IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~ 作:メテオボーイ
ガイア登場までもう少しかかるかも…
IS学園―――――
アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される。また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があり、それゆえに他国のISとの比較や新技術の試験にも適しており、そういう面では重宝されている。ただしこの規約は半ば有名無実化しており、全く干渉されないわけではないというのが実情である。表ではこのような建前となっているが、実際のところは各国の情報収集などが行われる世間から隔離された場所である―――
「え~、みなさん初めまして。私はこのクラスの副担任の山田麻耶といいます。これから一年間、よろしくお願いしますね。…えっと、それじゃあ出席番号順に自己紹介をお願いします‼」
山田先生の挨拶を受けて、一年一組の面々が順に自己紹介をしていく。
すると、いきなり教室の扉が開かれ、黒のスーツに袖を通した一人の女性が入ってきた。
「山田先生、すまなかったな。HRを押し付けて。」
「いえいえ、気にしないでください織斑先生。急な会議だったんですから仕方ないですよ。それに私だって先生なんですから。」
「うむ。それで山田先生、今は何を?」
「一人ひとり自己紹介をしてもらっていました。」
「そうか。では諸君、私がこのクラスの担任となる織斑千冬だ。私の仕事はここにいる貴様等全員にISについて理解してもらい、使い物になるようにすることだ。逆らっても良いが私の言うことはしっかり聞け。良いな?」
「きゃ――」
「騒ぐなよ小娘ども…」
「「「…」」」
憧れの織斑千冬の登場に生徒たちは歓喜の声をあげようとしたが、千冬の警告に一斉に押し黙る。まるで統率された軍隊のように―――
「まったく…毎年毎年騒がれては困る。先に言っておくが、私はお前たちが頭の中で思い描いているような大層な人間ではない。弟がいなければ料理も出来んし、妹がいなければ部屋の片づけひとつまともに出来やしない。少しは出来るようにはなったが昔は二人におんぶに抱っこだったそんなずぼらな女だ――オホン、まあ私の話をしてもどうしようもないな。自己紹介の続きをしてくれ。」
「お、織斑先生。一応全員自己紹介は終わっているのですが…後ろの三つの空席は…」
山田先生の言葉通り、先生から見て右側、一番後ろの隅とその前と左隣の席が空席となっていた。
「そうか。そこは転入生の席だ。つい先日転入が決まったと政府から連絡が学園に来てな。先ほどの会議もその内容だった。」
「それはまた急ですね。どこかの代表候補生でしょうか?」
「それが…生徒に関する情報が政府から何も届いていないのだ。なので会議も時間がかかってしまった。」
「どんな子なんでしょう?」
コンコン――
「遅れてしまって申し訳ありません。転入生三人、ただいま到着しました。」
「そうか、入っていいぞ。」
「失礼します。」
「「「「!?」」」」
千冬の了承をもらって転入生が扉を開けて入ってくる。謎の転入生達を見て一同は唖然とした。何故なら、最後に入ってきた生徒がIS学園には、いやこの世界にいるはずのない―――『男子生徒』 ―――だったのだから。
「クロエ・クロニクルといいます。順番では三女になります。趣味は読書と鍛錬、メカニック全般です。よろしく。」
「マドカ・クロニクル、次女だ。趣味は鍛錬、好きなものはお菓子と家族、嫌いなものは女尊男卑とISを自分の力と思い込んでいる奴だ。これからよろしく頼む。あと、兄さんに何かしたら私とクロエが許さないからな‼」
「イチカ・クロニクル、長男だ。趣味は鍛錬と機械いじり。好きなもの嫌いなものともにマドカと同じだ。ISを動かしてしまったのとISの勉強がしたかったので急遽転入となった。まあ、マドカはこう言ってるがよっぽどのことをしない限り大丈夫だ。気軽に話しかけてもらえると助かる。これからよろしく頼む。」
三人揃って礼をする。少ししてから顔を上げるが、一向に反応がない。
「ん?何かまずいこと言ったか?」
「一応兄さんは世界初の男性操縦者だからな。」
