クロスアンジュ 儚き竜達への鎮魂歌   作:見知らぬ誰か

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第03話 初陣

 第1中隊に入ってから早1週間。その間に体力作り、銃器の扱い、格闘術、戦術論、パラメイルの操縦などについて叩きこまれた。この歳(12歳)にしてはかなりいい数値らしい……

 

「レナ」

「ジャスミン」

 

 そんなある日の夜、少しジャスミンの経営するアルゼナルの商店であるジャスミンモールをぶらついているとジャスミンに話し掛けられた。

 

「どうした? ジャスミン」

「お前さんのグレイヴが納入されたって話だ」

 

 グレイヴというのはこのアルゼナルで運用されているパラメイルの新米に渡される初期機体でメイルライダーはそれを自費で改造するらしい。改造パーツはジャスミンが仕入れるパーツ……まぁ、新米には関係ないな。

 

「1000万キャッシュまではツケてやるから改造しないかい?」

「私にそんなに肩入れして良いのかい?」

「お前の親代わりだからね。情が移っちまったよ」

 

 そんなんで大丈夫か……?

 

「いや、シミュレータでだいたい分かってるから大丈夫だ。今はあれで良い」

「そうかい? ま、改造したいときは言いに来な」

「あいよ~」

 

 そう言って私はジャスミンモールから出て司令室へと向かった。

 司令室に入る。

 

「司令官」

「レナか……なんの用だ?」

「自分のパラメイルは何処でしょう?」

「早速改造か? パラメイルはノーマの棺桶だからな……整備デッキにあるはずだ。やるならそこのメイってやつに言いな」

 

 私は敬礼して下がる。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 整備デッキ……そこには20機近いパラメイルが置いてあった。

 

「新人のレナだよね? 何か用?」

 

 近づいてきた小さいのに聞く。

 

「メイ……ってやつは何処か知らない?」

「ああ、それは私だよ。パラメイル関係で何か用?」

 

 こんな小さいのがここで仕切ってるのか……凄いな……

 

「自分のパラメイルはどれ?」

「えーと……ついさっき納入されたやつだから……あれだね」

 

 メイが指さした先には白と水色のパラメイルがあった。

 

「それで、新人が早速改造?」

「えーと……各関節の反応性を上げたいんだよね」

「レスポンス……? 分かった。でも慣熟の時間あるかな」

「兎に角お願いしたいんだけど……」

 

 メイは少し唸ると頷いた。

 

「分かった。初回だしそこまで難しいことじゃないからお金は要らないよ」

「ありがとう」

「多分、明日には終わってると思う。ここから先は私達整備クルーの仕事だから」

「え……自分の調整とかは?」

「あー……じゃあ、現状の状態からどれ位早くして欲しい?」

 

 私は少し考え、そして言った。

 

「反応を約1.5倍にしてくれるか?」

「分かった1.5倍だね!」

 

 メイはそう言って整備に向かった。私もこれ以上やることはないため自室に戻ることにした。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

「おかえりー」

 

 部屋に戻るとルームメイトのハナがそう言って迎えてくれた。

 

「ただいま」

「少し油臭いね、整備デッキにでも行った?」

「いつも通り、鼻がいいね」

 

 ベッドに座りながら言った返事にハナは笑った。

 

「それくらいしか無いからね。整備デッキ行って自分のパラメイルでも見てきたの?」

「いや、改造を頼んできた」

「手が速いね……でも、ちょっと危ないかも」

 

 ハナが出した1枚のカード……ハナがよくやっているタロットカードだ。

 描かれているのはボロボロのローブを被った大きな鎌を持つ骸骨……ⅩⅢ(13)番『死神(Death)』出された方向は正位置……その意味は……

 

「終末、破滅、離散、終局、清算、決着、死の予兆、終焉、消滅、全滅、満身創痍、不吉……か」

「ワンカードスプレッドだからこそストレートな意味だね」

 

 もしかすると危ないか……占いだしな。

 そう思ってカードをハナに返そうとした瞬間、サイレンが鳴り響く。

 

「……ほんとに、ヤバイかもね」

 

 ドラゴン警報のサイレン。

 

「じゃ、行ってくる」

 

 私はベッドから立って部屋を出た。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 速攻でライダースーツに着替え、整備デッキに私は向かった。

 

「メイ!」

「何!?」

 

 声のした方に向かう。

 

「私のグレイブの方は?」

「結構ヤバイかも」

「どういうこと?」

 

 メイは少し言い渋るが、言った。

 

「微妙な調整が終わってない。後はインジケータ側から弄るだけなんだけど……」

「微調整……大体は終わってるんだよな?」

「うん!」

「その微調整のやり方教えて。移動中にやる」

「それは駄目!」

 

 厳しい口調でいきなりそう言われ私は一歩下がる。

 

「行動中の調整はダメ。訓練中ならまだしも実戦ではダメ」

「……分かった。基本運用は問題ないよね?」

「少し不安は残るけど大丈夫だと思う」

「分かった」

 

 恐らく戻す時間はないのだろう。ならば仕方が無い……

 

『――第1中隊はデフェンスコンディションをクリリナリーへ』

『――エナージェンシー』

『――第1種遭遇警報発令』

 

 騒がしいがこれもいつか当たり前になるだろう。

 発進デッキへ向かうともう既にそこには中隊員全員が揃っていた。

 

「機体の調整頼んだ直後でこれだろ? どうなんだ?」

 

 隊長がそう聞いてくる。

 

「大半は終わって後は微調整だったって話です」

「そうか、後方に待機だ、いいね?」

「はい」

 

 発進デッキにパラメイルが揃うと全員騎乗する。

 

『――新米は調整不良のため最後方で援護。サリア、直援に付け』

『「イエス・マム」』

 

 各機発進し前方が開く。

 訓練通り、後方にアレスティングギアが展開されるのを確認するとランディングギアを起こし発進する。

 高度1200……やはりシミュレータとは感覚が違う。風が気持ち良い……ってうわ!!

