍していたし。なんだか複雑な気分だ。嬉しいような、悲しいような。

 

「後は……兵藤一誠さんはいらっしゃいますか?」

 

「俺、ですけど……」

 

予想外に名前を呼ばれたので、おそるおそる手を挙げてみる。

 

「おおっ!あなたがあの赤龍帝、兵藤一誠さんですね!」

 

スタッフさんが驚きの声をあげて、俺の方に詰め寄ってきた。んん?なんだか、テンションが高いぞ。

 

「お、俺も人気あるんですか……?」

 

本音を言えばかなり期待してしまうが、裏切られるとショックが大きい。

 

それとなく、聞いてみるとスタッフの人は大きく頷いた。

 

「以前のゲームでの緒戦、ソーナ・シトリー様の『兵士』の匙元士郎さんとの熱い戦いは男女問わず、冥界悪魔の若い層の心を鷲掴みにしまして……。特に子どもからの人気は急上昇です」

 

マジかよ!

 

匙と俺はお互いにゲームそっちのけで漢の勝負をしていただけだから、正直言ってかっこいいと思えるような事をしてなかった気がしている分、驚きが大きい。それにこの様子だと匙も子どもから人気を集めていそうだ。本人は子どもが好きらしいし、嬉しいに違いない。

 

『ふっ……二天龍と称され、畏れられてきた俺が……長く生きると何が起こるかわからんものだな』

 

何処か感慨深そうにドライグが呟いていた。

 

「兵藤さんには、後ほど別スタジオでの収録もございますので、その時もご案内します」

 

しかも、別スタジオでの収録って……なんだか俺だけ別の方向性に向かっているような気がする。

 

スタッフの方に専用の台本を渡され、そんな事を思っていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。思ったよりも暇だな」

 

「そうよね。私達も冥界に行きたかったわ」

 

イッセー達が冥界に行っている間、私とイリナは私の家で留守番をしていた。

 

冥界には事あるごとに行っていたので、こうして留守番をするというのはかなり珍しい事だ。まあ、特に用事もないし、行く意味は全くと言っていいほどないわけだが。

 

とはいえ、暇だからといって、何もやる事がないわけではない。

 

先日、ディオドラが部室に訪れて言っていた話。

 

そこにディオドラの真意があるか否かはわからないが、どちらに転ぼうとおそらく『禍の団』との衝突は免れない。十中八九、闘うことになるだろう。

 

そのとき、私もまたあちらには赴かなければならない。奴らの計画の鍵となっているのはアーシアだ。アーシアさえ奪還出来れば、計画は破綻する。

 

だが、少なくとも原作ではアーシアには何かしらの魔術がかけられていて、それにより次元の狭間へ転移。イッセーは激しい怒りと憎しみから『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を発動させてしまった。

 

つまり、今回の一件は何も冥界云々だけの話ではない。アーシア、イッセー、そしてディオドラの三人に何かしらの影響がある。

 

魔術の種類にもよるが、ディオドラが実は敵か、または味方でもそれを解けなかったり、時間がかかる場合は、私が禁手を使って、術式を全て凍結させ、破壊する方法を取った方が効率が良いだろう。

 

問題はあのオーディンですら、破壊が敵わず、侵入する事しかできなかった結界だ。

 

あれも確か神滅具で創り出されたものだから、そう易々とは壊せないだろう。

 

そうなると、そのときは侵入方法も考えておかないといけないな。

 

「あ、そういえば」

 

「どうした。イリナ」

 

「智代さんって、イッセーくんの何処が好きなの?」

 

「ぶふっ!?」

 

あまりにも唐突な質問に、飲んでいたオレンジジュースを思わず噴き出してしまった。

 

咄嗟に顔を横に向けたので、イリナにはかかっていないものの、壁にはオレンジジュースがかかってしまった……というか、それどころではない!

