「
ソプラノの歌声が牢獄に響き渡る。
その澄んだ美声で歌われると、聞く人の誰もがつい耳を傾けて聞き入ってしまう。
「
彼女が歌っている間は、淀み薄暗く湿気たこの場所でも、まるで楽園に早変わりしたかのように錯覚させてしまう。
「
こんな汚い場所でも彼女は常に楽しそうだ。
その感情が歌声に乗り、聞く人の心を掌握してしまう。
だからこそ
巻き込まれて仕事を押しつけられた俺にはいい迷惑だ。
「檻から出~れば、
鬼とは俺のことだろう。
と言うか、お前も鬼だろうに。
「門の守護者はお~馬鹿さん♪」
あ~、だんだん腹が立って来た。
俺は入り口をぶったたいて、大きな音を出し、奥にいる彼女の歌声を遮る。
「
クスクスと笑い声が返って来る。
俺はズカズカと歩き、彼女の檻の前まで向かう。
「ねぇねぇ、
「どうでもいいわ! ちった~反省しやがれ」
「何を?」
キョトンとした顔のこの女に罪悪感は一切無い。
何故ここに閉じ込められているのかも分かっていないのだろう。
この女は現皇帝の腹違いの姉。
勢力争いに破れ大臣に殺されそうになっていたのもそうだが、他にもいくつか理由が重なって東のこの地にやって来た。そして、その時に鬼具が使えるようになり、試し切りでその場にいた民を数十人、皆殺しにした。
他の鬼に捕らえられて以後、十年ほどずっと檻の中にいる。
とはいえ一番の理由は我慢や隠し事の出来ないこの女が人を操る能力を持っていることを大臣から隠す為だろうがな。
究極の自己愛。
自分以外に全く興味を持てないこの女は何を仕出かすか全く予想出来ないだろうからな。
「ねぇねぇ、いい加減檻から出てもいいかしら?ここには貴方がたまに来るくらい出し、暇なのよ」
「ダメに決まっているだろう。勝手に外に出したら俺が怒られる」
「別にいいじゃない。私は困らないわ」
「俺が困るっつーの」
不満そうに口を尖らせている目の前の女にため息をつく。
「ため息をつくと幸せが逃げるらしいわよ」
「誰のせいだ、誰の」
「さぁ?」
本気で言っている所が手に負えない。
とはいえこんな女でも場合によっては使わなきゃなんねーんだろうな。
それもそう遠く無い内に出番が来るだろう。
東方鬼々のメンバーも、戦力や人手に余裕がある訳じゃないしな。
これからより忙しくなっていくのが容易に予測出来て、ますます憂鬱になってしまった。
ガックリと肩を落としてあからさまに落ち込む俺を