「美琴ちゃんも初ちゃんも真紅郎くんもまだまだあるからたっくさん食べてね」
と、柔らかい笑顔で言われた言葉に、それぞれ”是”という意味を返した。
美琴はそう言葉を発した本人である女性に笑顔で返しながら食卓へと、それとなく視線を向けた。
食卓には一条家の面々といつものメンバーが席についている。一条家は今話しかけてきてくれた女性、そして二人の少女と将輝である。残念ながら家長である一条家当主は欠席していた。
それは少し前のこと、一通り実技の訓練を終えた美琴達一行は将輝の部屋にて再び筆記の勉強をしていた。初への教え方は一問一答制へと移行させ、的確に多くの問題を意図的に短時間で答えさし、その正答率によって次の範囲を決めるというものを実行していた。
これは反射的に問題を多数解かせることにより脳を強制的に働かせ、記憶力を強化するものであるが、初は一生懸命に頭を回転させていたが頭上に煙の幻影が見えるようであったとは真紅郎の談である。
「大変そうだね、兄さんたち」
「茜…ドアを開けるのは「返事を確認してからって言いたいんでしょ、さっき美琴さんに飲み物を持ってきますっていったわ。」
美琴はその兄妹の様子を微笑ましそうに観察していた。自身の弟達とはこのような会話はないので新鮮に感じる、どちらかというと弟達は甘えてはくるが、反抗してはこないのだ。
因みに美琴は先程お手洗いに立った時に茜ちゃんと会っている。
茜ちゃんはお盆に人数分(+自分の分)の飲み物を乗っけて部屋に来ており、お盆を机の上に置いた。初は喜色満面になりながらキラキラと目を輝かせ、「いただきまーす!」とオレンジジュースを手に取った。その子供のような様子に、美琴だけでなく、茜や吉祥寺、一条も少々呆れ顔ながらも楽しそうに見守っていた。
「っっプハー!生き返ったぁあ!」
「そんな大げさな」
「真紅郎君、このおねいちゃん歳は?」
「いや、同い年だよ…」
そんな何気なさの会話が目の前で行われていた。
それらは美琴には少し、眩しかった。
会話が交わされた後、一条のお母様から食事に誘われ、ご相伴に預かることとなり、一同は食卓へと移動した。
美琴は一条の母にあって中々の衝撃を受けていた。勿論、初見である初もどうようだが。
ーーーえ?お姉さんじゃないのーーー
「美琴さん、一番なの、すごい」
「ありがとうございます瑠璃ちゃん。」
「美琴さん、かっこいい…」
ご飯を食べるテーブルにて美琴は隣に座った瑠璃に異様に懐かれていた。どうも瑠璃の中の理想の姉像に美琴がぴったりだったようである。
一同が食卓に着くのを見ると、成る程よく似ている。我が家の三つ子ほどとはさすがにいかないが、顔立ちや雰囲気がそっくりだ。特に一条と一条の母…美登里さん、茜ちゃんは髪の色も似ているからか、よくわかるものだ、瑠璃ちゃんはお父上殿に似ているのか、少々違うが、面影はある。
「それにしてもごめんなさいね、うちの人が仕事でいなくて…」
「いえ、こちらこそ団欒の場にお邪魔してしまいまして、美味しいお食事も出していただきまして、ありがとうございます」
「本当に!この唐揚げおいしいし!」
実際、食事は美味しい。
唐揚げは油が少なめでカラッといい具合に上がっている。機械の完全自動機能で家事の下手などは気にならなくなったからといって、機械の質というものがある。一条家は大変いい機能付きなのだろう。因みに篠原家では未だに手ずから料理を作っていたりする。絶滅危惧的な中の一家庭だ。
「ありがとうね、美琴ちゃんのことはうちの人も話してたのよ。お父様のご自慢の娘さんなんだって。
優秀なお父様なのね、美琴ちゃんも、将来は軍人へ?」
「はい、我が家は代々軍人として勤務させていただいております家系だとは理解していただいているかと思いますが、それを抜きにしても軍人へなりたいとは思います。」
美琴はニコリと笑う。
父の言葉には羞恥を覚えるが、いつものことなので割愛し、聞かなかったこととする。いや、そうしなければやっていられないというのが先に立つが。
