斬る、叩く、打つ、削る、焼く、煮る、伸ばす、吊す、刺す、剥がす、沈める、閉じ込める、引き裂く、etc.……。
この仕事を始めてから一体どれほどの時が過ぎたのだろうか?
先日、共に仕事をしていた奴の1人が遂に気を狂わせ姿を消した。たしか名は……ザンクといったかな? いや、ジャックだったかもしれない。
まぁ、どうでもいいことだ。人が居なくなれば新しい者がやって来る。まるで消耗品を補充するかのようにな。
所詮俺たちは小さな歯車の一つでしかない。使えなければ他に取り替えられてしまう程度の量産品だ。そこに個人の意思は無く、大きな流れに沿ってただただ摩耗していくばかりである。
だが、上の者達は気付いているのだろうか? 如何に小さな消耗品といえども、その数は無限で無いことに……いや、気付いていればこんな世の中には為っていないか。
◇◆◇◆◇
ある日突然、上から呼び出しをくらった。上の者が現場に出て来ないことをいいことに処刑の人数をちょろまかしていたのがバレてしまったのだろうか?
いささか拙い。が、まぁいいさ。
帝具使いだった監獄の署長はこの前死んじまったし、帝具はそのまんま奪われちまったから今ここら近辺に帝具使いは1人もいない。
偶然だったとはいえ、つい最近帝具っぽい道具を手に入れたから、もし殺されそうになっても逃げれるからね。
俺は上のお偉いさんがいる部屋につくと扉を叩く。
「入りたまえ」
部屋に入り、敬礼をする。
豪華な部屋で肉と酒と食い散らかして、女を何人もはべらせている、太り気味のおっさんが座っていた。
かなり中心部まで呼び出されたので、奥まで呼び込んで逃げれないようにしようとしているのかと勘ぐったが、どうやら相当上位のお偉いさんに呼ばれただけらしい。
護衛の兵も少ないようだし……あれ? 俺もしかして結構信頼されてる?
「君を呼び出した理由は2つだ。1つ目、この前処刑人の男が署長を殺し、帝具を奪っていった事件があっただろう? 空いた署長の座に君が座れ。そして討伐隊を結成し、隊長として逃げた盗人を殺して帝具を取り戻してこい。2つ目、どうやら近々、反乱軍の人間共が私を殺そうとしているらしい。コレを防げ。手段は問わん、成功すれば望むものをなんでも与えてやる」
あ~、なるほど、よく考えたら処刑記録の改竄をする為に、最近は書類仕事は全部俺だけでやっていたな。
……つまり、働きたくないでござると言っている訳だ。書類に目を通すのすら面倒とか、マジで終わっているな。
というか間はどうした、間は。ん? もしかしてあれか? なんか問題でもあって俺に直接ってか?
確かに辺境に近づけば近付く程、左遷された反大臣派の人間も増えるしなぁ~。
取り敢えずコイツは信頼出来る人間が少ないから、この仕事の経歴も長く、おそらく裏切らないだろう俺に権力と金を渡すことで味方に付けようと考えている訳だ。
拒否してもデメリットばかりでメリットが無いので、一応了承して部屋を退出する。
◇◆◇◆◇
廊下を歩きながら、過去を振り返る。
よく考えてみると今の皇帝が産まれる少し前に此処へ飛ばされたから、かれこれ20年ぐらいここで働き続けているのか。帝都でもナイトレイドとやらが派手に動くようになって来たしなぁ。
……よし、どさくさに紛れて俺もそろそろ動くか。