この話からオリキャラが多数登場します。
新たな道筋
魔法。
それが伝説や御伽噺の産物ではなくなったのは今から随分と前の話。
当初『超能力』と呼ばれていた其れ等は、全人口にしては未だに少数でありながら、確実に使うものが増加していた。もちろんそれらは才能を有するが、技術体系化された現在は技能として、手法が定義されていた。
彼女は、その中のたった一人である。
ーーー春の花は変わらない。
その普遍なまでの美しさは何年、何百年、時空すら超越しても
篠原美琴は歩いていた。慣れない道を一歩ずつ。手には鞄を引っさげて、長い髪を流して風を切りながら。
ひらり、ひらり
風がさらっていくのをただ、目で追っていく。
国立魔法大学付属第三高校
その文字の刻まれた門扉を目にし、微かに瞳を綻ばせて美琴は笑った。
おもむろに片手を平にして差し出せば、淡い桃色の花弁が掌へと導かれる。桜で思い出されるのは今は夢でしか見られない、いつかの後輩の兄であり自身の先輩でもあった彼のこと。いつかの情景。そして今の最愛の彼と沈んだ、桜の花弁によって形作られた寝台に埋もれた春。
あぁーー暖かい
春の日差しが、後押しするかのように頭上から降り注いでいる。
キラキラと
儚い溢れものは自分を透かしてみせる。
大きな門を潜る。
自身には通い慣れない道。
でもそこに、今日から通うのだという満足感と達成感が、美琴の中を満たしていた。
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入学式というのは、今も昔も特に代わり映えのしないものだ。代表者や校長などの挨拶から始まり新入生総代の挨拶へと移行する。一条将輝にとって、取るに足らないものだ。と一様に言い表すことのできるものだった。例え、自身が十師族の『一条』というのに加え、『クリムゾン・プリンス』という二つ名の双方から、いやに注目を集めていたとしても。言い方は悪いが、既に“慣れた”のだ。そして彼にとって最も僥倖だったのは親友とともに第三高校に入学が叶ったことだった。
吉祥寺真紅郎、別名『カーディナル・ジョージ』。初めから友人がいるのといないのとでは心情的に幾分か楽である。
そんな彼は今、入学式でステージに立ち、宣誓を述べている生徒を直視していた。
将輝は自身に新入生総代の指名がなかったことには何の疑問も有していなかった。てっきり相方が命ぜられているものだと思ったからだ。疑いようもなく学業では自分は相方に劣る。しかし等の本人は隣で同じようにその人物を見ていた。
スラリとした体格、背は女子にしては若干高めだろうか、長い黒髪はサラリと背に垂らし、口調には戸惑いがなく堂々としたものだ。ここからではよく見ることはできないが笑みでも浮かべてるのではないかと思えるほどに余裕すら感じさせる。
何よりも、その話術には圧倒させられた。魔法を使っている様子はもちろんない。にも関わらず、講堂の全てが注目させられているのだ。身振り手振りを交えながらなされる演説とも言える宣誓は、そう長くなかったはずなのに、宣誓の後、皆がいつまでも聞いていたような気にさせられていた。
篠原美琴は言葉巧みに操りながら、聞いている人の心に少しでも残るように的確に言葉を紡いでいた。
魔法の世界とは非情である。
徹底した才能主義。
残酷なまでの実力主義。
それが必ずしも間違っているとは思わない。それだけ才能を評価しているということだからだ。だが、美琴はそれを受け入れ難かった。何故なら自分の大事な彼が、そのせいで「補欠」という位置に甘んじらされていたからであった。本人が認めているのはわかっているのだが、美琴と彼最愛の妹にしてみれば入試方法が間違っていると言わざるを得なかった。
彼等が通うのは国立魔法大学附属第一高校である。彼はペーパーテストでトップだったにもかかわらず「補欠」…
『個々が自らの力を過信することなく、謙虚に誠実に、何事にも真摯に取り組み、実りのある学校生活を送れるよう…』
言いながら美琴が思い浮かぶのはその最愛の彼…達也のこと。記憶の中の彼は、穏やかに笑みを浮かべている。
達也は、達也は…はぁ…本当にもう…
彼は興味などないんでしょう。周囲で何を言っても彼には関係ないのだ。彼はただ、妹のそばにいられればそれで良いと、本気で思っているのだから。だから私は幸せなんでしょう。そんな彼の側に居させてもらっているのだから。
