IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~   作:メテオボーイ

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episode 14 不可視の刃

 

 

 

イチカの姿をアリーナに確認した千冬達は、教員部隊ではかえってイチカの邪魔になると判断し彼女たちを退かせると、簪たちを助けるためにアリーナに足を踏み入れた―――――

 

 

「「「「――――――ッ‼」」」」

 

 

――――――その瞬間、イチカの放っていたアリーナを覆うほどの殺気に当てられ真耶と楯無と虚は恐怖し、千冬でさえも足を止めてしまった。

 

 

(あれ………本当に、イチカ君なの!?)

 

 

目の前にいるのは自分が恋したイチカ君のはずなのに……頭では理解してるはずなのに……どうして?……身体が動いてくれない‼

 

 

背中には嫌な汗が流れ、手足に走る震えが止まらなかった。

 

 

「さて……あとは兄さんに任せよう。私たちはセシリア達を。」

 

「そうですね。」

 

 

私が動けない間にマドカちゃんとクロエちゃんが簪ちゃんたちのもとへ向かった。そしてマドカちゃんはポセイディアを呼び出すとクロエちゃんと協力してファルコンを使って張ったシールドに四人を寝かせて運びながら戻ってきた。

 

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

「ええ……何とか……」

 

「僕も大丈夫……」

 

「私も……」

 

 

クロエの質問に三人とも衰弱しきった状態でも何とか答えたがラウラだけは依然として気を失ったままだった。

 

 

「――――簪ちゃん‼それにセシリアちゃん、シャルロットちゃん‼無事でよかった‼」

 

 

三人の声で我に返った私は一目散に簪ちゃんに駆け寄り抱きしめた。

 

 

「い、痛いよお姉ちゃん……」

 

「あ……ご、ごめんね簪ちゃん?」

 

「大丈夫……イチカが…助けてくれたから………」

 

 

簪ちゃんの言葉で視線をアリーナ中央に移すと、イチカ君と敵が動くことなく向かい合っていた。

 

 

「そうよ、マドカちゃん、クロエちゃん‼イチカ君の加勢に行かなくていいの?敵は紛いなりにも織斑先生―――ブリュンヒルデの力を持っているのよ!?」

 

 

楯無が捲し立てるように二人に聞いたが二人は―――――

 

 

「心配いりません。」

 

「兄さんは強いからな。」

 

 

自信満々に即答し、真耶と共にセシリア達の手当てを始めた。あっけにとられていた彼女たちを再び現実に引き戻したのは敵の剣と、ガイアの大鎌『クロノス』が交錯した物凄い金属音だった。

 

 

「すごい…………」

 

 

一体誰が呟いたのかは分からないが、その言葉に一同は賛同した。イチカは自分の身の丈の倍ほどの大きさのクロノスを自分の身体の一部のように、かつ流れるように扱い敵と互角に戦っていた。

 

 

「あんなでかい大鎌なんて私が使ったら遠心力で逆に振り回されちゃうわ……」

 

「兄様はあらゆる闘いを想定して3つの近接武器をガイアに搭載しています。大型、あるいはパワー型の敵を想定した大鎌『クロノス』、1対多を想定した両端に刃がついている特殊な薙刀『イザナミ』、そして万能型で2本1対のサーベル『ライトニング』です。」

 

「そんなに使えるのねイチカ君……なんてハイスペックなの……」

 

「そうですね……なかなか出来ることではありませんね。」

 

 

クロエの説明に楯無と虚は感心したような反応を見せる。しかし、真耶達の手当てを受けていたセシリア達はそうではなかった。その様子に楯無は頭に?を浮かべた。

 

 

「セシリアちゃんたちは驚かないの?」

 

「私たちはイチカさんに特訓を見てもらっていましたので。模擬戦では私たち相手にクロノスの他にイザナミも使われてましたわ。」

 

「そういえばそうだったわね。……私はまだ一回も受けたことないのに……。」

 

「それはお嬢様が生徒会の仕事を溜め込むからです。」

 

「ゔっ……」

 

