IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~   作:メテオボーイ

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episode 16 それぞれの思い

それから数日、手紙に書いてあったイチカの見立て通りIS学園は怪獣の出現もなく平和な日常を送っていた。

 

 

(今日のニュースは――――あった……『アメリカに出現したゾンネルをガイアが山へ帰す‼』、『アグル、ギールから病院を守り多くの命救う‼』………今日もイチカの事、載ってなかったな……。)

 

 

ワタシはあれ以来、毎朝ネットのニュースを確認するのが日課となっていた。少しでもイチカに関する情報がないかチェックするために始めたの。

 

あの日、みんなで決意を新たにしたのは良かったんだけど、次なる問題が私たちに突き付けられた。それは、『どうやってイチカを探し出すか』ということだった。

 

 

各国政府に頼むのは混乱を招くかもしれないから私たちはネットワークから探すことにした。イチカ達の事を学園には織斑先生が『機体の複雑な調整を行うため、三人は一時学園を離れている』ということにして話してくれたみたい。今はお姉ちゃんが『更識』の党首として裏からイチカ達を探しているけど……如何やらいろいろなところを転々としているらしくなかなかその所在はつかめていないみたい……。その証拠に――――

 

 

「昨日はオーストラリア……イチカ達がいなくなってから世界中で怪獣が確認され始めたと同時に学園付近には現れなくなった……怪獣が現れてるところにイチカ達がいるはずなんだけど……目撃情報が上がらないのはどうしてだろう?」

 

 

イチカ達の目撃情報がネットワークからも、どこからも一切出てこない。イチカ達は篠ノ之……じゃなくて今はクロニクル博士だったっけ?とずっと世界から身を隠してきてたんだからそう簡単に見つかるはずもないのは分かってる……。

 

 

「でも………諦めないよ、イチカ。」

 

 

今一度自分の意思を再確認した簪はパソコンの画面をスクロールしていく。

 

 

「今日の運勢は……最悪、12位……『踏んだり蹴ったりの一日。外出は控えた方が良いかも。積極的な行動が運気を上げてくれるかも‼』……何この占い、滅茶苦茶じゃん。えっと……今日の天気は、晴れ。暑い一日に――――晴れ?」

 

 

簪はパソコンを閉じると、窓の外に視線を向ける。空は曇天、朝とは思えないほど真っ暗な曇り空だった。

 

 

「何この空……真っ暗……何か、嫌な予感がする……」

 

 

そんな不安を抱えながらも簪はそれを頭の隅に追いやると、同室の本音を起こし食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

簪は気が付かなかった。徐々に空が歪み始めていたことに―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪と本音が朝食を持って食堂を見渡すと、その一角に既に全員集まっていた。

 

 

「おはよっ簪ちゃん、本音 」

 

「おはようございます。」

 

「おはようお姉ちゃん、虚さん。」

 

「オハヨ~……」

 

 

本音は未だに寝ぼけ眼でフラフラしていたが朝食はしっかり持っているあたり流石である。簪はそんな本音をきちんと席に着かせると、皆にもあいさつした。

 

 

「おはようみんな。遅くなってごめんね。」

 

「構わんぞ。今日もネットのニュースをチェックしてきたのだろう?」

 

「簪ってホントマメな性格よね。」

 

「うん。今日も何も載ってなかった……加えて運勢は最下位……」

 

 

ガクリと肩を落とし落ち込む様子を見て、すかさず他の面々がフォローした。

 

 

「まあまあ簪、そういうこともあるって。」

 

「そうですわ。一日の良し悪しを決めるのも簪さん自身ですわ。」

 

「………そうだね。ありがとうシャルル、セシリア。」

 

 

そんな他愛もない話をしながらみんなで朝食を食べていると、食堂のモニターに先ほど簪がネットで見た天気予報が流れ始めた。

 

 

「この天気予報って絶対ハズレよね……見なさいよこの空……太陽どころか青い空一つ見えない真っ暗な空じゃない………」

 