軍人になるのは決定事項だ。そもそも魔法師の育成の目的は国家の戦力及び防衛の強化のためである。そのために魔法師は専門の機関にて専門の教育を受けることができるのだから、国家に還元しなくてはならない。
美琴は転生前はいうならば戦闘職であり、そういったことに抵抗がない。人には言えないが今でも他人とは一線を科したことをしでかしている。主に家業だが。
「まぁそんな、女の子なのに」
「母さん」
「だって将輝、美琴ちゃんも初ちゃんも女の子なのよ、いくら魔法科高校の生徒だからって」
「確かにそうだけど…」
一条と美登里さんはそう言っているが、自身としては何も問題ない。そう言ってもらえるのは嬉しいとは思うが、なんだかな…と美琴は頬を掻いた。
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「ごちそうさまでした、美登里さん。」
「遅くまでお邪魔してしまいましてすみません」
「お邪魔しました!」
真紅郎、美琴、初は扉の前で振り返り、会釈とともにお礼の言葉を言った。
「全然いいのよ、楽しかったわ。またいらっしゃいね」
美登里さんは笑顔で手を振りながら送り出してくれた。
ふと、微かに目を細める、もし、この人が私のやっていることを知ったとしたら、どのような反応をするのだろう。さっき心配してくれたように、やはり危ないと言われるのだろうか、呆れられるだろうか、息子と関わらせないようにするだろうか、その目に、その優しげな目に、恐れと不安を漂わせるのだろうか。
ーーわかっている。
覚悟なんて問わないくらいに出来ているのだから。
美琴は笑ってもう一度会釈をした。
だれも、心の中の、瞬時の葛藤に気付いたものはいなかった。
「ごめんなさい一条くん、送ってもらってしまって」
「ん?いや、大丈夫だ」
駅まで一条に三人とも送ってもらい、ここからは別れることとなった。もう辺りはだいぶ暗くなっており、危ないとのことだったが、美琴が校内で無双したことは皆が意識の片隅に追いやっていた。
もっとも、紳士である一条のことだ、それをはなから気付いていてもそうしただろうが。
いざ、みんなが別れようとした時、美琴はまるで秘密のものを共有するかのように初の手のひらにあるものを滑り込ませた。
「ハイ、初。」
「ん?
「生徒会の先輩で系統学専攻の人がいるから、範囲を絞ってもらったの。
一昨年の問題も写してもらったからそれも、あとそれを踏まえた上で重点となりそうなところをピックアップしてまとめてみたから、これみて勉強して?」
「!?」
初は手のひらで弄ぶように転がしていた記憶媒体をギュッと握り締めながら胸元に押し付けた。瞳はびっくりした余韻から見開きながらもキラキラとしていて、美琴を見つめていた。
美琴は「もう絶対離さない」というが如く握り締めている初の行動に笑ってしまい、「別に取ったりしないわよ」と言った。
「そうか、今日一日中画面にかじりついてたのはこれが理由か。」
「こいつのためにお疲れな」
「ありがとう!!美琴ありがとうございます!手伝ってよコンチクショーとか思っててすみませんでした!後将輝黙れ!」
「あら、そんなこと思ってたの?…返してもらおうかしら。」
「うわぁあ!ごめんなさい!!!」
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筆記
1位…篠崎美琴 900点
2位…吉祥寺真紅郎 856点
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7位…一条将輝 742点
「やっぱりあいつら化け物だわ。」
学校の掲示板の下、よく見知った名前が羅列されているのを見て、前回よりも明らかに上がった自身の結果をよそに、初はそう呟いていた。
投稿したと思っていたらできておりませんでした…すみません…
4月は新しいことややらなくてはならないことが多すぎてなかなか筆が進みませんでした…
ですが!なんとかなったので←死にそうでした
これからは更新速度を一定にしていきたいと思います!だいたい一週間に一回出来ればいいなーと思っています!