IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~ 作:メテオボーイ
「――――セシリア。恐らく凰さんはセシリアの弱点にどこかで気づくだろう…」
「近接戦闘の経験不足と私がビットを使っている間はその場から動けないこと…ですの?」
「ああ…機体情報と性格を見た限り、それに気づいた彼女は最終的には分のある接近戦に持ち込むのがセオリー……そしてそのために不可視の龍咆による攻撃でビットを封じにかかるだろうな。」
まるで未来が見えているかの如く話していくイチカにセシリアは内心驚きながらも真剣に聞いていた。
「――――そうなると私はどうしたら……見えないものは避け様がありませんわ…」
「大丈夫、この時のための秘策だ。それに龍咆を躱す手はある。」
「本当ですの!?」
「ああ…彼女のような真っ直ぐなタイプなら尚更だ。――――――」
「いいかセシリア?もしこの状況になったら―――――――」
(――――――相手の表情と視線だけ見てろ。それで撃つ瞬間が分かれば避けられる。)
「――――――‼」
「なっ!?」
まさか初見で避けられるとは思っていなかったのだろう。鈴に動揺の色が見え、一瞬動きが止まる。
「今ですわ‼行きなさい、ブルー・ティアーズ‼」
セシリアはその一瞬の隙を逃さなかった。ブルー・ティアーズを展開し狙い撃つ。
「それはもう見切ったわ‼」
セシリアの攻撃を鈴は躱し、攻撃に移ろうとする。
「このまま――――「それはどうでしょう?」えっ――きゃあ!?」
セシリアの言葉と同時に鈴の背中に攻撃が被弾した。鈴は自分が被弾したことに驚きを隠せなかった。
(何で!?どうして躱したはずなのに被弾してるのよ!?)
「まだまだ行きますわ‼」
セシリアは再びレーザーを発射し、間髪入れずに畳みかける。
(さっきのはきっとまぐれよ‼今度は‼)
向かってくるレーザーを鈴は上に飛ぶことで躱した―――――はずだったのだが……
――――――――――――ギュイン‼
「なっ‼」
レーザーは方向を変え、鈴に向かった来た。
「レーザーが曲がった~!?」
「何あれ…凄い…」
「イチカ君、セシリアちゃんに教えた秘策ってもしかして……」
「―――――――BT偏光制御射撃、通称フレキシブル…あれが俺の十八番でセシリアに教えた秘策です。操縦者の適正がA以上で、BT兵器稼働率が最高状態にある時に使用可能な能力で射出されるビーム自体を精神感応制御によって自在に操ることができるというものです。セシリアのBT適正はAだったので何とか間に合いました。」
「だがクロニクル兄、オルコットは動きながらのBT兵器稼働は出来ないのだろう?その弱点を克服すればよかったのではないか?」
「確かに最初はそうしようと思ったんですけど……機体とBT兵器の同時稼働ははっきり言うと慣れなんです。俺も最初はセシリアと同じように同時稼働出来ませんでしたから。」
あの時は三人で一週間闘い続けて稼働率を最高状態まで引き上げたっけ……あれはかなりきつかったな……
「セシリアは俺なんかよりIS動かしてる時間は長いわけですからそこは時間の問題だと……だったら勝利をより確実なものにするために他の事に時間を割くことにしたんです。稼働率は俺が実際にやった特訓をやって二日前に会得しました。」
それを聞いてイチカ君の後ろでマドカちゃんとクロエちゃんが少し青ざめた顔をしていた。一体どんな特訓をしたのやら……聞かない方が身のためよね……あれ?
