魔法科高校の劣等生の華   作:蜜柑飴

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何か説明的な文章になってしまいました…
BLEACHの台詞の言い回しがあります。ご了承ください。


人語り

 

 

 

 

私は死んだ。

前世の私のことはすでに変えられ用のない事実だ。

 

そして産まれた。

 

ーー篠原美琴という存在に。

 

 

 

初めから記憶があったわけではなかった。

徐々に思いだし、馴染んでいって、それは経験へと変わっていった。

 

それは慟哭の記憶で

そして同じ位に哀しい記憶だった

 

もう当時の力がない代わりに

この、今の世界には魔法がある。

 

戦いは治らない。

平穏な世界はまやかしで、

それでも人々は生きている。

 

 

 

 

 

 

「この子が達也くんだよ。

達也くん、この子は私の娘で、君の遠縁にあたる美琴というんだ。

仲良くしてね」

 

ある昼下がり、婚約者だという男の子に出会った。

 

黒髪の、まだあどけない年齢のその子は、頷いて「はい」と応えたのに、

それは何処か機械的だった。

 

 

「ねえ」

「はい」

「話さないの」

 

大人たちの気遣いで二人きりになって、初めて言葉を交わした。

 

感情のない瞳は、記憶の中にある、白い彼に少し似ていた。

声は似ていない。肌に触れてみた、温かい。

生きている温かみ。

彼とは違った。何だか可笑しかった。

感情の映さない瞳なのにも関わらず、触れた手の肌には生きている証が有るのだ。

彼が感情を奪われたのは知っていた、知らされていた。それが、どのような経緯でなったのかも。

私の親はそこのところ結構ゆるい。

 

 

「話さないならそれでもいいよ」

 

 

そう言って近場の本を手に取った。初等の魔法の手引書。

この身体に生まれてから、私は身体が少し、弱くなった。

弱くなった私に両親は惜しみなく本を与えたために、私は本の虫になっていた

魔法とは、技術だ。記憶の破道や縛道に少し似ている。だから憎むと同時に、興味を持った。

(前世の私は、鬼道が得意だった。だから、どうにか再現できないかとも思っている。)

それ以外の本も数冊持って男の子、ーー達也くんの腕を引いて温かい部屋まで引っ張っていき、フカフカのカーペットへと半ば無理やり座らせた、移動中、抵抗する気はさらさらないかのように、戸惑いながらも引きずられていた。

座らせると私はその背後に回り込んでストンと腰を下ろし、背中合わせに座って本を開いた。

 

日差しが暖かくて、柔らかい。

背中の服越しに、仄かな体温と心臓の音。

黙って本を読んでいると、達也くんの方もやることがないからか、傍の本を手に取った。

二人して黙々と本を読む。紙が擦れるような音が時折聞こえ、鳥の囀りも聞こえた。

心地よい空間。

誰にも邪魔されない、この時間。

 

 

 

 

持ってきた本が全て読破され、気付くともう夕暮れだった。

もうすぐ親が来るだろう。それでも彼の瞳は変わらないのだろう。

 

 

「また、来てね」

その言葉に、彼は微かに頷いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「美琴、達也くんはどうだった?」

夕飯時に聞かれた言葉に顔を上げた。

何が楽しいのか、ニコニコしている親に、なんと返したらいいのか一瞬迷ったが、正直に答えることにした。

 

「悪くない」

 

悪くない。いい言葉だ、まだ数刻あっただけにしては上出来の言葉だと思う。

 

「あら、かっこいい子だったじゃない」

「浮気かい?」

「違うわよ、もぅ」

「くくっ、愛しているよ」

「も、もう、私もょ…」

 

「ご飯たべない?」といって、トリップする前に食事へと戻す。ラブラブな両親に、この娘。どうしてこうなったかといえば、記憶があるからと答えよう。

 

まあ、仲良きことは良いことだ。記憶がある分、私に親という感覚は薄いが。

 

どこかで悟っているのだろう。この二人は親だという事実を其処まで押し付けようとしない。判断するのは私。よく出来た二人だ。

悪いとは思っている。親不孝な娘だろう。でもこればかりは、どうしようもない。

 

「また連れてくるよ、近いうちに」

「歳も近いしね」と笑う父。「オヤツを用意するわ!今度こそ!」と意気込む母。(今日はオヤツを食べなかった)

そして安堵する私がいた。

 

ーーーーーーーーーー

 

数日後、宣言通り達也くんは来た。そして同じように背中合わせで本を読んだ。今度はオヤツも食べた。

何度も

何度も

 

 

そうして一年が経って、季節が巡った。

私達は徐々に話をするようになってきた。

そこまで長くはなかったけど、いろんなことを、少しずつ話した。

 

何が好き

何が嫌い

どんな本が好き

どんな本が嫌い

今日はどんなことがあった

そんな、たわいもないことを

 

少しずつ

少しずつ

 

 

春に桜の下で寝転んだ

夏に縁側で水菓子を食べた

秋に一日中本を読んで

冬に手を繋いで歩いた

 

 

私の前で、笑うようになった。

他の親戚の子達と遊んだ。

話が続くようになった。

いつしか私も自由に笑えるようになって

側にいるだけで幸せになった。

達也の妹の話も聞いた。

そして同時に笑った。

 

日々変わっていく中で、私達は変わっていった。

 

 

 

 

そしてある時、キスをした。

 

縁側では風鈴がなっていた。

 

お互いのくっ付いた口がいやに熱くて

離した後は二人して笑った。

目を二人して閉じないで

相手をみていて

永遠に続けばいいのにと

その時思った。

何度も何度も口付けて

そして抱き合って横になった。

なにもせず

ただ抱き合った。

 