「そうですね。加えて今まで公表すらされてきませんでしたから。兄様の存在を驚かれても無理はないかと…」
「それもそうか。」
二人の言葉にイチカが納得していると、徐々にクラスメイトも復活し始め、各々のリアクションが飛んでくる。
「世界初の男性操縦者がこのクラスに!?」
「しかも兄妹揃って!?」
「結った長髪+オールバック+黒縁メガネ…ワイルドビューティー来たぁ~~‼」
「女に生まれて良かったぁ~~‼」
「お母さん、ありがとぉ~~‼」
「み、みなさん、落ち着いてくださ~い‼」
山田先生が注意しても全く効果なし。
「黙らんか貴様等‼」
「「「……」」」
あれほど騒がしかったのが一瞬で統率された軍隊みたいに黙っちまった。これは―――
「「「……軍隊(です)かここは?」」」
「あ、あははは~~~……」
ハモった三人の質問にただただ苦笑いの山田先生。如何やら山田先生は千冬姉には頭が上がらないようだ。
「この後は休憩を挟んでそのまま授業を開始する。準備をしておくように。クロニクル兄が一番隅、クロニクル姉がその前、クロニクル妹が兄の隣だ。良いな?」
「「「了解」」」
「うむ……」
千冬姉が俺とマドカのことを交互にチラチラと見てくる。多分半分くらいはもう気づいてるんだろうな…束さんにもOKはもらってるしな―――
「俺達の顔に何か付いてますか織斑先生?」
「…いや、何でもない。」
「そうですか。では。」
一言言ってからクロエ、マドカ、イチカの順に千冬の隣を通って席に向かう。
「では、これでHRは終了だ。授業には遅れるなよ。」
そう言い残して千冬と山田先生は教室を後にした。
「それにしてもあの三人、見た感じは普通の子って感じでしたね?」
「ああ…」
山田先生の言葉にもどこか上の空で返事をする千冬。頭の中はイチカとマドカのことでいっぱいだった。
(あの二人…この私が間違えるはずがない。間違いなく一夏とマドカだ‼だが、二人は軍が総出で捜索しても髪の毛一本出てこなかったんだぞ!?もし本人なら、助けにいけなかったことを謝りたい‼何があったのか、今までどこにいたのか…いろいろ聞きたいことがある。しかしそもそも私にそんな資格があるのか?)
「大丈夫ですか織斑先生?顔色悪いですよ?」
「いや、大丈夫だ。それより山田先生、最初は山田先生の授業だろう?準備はいいのか?」
「そ、そうでした~~‼私、先に行って準備してきます‼」
そう言って山田先生は職員室に向かった。
(私は先に教室にでも向かうか…うん?)
教室に向かおうと踵を返したところで、千冬は上着のポケットに何かが入っていることに気付いた。
手を入れてみると入っていたのは一枚のメモ用紙だった。
「メモ用紙?いつの間に…これは‼」
折りたたんであったので開いてみると、そこにはこう書かれていた。
『放課後、9629号室で待つ。誰にも言わずに来てくれ。』
「こんな番号の部屋、この学園にあったか?」
その頃教室では――――――――
休憩時間に入るとすぐにイチカ達は自分たちの席でイチカの専用機の調整を始めた。機体のほうは既に完成しているため、あとは武装だけである。根源的破滅招来体が一体どのようなものなのかが皆目見当もつかないので少しでも多くのタイプの武装を積んでおいたほうが良いという結論に達したため、機体ひとつを完成させるのに時間がかかっているのだ。
「う~ん…もう少しエネルギー効率をよくしたいんだがな…」
「兄様、ここをこうしてみてはいかがでしょうか?」
「どれどれ…おおっ‼これなら稼働効率15%アップする‼ありがと、クロエ。」
「いえ…兄様のお力になれて私も嬉しいです。」
「兄さん‼こっちは終わったぞ‼」
「了解。次に進んでくれ。」
「分かった‼」
そう言ってイチカはハニーバナナを口に運ぶ。三人とも考え事をするときなど頭を使うときは決まってハニーバナナ、バナナにハチミツと砂糖をかけて凍らせたものを用意している。脳のエネルギー源のブドウ糖を摂取するためとのこと―――――
「さてと、続きを「ねえねえイッチ~」ん?」
作業の続きをしようと思った矢先、いきなり声をかけられた。声のした方に目を向けると、ダボダボの制服に身を包んだ生徒がいた。
「イッチ-とは俺の事か?」
「そうだよ~、イチカだからイッチ-だよ~。私は布仏本音だよ~よろしくね~イッチ~、マドマド~、クロロン~‼」
