ダークマテリアルズ+α   作:アオハライド

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DUEL:02 リライズアップ

 ———はあ? なんであたしがそんなこと......。

 

 ———なんだ、怖いのか?

 

 ———上等だオラァ!! 泣いてもしんねーからなぁッ!!

 

 以上、クローディアさんの挑発でした。

 

「いくぞアイゼンッッ!!」

 

 その挑発に答えて鉄槌の騎士ことヴィータは八つの鉄球らしきものを生成し、それをアイゼンと呼ばれるハンマーで殴り飛ばした。 殴られた鉄球は綺麗な弧を描き、此方へと向かってくる。

 

〈追尾弾です。 うち六つが此方をロックオンしています〉

 

「む、六つも!? なんで俺に!?」

 

「落とせる者から落としていくつもりなのだろう。 ......二つは落としてやろう。 あとは自分で対処するんだ......ゆくぞ紫天の書!」

 

〈御心のままに〉

 

「トラバース! これがスキルカードの使用だ———エルニシアダガーッッ!!」

 

 紫天の書が開かれ、クローディアさんがスキル名を叫ぶと、紫色の短剣が六本生成された。 杖を鉄球へと向けるとエルニシアダガーは直角的な軌道で鉄球目掛けて飛んでいく。 エルニシアダガーは一寸の狂いもなくクローディアさんを狙った二つと俺を狙った六つのうち二つの鉄球を破壊した。

 

 もちろん残りは俺を狙って飛んでくるわけで。

 

「なら俺もスキルを使うしかないな......いくぜ、ストライク———」

 

〈非常に残念なお知らせですが、マスターのアバターでは基本的にスキルカードは使用できませんので悪しからず〉

 

「———なら逃げるしかないじゃねぇかぁぁぁッ!?」

 

 唯一の攻撃スキルの使用が不可能だという現実をストライクカノンに突きつけられたので敵に背後を見せるという最悪の形の全力逃亡を行う。 だが鉄球は無慈悲に迫る。

 

〈ご心配には及びません。 CWXシリーズは強力な固定スキルも兼ね備えています〉

 

「さっき似たような台詞を聞いたーーーッ!!」

 

『実際にお見せしましょう———Strike Barrel Open』

 

 ガキャッという音と腕に伝わる衝撃に視線を落とすと、ストライクカノンのグリップ近くから先端にかけてが大きく割れ、カノン砲のような形態に変形する。

 

 ......あ、ストライクカノンの"カノン”てこれなんだ。

 

〈固定スキル”エリアルレーザー”の使用を推奨。 ホーミングレーザーで敵誘導弾を撃ち落とします。 どうなさいますか?〉

 

「どうするって......やるっきゃないでしょ! エリアルレーザーッ!!」

 

 背中を見せていた状態から反転し、迫る鉄球にストライクカノンを向け推奨されたスキル名を叫ぶ。 バレル展開されたストライクカノンの装甲の一部がスライドし、小さな発射口が六つ顕現する。 発射口の顕現と同時に赤いレーザーが発射され、四つの鉄球に向かって赤い尾を引いて飛び全弾に直撃する。

 

 撃墜は確実。 あとは、残り二発でヴィータを狙う。

 

「チッ!」

 

 高速で迫るエリアルレーザーが鉄球と同じ追尾弾と判断したのか、回避せず三角形のプロテクションで防ぐ姿が着弾前に一瞬だけ見えた。 スキルじゃなくて全アバターが最初から使用できる防御手段———あの形はベルカスタイルのものと見て間違いない。 カードの左上に描かれているマークがそのまま魔法陣になるようだ。 見たところ武器にストライクカノンのような射撃武器への変形機能は無いようだ。

 

 となれば此方が取るべき行動は一つ。

 

「近づかれる前に、砲撃で墜とす......!」

 

〈名案ですねぇ〉

 

 飛行を中止して足を止め、砲弾を生成する。 着弾から一秒と少し———まだプロテクションの展開は終わっていないはず、と希望的観測を込めて引き金を引くと生成されたエネルギー弾は展開されたレールで加速され、エリアルレーザーとは比べ物にならない速度で撃ち出される。