美琴はつつがなく式を終えた後、特にこの後の予定もなかったので、ホームルームに顔を出すことにした。
美琴の所属するクラスは1-Aだ。
クラスに向かった美琴を迎え入れたのは、同じクラスの人たちで、それは何もおかしなことはないのだが、クラスに入った美琴を囲い込むようにして集まってきた。(美琴は気にしていなかったのだが、新入生総代としてステージでした宣誓に、本人の意図に関わらず着実にファンを増やしていた)
「篠原美琴と申します。これから同じクラスなのですし、どうぞよろしくお願いしますね」
美琴がそう言うと、群がっていた生徒達がそれぞれに「よろしくー!」や自己紹介をしてきた。多数の声が混ざって正直よく聞こえないが、これが高校生の年相応の反応というものだろう。美琴はそう思いながら、顔に出さないように笑みを浮かべた。
「すごかったな、さっきの宣誓」
「うん、引き込まれちゃったよ」
その声が聞こえ、周囲のみんなが押し黙ったことで美琴はそちらを向いた。
「『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』の二大巨頭にそう言って頂けるなんて、光栄ですわ。」
美琴は周りのクラスメイトと同じ笑みを持って二人に応えた。
表には出さないが周りに辟易したような二人の微かな雰囲気に、美琴はこの二人とは気が合いそうだと思った。二人もそう思ったのか、笑顔で近くに寄ってきた。
「はは、その肩書きはよしてくれ、何だか同年代からだと妙に恥ずかしくて」
「僕も」
「あら、ふふっ
では一条くんと吉祥寺くんとお呼びしますね。私のことはお好きにお呼びくださいな」
その後、しばらくの間三人で雑談をしていた。
美琴としては『一条』ということで少しばかり警戒していた節があったのだが、話してみると割と普通の男の子であったことに少々拍子抜けだったのと安堵したのが印象的であった。しかしよく考えてみれば前世の記憶がある自分でさえもこうして普通に生活しているのだから、家柄がどうというだけでさして違いなどないのかもしれない。
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「篠原美琴さん、ちょっと時間いいかい?」
ホームルームが終わり、帰ろうかと長い廊下を歩いていると後ろからそう話しかけられた。美琴が振り向くとその男性はニコリと笑みを浮かべた。
「はい、早乙女生徒会長。この後の予定はありませんので構いませんが、どうかなさいましたか?」
「いやなに、ただの勧誘だよ」
そう言って二人して笑った。
「入学式ではお互いに紹介されはしたけどね、改めて
僕は生徒会長の
「私は副会長の
「書記の
「後は会計がいるんだが…休みがちでね、来たらまた紹介させてもらおう」
生徒会室へと案内され、席に着いた目線の先には生徒会長とその左右に男女が控えていた。二人の特徴といえば副会長の方は女性で、見るからに活発でありそうな容姿であるということ、書記の方は実直そうな方でありそうだということだろうか。因みに生徒会長は柔和そうだが何を考えているのかわからない、というところだ。
「自己紹介が遅れました、篠原美琴と申します。
それで、勧誘、と言いますのは生徒会への、という認識で宜しいでしょうか?」
「あぁ、そうだよ、話す手間が省ける。
我が校の生徒会というのは代々、独自に多大な権限が与えられているんだ。生徒会長は前生徒会長の指名制で決められているのだけど、原則として生徒会に加入していなくてはならない。他の役員は生徒会の指名制。解任もまた然り。
まぁ、それはともかくとして、毎年の恒例なのだが、新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員となってもらうのが通例なのだが、何事もなければ君にも入ってもらいたい。」
「どうだろうか?」そう言った早乙女会長に美琴は微笑みながら「お受けさせていただきます」と応えた。
なんだかんだで三校メインになりました…一校であることを期待してくださった方、申し訳ございません…
九校戦まではオリジナル展開が繰り広げられます。キャラ崩壊など、ありそうですので嫌いな方は回れ右してください。
それでも見てくれるという方、ありがとうございます。
原作キャラは所々に登場します!BLEACH要素はもう一度いいますが薄いです!