「こちらこそよろしく頼む。(マドマド…)」
「よろしくおねがいします本音さん。(クロロン…)」
「よろしくな、のほほん。」
三者三様にあだ名をつけられてマドカとクロエは若干戸惑っていたが、どうやらうまくやっていけそうだ。俺も親しみを込めて『のほほん』と呼ぶことにした。
「それでのほほん、どうかしたのか?」
「あのね~、そのバナナ美味しそうだな~って思って~」
何だ、そんな事か…
「食うか?」
「良いの~?」
「ああ、俺達もう友達だろ?」
「そうだぞ。兄さんの言うとおりだ」
「そうですね」
「わ~いありがと~‼」
こうして転入して初めて出来た友達、のほほんと話をして休憩時間を終えた。どうやらのほほんも整備系やメカニック方面が得意らしくさらに会話が弾んだ。予鈴が鳴ったので俺たちは、のほほんと昼食の約束をして授業の準備を始めた。噂を聞きつけて廊下から教室を覗く他クラスや他学年の生徒、加えてクラスメイトの好奇な視線とは別種類の視線を感じたが――まあ、気にする必要もないか。
最初の授業は山田先生による座学だった。そもそも俺たちは数年前から束さんに一般教養からIS関連のことを隅から隅まで教え込まれてきてるから今さらISの基本なんか聞いても何の意味もない。なので、山田先生には申し訳ないが俺たちはこっそりページを開いて武装の調整を行った。
授業が終わり(俺達は全く聞いていなかったが…)、俺たちはそのまま調整を続けていた。
「やっと7割方完成したな…」
「そうですね。もう少し調整してから…あとは兄様の戦闘データ等を組み込んで微調整さえ出来れば…」
「それなら空いている時間にアリーナを借りて私と模擬戦でもやるか兄さん?私も今のうちに動かしておきたいし」
「そうだなそう――「少々お時間よろしくて?」――ん?」
振り向くとそこには長く伸びた金髪が特徴的な女性が立っていた。
「かまわないよ。ちょうどキリのいいところまで終わったところだ。え~っと…」
「申し遅れました。私はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですわ。以後お見知りおきを。」
「これはご丁寧にどうも。じゃあ改めてイチカ・クロニクルだ、よろしく」
「マドカ・クロニクルだ」
「クロエ・クロニクルです。」
「よろしくですわ。」
改めて自己紹介をしながら一人一人と握手をしていくセシリア。
「それでみなさん先ほどは一体何をしてらっしゃったのですか?」
「ん?…ああ、まあちょっとした物づくりさ」
そうイチカが言ったところでチャイムが鳴った。
「では、私はこれで失礼いたしますわ。」
「ああ。――そうだオルコット、お前も一緒に昼飯どうだ?」
「よろしいんですの?」
「ああ。かまわないよな?」
「私はかまわないぞ」 「はい。」
「それでは…お言葉に甘えますわね」
(イチカさん達のランチにお呼ばれされましたわ~‼この調子でガンガンアタックいたしますわ~‼しかし…どうしてイギリスから『イチカ・クロニクルのデータを取ってこい』と連絡が来ないのでしょうか?てっきり来るものだと思っていましたのに…気にしても仕方のないことですわね)
セシリア・オルコット―――
幼いころから男性を毛嫌いしてきた彼女がこうも容易くイチカに自分から歩み寄れたその理由は―――
(イチカさん………何と逞しいお方なのでしょう)
――――――単なる一目惚れであった。
余談ではあるが、束が世界各国に対して極秘裏にデータ取りはするなとそれはそれはきつく釘?を刺したことをセシリアが知る由もなかった。
「この時間はISの近接格闘における諸動作と各武装についての授業を行う。 …と行きたいところだがその前に、今度行われるクラス代表戦のクラス代表を決めないといけないな…。クラス代表とは、クラスを仕切るリーダー…まぁ、その名の通りクラス長と考えてもらって構わん。委員会の出席などもクラス代表が行なう。自薦他薦は問わない…誰かいないか?」
次の授業の担当だった千冬姉が今思い出したのだろう、クラス代表を決めると言い出した。嫌な予感がする…
「俺はオルコットを推薦する。」
「ハイ‼クロニクル君が良いと思います‼」
やはりそう来るか……
「私も賛成‼」
「私も私も‼」
今俺の名前を挙げた奴らはどうせ俺の事をただの見世物としか思ってないんだろう?
