IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~   作:メテオボーイ

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episode 23 未来への受容

 

 

 

マドカや鈴から昔の話は少なからず聞いていた――――如何やら俺なんかに自分から関わってこようとしていた人たちが数人はいたらしい……。

 

 

先ずは篠ノ之箒。マドカの話によると、彼女とは小1から小4の間まで一緒のクラスだったらしい。束さんがISを開発し、行方を晦ましたことで日本政府から重要人物保護プログラムを適応され、それ以来日本各地を転々としていたらしい。束さんは彼女の事をかなり毛嫌いしているが、詳しいことは何も聞かされていない。束さんに言われて目を光らせてはいるが、今のところはこれと言って関わることがないからな……何も起こらなければ良いが………いや、考えるのは止そう。前にクロエに言われたことがあったな―――――

 

 

 

 

『兄様のそういう予想はよっぽどの確率で当たりますから……あまり考えないようにしてください』

 

 

 

 

あとは五反田弾とその妹の蘭。二人の家は食堂を経営しており、俺たちは家族で世話になっていたらしい。二人とは俺が小学校に入学した時からの付き合いで、記憶にはないが初めはよく三人で遊んでいたらしい。俺への誹謗中傷等が酷くなってからは周りの目が怖くなり、疎遠になってしまっていたようだ……

 

 

 

 

鈴は箒ってやつと入れ替わりのような形で中国から引っ越してきたらしい。

 

 

 

 

 

 

そして今俺はセシリア達と共に、鈴の案内のもと『五反田食堂』に来ている。

 

 

 

さあ……過去と向き合う時だ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り午後2時頃―――――

 

 

「ここが弾の家、五反田食堂よ。ちょっと待ってて、厳さんに言って貸し切りにしてもらってくるわ。昼を大分過ぎたこの時間帯ならほとんどお客さんいないと思うから。弾と蘭もついてきて」

 

「すまないな。さっき連絡は入れておいたからもうじきセシリア達も合流できるはずだ」

 

「気にしなくていいわよ。それにもうみんなも来たから」

 

 

そう言うと鈴は二人を連れて店に入って行った。それと同時にセシリア達がイチカと合流した。

 

 

「イチカ君、さっきの電話の内容から大体は把握しているわ……あの二人は?」

 

「マドカや鈴から聞いた話では……二人の名前は五反田弾と五反田蘭。彼とは小学校、中学校が同じだったみたいです」

 

「幼馴染……だったのですね」

 

「今となってはそれすらも思い出せないし分からない。詳しいことはマドカの方が良く知ってるはずだ」

 

 

イチカの言葉に彼女達の視線が一斉にマドカへと注がれた。それに臆することなくマドカはイチカと彼らの関係、どのような事があったのかをセシリア達に話した。

 

 

「そんなことがあったのか……」

 

「イチカさんは今日………」

 

「ああ……過去と向き合おうと思ってな」

 

「イチカは……辛くないの?」

 

「辛いも何も……俺には判断できるものが何一つとして残っていないからな。それに、今の俺にはほとんどイチカ・クロニクルとして生きてきた時間しかない。幼稚園には行ってなかったし、束さんの秘密基地と家を行き来する以外はあまり外出もしてなかったしな」

 

「イチカ君……」

 

「でも、どうして話そうと思ったの?」

 

 

シャルロットの問いにイチカは――――――

 

 

「話す分には俺は何とも思ってない。俺にとって大切なのは皆と、皆と過ごす時間、そしてその先の未来に叶える夢だけだから」

 

「厳さんからオッケーもらえたわ。入っても良いわよ!!」

 

「すまないな鈴。失礼する」

 

 

そう言うとイチカは店に入って行った。セシリア達もそれに続いて行こうとするが………

 

 

「私は……いや、私もクロエも……正直、怖い………」

 

「怖い……何が怖いんだ?」

 

 

マドカの言葉にラウラが反応する。マドカとクロエは視線を地面に落としたまま続けた。

 

 

