IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~   作:メテオボーイ

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episode 9 深淵の思い

 

 

 

 

 

 

破滅招来体は時を選ばずやってくる―――――イチカとマドカはそのたびにウルトラマンとなり、敵に打ち勝ってきた。この日もイチカとマドカはガイアとアグルとなり、突如として学園から数キロ離れた海に現れた大海魔ボクラグと対峙していた。

 

 

 

 

 

 

(アイツ……切っても切っても再生してくる…どうする!?)

 

 

ボクラグは、体の成分が塩化カリウムを大量に含む海水とほぼ同じ成分で構成されているため、体温が極端に低く、海中ではレーダーやセンサーやスキャナで感知することができない。その特性から、ミサイル程度の火力は無効化され、アグルブレードで体を切断されようが、ガイアスラッシュではさみを切断されようが、ガイアのキックで頭を吹き飛ばされてもすぐ復活する再生力を持っていた。

 

 

 

 

ピコン、ピコン、ピコン、―――――

 

 

 

アグルブレードを使ったせいでエネルギーを消耗したアグルのライフゲージが点滅を始めた。

 

 

「(このままじゃ埒が明かない‼高エネルギーをぶつけて蒸発させる‼行くぞ、アグル‼)――――ハアアアァッ‼」

 

「(分かった‼)――――オアアァァァ‼」

 

 

ガイアはフォトンエッジ、アグルはリキデイタ-を放つ体勢に入る。

 

 

「「―――――――――デュワッ‼」」

 

 

ガイアとアグルの攻撃は見事命中した。あとは蒸発するだけだったが以前にも見た光が発生し、天に昇り消えた。

 

 

(あの光、また……嫌な予感がする……)

 

 

一抹の不安を覚えながらも二人は変身を解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの程度では兄さんの足を引っ張ってしまう‼私はクロエを誘ってトレーニングしてきます‼」

 

 

そう言ってマドカはクロエを探しに行ってしまった。あのスピードで走れたら敵の攻撃なんか当たらねえと思うんだがな…………

 

 

「さて…これからどうするか…」

 

 

イチカが空を見上げると満天の青空が広がっていた。

 

 

「………昨日は遅くまで機体の調整をしてたし……今日は休みだからな……寝るか…。」

 

 

髪をかき上げあくびを噛み殺しながらそう言ったイチカは屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イチカ……どこ行ったんだろ?電話しても出ないし……」

 

「そうね~、イチカ君って結構神出鬼没なところあるしね~。」

 

「以前もこのようにイチカさんの事を必死になって探したような気がしますわ…。」

 

 

簪と楯無とセシリアはイチカを探していた。初めは三人で未完成の簪の専用機『打鉄弐式』の製作に取り掛かっていたのだが、近接武器である対複合装甲用の超振動薙刀『夢現』とマルチロックオン・システムによって6機×8門のミサイルポッドから最大48発の独立稼動型誘導ミサイルを発射する『山嵐』の製作の段階で煮詰まってしまったのだ。そんなときセシリアが――――

 

 

『マルチロックオン・システムでしたら確か先日イチカさんが使っていましたわ。それと、薙刀…と言いますの?その長い武器によく似たものでしたら私の特訓の際に振るっているのを見ましたわ。』

 

 

この言葉を聞いて簪が整備室を飛び出して行ったのを急いで楯無とセシリアが追いかけて今に至る。

 

 

「そういえばそんなこともあったわね~。確かその時は屋上で三人でお昼寝してたっけ…」

 

「そうでしたわね…今回もそうなのでは?」

 

 

そう言いながら屋上に来てみると、案の定イチカは屋上のベンチに寝そべっていた。近づいてみると普段のクールな感じとは違い、安心しきった表情でイチカは寝ていた。

 

 

「ぐっすりお休みになられてますわね…」

 

「イチカ君もこんな顔するんだ…」

 

「気持ちよさそうに寝てる――――ん?これイチカのかな?」

 

 

簪がベンチの下に落ちていた一冊の本を拾いあげる。その本は結構分厚く、かなり年季が入っていた。

 

 

「これ…何の本なんだろ?セシリア、お姉ちゃん、これ読める?」

 

「私には読めませんわ……楯無さんはどうですの?」

 

「確かドイツ語がこんな感じだったと思うんだけど……あら?このページにだけ折り目が付いてる…」

 

 

ページをめくっていると折り目の付いているページを見つけた。ページを開くとそこにはイチカが引いたと思われるラインがいくつも引かれていた。

 

 

「このページにだけ線がたくさん引いてありますわね…」

 

「神経回路………脳……感覚……う~ん、断片的にしか分からないけど……どうやらこの本は医学書か何かね。」

 

