幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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ルーキー日間九位&UA10000突破です。

良い感じに連日投稿出来てます。ISも辛うじてもう一つの方は執筆出来てるのでこのまま頑張っていきたいと思います!


金髪シスターとの邂逅

 

表向きの部活動も終わり、俺と智代は一旦家に帰っていた。

 

溜息が出る。

 

森沢さんに続いて昨日ミルたんなる魔法少女の漢の元に呼び出されて駆けつけた訳だが、契約は破談に終わった。流石に夜更かしのし過ぎは女性の肌には悪いと智代を連れて行かなかったのだが…………はぁ。やはり俺だけではダメなのか?

 

部長は『新人だし、こういう事もある』とは言っていたし、ミルたんの望みの事について話したら『落ち込む必要はないわ、イッセー。私にも無理だもの』と即答してたけど、あまり納得は出来ない。そう。いくら相手が悪魔よりもファンタジーな格好をして「ファンタジーなパワーを下さいにょぉぉぉぉ‼︎」とか叫んでいてもだ。あんたの方が十分ファンタジーだと何度ツッコミかけたことか。

 

「あまり落ち込むな、イッセー。お前のーーーいや、この世に遍くどの存在にもミルたんの望みは叶えられない」

 

「わかってる。ミルたんのお願いが無理難題を通り越して、寧ろ叶えられるんじゃないかと錯覚してた事は!けど、二回続けて俺は何も出来てないし」

 

「仕方ない。こうも条件が悪ければイッセーの実力以前の問題だ」

 

確かに森沢さんもミルたんも俺に出来るレベルの事を遥かに超えた願いを叶えようとしている訳だけど、何も出来ないというのは心に来る。

 

「はわう!」

 

後方からボスンと何かが転がる音と共に女の子の声がした。

 

振り向いてみるとそこには手を大きく広げ、顔面から路面へと突っ伏しているシスターがいた。凄く痛そうだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

俺はシスターへ近寄ると起き上がれるように手を差し出した。

 

「あうぅ。なんで転んでしまうんでしょうか……ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ……あ」

 

俺がシスターの手を引いて、起き上がらせた時、ふわっと風でシスターのヴェールが飛んでいく。

 

「私に任せろ」

 

智代はそう言って軽く跳躍すると風で飛んだヴェールを難なくキャッチする。なんていうか、ものすごく有難くはあるんだが………もう少し気にして欲しい。

 

「はい、シスターさん」

 

「あ、ありがとうございますぅぅ」

 

智代が飛んでいたヴェールをシスターへと渡す。

 

ヴェールがとれたシスターの素顔は美しいものだった。

 

金色の長髪にグリーン色の綺麗な双眸。ストレートのブロンドが夕日に照らされてキラキラと光っていた。金髪美少女。松田や元浜でなくとも世の男性はその容姿に心を奪われるだろう。金髪と銀髪の美少女がこうして並び立っていると凄く絵になっている。

 

ふと彼女が肩にかけている旅行鞄が目に入った。そういえば、生まれてこの方この町でシスターなんて見たことないしな。

 

「旅行?」

 

「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任する事となりまして………貴方もこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

 

「こ、これはご丁寧にどうも」

 

ぺこりと頭を下げてくる彼女に俺も頭を下げる。

 

「この町に来てから困っていたんです。その……私、日本語上手く話せないので………道に迷ったんですけど、道行く人皆さん言葉が通じなくて………」

 

困惑顔でシスターは胸元で手を合わせる。ということはこの人は日本語が話せないのか。

 

なのに何故俺と話せているのかというと悪魔の特典の一つ『言語変換』によるものだ。何でも俺の言葉は全世界で通じるらしく、俺の声を耳にする人間は全員一番聞きなれた言語として受け入れられるらしい。そしてその逆もしかりだ。実際英単語まで日本語には見えなかったが、先生が何を言っているのかは余裕でわかった。

 

それにしても教会か………そういえば町外れにあったような気がする。

 

「教会なら知ってるかも」

 

「ほ、本当ですか!ありがとうございますぅぅ!これも主のお導きのお蔭ですね!」

 

涙を浮かべながら、微笑むシスターだが、彼女の胸元で光るロザリオを見ていると最大級の拒否反応を覚えてしまう。仕方ないか、悪魔とシスターだもんな。でも困った女の子は放っておけない。部長には悪いがそういう育ち方をしてしまったから。誰の影響を受けたとは言わないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会へ向かう途中、公園の前を横切る。

 

「うわぁぁぁん」

 

その時、聞こえてきたのは子どもの泣き声だった。

 

「大丈夫、よしくん」

 

お母さんがついているから、俺たちに出る幕はないかなと思っていたのだが、後ろをついてきていたシスターが突然公園の中に歩を向け、子どもの傍へと近寄って行った。

 

「大丈夫?男の子ならこのぐらいの怪我で泣いてはダメですよ」

 

シスターはそう言いながら子どもの頭を優しく撫でる。言葉は通じていないだろう。だけどその表情は優しさに満ち溢れていた。

 

シスターがおもむろに手のひらを子どもの怪我を負った膝へ当てる。すると次の瞬間、シスターの手のひらから淡い緑色の光が発せられ、子どもの膝を照らしていて、傷をみるみるうちに治していった。

 

「智代。あれってーーー」

 

「ああ。神器だ。共鳴しているのかはわからないが、身体が疼く」

 

やっぱりか。俺もあの光をみてから、左腕が疼く。智代の言う通り、共鳴しているのだろうか?