 

『――振り落とされるんじゃないよ!』

「りょう……かい……!」

 

 レスポンスが良いせいでシミュレータの感覚で動かすと挙動が全く違う……

 

《――シンギュラーまで距離残り10000》

『――よォーし! フォーメーションを組め!!』

『イエス・マム!』

 

 隊長を中心とした円陣形、私はその一番後ろに付く。

 

《――シンギュラー開きます!》

 

 空間に紫電が走り、円を描きそこから翼を持つソレが出てくる。

 

「あれが……ドラゴン」

《内訳はガレオン級1、スクーナー級17》

『――案外多いが……全員、聞け! スクーナー級を5残し他は残らず狩りつくせ。新人教育はその後だ』

『イエス・マム!』

「イエス・マム」

『――特に命令はない、各個に撃破しろ』

 

 全員が突撃兵が突っ込み、他がアサルトモードで砲撃を開始する。

 パラメイルには航行するとためのフライトモードと戦闘するための人型の駆逐形態があるのだ。

 

『――レナ、アンタは後方で待機。分かってるわね』

「了解」

 

 駆逐形態に変形しそこに留まる。

 ……って、待つだけじゃダメなんじゃないか……撃ち漏らしがこっちに来るし……

 

「はぁ~……ふぅ~……」

 

 照準を合わせて、トリガーを引く。

 右手の対ドラゴン用アサルトライフルから弾が撃ち出されその何発かがドラゴンに命中し落ちる。

 

「怖い……」

『――落とした?』

「これでいいの? サリア」

『――あ……えっと……』

 

 突然インジケータ横のモニターに隊長が映る。

 

『――サリア、まだ数は多いが始めても構わん。腕は言いようだからねぇ!』

『――イエス・マム。そういうことだから始めるわ』

「よろしく……」

 

 結構怖いよ、これ……

 

『――戦闘についてだけど基本動きながら攻撃すること。止まってたら良い的よ』

「了解」

 

 私はスロットルとレバーを操作し、動きながらドラゴンに攻撃を行うが当たらない。

 

『――まっすぐに向かって来ない奴には偏差射撃を行いなさい。移動する方向に照準を置いて撃つの』

「こう……かな?」

 

 攻撃が普通に当たりドラゴンが再び落ちる。

 

『――ほんとに筋がイイねぇ! 全員下がりな! 新人祝だ。ガレオン級以外の残りくれてやりな』

『――うわ、隊長酷い……』

『――まだまだ残ってるよ~!』

 

 ……数えると残り9……新人に任せる量じゃない……けど、やってみよう。

 

「サリア」

『――何?』

「右手のソレ貸して」

 

 私はサリアの対ドラゴン用アサルトライフルを貸して欲しいと言う。

 

『――ハァ?』

『――こりゃあイイ! サリア、貸してやんな』

 

 隊長も随分と乗り気だ。

 

『――分かったわ。はい』

「ありがとう」

 

 左腕で受け取り小さいドラゴンが居る中に突っ込む。

 

「動きながら……」

 

 スラスターを制御しドラゴンに近づかれないように動く。

 

「移動先を先読みし照準し……」

 

 正面にいる2、3体の移動予測先を照準し

 

「攻撃する」

 

 両腕のトリガーを引いた。

 連続射撃により3体連続で落とし、次を狙う。

 逃げるような立ち回りをして、ドラゴンの着いて来れる旋回角度で曲がり90度その場でターン。着いて来たドラゴンを照準し一気に落とす。これで4つ落とした。

 後2つ……は右と左から挟撃。私は両腕を開くようにして機体側の照準ではなく大体の銃身の照準を行い撃った。どちらも一緒に落ちた。

 

『――凄い……』

「サリア、返す」

『――え、あ……分かったわ』

 

 サリアが近づいてくる。左腕のアサルトライフルをサリアの機体の右腕に渡す。

 

『――凄いじゃないか! 新米!』

「いい加減、名前で呼んで貰えません?」

『――ああ、済まないね。レナ』

「大きいの、逃げちゃいますよ? 良いんですか?」

 

 今、ピンク色のヴィヴィアンのやつと赤いヒルダのやつで足止めしてるけど……

 

『――わざとだよ。どうやって大きいのを落とすのか見ときな』

 

 そう言った瞬間、前衛とサリアと隊長が前に出る。

 

『――総員、凍結バレット装填』

 

 多分、何かの操作をしたのだろう、左腕の緑色のを展開し全員大きいのに突撃する。

 一番最初にヴィヴィアンが左腕のを撃つと当たった所が大きな氷の結晶を作るように凍結し崩れる。次にサリアとヒルダが翼の付け根に撃ち込み、最期に隊長が腹にゼロ距離で撃ち込むと大きいのは落ちて海中に没すると瞬時に海が凍った。

 

「……どんだけ冷たいんだ」

 

 そうして、私の初陣は終わった。スクーナー級10体、それが初陣のスコアだった。新米でこのスコアは良いらしいが、戦い方も特殊な例らしかった。少なくとも新人じゃないのではと疑われるようなレベルらしい。

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