「でもどうしてそんな本をイチカが?」

 

「皆目見当もつきませんわ――――イチカさん?」

 

 

イチカがその本を持っている理由を考えていると、セシリアがイチカの様子が変わったのに気が付いた。先ほどの安心しきった様子とは打って変わって何かに魘されているようだった。

 

 

「イチカさん‼」 「イチカ‼」

 

「待ってセシリアちゃん、簪ちゃん‼イチカ君、何か言ってるわ‼」

 

 

 

「…………ない………………すまない……」

 

 

 

 

イチカは誰かにただただ謝っているようだった。

 

 

「イチカ……誰かに謝ってる…」

 

「お辛そうですわ…」

 

「起こしてあげた方が良いわね…イチカ君、イチカ君‼」

 

 

見かねた楯無がイチカの身体を揺すりながら呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――ん……楯無さん?」

 

「よかった~、イチカ君大丈夫?かなり魘されてたわよ?ていうか、謝ってた?」

 

 

…またあの夢を見ていた…俺から突き放したのに…未練がましいったらないな――――――

 

 

「イチカ、大丈夫?」 「イチカさん、お身体の方は?」

 

「大丈夫だ……心配かけたな、すまない。―――それより皆はどうしてここに?」

 

「う、うん……それが――――――」

 

 

簪はイチカに夢現と山嵐のマルチロックオン・システムの製作の途中で煮詰まってしまったことを話した。するとイチカは簪にデータを見せてくれ、と言って打鉄弐式のデータを見せてもらうとデータに目を通し何か考える素振りをする。そして、考えが纏まったのか簪に視線を移す。

 

 

「マルチロックオン・システムの方は俺の稼働データを使えば何とかなるだろう。夢現の方は近接武器だから簪の機体データを取りたいんだが…これから大丈夫か?」

 

「う、うん‼全然大丈夫だよ///イチカ、ありがとう‼」

 

「困ったときはお互い様だ。」

 

「イチカさん‼私もお手伝いいたしますわ‼(簪さん、抜け駆けは許しませんわ‼)」

 

「もちろん私も手伝うわ‼(そうよ~簪ちゃん?)」

 

「あ、ありがとうセシリア、お姉ちゃん…」

 

 

二人の威圧に簪はたじろぎながら答えた。

 

 

「それならセシリアと楯無さんは簪の模擬戦の相手をお願いしても良いか?いろんな相手との稼働データが欲しいから。」

 

「お任せくださいまし‼」

 

「お姉さんに任せなさい‼」

 

「よし、それなら早速アリーナに行くか?」

 

「う、うん―――あ、そうだイチカ…これ…」

 

 

簪は手に持ったままだったイチカの物と思われる本をイチカに渡した。

 

 

「ん?…ああ、すまない。呼んでる途中に寝てしまってそのままだったか…」

 

「ねえイチカ君、どうして医学書なんか読んでるの?それにドイツ語だし…」

 

「まあ………ちょっとした興味本位ってやつです。それよりもアリーナ、行きましょう。」

 

 

楯無の質問はイチカにうまい具合にはぐらかされてしまった。前を歩くイチカの背中を見ながら楯無がポツリと呟く。

 

 

「私たちってさ……この間生徒会室で聞いたこと以外、イチカ君の事殆ど知らないわよね…。」

 

「そうですわね…しかし、それを聞いていいものかどうか…」

 

「私たちには…寄り添うことしか出来ないのかな?」

 

 

想い人のことをもっと知りたい――――そう思うことは当然の事なのだが、イチカの場合、心の内に抱えてるものは自分たちの想像もできないような大きくて深いものだということを本人に聞かずとも三人は薄々感じていた。何となくだが、聞いてはいけない―――――そんな気さえしていた。

 

 

「でも今はそれしかないわよね…いつかイチカ君の口から直接聞けるのを待つしかないわね。」

 

「そうですわね…破滅招来体との闘いに打ち勝たなければその未来(さき)もないわけですし……」

 

「そのためにも打鉄弐式を完成させないと……」

 

「どうかしたのか三人とも?置いてくぞ?」

 

 

考えていたらどうやら足が止まってしまっていたらしい。イチカに呼ばれた三人は互いの顔を見て頷くとイチカのもとに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから幾日、セシリアと楯無の協力もあったおかげで無事に簪の専用機『打鉄弐式』は完成した。完成したときには歓喜のあまり簪がイチカに抱き付いてしまい、それを巡ってセシリアと楯無と簪の小競り合いがあったがイチカが労いの意味も込めて料理を振る舞うということでその場は収まった。途中から製作に加わったマドカとクロエは苦笑いでその光景を見ていたのだがこれも一つのいい思い出となっている。

