IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~ 作:メテオボーイ
―――――『クリシスの予言は、破滅をもたらす者自身に書き換えられていた』
イチカの導き出した答えに束も賛同した。
「多分、システムの奥の奥……そこにバグのような何かが紛れ込んでいたんだと思う。みんなのせいじゃないよ。」
「一体誰が……」
「分からない……それより今は敵をどうするかだよ。」
「敵は俺たちが倒します。」
迷わず答えたイチカに三人の視線が集まる。
『良いのいっくん?』
「良いも何も俺が闘う理由は何一つ変わっていません。『夢を守る為』――――ただそれだけです。」
「しかし兄様………」
「心配いらない。アイツらはあの時俺を見て瞳に恐怖の感情が映っていた。あそこに俺の居場所はもうない。闘う理由はさっき言ったので十分だ。」
「………分かったよ兄さん。」
「すまないな……‼ワームホールが開く‼行くぞ‼」
「「了解‼」」
イチカに次いでマドカ、クロエと研究所を出て行った。その様子を束は画面越しに見ていた。
「私は私に出来ることを精いっぱいやるよ。だから……見失わないで―――――」
「―――――――いっくん、いや………………ウルトラマンガイア…」
その夜、IS学園は一般生徒を地下シェルターに避難させ外には教員部隊を展開、セシリア達専用機持ちはアリーナの管制室に集まって特設したモニターで先ほど開いたワームホールから姿を現した敵――――ゾーリムの姿を見て絶句していた。
「何ですのあれは……」
「……アイツまだお腹までしか出て来てないわよね?」
「いや……頭部の大きさから見て腹すら出て来ていないだろう。」
「これならまだドラゴンの方が良かったかも……」
「そうね……これはリミッターを解除しても効くかどうか考えものね。」
「そうだねお姉ちゃん……」
重苦しい空気が漂う中、敵の解析を行っていた布仏姉妹が声を上げた。
「織斑先生‼こちらへ接近してくる機体を二機確認‼本音‼」
「ハ~イ‼映像出しま~す‼」
映し出されたのはポセイディアとゼウスを纏って高速で向かってくるマドカとクロエの姿だった。
(頼んだぞ兄さん‼)
(兄様……どうか‼)
二人は強い思いを抱いて学園に向かっていた。なぜイチカはいないのか…それは二人が飛び立つ少し前に遡る―――
学園付近の空き地に降り立ち空を見上げると既にワームホールが開きゾーリムが頭部を出現させていた。
「何て……でかい…」
「普通の攻撃では効き目がないと考えた方がよさそうですね…。」
「だとしても……戦うしかないだろ…俺たちの夢を、守る為に………。」
そう言ったイチカの手にはエスプレンダーが握られていた。それを見たマドカは慌てて制止する。
「待って兄さん‼ここにはクロエが「良いですよ、何となくですけど気づいてましたから。」―――え?」
「ガイアもアグルも二人の闘い方に似ていましたから……少し前から気づいてました。だからこそ言わせてください兄様――――」
「―――――どうか自分の心の本質を……見失わないでください。向き合ってください。」
「どういう意味だクロエ?」
クロエの真意が読めないイチカが聞き返すと、クロエは少しずつ話し始めた。
「確かに兄様が闘う理由は『夢を守る為』、それ以外ありませんでした。己を律し、鍛え、追い込み、そして手にした力を復讐ではなく夢を守る為に使うことを選んだ兄様を私は尊敬しています。」
「――――しかし兄様……今兄様が闘う理由は何ですか!?今兄様の手にあるその力は――――何のための力ですか!?」
「それは…………」
「兄さん…」
自分の答えを見つけられないでいたイチカにマドカは声をかけるとアグレイターからイチカの目の前に青い光の球体を放出した。