「兄様が過去に触れる、過去と向き合うことで……何かの拍子に記憶が戻ってしまうことが……」

 

「兄さんは……世界から比べられ、非難され、蔑まれてきたことから………何時しか世界を憎み、恨み、そして―――――『拒絶した』」

 

「『拒絶した』?一体何を――――「『全て』です」」

 

 

楯無の言葉に割って入ったのはクロエ。その表情はいつもの様に感情表現に乏しいものの、何所か悲しげだった。

 

 

「皆さんは想像できますか?努力しても報われない。他者より良い結果を残してもそれが認められない。誰も自分を自分と見てくれない。理不尽な扱いを周りの大人に、クラスメイトに、日本に、そして世界に受け、都合が悪くなったら用済みと言わんばかりに消される―――――その時の兄様の気持ちが。勿論皆さんにも、マドカにも、私にも、誰にも分かりません。だからこそ……怖いのです。認められることを、報われることを、そして何よりこの世界自体を拒絶した兄様の記憶が戻ってしまった時、兄様は何を成そうとするのかが………」

 

「こんなことは言いたくはないが……いや、こんなもしかしたらの話をするのは止そう。今は目の前の問題の方が先決だ」

 

 

マドカはそう言うとクロエと共に店内に入って行った。5人もその後に続くと、机を挟んでイチカと弾、蘭が座っていて、厨房には鈴が言っていた厳さんが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロエ、盗聴器等の類いのものはあるか?」

 

「いえ、スキャンしてみたところそのようなものはここにはありません」

 

「あ、あの……盗聴器って?」

 

 

イチカの口から発せられた『盗聴器』という言葉に反応したのは蘭。

 

 

「ああ……これから話すことは機密事項でな…。聞かれて情報が漏れてしまうといけないからな。しかし君達には知る権利がある。だから、今から話すことは誰にも口外しないでもらいたい」

 

「「分かった(ました)」」

 

 

イチカの忠告を二人は互いに目を合わせ一度頷くと、二つ返事で了承した。

 

 

「貴女もそれでよろしいでしょうか?」

 

「ええ。構わないわよ。これ、お茶です。どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう、蓮さん」

 

 

イチカ達にお茶を持ってきたのは五反田 蓮(ごたんだ れん)、五反田食堂の自称看板娘で弾と蘭の母である。いつも笑顔絶やさず、とても愛嬌がある美人でお客さんからの人気も高い。実年齢は秘密であり、本人によると、「28から歳をとっていない」との事らしいが実際のところは一体どうなのやら………。

 

 

「さて、本題に入ろう」

 

 

そう切り出したイチカは弾と蘭にあの日千冬の応援で行ったドイツでイチカとマドカは誘拐された事、その時にイチカは8年間の記憶を失ってしまったこと、束に助けてもらい、名を変え今まで生きてきたこと、そして現在はIS学園に入学し、破滅招来体と戦っていることを伝えた。

 

 

「――――――これが全てだ。言ってしまえば、君たちの知っている『織斑一夏』はあの日ドイツで死んだ。今君たちの目の前にいるのは『織斑一夏』によく似た全くの別人、『イチカ・クロニクル』だ」

 

 

その言葉をもってイチカの話は終わった。弾と蘭は話が終わってもただただ茫然としており、蓮は二人に寄り添うような形で二人の肩に手を置いた。未だにイチカの口から聞かされた話を受け止めきれていない弾と蘭だった。

 

 

「どうして……君はあの怪獣たちと自分を危険に晒してまで……闘おうとしているの?」

 

 

口を開いたのは意外にも蓮だった。子供たちの様子を見かねてだろうか……。流石は大人といったところだろうが、彼女の目にも弾や蘭と同じように戸惑いのような感情が現れているのをイチカは読み取っていた。それを理解したうえで彼女に話の先を促した。

 

 