「じゃあ昨日は何をしたの?」
私がそう質問をするとイチカ君はこう答えた―――――
―――――――”試合を決める一撃”の特訓をした、と――――
鈴は焦っていた。徐々に減っていくシールドエネルギー、疲弊した己の身体、そしてこの劣勢―――これらが鈴から冷静な判断力を奪っていった。
(こうなったら先にビットを‼)
鈴は双天牙月を構え目の前のビットに被弾覚悟で向かっていく。
「やあああああっ‼」
しかし、冷静な判断力を失っていた鈴は見落としていた。目の前のビットの数が”4機”から”6機”に増えていたことを―――――
「この瞬間を待っていましたわ‼」
セシリアは鈴の冷静さが失われるこの瞬間を待っていたのだ。鈴に向けてレーザーを発射し、鈴が躱すであろう方向に先ほど展開したミサイルビットからミサイルを発射する。
「きゃああああっ‼」
鈴はセシリアの狙い通り被弾し、爆風で鈴の視界は奪われてしまう。
「くっ‼(この煙ならセシリアにも見えてないはず‼)」
追い込まれて全てが後手後手に回ってしまった鈴。冷静な判断が出来るはずもなく、セシリアのいた場所に突っ込むが、そこにセシリアがいるはずもなかった。
「いない!?」
「ハアアアァッ‼」
鈴の頭上からセシリアが迫る。
(―――――今言った作戦はここぞというときだけにするんだ。)
セシリアは右手に構えたスターライトmkⅢで自分を見上げた形になっている鈴の双天牙月を撃ち落す。
「しまった‼」
「今ですわ‼インターセプター‼」
と同時に左手にインターセプターを呼び出す。
(セシリアの武器は連射できない―――一撃で決めるんだ‼)
「ハアアアァッ‼」
「きゃああああぁっ‼」
インターセプターの突きが鈴を捉え、そのまま地面に突き落とした。
『シールドエネルギー、ロスト。勝者、セシリア・オルコット‼』
一回戦はセシリアの勝利で幕を下ろした。
「やった~‼セッシーの勝ち~‼」
「フレキシブルで敵の冷静さを奪い、紛れ込ませたミサイルビットで視界を奪い、隙をついて武器を撃ち落して仕留める……イチカ君の計算通りに事が運んだわね…」
「良かったね、イチカ。」
「ああ……ん?」
「どうかしたのか兄さん?」
突然誰かからの連絡が入った。まあ、案の定束さんからだった。
「ちょっとはずすぞ―――――――もしもし束さん?」
『もしもしいっくん!?ちょっとまずいことになっちゃった‼』
「なにかあったんですか?」
束さん、かなり焦ってるな……一体何が?
『それがね、――――――――――――』
「――――――――――――‼」
束の言葉を聞いてイチカの表情が一変した。
甲龍が強制解除された鈴はアリーナに仰向けになって空を見上げていた。
「鈴さん、お身体は大丈夫ですの?」
視線を移すとそこにはブルー・ティアーズを纏ったままのセシリアがいた。
「平気よ……セシリア、アンタ強いわ。完敗よ…」
「いえ…ギリギリでしたわ。私もシールドエネルギー殆ど残っていませんもの。………ふぅ。」
そう言うとセシリアも機体を解除し、地面にぺたりと座り込む。どうやらセシリアも限界だったようだ。
「でも次は私が勝つわ。やられっぱなしは趣味じゃないもの‼」
「私も日々精進して更なる高みを目指しますわ‼」
互いに握手を交わす。試合を観戦していた生徒たちから溢れんばかりの歓声が響き渡る。二人は互いを支え合いながらピットに戻ろうとする。しかし突然、アリーナのシールドをぶち破り謎の黒い機体が十数機アリーナに降り立ったのだ。
「アリーナのバリアが破られるなんて……何なのよアイツら!?」
「分かりませんが……まずい状況だということは確かなようですわね…」
「多分先生たちが来るだろうから私たちは一先ずピットに戻りましょ‼」
「そうですわね『凰、オルコット、聞こえるか?』‼…織斑先生、聞こえていますわ‼」
千冬からオープンチャネルで通信が入る。
