魔法科高校の劣等生の華   作:蜜柑飴

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大遅刻すいません…前半は直ぐだったのですが、後半が大変難産でした…
こんな時に限って舞い込む面倒ごと…

今回の後半はある作品の人物要素をいれました!わかるといいな…


平和な世界

美琴は目の前の人物に対して、目をそらすことはしなかった。対峙しているのは自分よりも上背も横幅もある相手。

互いにジリジリと足を動かしながら回り込むように時計回りに進む。美琴の高い位置で纏めた髪が微かに揺れる。相手の瞳には常に隙を伺うように光が爛々と反射しており、好戦的な雰囲気が漂っていた。

 

どれくらいそうしていただろう

その時は急にだった。美琴に対峙していた相手が堪えきれなかったように勢いよく美琴へと突っ込んできた。すかさず右腕を突き出す。美琴は焦ることなく、突き出された右腕を真横から叩く。相手の腕の軌道がずれ、腕が容易く弾かれる。相手はその腕のまま、無理矢理にもう一度遠心力を使いながら今度は美琴の頭へと振り抜くが瞬時に美琴はそれをしゃがんでかわし、その体勢のまま相手に足払いをかけた。

 

「ぐぅ!!」と、相手は微かに呻くが、なんとかもう一方の足を後ろに引いて体を支える。そして美琴はその間に相手の背後に回り込み、頤の辺りに手刀を繰り出した後、背中を蹴りつける。前につんのめった相手は勢いよく後ろを振り向くとそのまままたパンチを繰り出す。美琴はその腕を次はひっぱたくことなく、体ごと避け、自身はその腕を掴んで肩へと担ぎ上げ、相手の力を利用するようにして持ち上げ、流れのままに床へと叩きつけた。

 

 

その瞬間、場外からの笛の音と「そこまで!」という声が聞こえると途端にそれまで黙っていた周りを囲んでいた人々の歓声が聞こえ、美琴は一つ息を吐き出した。

 

「勝負あり!勝者1-A 篠原美琴!」

改めての勝利勧告がその場に響いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「あんた、本当どこまでも化け物よね」

という、初の心底呆れたとばかりの視線に美琴はとてもいい笑顔を向けた。

 

魔法科大学付属高校。それらは国力の強化を目指す若者を育成することを目的としている機関である。その中でもとりわけ第三高校は【武の三校】と言われるほど武術、格闘、戦闘能力などに力を入れている学校だ。その傾向で第三高校では親睦会を兼ねた武術大会が行われる。原則魔法は禁止の上でだ。

魔法科高校にも関わらず魔法の使用が禁止なのは専科、普通科が男女混合、学年混合で行われるからだろう。男女混合という点で既に不公平かもしれないが、前半には女子は女子同士、男子は男子同士を闘わせ、3回戦より混合となる。また女子はそこからは棄権が認められている。

美琴が先程の決勝相手にしていたのは三年生の普通科の男子だ。そう、決勝戦(・・・)だ。

 

「だって勝ってしまうもの」

「だってじゃないよ、どんな化け物なんだ」

「君が言えることじゃないとおもうけどな」

「将輝に同感」

 

いつもの四人はそう言っていつものカフェでそれぞれが頼んだものを頬張っていた。

美琴の前のガトーショコラをフォークでつつく。美琴にとって、いつもの体術の練習相手といえば()なのだから、相手が弱いのは然もありなん。始め出してからはあまりの力量差に唖然としたが女子だからと思い諦め…男子も同じような力量なことに愕然とした。途中からはもうやけだった。

因みに初とは5回戦で当たってしまい、当然勝った。闘った中では一番接戦だったのではなかろうか。

 

吉祥寺は初戦で、一条は相手の反則ギリギリの攻撃によりその頃にはフェードアウトしていた。吉祥寺は体力をつけるべきだし一条は正々堂々以外の闘いも覚えるべきだと思った。いや、わかってはいるのだろうが、学生ということで油断したのだろう。

 

「篠原も横澤もすごかったよ」

「ありがとうございます」と笑いながら一口口に入れる。ほろ苦いチョコレートが染み込んだスポンジが舌の上を滑る。

ここのカフェのスイーツは大変美味だ。

 

「………将輝のケーキ美味しそう…」

「……やらないぞ」

「いーじゃん一口くらい!」

「そう言ってこないだ全部食べたのはどこのどいつだ!」

「まあまあ、将輝も横澤も落ち着きなよ」

 

目の前では仲良くなった彼らがたわいもないやりとりをしている。初は獲物を狩る動物のように一条のリモーネパイを狙って、一条はそれを手で遮っている。吉祥寺といえばお互いを諌めながらもカスタードたっぷりのカンノーリを頬張っていた。

 

放課後にこうやって四人で帰るようになってだいぶ経つ。

学校生活にも慣れ、専科普通科など、それぞれに学科が分かれている中、それぞれがそれぞれに順風満帆とは言わずともそれなりに学校生活をおくっていた。

 

(平和だな…)

 

目の前の三人は高校生なのだ。どこにでもいる、高校生。ただ、魔法が使えるというだけ、ただ、家が特殊なだけ。

 

「ところでさ、美琴はなんであんなに強いのよ!」

 

結局一条からケーキを奪った初は隣にそう尋ねた。一条は苦笑いをしており、吉祥寺はカンノーリを一条の皿に分けていた。美琴は初の頭を軽く小突きながら「家の方針で小さい頃からね」と言った。

 

「家の方針って何よ」

「私の家、軍関係者が多くてね、せめて護身用にもってことで」

「なるほど、篠原家か」

 

初の質問にそう答えると一条がそう一言呟いた。

 