「俺はやらんぞ「推薦された者に拒否権があると思っているのか?」そういう意味じゃない。」
「何だと?」
「このままいけば推薦された人間が二人。多数決、という決め方もあるかもしれないがそんなものはあてにはならない。どうせイレギュラーである俺に票を入れるに決まっている。クラス代表は対抗戦にも出場するのだから平等を帰すために代表決定戦を執り行う、とでも織斑先生は考えるでしょう?しかし、それでも俺はオルコットに勝ってしまうどころかこの学校に俺に勝てる者がいるとも思えん。初めから結果の分かっている試合を見て何が面白いんだ?」
「ほう?お前の発言は『私にも勝てる』と捉えても良いわけだな?」
「ええ、もちろん。何ならやります模擬戦?と言いたいところですけど、いつどこでデータを取られるか分かりませんからね。むやみに力を見せるなと言われているのでやめておきます。」
「そうか、それは残念だ。それではオルコット、お前にクラス代表を頼んでも構わないか?」
「私は構いませんわ。何よりイチカさんの推薦ですので‼誠心誠意務めさせていただきますわ。」
オルコット……おまえ、良いヤツだな――――――。
「悪いなオルコット。押し付けたみたいになってしまって…」
「よろしくてよ。そのかわりと言っては何なのですけど…訓練にご協力いただけますこと?」
そんな事わざわざ聞かなくてもいいのに…友達なんだから。
「いくらでも付き合うぞ。俺は専用機が完成してからになっちまうけどな。」
「その間は私とクロエが主体で手伝うぞ‼」
「調整のほうはお任せください。」
「ありがとうですわ!」
俺たちが話していると、初めに俺を推薦していたうちの一人が割って入ってきた。
「ねえねえクロニクル君、男が女より強かったのなんて昔の話だよ?それに織斑先生は世界最強なんだよ?本当に勝てると思ってるの?」
「無論だ。そもそもISは女性にしか使えなかったから今のような女尊男卑の様相を呈しているがそれはISの持つ力をイコール自分の力と勘違いしているからだ。ISなしでお前たちは屈強な男性に勝てるのか?到底無理だろうな。俺たちの場合、それがたとえブリュンヒルデであろうと変わらないし揺るがない。この自信につながる鍛錬を積んできたのだからな。」
「そうですね。」
「何度死にかけたことか………」
俺たちの言葉を聞いてクラスの雰囲気がガタ落ちしてしまった。当たり前のことを言っただけなんだけどな…
「んん゛っ‼この話はここまでだ。それとクロニクル兄、お前には専用機が「ああ、それなら結構です。もう既に持っている、と言うより自作中ですから。」何だと!?」
本日一番のリアクションをする千冬。
「クロニクル兄、お前どこでその技術を!?」
「姉からですよ。」
「姉とは誰の事だ?」
「姉の名前は束・クロニクル。もっともこの名前になったのは最近だけど。みんなも聞いたことあるはずですよ?前の名前は――――――『篠ノ之束』。ISの生みの親であり、クロニクル家長女です。因みに俺とマドカは専属操縦者、クロエも専用機はありますが、俺たちの専属整備士ということになってますので。」
「「「「「!!!!!!」」」」」
「そういうわけなので『データを取るための』専用機はいりません。倉持技研だとは思いますが、あちらにはそのようにお伝えください織斑先生。」
「…分かった。詳しいことは『後で』聞かせてもらうぞ?」
「了解」
こうしてクラス代表はオルコットに決まった――――――――
もしかしたら若干ハーレムになるかも…