「朝なのに夜のようですね。」

 

「あべこべだよ~‼」

 

「そうですわね……嫌な空模様ですわ…」

 

「嵐の前の静けさ……というやつか。」

 

「不吉なこと言わないでよラウラ……」

 

「……………ラウラちゃんの言ってること……強ち間違いじゃないかも…」

 

「「「「「「「……え?」」」」」」」

 

 

楯無を見ると、震える指でモニターを指差していた。モニターに目を移すと画面は変わっており、速報が流れていた。

 

 

 

『ただいま速報が入ってきました。気象庁はIS学園付近の上空に異常な数値の高エネルギー反応と空間の歪みを確認したとのことです‼怪獣が出現する際に発生するものと同類と推測されますが、歪みの奥から発せられているエネルギー値が過去の物とは桁違いの物との情報も入ってきています‼これを受け政府は軍の部隊を展開し、調査と共に自営行動を行い、付近の住民の避難を始めるとの声明を発表しました。繰り返しお伝えします、気象庁は――――――』

 

 

 

 

 

「………セシリアちゃん、これってもしかして………」

 

「もしかしても何もありませんわ楯無さん……」

 

「破滅招来体……よね?」

 

「嵐が来た方がまだよかったかもしれませんね……」

 

「高エネルギー反応か……何が出て来ても…かつてないほどの敵が出てくることには変わりない、か…」

 

「ドラゴンとか出てくるのかな~?ガオーって‼」

 

「本音……僕は君を見習いたいよ…」

 

「占い………当たっちゃってるじゃん……」

 

 

突如入った速報に食堂にいた生徒達は―――――

 

 

「また怪獣がここに来ちゃうのかな!?」

 

「そんなの無理じゃん‼」

 

「ISの攻撃が効かないんだよ!?」

 

 

――――パニックに陥っていた。無理もない……IS学園と云えど、今まで闘いも戦争も知らずに生活してきた者たちが大半を占めている。そんな平和な日常も破滅招来体の出現により、常に彼女たちに『恐怖』が付き纏うこととなったのだ。コッヴの出現以来、学園のカウンセリング室を利用する生徒が圧倒的に増えていた。そんな彼女たちの不安定な心を支えていたもの、それは………

 

 

「クロニクル君達がいれば……」

 

「そうだよね……イチカ君たちなら何とかしてくれるかも……」

 

「でも三人ともいないし……」

 

「どうすればいいの……?」

 

「でもでも…ガイアとアグルが来てくれれば勝てるかもよ!?」

 

 

イチカ、マドカ、クロエの存在、そしてガイア、アグルの存在だった。どこの国のカタログにも載っていない謎の機体を纏い、勇敢に敵に向かっていくイチカ達の姿。圧倒的な力で敵を倒すガイアとアグルの力。明日への希望、心の支えを必要とする彼女たちを幾度となく救ってきた―――――

 

 

「でも……今までより強い敵が来るんでしょ!?もしかしたら……」

 

「もしウルトラマンが勝てなかったら……」

 

 

「落ち着きなさい‼」

 

 

不安と恐怖に支配されつつあったこの状況の中、凛とした姿勢で皆をまとめ上げたのはこの学園の生徒会長である楯無だった。

 

 

「ここにいる生徒はまず自分の教室に行きなさい‼クラスの全員が揃ったら各クラス担任の先生の指示に従って地下のシェルターに避難しなさい‼大丈夫、私たちが何とかしてみせる‼みんな、希望を捨てないでちょうだい‼」

 

「更識姉の言う通りだ。」

 

 

食堂に姿を現したのは千冬だった。千冬は楯無の発言に賛同すると生徒達を鼓舞した。

 

 

「私は精神論はあまり好きではないが……目の前の壁に挑むことを、挑戦することを放棄した者は―――人として死んだも同然だと私は思っている。どんなに険しい壁だろうとも、何度も立ち向かい挑み、乗り越えていく――――それを体現している奴らを私は――――いや、お前たちも既に知っているはずだ。」