 

 とにかく連射、その数四発。

 

 四発の砲弾が煙を引き裂きながら海面に着弾して水柱を上げる。 格上の相手でも直撃さえすれば中々のダメージを与えられそうないい威力ではあったが、肝心の直撃させる相手の姿がない。 煙が晴れた場所に本来いるべきはず姿が、

 

「トラバースッ! 上だッッ!!」

 

 ———見上げるより早く右腕を頭上に構える。

 

「———ハンマー、シュラァァァクッッ!!」

 

 想像を絶する衝撃が骨を伝い脳天まで響く。 手甲が砕け散り破片が舞う中、視線が合う。 いかにも負けん気が強そうな瞳と食いしばられた歯が俺を全力で墜とそうとしているのが分かる。 一瞬で背後に回り込む飛翔技術にRランクカードの保有。

 

 圧倒的に経験値の蓄積量が違い過ぎる。

 

 そのまま力に押され、海面へと一気に吹っ飛ばされる。 ゲームの設定上痛みを感じることはないが、凄まじい衝撃が視界を揺らす。

 

「......こりゃ厳しいよなぁ———」

 

 海に突っ込む。

 

 直前に紫色の砲撃が走ったが、プロテクションに防がれやり過ごされていた。 クローディアさんの使っていたN+のカードでは出力不足なんだろうか? 見た目は相当派手だったが決定打には成り得なかったようだ。

 

 N+でダメならNの俺じゃもっと無理なんだろうけど。

 

 ああ、すっげぇカッコ悪い。

 

「......なーんか一発逆転の切り札とか落ちてないかなぁ」

 

『———そんなアナタに朗報です』

 

 海の中にも関わらず何処からともなく聞き覚えのある声が響き渡る。

 

「この声......スタークスさん?」

 

『いいえ違います。 私はか弱いデュエリストがピンチの時に現れるブレイブデュエル最強のヒーロー———ルシフェリオン仮面です』

 

 名前考えたの絶対ラッセルさんだこれ。

 

『少年よ、力が欲しいか?』

 

「あ、はい」

 

『......もうちょっと雰囲気出してください。 この戦いCMに起用する予定なんですから。 ほら、もう一回』

 

 ちょっと何言ってるのかわからない。

 

〈マスター、せっかくですからノリよくいきましょう。 今ここで力得られればクローディア様にいいとこを見せられますよ〉

 

『その子の言う通りです。 ほら、がんばれがんばれ』

 

「ストライクカノンまで......。 うーん......やってみるかな」

 

 断じてクローディアさんにいいとこを見せたいわけではないが、このままやられっぱなしではカッコ悪いのでスタークスさん......ルシフェリオン仮面の提案を受け入れる。

 

『では改めて———少年よ、力が欲しいか!!』

 

「欲しい! 鉄槌の騎士を打ち砕く力がッ! 彼女を守る力がッ!!」

 

『そういう台詞はいいです。 ただ「欲しい!」と言って頂ければ』

 

「それ先に言ってくれない!? 俺すっごく恥ずかしいこと言ったじゃん!?」

 

 その叫びを無視して「ではさっそく力を授けましょう」とルシフェリオン仮面は続ける。

 

『”ストライカーチェンジ”です。 アナタのデッキにはNランクカードが二枚入っていたはずです。 その二枚を出してください......あとはその子が補助してくれます。 ヴィータが油断している今がチャンスです』

 

「......オーライ!!」

 

 ルシフェリオン仮面の指示に従い、デッキから二枚のNランクカードをリリースする。

 

『あ、そうそう忘れるところでした。 演出の関係があるので海から出てストライカーチェンジしてくださいね』

 

「注文多いなもう......!!」

 

 逆さまに沈んでいた体勢を直し海面を見上げる。 薄っすらと紫色の影が赤い影と激突しているのが見えた。 ここから見ただけでも紫色の影が押され気味になっているのが分かる。

 

〈さあ参りましょう。 ヒーローはピンチに駆けつけるものですよマスター〉

 

 全速力で海面に向かい———交戦高度まで一気に飛び出す。

 