「本当はもう分かってるはずだぞ?兄さんがこの闘いの中で見つけた大切なものが何かが……それが分かったらアグルの力を使ってくれ兄さん。私たちは切っ掛けを作り背中を押した。そこから踏み出すかは兄さん次第だ。行こうクロエ‼」
「了解‼」
二人はポセイディアとゼウスを纏うと、IS学園に向かって飛翔した。
一人残されたイチカはアグルの光を前にして二人が飛んでいった方向を見上げていた。
「そうだよな……いつの間にか俺は変わっていたんだよな………。」
エスプレンダーを見ると、まるでイチカに答えるかのように赤い光を放っていた。
「お前もそう思うか?………セシリア、シャルロット、ラウラ、簪、楯無さん、鈴、虚さん、本音、山田先生、千冬姉―――――何だよ……大事なものなんて……いくらでもあるじゃないか……。」
瞳を閉じながらそう呟く。心は―――決まった。目を開けばイチカの瞳にもう迷いはなかった。
「世界を敵にまわそうと……皆が俺を恐れようとも……居場所を失ったとしても……もう迷わない‼」
エスプレンダーを前に突き出すとアグルの光がエスプレンダーに吸い込まれていき、二つの光が一つとなった。
「夢と………大切な人たちを守る為に闘う……それが俺の闘う理由だ‼もう同じ過ちは繰り返させはしない‼―――ガイアァァァァァァ‼」
イチカは闘う―――――やっと見つけた、大切なものを守る為に―――――
マドカとクロエが学園入口に降り立つと、そこへ管制室にいた面々が二人を迎え入れた。
「マドカちゃん、クロエちゃん‼どうしてここに?」
「楯無さん、その話は後です。今はアイツを倒すことが最優先です。」
「そうね……それで、イチカ君は……」
「兄様はここにはいません。今は暴走したクリシスを束様と協力して復旧にあたっています。終わり次第合流するつもりですが間に合うかどうかは分かりません。」
クロエは機転を利かせてそう言うと、楯無は「そうなの……」と少し残念がった表情を見せた。セシリア達も同様だった。それを他所に千冬が二人に話しかけた。
「しかしマドカ、クロエ。倒すと言ったが何か策があるのか?恐らく奴にはリミッターを解除した攻撃は効果がないと見えるぞ。」
「確かに私たちだけでは無理だけど――――――来た。」
そう呟いたマドカの視線を追うように空を見上げると―――――
「フッ、ハァァァァァァァァ………ディアアアア‼」
マドカから託されたアグルの光の力を得てパワーアップしたガイアV2がクァンタムストリームでゾーリムに攻撃していた。
「―――今まで一緒に戦ってきた仲間が一緒なら倒せるかもしれません。」
「そうだな……マドカ、お前がこの作戦の指揮を執るんだ。」
「了解‼」
「それでマドカさん、私たちは何をすればいいんですの?」
「敵の身体は頭部以外はまだワームゾーンの中だ。螺旋状に突っ込んでありったけの実弾兵器をワームゾーンに打ち込む。みんなはこれを使ってください。」
そう言って専用機持ちの機体にインストールしたのは25mm7連砲身ガトリング砲4門を備えたラファール・リヴァイヴの追加装備、クアッド・ファランクスをセシリア達にも使えるように改良したクアッド・ファランクスmkⅡだった。
「従来のファランクスに兄さんが作った反陽子浮揚メカニズム「リパルサーリフト」の技術を応用して火器の重量と発射時の反動を制御するのにPICの機能を割いているため、移動が封じられるといったマイナス面をカバーすることに成功した。しかし今回の敵のために威力を倍増させたから恐らく一度しかファランクスは使用できないと思います。」
マドカの説明を受けて専用機持ち達の表情から余裕が消えた――――いや、消された、といった方が適切かもしれない。マドカの言葉に込められた「絶対に失敗するな」という意味を感じ取ったからだ。