 

楯無は生徒会の溜まった仕事を片づけるのに放課後は生徒会室にいるので、いまだにイチカの特訓を受けられずにいるのだ―――――

 

 

「何度か戦ったけど……一回も攻撃、イチカに当てられなかった……」

 

「………ねえセシリア、簪。今思ったんだけどさ―――イチカって一回も特訓や模擬戦でライトニングっていう剣、使ったことないよね?」

 

 

シャルルの言葉にセシリアと簪は自分の記憶を遡ってみたが―――――

 

 

「そういえば……ありませんわね。」

 

「確かに…使ってるとこみたことない。」

 

 

普段からイチカと特訓しているセシリア達でもイチカがライトニングを使っているところを見たことがないのだ。

 

 

「マドカちゃん、クロエちゃん。イチカ君はどうしてライトニングを使わないの?」

 

「一言で言うならば―――――『視えないから』でしょうか。」

 

「視えない――――――ってどういうこと?」

 

「簡単なことです。兄様の振った剣は『目視できません』。たとえ動きから剣の軌道が分かったとしても止められない。そうですね……兄様の剣は『一撃必殺の剣』なのです。」

 

「そんなことが可能なの!?」

 

「普通なら無理でしょうけど………兄様はそれを可能にする努力をしていました。クロノスやイザナミを使い始めたのは……まだつい最近です。それまではずっと剣の特訓をしていました。」

 

「つい最近!?でも今イチカ君はブリュンヒルデのデータと互角に戦っているのよ?一体どうやって……」

 

「兄様は自分の剣に他の追随を許さない速さを求めていました。その速さを兄様は束様との特訓の末、手に入れました。その特訓の中で兄様はもう一つの力を開花されました。相手の先を読むことに長けていったのです。」

 

 

イチカは敵の二手三手先を読んで闘っている。磨き抜かれた先読みの力があったからこそ模擬戦などでセシリア達の攻撃を一切受けなかったのだ――――――

 

 

「なるほど……今イチカ君は相手の先を読むことで敵と渡り合ってるのね……」

 

「そういうことです。」

 

「しかしそれなら…最初からライトニングを使えばよいのでは?」

 

「それもそうよね……」

 

 

虚の疑問に答えたのは先ほどまで話していたクロエではなく、じっと戦況を見守っていたマドカだった。

 

 

「兄さんは闘いながら敵の癖、動作、闘い方などの情報を引き出そうとしているんだ。ライトニングを使わないのは敵に自分の剣筋を見せないため。クロエの言った通り一撃で決めるためにな。つまり――――」

 

 

そこでマドカは突然言葉を切った。マドカの視線の先にはイチカから一旦距離を置いた敵とクロノスを拡張領域へと戻し、腰元にある鞘に入ったライトニングに手を添え、敵を見据え立っているイチカの姿があった。

 

 

「兄さんがライトニングに手をかけた瞬間――――それが敵の敗北が決まった瞬間だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカはクロノスを拡張領域に戻すと、左足を半歩前に出すと中腰になった。

 

 

「また守れなかった………また、俺の周りの人間が傷ついた…」

 

 

左腰のライトニングを右手で抜刀すると逆手に握りだらりと下ろす。左手は敵に向かって突き出している。

 

 

「仲間を傷つけた貴様も……同じ過ちを繰り返した俺自身の弱さも――――――――」

 

 

目を閉じて意識を集中させていく―――――

 

 

「今ここで………たたき斬る‼」

 

 

その言葉とほぼ同時にイチカの姿が敵の前から塵一つ立てずに消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――秘技………『無影』。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いた時にはイチカは敵の背後にいた。敵は直後、力なく崩れ落ちる――――斬られた、という事実を認識することもなく――――

 

 

 

 

 

「畜生………」

 

 

 

 

 

イチカの絞り出された言葉を耳にすることもなく―――――――

 

 

 

 

 

「傷つけてからじゃ遅いじゃねえか……」

 

 

 

 

 