 ほぼ無傷でアイゼンを振り下ろすヴィータと上半身のジャケットが消し飛び、インナー姿になりながらも杖でそれを受け止めているクローディアさんを確認した。

 

 ———本当にヒーローみたいな登場タイミングだ。

 

「ストライカーフュージョンッ!!」

 

「んなっ!? させるか———うぇっ!?」

 

「変身中に攻撃するのはナンセンスだぞ......!」

 

 攻撃を仕掛けようと鉄球を生成したヴィータの体に紫色のロープのようなものが巻き付き、攻撃を妨害する。 クローディアさんの拘束系スキルだ。

 

「ドライブ、レディ! ———リライズアップ!!」

 

 足元に金色のインダストリースタイルの魔法陣が展開され、光が体を包み込む。 服は暑苦しい赤いジャージからやっぱり暑苦しい黒いサーコートへ、ズボンはサーコートと同じ材質のものへと変化し、手甲が修復される。 背中と腰の両側にそれぞれストライクカノンと同系統と思われるユニットが装着され、周囲にサイズの違う三つの非固定ユニットが出現する。

 

 二人の装備と比べると別ゲームだと勘違いしそうなほど機械化された装備に驚いていると、ストラクカノンから説明が入る。

 

〈ユニット接続を確認———お待たせしました。 CW-AEC0000XX-Strike Fortress”ようやく”本領発揮です〉

 

 心なしか電子音が弾んで聞こえる。 ようやく本領発揮、ということはストライクカノン単体で使用するものではないらしい。 背中と腰の制御・飛行ユニットと周囲に展開された多目的盾を纏めた”フォートレスユニット”と接続してこそ本来の力を発揮できるようだ。 新装備の多目的盾を一周させ、中型サイズのS2シールドを右腕にジョイントする。

 

「さあ、第二ラウンドをスタートしよっか......エリアルレーザー!」

 

 ストライクカノン、大型サイズのS1シールド、小型サイズのS3シールドから計十二発のエリアルレーザーを撃つ。

 

「へっ......上等だっての!!」

 

 エリアルレーザーは再び生成されアイゼンに打ち出された八つの鉄球により迎撃された。 残る四発のエリアルレーザーに加えてストライクカノンで砲撃を行うが、それはすり抜けるかのような軌道とアイゼンの打撃によって直撃することはなかった。 が、今度は緩やかな回避軌道から鋭い攻撃軌道に切り替えたヴィータからの攻撃に対処しなければならない。

 

「ストライクカノン! 威力を絞って速射重視!!」

 

「アイゼン! とっておきのヤツいくぜ......! カードロードッ!!」

 

 威力を下げ、速射を重視した砲弾に切り替え構え直したのとほぼ同時にアイゼンに何かのカードがロードされた。 アイゼンの形状が変化し、片面の打撃部分に大型ブースターが装着されもう片面にはドリルピットが装着された後、その場で数回回り大型ブースターを点火し、その加速力で突っ込んでくる。

 

 砲を構えた相手に突っ込んでくるか普通......!?

 

 猛スピードで突っ込んでくるヴィータを速射能力を高めた砲弾で迎え撃つものの......威力を下げたのが悪手だった。 十発近く撃った砲弾のうち半分近くは着弾したはずなのにスピードを落とすことなく突っ込んで来た。 バリアジャケットの破損具合からして相当のダメージを受けているにも関わらず、だ。

 

「それで決める気満々ってことかよ!!」

 

〈通常砲撃による撃墜・回避は不可能です。 S2シールドによる防御を推奨します〉

 

「言われなくともッ!!」

 

 防げるかどうか不安は残るが、フォートレスユニットの耐久力を信じてヴィータの高速突撃に対して右腕にジョイントしたS2シールドを構える。

 

「ツヴァイフォルム! ラケーテン———ハンマァァァッッ!!」

 

「S2シールド、エネルギーシールド出力最大!!」

 

 速度と重量の乗ったアイゼン打撃がS2シールドに直撃する。 発生した衝撃波は遥か下方の海面までをも揺らす。 ドリルピットがエネルギーシールドを削り、エネルギーシールドがドリルピットを擦り減らす。 大型ブースターの生み出す推進力を腰部の飛行ユニットを最大出力で稼働させ相殺する。 互いの武器の全力全開をぶつけ合う。

