5月
朝と放課後には、運動部の生徒の夏季大会にむけて練習する声が響く時期。
ここ北ハジマーリ高校の生徒は、不真面目な生徒、真面目な生徒がはっきりと分かれる学校。
そして1年B組の生徒は、ホームルーム中にも関わらず、ひそひそと話をしている。
さすがに当日にもなればバレてしまっているようだった。
今日は転校生が来る。
こんな時期に転校生は珍しい。全員、男子か女子かを話し合っていた。
でも、俺は興味がない。
関係を全く作らないというつもりはないが、最低限の交流は持つつもりでいた。
あいつ以外には・・・絶対に心を開かない。そんなつもりで。
「じゃあ、皆知っているだろうけど。転校生を紹介するわ。」
担任の先生が出席簿をぱたんと閉じて、ドアの方に声をかける。
ガラッと大きめの音を立てて入ってきたのは男子だった。
褐色の肌と、黒髪をワックスで上にあげ、ツンと伸ばしているのが特徴的だった。
服装は、ワイシャツのボタンを全開にし、緑色のタンクトップをモロに出していた。
「あれ・・・あいつ。」
どこか、あいつに似て・・・っていうか・・・。
「エルフか・・・?」
*
時間ギリギリに教室前に着く。
先生に、時間の5分前には職員室に来てくれと言われていたのに、遅れてしまったせいで少し叱られてしまった。
まだ呼吸が整っていないせいでドアを乱暴に開け、自分でもドキリとする。
その後は、しっかりと深呼吸をし、息を整え黒板前に立つ。
「はいそれじゃあ、自己紹介して。」
担任の先生に背中をポンと押される。
「えっと、エルフ・ノベンバーです。ハジマーリ学園から来ました。」
「エルフか・・・?」
「ぇ?」
自己紹介をしてすぐ、誰かに名前を呼ばれる。声がした方を探す。
俺と目があった瞬間逸らす男がいた。たぶんあいつだ。
金髪の長い髪を後ろで束ねている。それだけを見るとぱっと見女かと思ったが、体格とかが男そのもの。
制服は一切乱れなく整っている。規律にはうるさい人かも。
「あれ?エルフくん、アルフくんと知り合い?」
「「え?」」
見ていたのがバレたらしい。俺とそのアルフと呼ばれた人が反応する。
「え、いや知り合いじゃ、」
「あ!はいはい!俺そいつと知り合いです!!」
えーーー!?いやいや、俺と君初対面!まったく知らない!ユー!アイドンノー!!!
俺の視線での訴えは全く聞かず、先生は俺たちを知り合いだと思い込み、ご丁寧に隣の席にしてくださいました。ホントもう・・・
「・・・なんかごめん。」
そっぽを向いて黙っていた男がこちらを見て謝罪をする。
「いや、ていうか。なんで知り合いやゆーたの」
「・・・つい。」
少し視線を逸らす。
それでも会話を続けなければと思い、自己紹介をする。
「さっきも言うたけど、俺エルフ・ノベンバー。ハジマーリ学園ではテストでいつも一番とってたんや!すごいやろ!」
「偏差値70の高校か。俺はアルフ・パキントン。アルフでいいから。」
・・・・・・・・・。
気まずい沈黙
まずい、知り合いだと言っておきながら気まずそうにしているところをクラスメイトに見られたら何て思われるだろう。
・・・逆になんも思われないかも。転校生の事情なんてどうでもいいだろうし。
「ところでエルフ、部活は決めたか?」
「え、部活?」
「そう、この高校は部活強制だぞ。知らないのか?」
そういえば、手続きの時そんな話をしていたような、していなかったような。あの先生の話長ったらしくて寝てたし、聞いてないかも。
「えっと・・・ここには何部があるん・・・ですか?」
「ん?そうだな。運動部だと、野球部、バドミントン部、剣道部が有名だな。」
「たしか、剣道は県で優勝、野球は地区大会準優勝、バドミントンは、個人大会で優勝した奴が何人かおるって。」
この高校は、成績はあまりよくないが、運動部が盛んだと言われていた・・・はずだ。正直知らん。
野球部には北ハジマーリの戦士、
剣道では金色のカラス、
バドミントンでは伝説の勇者
と呼ばれる男たちがいるという噂を少し聞いたことがある。本当、よく知らんけど。
「そう。あとは、文化部だと、演劇部、映画研究会とかがある。実際にいろいろ見学した方が早いよ。」
部活動
前の学校では無所属だったから、何がいいのか全く見当がつかないな。
なんとなく、人が多いところは避けたい。試合とか実績とか残せるかどうかもあるし。
野球は・・・、北ハジマーリの戦士とかと一緒に部活をやりたいと、人が集まるだろうし、剣道やバドミントンだって同じなはずだ。
演劇なんて、演技に自信が無いわけではないが、女子が多いに決まってるし、映画研究会は何をすればいいんだろう。
やっぱりいろいろ見学して。
「そうだ、アルフは何部に入っとる?」
ふと、どうせ部活に入るなら友達とまではいかないが、知り合いが一人でもいる部活の方が楽だろうとアルフの部活を聞いてみる
「俺か?生徒会執行部だよ。」
「せーとかい?」
「そう、そこで書記をやっている。」
「人は多い?」
「んーっとな、他にあと四人しかいないな。」
四人。アルフも合わせて五人か。
だったらメンバー同士での喧嘩とかもそうそう無いだろうし、比較的楽か?
「明日、そこ見学して行ってええか?」
「別にかまわないよ。毎年人手不足だから、入ってくれるなら歓迎するよ。」
アルフが少し微笑む。どうやら入ったら本当に嬉しいらしい。
今日は転校初日でいろいろ準備やらをしないといけない。明日見学に行って、良さそうだったらそこにしよう。
授業開始のベルが鳴る。
今日はここまでにして、部活のことは明日にしよう。