悔しがるイチカの表情にも気づくことなく―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後生徒たちの避難等を任せていた鈴と合流してセシリア達は保健室に運ばれ、きちんとした治療を受けた。セシリア、シャルロット、簪は切り傷や打撲等はあったが大怪我といえる怪我はなかった。ラウラは全身打撲等があり、未だに目を覚ましていない。

 

 

「…………ん……教官…みんな……」

 

「む……ボーデヴィッヒ、目が覚めたか?」

 

「ハイ―――ッ‼」

 

「ああ、そのままで構わん。お前の体質からすれば明日には動けるようになるだろうが、今はまだ全身打撲で動くのもつらいだろう?」

 

 

痛みに顔を歪めたラウラを労りラウラに横になってもらい、そのまま話し始めた。

 

 

「シュヴァルツェア・レーゲンに積まれていたのは私のデータを基にしたVTシステムだった。」

 

「ハイ……飲まれる瞬間に察しはついていました。『負けたくない』―――――私の強い意志が引き金だったのだと思います。しかしVTシステム…よりによって私の専用機に積まれていたとは。嫁たちがすべて破棄したはずだったのですが。」

 

「ブリュンヒルデのVTシステムだものね……隠し持っていた、と考えるのが妥当だと思うわ。」

 

「楯無さんの言う通りです。」

 

 

保健室のドアを開けて入ってきたのはマドカとクロエ。マドカの手にはVTシステムのせいでボロボロに大破してしまったシュヴァルツェア・レーゲンのコアが握られていた。

 

 

「シュヴァルツェア・レーゲンのコアに組み込まれていたVTシステムは以前私たちが処理したもののデータにはありませんでした。調べたところ、如何やらあの後作られたもののようです。幸い、開発を行った企業は分かっていますので今、兄様と束様が行動を始めています。兄様ならそうですね……夜には戻ると思います。なので心配なさらなくても大丈夫ですよ。」

 

「「「「「////////」」」」」

 

 

クロエはセシリア、簪、シャルロット、ラウラ、楯無の順に目配せしながら多少わざとらしく話した。その様子を見ていた鈴は後ろを向いて笑いを堪えていた。

 

 

(…………あれ?何で僕、照れてるんだ?)

 

 

シャルロットは自分の中に生まれた『何か』に戸惑いを感じたが表に出すことはなかった。

 

 

「ラウラ、シュヴァルツェア・レーゲンのコアは何とか無事だった。予備のパーツはあるか?」

 

「あるにはあるが…それがどうかしたのか?」

 

「兄さんが『マドカ達に予備のパーツがあったら渡しておいてくれ。叩き斬ったのは俺だから帰ったら責任もって俺が直しておく。』だってさ。」

 

「そうか……ここは嫁の言葉に甘えさせてもらうと……しよう…」

 

 

そう言うとラウラは安心しきった表情を浮かべながら寝てしまった。

 

 

「オルコット、デュノア、更識妹。お前たちも休め。今日はよくやった。凰もすまなかったな、生徒たちの方を丸投げのような形になってしまって。」

 

「いえいえ、プッ…気にしないでください。」

 

「ちょっと鈴さん‼いつまで笑っていますの!?」

 

「みなさん、今日はゆっくり休んでくださいね?」

 

 

そう言い残して千冬と真耶は保健室から出て行った。その様子にマドカは―――――

 

 

(まったく………不器用なのは相変わらずだな、姉さんは…)

 

 

月日が経っても変わらない姉の不器用さに心の中でため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、トーナメントの中止と、後日データ収集のために1回戦のみ全て行うことが学園側から発表された――――

 

 

と、同時に―――――

 

 

 

 

 

 

 

『ドイツの複数の企業、及びドイツ政府にインターポールの強制捜査が入るとの情報が入ってきました‼捜査の対象となった企業は如何やら禁忌とされていたVTシステムの研究・製造を秘密裏に行っていた模様‼詳しい情報が入り次第お伝えします‼』

 

 

 

 

 

 

 

どのチャンネルを付けてもこのニュースが流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿し忘れてました‼ごめんなさい!
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