 

「っっ!! か、て、え......! いい加減ぶち抜かれろてのぉっ!!」

 

「こ、と、わ、るッ!!」

 

 S2シールドでラケーテン・ハンマーを受け止めてつつ、左腕のストライクカノンをヴィータに向けバレルを最大限まで展開する。 ヴィータの視線がストライクカノンに移った瞬間、二機のシールドを前方に飛ばす。 今度は視界の端映った砲戦ユニットに気を引かれ、ヴィータの視線が”完全に”ストラクカノンから外れた。

 

 最大のチャンスの到来だ。

 

 S2シールドの角度を右斜め四十五度程度ずらす。 凄まじい推進力でシールドを破ろうとしていたドリルピットの先端がシールド表面を滑り、そのままヴィータを引っ張って突き進む。 僅か一秒にも満たない間に起こった出来事にヴィータの表情は驚愕に染まっている。

 

「こんっにゃろぉぉぉ!!」

 

 だがそれもまた一瞬だった。 すぐ様体勢を立て直し五十メートルほど進んだ場所で旋回し、再び此方を振り向く。 その時間、約三秒。

 

 決定打の準備には十分過ぎる。

 

「エクサランスカノン・フルバーストッッ!!」

 

 エネルギーのチャージを終えたエクサランスカノンを構え、射線を合わせる。 強力な”縦”の推進力に頼っている以上、回避は困難、確実に防御に回ってくるはずだ。

 

 だから、防御の上から墜とす......!

 

「っっ! プロテクション———!!」

 

「ファイアーーーッッ!!」

 

 エクサランスカノンの切っ先から巨大なエネルギー砲を撃つ。 砲弾による点の攻撃ではない、線の攻撃。 砲撃はその性質通りに真っ直ぐ突き進み、プロテクションごと飲み込んで射線上を一掃する。

 

 砲撃を撃ち終えたエクサランスカノンの強制冷却装置が働き、排熱口から蒸気が噴出され、一緒に緊張も解ける。

 

〈派手にやりましたねぇ〉

 

「は、はぁぁぁぁぁ......き、緊張したっ」

 

 正直、始めて五分でこんな戦闘をするとは思わなかった。 クローディアさんに優しく、そして厳しく指導してもらうのを期待してたら乱入者とガチバトルになるなんて誰が想像できようか。

 

 でも、まあ、超楽しかった———

 

「———油断、たぁぁぁてきぃぃぃッ!!」

 

「っ!? 耐えたのかよっ!?」

 

 煙の中から突進してきたのは、エクサランスカノン・フルバーストで撃墜したと思っていたヴィータだった。 もう色々と恥ずかしいことになっているバリアジャケットがダメージの大きさを物語っている。 だが仮にもRランクカードはN+の攻撃では簡単に墜ちないということか。

 

 防御、間に合うか......?

 

「貫け———アロンダイトッ!!」

 

 アイゼンを構え突っ込んで来たヴィータが下からの突き上げるような紫色の砲撃に飲み込まれる。 エクサランスカノン・フルバーストに比べ直撃範囲が桁違いに広いそれは五秒以上照射され、徐々に細くなりやがてほぼ全裸になり気絶したヴィータだけを残して消えた。

 

「い、今のってもしかして......」

 

 下を見ると紫天の書を開き、此方に杖を向けているクローディアさんがいた。

 

「まさか殆ど一人で倒すとはな......予想以上の掘り出し物だ。 我らダークマテリアルズのメンバーになる最低限のラインはクリアしておるな」

 

 腕を組み満足気に頷き、クローディアさんは一言、

 

「カイナ・トラバースよ。 うぬを我らダークマテリアルズのメンバーとして認めるぞ!」

 

 ......話の筋が全くわからないんですけど。

 




 二人で戦う(王様が活躍するとは言っていない)

 Forceの装備ってカッコいいから活躍させたいんですはい。 連載再開しないかと祈って書いてます
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