「マドカちゃんはそうでもなかったけど……私たちが知っている一夏君は……その、周りからあまり良い扱いを受けていなかった。その頃の貴方の目は世間に対する絶望、恨み、拒絶―――――色々な感情を含んだ目をしていたわ。それなのにどうして……貴方は世界を守ろうとしているの?貴方がそうまでして世界を守ろうとする理由は―――――」

 

「蓮さん、でしたよね?蓮さんは何か勘違いをしています」

 

「―――――えっ?」

 

「そもそも俺はこの世界を守るつもりも許すつもりもありません。その頃の記憶が自分にはないのでこんな事を言うのはおかしいかもしれませんが、頭で覚えていなくても……『ココ』が訴えるんです。世界に対する憎しみを、絶望を、恨みを、諦めを……」

 

 

イチカは自分の心臓を指差しながらそう言った。例え記憶がなくても、イチカの心には言いようのない、世界に対する思いが少なからず沁み付いていたのだ。

 

 

「IS――――インフィニット・ストラトスを無限の宇宙へ還す……俺の生きる意味はそれだけでした。これは誰にも言ってませんが……それが叶ったら日本政府に、そして世界に、復讐してやろうと……そう考えていた時期もありました」

 

「「「「「「「!!!???」」」」」」」

 

 

イチカの口から発せられた『復讐』の二文字に後ろの席に座って行く末を見守っていたセシリア達が驚いた様子を見せる。この話をするのは本当に初めてだったようで、隣にいたマドカとクロエも一緒に驚いていた。

 

 

「そんな中……IS学園に入学して、後ろにいる彼女達に出会いました。そこで俺は初めて、『彼女達を守る為に戦おう』―――そう決心したんです。例え世界を敵に回すことになったとしても」

 

「夢と彼女達という繋がりを守る為――――それが俺の闘う理由であり、存在意義であり、俺の持つ力の意味です」

 

 

強く言い放たれたイチカの言葉に圧倒されつつも、「そう……。」とだけ言うと、蓮はすぐに納得したような表情を浮かべた。

 

 

「それが一夏君と、いえ……イチカ・クロニクル君とマドカ・クロニクルちゃんの闘う理由なのね。……分かったわ。あなた達は自分の決めた道を最後まで突き進みなさい。それで辛くなった時には家に来なさい。昔の様にご馳走するから」

 

「「ありがとうございます」」

 

「弾、蘭。あなた達はどう?」

 

「……今はまだ全部を受け入れることは出来ねぇけど……二人の強い決意は理解できる。俺は一夏とマドカが辛い目に合っている時、見て見ぬふりをした。その時の罪滅ぼしだってしたい。だから、俺も二人は止めない。俺はお前達が生きていてくれたってことだけで十分だし、やれるならもう一度……いや、きちんとした友達になりたい。これからもよろしくな、イチカ、マドカ」

 

「ああ、よろしくな弾」

 

「こちらこそ」

 

 

弾はそう言うとイチカとマドカとガッチリと握手を交わした。

 

 

「蘭、貴女はどうかしら?」

 

「わ、私は……えっと、その……」

 

「蘭、落ち着いて。ゆっくりで良いから」

 

 

如何やらまだ弾ほど心の整理が出来ていないらしい。蘭は蓮に問われてあたふたしていたが、次第に落ち着きを取り戻していった。

 

 

「私は……お兄みたいに割り切ることは…出来ません。自分の中で納得させるまでには時間がかかるかもしれません……。でも……また一夏さん…一兄とマドカさんと仲良くしたいから、頑張って受け入れます」

 

「ありがとう蘭」

 

「すまない蘭」

 

「よし、この話はここでおしまい‼みんなお腹空いてるでしょ?厳さん、じゃんじゃん料理持ってきて‼今日は私のおごりよ!!」

 

「あいよ!!」

 

「そんな、蓮さん。お金は自分たちが出しますよ」

 

「良いのよ良いのよ。イチカ君とマドカちゃんの帰還パーティーってことで」

 

「……それならご厚意に甘えます」

 

 

その後、一同は厳さんの作る料理を心行くまで堪能したのであった―――――

 

 

 

 

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