 

「な、なにを言っているんだ!?わ、私は別にそういうつもりはないぞ!?」

 

「えー?じゃあ、好きでもない相手とデートしたり、キスしたりするの?」

 

「そ、そそそれはだな……あれだ!イッセーがヴァーリに負けるのも癪だし、幼馴染みが死んでしまうのは私としても嫌だからな!止むに止まれず、というわけだ!」

 

そうだ。それ以上それ以下でもない。ヴァーリが勝つとイッセーは殺されていたんだ。出来ることをせずして、幼馴染みを見殺しにするなんて……もう、そんな事は出来ない。

 

「ふーん、そうなんだー?じゃあ、私がイッセーくんを貰っちゃうけど、それでも良いよね?」

 

「それは困る!……あ」

 

殆ど脊髄反射に近い速度で出た言葉に私は思わず口を押さえる。

 

けれど、イリナは聞き逃さなかったと言わんばかりにしたり顔でこちらを見る。

 

「何が困るのー?別に智代さんはイッセーくんの事を好きなんじゃないんでしょ?」

 

「そ、そうだ」

 

「じゃあなんで困るの?」

 

「うっ……」

 

何故困るのか、と訊かれても………正直言って回答に困る。

 

私自身、何故反射的にそう答えのか理解できていないんだ。

 

イッセーはモテる。それは駒王に限っての話ではなく、中学時代から顔良し、性格良し、頭脳・運動神経良し、と殆ど死角がなかったのだから、モテない道理なんてない。それら全てを今現在まで振ってきているが、その理由をイッセーは教えてくれない。

 

イリナがイッセーの事を好きなのも、当然知っている。

 

だから、イリナの発言が本気半分、茶化し半分なのもわかっている。

 

それ故に私は困ると口走ってしまったのだろう。

 

何故なのか?

 

「智代さん。私ね、昔からイッセーくんの事、好きなんだ」

 

「……知っている」

 

「久しぶりに会った時に、私が悪魔祓いで、イッセーくんが悪魔だってわかって、少しショックだったけど、それでも別にいいって思えたの。誰かが誰かを好きになるのに、そんなつまらない事は関係ないって」

 

その通りだ。種族の違いなんてものは実に取るに足らない。

 

ましてや、相争っている敵の勢力だから、なんてものはもっとくだらない。好き合っている、愛し合っているもの同士が何か因縁を持っているというわけではないのだから。

 

「でもね。イッセーくんの隣には智代さんがいた。おまけにイッセーくん、最初は私の顔を忘れてたみたいだし……ショックはそっちの方が大きかったかも。あの時、智代さんには負けないって言ったけど、あれってどういう意味で言ったかわかる?」

 

「いや、さっぱりだ」

 

「私ね。二人がもう付き合ってると思ってたの。小さい頃にイッセーくんがよく智代さんに突っかかってたから。アーシアさんはともかく、二人はそういう関係なんだなって。で、まだ諦められそうになかったから、ああ言ったの」

 

「……だが、私達は別に付き合ってるわけではないぞ?」

 

「そうなの。だから、それがわかった時はびっくりしたし、ちょっとだけ嬉しかった。まだチャンスがあるんだ、って」

 

そういう割に、イリナの表情は少し暗い。嬉しいというよりも、寧ろーー。

 

だが、すぐにイリナは表情を明るくする。まるでそれが錯覚であったかの様に。

 

「だからね。私は遠慮なんてしないよ?智代さんが気付いてないなら、そのうちに私がイッセーくんをもらうからね」

 

「遠慮も何も……まあいい。それよりもイリナ。詰みだぞ」

 

「……あれだけ慌ててたのに、なんで将棋には殆ど影響ないの……」

 

最後の一手を打つと、イリナが詰んだ。

 

ふふん。甘いな、イリナ。私とイッセーのゲームにおいて、揺さぶりは日常茶飯事だった。おかげでどれだけ動揺しても、ゲームに支障をきたさない自信はある。

 

あるのだが……。

 

盤の上を見て思う。確かに殆ど影響はなかったかもしれないが、今までなら全く影響がなかった。どんな揺さぶりをかけられてもだ。

 

なのに、パッと見ただけでも、二、三手ほど全く無意味な手を打ってしまっている。

 

イリナとの会話が私の心を揺さぶったから?私の動揺を誘うほどのものだったから?

 

……わからない。

 

わからないけど、胸がモヤモヤするのは何故だろう。


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