「あら、私の家のこと知ってるの?」

「こないだ父さんに指摘されたんだよ、『篠原美琴さんってのは篠原少佐の娘さんか』ってさ。」

「俺こそ吃驚した」と言う一条に安堵をこぼす。一条は篠原そのものしか知らないということだ。死野原は知らない、知られていない。

「よくお父様も知ってらしたわね」

「昔助けてもらったことがあったらしいな…よくは知らないが」

そう言って先を促すような目線をよこした。美琴としては正直これで終わりたいのだが、そこは問屋が卸さないらしい。

 

「…うん、そーですよ、その篠原は私の父。言った通り軍関係の一家で祖父も祖母も父も母も親戚も軍所属だったのよ」

「祖父母と母は退役したけどね」そう答えて何か言いたげな一条を笑顔で制する。

 

「じゃあ美琴も大学行って卒業したら軍に入るの?」

「ええそのつもりよ、といっても大学卒業者はほぼ入隊するけれどね」

 

そう私が締めくくると、何かを感じたのか初は話を別へと移していく。その優しさに甘えながら美琴は瞳を閉じた。

 

そこには笑い声と笑顔と、未来があった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

彼は、光の射さない穴の底で生まれたと言っていた。

そこには何もなくて、辺りは闇で。

自分は白くてみんなは黒くて。

自分だけが異端だったとも。

感じるものがなくて

感じているのかもわからなくて

 

聴くことも

喰らうことも

嗅ぐことも

触れても、何も感じられず、仲間もなく

一人

一人。

 

その中で彼が唯一見つけた幸福は【虚無】だったんだと言った。

 

 

 

「君は強欲だね。」

 

目の前の存在はそう言って笑った。

 

そこはついぞ彼女が先程まで存在していた世界ではなく、辺りは木々が生い茂った林のような場所で、空は漆黒の絵の具で塗りつぶされたかのようだった。

精神世界。現実ではない、現の世。

美琴はその言葉に顔を上げた。

今とは違う、幼い肢体で見上げた先にいた彼は、波打つ桃色の髪をたゆかせながら二胡という弦楽器を構え、そして静かに弾き始めた。高く、ピンと張った冷たくて、哀しい音が空気をなぞるようにして唄う。

 

「君はそうして、大切な者には自分を見て欲しいんだ。それがどんな感情だとしても、まるで依存するように。」

 

それを、強欲だと言わずしてなんと言うのか。

男は木の幹に体を預け、二胡を奏でながらそう言ってまた笑った。退屈が嫌いで、飽きっぽい彼。美琴はそんな彼に何も返さない。ただ隣へと立って移り、膝を抱え、その音色を聴いている。

 

「でもどうしてかな、君の愛する人等にはいつも君じゃない何かがある。

義父にも、白の彼にも、婚約者にも。」

 

彼は猫のようだ。簡単に擦り寄ってくる簡単に内側に入り込む。

 

「義父には大いなる野望があった。そして君は白い彼に依存した。いや、依存とは違うか。無意識に求めていたんだよ、心を。彼が無いと言っているはずの心を、君は求めたんだ。」

 

甘い、ドロリとした蜜のような声が耳から体を支配するように溜まっていく。彼の言葉は一つ一つに私の無自覚の真実がある。それは耳に痛いのに、何故か美琴には慰められているように、甘えるように聞こえる不思議なものだ。美琴は彼にくっつき、彼の衣の端を少し握り込む。彼はそれでも構わずに二胡を弾き続ける。

 

「結果、彼は倒された。それも自分の知らないところで、ね。そして義父も封印された。目の前で、君が何もできないまま、アッサリとね、だから君は気づいてしまったんだよ、自分を愛してくれる人はここにはいなくなってしまったってね。」

 

言われてもわからない。そうなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

 

「そして君はまた生まれてしまったんだ。そして彼に出会った。初めて恋を知った、今度こそ愛してくれると思った。

 

でも彼にも大切な人がいた。」

 

「その大切な人のこと、きらいじゃないよ」

「そうだろうね」

 

返した言葉にもすぐに返してくれる。男は二胡を弾くのをやめて美琴の頭を撫ぜた。そのまま引き寄せる。ときどき、彼は私を愛しいもののように扱う。

 

「君は忘れられない。前世を、過去を、忘れることはない。殻に閉じ込めて、忘れているように振舞っているだけだ。

君の愛はそんなに軽くない」

 

「君の愛は甘く、深く、重い。こうとなったら自分でさえわからないままに進んでいってしまう。

大切な人には自分を見て欲しい。誰よりも、誰よりもね。ふふ、ホント、私とそっくり」

 

 

 

「君が変なんじゃないよ、他の人が器用すぎるんだ。私達は一人しか入らないと思うのに、愛しい人の他にも大切な人がいる。

 

……いいなぁ…」

 

 

そうだね、美琴は言った。彼に同意する言葉。

彼ーーー【朔夜】。私の刀、私の魂。

何を考えているかも、本当のことかも、どんな感情を持っているかもわからないけど。

 

(私のことを、わかる、変な人。)

 

今朝見ていた、平和の中の友人達を思う。

ーー住む世界が、違うなあ…

 

それは哀しいくらいに輝いて見えた世界。

 





後半の人、わかりましたか?
BLEACHの斬魄刀の具現化で、イメージをつけた時に彼が思い浮かびましたので登場させました。ある小説のキャラです。名前は微かに変えてます。
なんか似てます。私は彼がとても好きだったりします(小説ではなかなかいい性格してます。)
もともと書きたかった文章とだいぶ違いますので後々から編集するかもしれません。
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