研究の、手術の話も聞いた。

淡々と語る言葉。そのことに、達也はなにも感じていないのだと思った。

悲しいけど、なにも言わなかった。

 

言ってどうするのか。

 

なんとかできるのか。

 

そんな力もそんな慰めも、出来ない。

 

達也自身が、それを望んでいないこともわかっていた。

 

 

私はまた無力。

 

だから抱きしめた。僅かに隆起しはじめた胸に達也の顔を押し付けた。彼の方からも背に手が回された、お互いに何も言わなくて、涙も、流さなかった。

 

 

 

ある日、記憶の話をした。

二人でいつものように本を読んでいる時だった。

物語のように語り始めた私に、達也は相槌を打ちながら静かに聞いていた。

 

此処とは明らかに違うこと

其処には養父がいたこと

私がしたこと

彼等がしたこと

辿った困難

貴方に似ている白い彼

悪いことをしたこと

敵対した人のこと

 

 

ーー私の最後

 

 

 

 

 

軽蔑されると思った。

何処かで恐れていたことなのに、口から滑り出す言葉。

全部話し終えて、顔が見れなかった。

 

ふわっと

 

後ろから抱き抱えられた。

コーヒーの香りがほんのりと立ち上る。

 

「…どうしたの」

「……どこにも行かないでくれ」

「…行かないよ」

 

それからポツリポツリと話した。

初めは彼と重ねていた、と。

今でも父を覚えている、と。

 

「俺の前世がその《白い彼》なのかもしれないな」

「…さぁ、どうだろう」

 

 

 

実際のところは分からない。

でも少し、それなら、輪廻が私達にも回っているのなら、

あの御方も、いつか

 

 

「幸せに、なっていたら…」

 

 

また、逢えるだろうか。

覚えてなくていい。

知らなくていい。

すれ違うだけでも

言葉を交わさなくていい

そしたら言うんだ

 

 

身勝手な、私で

 

「ごめんなさい」

 

 

あの日、とうとう言えなかった過去の贖罪。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「皆さんの命も、この世界も、貴方が命がけで藍染を倒して護ったんすよ」

「…わかってる」

 

だけど…だけどよ…

 

女の子の声がする。

藍染が封印される時、側にいた死神。身体の至る所から血を流し、特に脚はズタボロで、それでもその眼には藍染だけを映しながら腕を懸命に前進させて這ってきた。

アイツは、俺は見たことがなかった。でもルキアや恋次が話してた先輩なんだろう

藍染の養子で、元十三番隊の四席。優しくて、無口で、それでもみんなから慕われていた、そんな奴だったって聞いた。話している顔は、苦しそうで。

 

封印された藍染に縋り付いて、狂った様に泣き出したのをみて、動けなかった。浦原さんも、痛ましそうにそれを見ていて、

 

あいつは、あいつにとって藍染は、大切だったんだと、わかるには十分だった。藍染にとっては、どうかしらねえが、あいつにとって藍染が駒と思ってようがなんだろうが、大切だったんだろう。

 

そして泣き止んで、その後ーー

 

 

「貴方は正しいことをしたんだ

そんな顔をする理由は何もない。」

 

 

 

ーーーーー

 

「俺は、藍染と互角に闘えるだけの力を手にして漸く闘いの中であいつの刀に触れられたんだ。

 

ーーあいつの刀には孤独しかなかった。

 

あいつの力が、生まれた時から飛び抜けていたなら、

あいつはずっと、自分と同じ目線に立ってくれる誰かを探してたんじゃねえのかな

 

そしたそれが見つからねえとわかったから、

あいつはずっと、心の中でただの死神になりてぇと願ってたんじゃねぇのかな」

 

 

黒崎さんのそれを聞いて、思い出したのは彼女のこと。

 

彼女は良くも悪くも盲目だった。

 

優しい子で、気遣いやで

昔から、そうだった。

 

 

 

《「あ、あの!ごばんたいたいしゃは、どこにありますか!?」》

 

《「は、はい、御父様のこと、だいすきです!」》

 

《「本日より、十三番隊へと配属を命ぜられました。

よろしくお願いします」》

 

《「浦原隊長、その節はありがとうございました」》

 

《「力が欲しいのです。休んでなど、いられません」》

 

《「この身で、何かを成せるなら、どうなっても構いません

ーーー自虐的だと思われますか?

しかし、それでこそ私なんです」》

 

 

彼女はわかっていたのかもしれない。彼が、孤独だったことに。

だからこそ彼女は、力を求めたのかもしれない。

 

 

 

 

《「あ、ぁああ、

あああぁぁああ゛あああぁぁああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ぁぁ

ぁぁぁぁぁ

ぁぁぁぁぁ

ぁぁぁぁぁ」》

 

 

 

 

 

彼女の最期の鳴き声が、慟哭が、耳から離れない。

後悔はしていない。

最善を尽くした結果だ。

 

 

最期の時

背を向けていた彼女は、いったいどんな顔をしていたのだろう。

 

その姿は霞のように消えて

 

まるでいたのがまやかしのように感じた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー空が見ている下で。

 

 

 

 

 





とりあえず、後半の文章はBLEACHのアニメ310話を見ながら書きました

藍染様!かっこいいです…
クロスオーバーっていうほどクロスオーバーじゃないですよね…
期待してくださっている皆様、申し訳ございません。

次からは一気に飛んで原作にいきたいと思います。
追憶編もいつか書きます。(具体的には7巻後位)

BLEACH要素は度々入れていきたいと思います。(鬼道とか)
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