 

 

 

 

 

「無段階移行(シームレス・シフト)システムのおかげで大分性能が上がってるな…機体の機動性能も向上してるが…破滅招来体との闘いは射撃が主体だからな…機動性能は今まで通りにしてその分攻撃力を上げるか…」

 

 

その日イチカはHRが始まるよりもずいぶん早くに教室に来て自分のパソコンを開き、機体の調整を行っていた。マドカとクロエは朝が弱いため、席に座って突っ伏して寝息を立てていた。席が窓側なので暖かい日差しが差し込んできていたため二人は三分と持たなかった。そんな二人を見て少し笑みを浮かべると再びイチカはパソコンの画面に視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くすると続々と教室にクラスメイト達が入ってくる。時計に目をやるとHR10分前になっていた。どうやらかなり作業に熱が入ってしまっていたようだ。

 

 

「「「「イチカ君、マドカ、クロエ、おはよ~‼」」」」

 

「ああ、おはよう。」

 

「ん……おはよう。何だ、もうそんな時間か。」

 

「おはようございます。みなさん、お元気ですね。」

 

 

クラスメイトの挨拶でマドカとクロエは目を覚ました。クロエは大丈夫そうだが、マドカはまだ舟をこいでるな―――。

 

 

「イチカさん、マドカさん、クロエさん、おはようございます。」

 

「イッチー、マドマド、クロロン、オッハ~‼」

 

「おはよう、セシリア、のほほん。」

 

 

セシリアと本音とも挨拶を交わしたイチカは、キリのいいところまで片付けようと再び画面に視線を移した。それから数分後、千冬と真耶が教室に入ってきてHRが始まるのだが、イチカはそれにまったく気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございます。今日は転校生を紹介します‼しかも二人です‼」

 

 

真耶の言葉にクラスの大半が喜びの声を上げる。朝からのハイテンションぶりに若干眠気眼で船をこいでいたマドカもバッチリ目が覚め、起きていたクロエもひいてしまうほどだったのだが―――――イチカは作業に没頭していたため耳に入っていなかった。

 

 

「静かにせんかお前ら‼」

 

「「「……」」」

 

 

千冬の一喝で静まり返る教室。この光景はさながら軍隊のよう――――――

 

 

「……ってこの光景、転入初日に見たな…」

 

「そうですね。俗に言う”デジャヴ”ですね。」

 

「あはは……では、入ってきてください。」

 

 

真耶の言葉に続くように勢いよく教室の扉が開かれる。生徒たちは転校生がいかなる人物か気になって仕方ないのか扉の開く音がした瞬間、一同の視線が扉に注がれる。しかし、彼女たちの目の前で起きたのは予想のかなり斜め上を行くものだった。

 

 

 

 

 

 

「嫁~~~~~‼会いたかったぞ~~~~~‼」

 

 

 

 

 

何か叫びながら物凄い勢いで一人の生徒が作業をしているイチカ目がけて突っ込んでいった。普段のイチカなら楽々躱せたのだが、作業に没頭していたため反応が遅れ受け止める(周りから見たら抱き留めているように見えなくもない)形になってしまった。

 

 

「何だ急に―――って…おまえ、ラウラか?」

 

「覚えててくれたか!?久しぶりだな嫁‼」

 

「いや…男は婿だって前から言って―――‼」

 

「「「「あああ~~~~~っ‼」」」」

 

 

イチカの言葉を待たずしてラウラと呼ばれた少女はイチカの唇を問答無用で奪った。

 

 

「イチカ‼お前は私の嫁にする‼異論は認めんぞ‼」

 

「いや、だから何度も言うが男は婿だって………」

 

「兄さん……突っ込むところそこじゃないよ。」

 

「この光景もデジャヴですね…懐かしいです。」

 

「イ、イチカさんその方は一体誰ですの!?」

 

 

見かねたセシリアがイチカ達に食って掛かるがラウラはどこ吹く風。堂々とイチカの腕にしがみつきながら言い放った。

 

 

 

 

 

 

「む……自己紹介がまだだったな。ドイツのIS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ、階級は中佐。ここにいる、イチカ・クロニクルに添い遂げる者の名だ‼このポジションは誰にも譲らん‼覚えておけ‼」

 

(これはまた賑やかになるな……)

 

 

 

ラウラの宣言にセシリアを含むクラスメイト達は唖然としていて、マドカとクロエはやれやれ、といった表情をしていた。そんな中イチカだけが的外れなことを考えていたことなど、この場にいる誰にも分かるはずもなかった―――――――――

 

 

 

 

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