「このままではガイアが危ない‼行くぞ‼」
ガイアはゾーリムが次々打ち出してくる炎を寸でのところで躱していた。マドカの合図とともに専用機持ち達はワームゾーンに突っ込むと、マドカは全員の機体の標準を合わせるために自分の標準とリンクさせた。
「全員私の合図でここを狙え‼マルチロックオン・システム正常に作動、目標、ワームホール、展開装備との意識同調完了、システムオールグリーン――――ポセイディア、スタンディングバイ‼」
「ゼウス、スタンディングバイ‼」
「狙い撃ちますわ‼」 「任せて‼」 「失敗はせん‼」 「絶対当てるわ‼」
「『山嵐』……展開。私は前に進む……ここで終わらせはしない‼」
「みんなが頑張ってるのに私がやらない訳にはいかないでしょ‼」
全員がマドカから送られてきた標準に自分の標準を合わせる。それを確認するとマドカはカウントを始める。
「―――――3……2……1……ファイアー‼」
「無限射撃《インフィニティ・ショット》、発動‼」
「「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇぇ‼」」」」」」
マドカの合図と同時にみんなはありったけの実弾兵器をワームゾーン目がけてぶっ放した。実弾兵器は狙い通り全弾ワームゾーンに吸い込まれていった。
「離脱‼」
これ以上は危険と判断したマドカは指示を出し、その場から皆と離脱する。その直後、ワームゾーンから光が上がりゾーリムが暴れ始めた。打ち込んだ弾が爆発したか――――――どうやら作戦がうまくいったようだ。
ゾーリムの炎を躱すとガイアは立ち上がり拳を強く握りしめる。
(アグルの力をもらったんだ‼このまま……終わるか‼)
両手を真上に突き上げ大の字に振りかざすとガイアの身体が赤く輝き、ガイアV2が自身とアグルの光の力を最大に解放した最強の形態、ウルトラマンガイアSV(スプリームヴァージョン)へと姿を変えた。空を見上げるとマドカ達がワームゾーンに攻撃を仕掛け、ゾーリムにダメージを与えているところだった。
(このチャンスを逃すわけにはいかない‼)
ガイアはゾーリムの開いた口に迷わず飛び込んだ。
「ディア‼ハァァァァァァ………ディアァァァァァァァ‼」
ガイアは上体を後ろに反らし腕にエネルギーを溜め、それを前に持ってくると、合掌した右手を下にずらしてガイア最強の必殺技フォトンストリームをゾーリムの体内で発射する。フォトンストリームを受けたゾーリムは木端微塵に爆散し消え、空を覆っていた黒い雲も消え去り真っ赤な夕焼けが顔を覗かせていた。
その様子を見届けていたマドカとクロエは緊張の糸が切れた瞬間、機体が解除されてしまった。学園までの最高速度での移動、そして無限射撃を使ったことによって疲労はピークに来ていたのだ。
「マドカちゃん‼クロエちゃん‼」
それにいち早く気付いた楯無が二人に手を伸ばすが間に合わず、二人はそのまま地面に落下―――――することはなかった。落下する二人を受け止めたのはガイアだった。
「兄さん‼」 「兄様‼」
幸い二人の声は他の専用機持ち達には聞こえておらず、ガイアが二人をゆっくり地面に降ろすと二人のもとにみんなが降りてきた。
「お二人とも、大丈夫ですの!?」
「ああ……大丈夫だ。」
「ガイアが助けてくれました。」
二人がそう言うと一同はホッと息を吐く。
「ガイア‼二人を助けてくれてありがとう‼」
代表して楯無が礼を言う。しかしガイアは首を横に振ると、拳を皆に向かって突き出した。それを見て一同は顔を見合わせるとクスリと笑ってガイアの拳に自分たちの拳を打ち付けた。
「戦士の間に言葉は不要………か。」
ラウラの言葉にガイアは一度頷くと光を放ち消え去った。
少しセリフの使い方を変えてみました………