 

 

「確かにアイツらは持ってる専用機は他の奴等よりも段違いの性能を有しているし、戦闘力も桁違い。おまけに秀才……アイツ等のようになろうと思ってもそう簡単になれるものでもない。重ねてきた努力が桁違いだからな。だが……お前たちもアイツらと同じものをもともと持っている。」

 

 

「それは――――――ここだ。」

 

 

千冬は親指を突き立てると心臓を親指でトンッ、トンッ、と指差した。

 

 

「正確には『諦めない心』だ。諦めず目の前の壁にぶつかっていける勇気、それも一つの強さであり、これが勝負を決めることもある。この学園の生徒はそれが持てる者たちばかりであると私は知っている。良いか?最後まで望みを捨てるな‼一般生徒は速やかに自分の教室に行って担任の指示を仰げ。オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識姉妹、凰は戦闘準備が完了次第私のもとに来い、布仏姉妹は私と来い。山田先生と協力してデータを解析してくれ。今は少しでも情報が欲しい。」

 

「「「「「ハイ‼」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日昼方、とある山中のとある研究所―――――静かに佇む研究所の中にはただキーボードを叩く音と機械音が反響していた。

 

 

「マドカ、クロエ。そっちはどうだ?」

 

「間違いなさそうだ兄さん。この時空の歪みは………ワームホールが開く。」

 

「歪みの奥からは膨大なエネルギー反応が確認できます。出てくる敵も恐らくかつてないものであると推測できます。」

 

「このデータを見る限りじゃ……いつ開いてもおかしくないな…。マドカ、クロエ、機体の整備、済ませておいたぞ。」

 

「ありがとう兄さん。」

 

「ありがとうございます兄様。」

 

 

礼を言うと二人はイチカから待機状態のペンダントを受け取るとそれを首に提げた。

 

 

「しかし……どうしてまた学園付近にワームホールが発生したのでしょうか?」

 

「確信はないんだが……ゴーレムとか倒したときに発生した光、覚えてるか?恐らく敵は大きなエネルギーを欲していたんだろう。自分を強くするために、ワームホールを開くために俺たちの力を追ってここまで来たんだ………ん?通信が入って―――束さん?」

 

 

話していると目の前のディスプレイに通信が入ったとの知らせが入る。相手は最近別行動をとっていた束からだった。

 

 

『もすもすひねもす~‼おひさ~いっくん、マドっち、くーちゃん 』

 

「久しぶりですね束さん。今どこにいるんですか?」

 

「今はね~……ってそうじゃないよいっくん‼私はこんな世間話みたいなことするために連絡したんじゃないよ‼これを見て‼」

 

 

切羽詰まった様子で束はディスプレイに映像を映した。その映像には再び暴走を始めたクリシスが映し出されていた。

 

 

「クリシスが…暴走している……」

 

「束様、これは一体?」

 

「暴走は空間の歪みが出来る少し前から始まってたんだけど……そうじゃないの‼もっとよく見て‼」

 

「「???」」

 

 

マドカとクロエが揃って首を傾げていると、何かを思いついたのかイチカがキーボードを叩き始めた。ディスプレイには何か難しい数式やグラフなどが次々に羅列していった。

 

 

「やはりそうか………時空の歪みから発せられているパルスパターンとクリシスのパルスパターンが一致している。」

 

『でしょでしょ!?』

 

「でも兄さん……」

 

「それが一体どうしたというのですか?」

 

「ああ……クリシスが予言をした日もこうして暴走していた。そして今日、巨大なワームホールが開くことに呼応するように再び暴走した。これらの事から導き出せる一つの答えは―――――」

 

 

 

 

 

 

「――――――――『クリシスの予言は……破滅をもたらす者自身に書き換えられていた』」

 

 

 

 

 

 

 

 

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