 

「はい。傷は治りましたよ。もう大丈夫」

 

シスターは子どもの頭をひと撫でするとこちらに顔を向けて、舌を出して小さく笑った。

 

「すみません。つい」

 

優しいんだな。このシスターは。

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

「ありがとう、お姉ちゃん。だって」

 

日本語のわからない彼女に通訳すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 

「その力……」

 

「はい。治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」

 

そう言って微笑む彼女だが、どこか寂しげだ。なんていうか、苦労してるような影が少しだけ見えた気がする。俺だって神器が発現した時は喜ぶところか驚いた。智代だって状況が状況だけに喜べはしなかっただろう。しかも智代はともかく、俺の方は使い道が見出せない。そもそもどんな能力かわからない訳だし。

 

会話は一旦途切れ、再び教会の方に足を向けた。

 

その公園から数分進んだ先に古ぼけた教会が存在していた。やっぱり教会といえばここなのだが、遠目に見ても建物に灯りがついているだけで人のいる気配はないし、ここが使われているなんて聞いたこともない。

 

教会の目前に迫った時、ぞくりと悪寒が走った。

 

だろうね。俺は悪魔でここは教会。謂わば敵地だ。敵のアジトにいて涼しい顔が出来るわけがない。

 

「あ、ここです!良かったぁ」

 

地図の描かれたメモと照らし合わせながらシスターが安堵の息を吐く。やっぱりここで正解だったのか。良かった良かった、もし違っていたら手詰まりだった。

 

「………イッセー」

 

「わかってる」

 

あまり長居は出来ない。敵の陣地にいるということは何時攻撃されてもおかしくないということだ。だからだろう。さっきからくる悪寒はおそらく悪魔の本能的なものだ。

 

「じゃあ、俺たちはこれで」

 

「待って下さい!私をここまで連れてきてもらったお礼をーーー」

 

別れを告げて、その場を去ろうとした俺たちをシスターが止める。

 

「いや、お礼は良いよ。好きでやったことだし」

 

「……でも、それでは」

 

ここまで連れてきてもらったのだからお礼にお茶くらい出すって事なのだろうけど、ここでのお茶は危険どころの騒ぎじゃない。

 

「俺は兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるから、イッセーで良いよ」

 

「私は大神智代。呼び方は人それぞれだが、智代で構わない。というか、それで頼む」

 

「私はアーシア・アルジェントと言います!アーシアと呼んで下さい!」

 

俺たちが名乗ると彼女は笑顔でそう答えた。

 

「じゃあ、シスター・アーシア。また会えるといいな」

 

「その時にでもお茶をご馳走してもらうとするよ」

 

「はい!イッセーさん!智代さん!必ずまたお会いしましょう!」

 

ぺこりと深々と頭を下げるアーシア。

 

俺たちも手を振って別れを告げるが、彼女は俺たちが見えなくなるまで、ずっと見守ってくれていた。この出会いが俺たちに後に影響を与える事をまだ俺は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 

その日の夜。俺は部室で部長に強く念を押されていた。というか、怒られてる。

 

「以前も言ったけど、教会は悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題になるわ。今回はあちらもシスターを送ってあげた貴方の好意を素直に受け止めてくれたみたいだけれど、天使は何時でも監視しているわ。いつ、光の槍が飛んでくるかわからなかったのよ?」

 

「すみません……どうしても放っておけなくて……」

 

「貴方が優しいのは良いことだけれど、時と場合は考えてちょうだいね。それにそういう時は智代に任せなさい。彼女は人間だから教会に入っても咎められはしないわ。智代、貴女もそういう時はイッセーの代わりにお願いね」

 

「ああ。今回イッセーに非はない。全面的に私が悪かった。今後は私がなんとかしよう」

 

「わかってくれれば良いのよ。今後は気をつけてちょうだい」

 

「「はい」」

 

部長のお説教が終わった時、朱乃さんがタイミングを見計らっていたのかすぐに話しかけた。

 

「あらあら。お説教は終わりました?」

 

「朱乃、どうかしたの?」

 

部長の問いに朱乃さんの表情が少しだけ曇った。

 

「討伐の依頼が大公から届きました」

 

 


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