『少し前に何者かによるウイルスのせいで学園のシステムが正常に作動できていない。そっちの状況はこちらから把握することが出来ない上アリーナの扉も開かない状態になっている。クロニクル姉妹にシステムの正常化を行ってもらっているがいつ完了するか分からん『あと五分待ってください。それまでに終わらせます。』……だそうだ。そこで待機を「それは無理そうですわ織斑先生」――何だと?』
「先ほどこちらに黒の所属不明機がアリーナのバリアを破って十数機侵入してきましたわ‼」
「加えて私の専用機はもう動かないし…時間稼ぎなんて出来ないです‼」
「くそ‼こんな時に‼…凰、オルコッ――――――――………」
「織斑先生?織斑先生‼………駄目ですわ、つながりませんわ……」
話の途中で通信が切れてしまった。セシリアが何度呼びかけても応答はなかった。
「どうすんのよ!?あの数を私たちで何とかできるわけないじゃない‼」
「私に言われましても困ります……わ……」
「どうしたの……よ…」
振り向くと襲撃してきた謎の黒い機体がこっちに向かってきていた。
「こんなところでやられるわけにはいきませんわ‼」
セシリアはシールドエネルギーの残り少ないブルー・ティアーズを展開し、スターライトmkⅢで狙い撃つが敵の堅い装甲にはほとんど効き目がなかった。
「くっ‼なんて堅い装甲ですの!?」
黒の機体はそのまま日本刀のようなブレードを展開しセシリア達向かって切りかかってきた。
「させませんわ……インターセプター‼」
セシリアはインターセプターを呼び出してブレードを何とか受け止めるが別の黒の機体の攻撃を受けてしまい強制解除してしまう。
「くっ……」
「セシリア、大丈夫!?」
「私なら何とか……」
「私もセシリアも戦えない、先生たちの増援も来れない、逃げ道もない…どうすればいいのよ‼」
ないない尽くしで窮地に追い込まれたセシリアと鈴。そんな二人に対して黒の機体が一機、止めを刺そうとブレードを展開して突っ込んできた。
「「――――――‼」」
二人はこのあと来るであろう衝撃に目を瞑る――――――
((……………………?))
しかしいつまで経ってもその衝撃も痛みもやってこなかった。恐る恐る目を開くと―――――
「――――――遅くなってすまない…セシリア、凰さん。」
敵のブレードを素手で受け止めているイチカの姿があった。
「イチカさん‼」 「一夏……」
イチカの登場にセシリアは歓喜の、鈴は少し寂しげな表情を浮かべた。
「詳しいことは後で話す…セシリアは凰さんとここでじっとしていてくれ。」
「しかしイチカさん御一人では…「大丈夫、それなら心配いらない。」――マドカさん‼」
敵が侵入する際に破ったバリアの隙間からマドカもアリーナにポセイディアを纏って降り立ちイチカが捕まえていた敵機を蹴り飛ばした。
「もうじきクロエの作業が終わってシステムも正常化されるだろう。そうすれば教員たちも入ってこれるが出来ればその前に終わらせたい。」
「そうだな……面倒なことになる前にさっさと片付けるぞ、マドカ‼来い、ガイア・サーヴァント‼」
「了解‼」
イチカはガイアを呼び出し纏った。
「イチカさん、あの数の敵を一体どう倒しますの?」
「そうよ‼いくらなんでも二人じゃ……」
「心配するな…何も一機ずつ相手していくわけじゃない。」
「私たちの機体のワンオフ・アビリティー(単一仕様能力)で一気に仕留める。」
「アンタたち、ワンオフ・アビリティーが使えるの!?」
凰さんが驚いて声を荒げた。まあ、この能力が使えるのなんてそうそういないからな……
「一応な…じゃあ二人は少し下がってくれ。」
「分かりましたわ。」
「分かったわ。」
二人が下がったのを横目で確認するとイチカとマドカは戦闘態勢に入る。
「「……ワンオフ・アビリティー(単一仕様能力)―――――無限射撃《インフィニティ・ショット》、発動‼」」
発動と同時にガイアは紅く、ポセイディアは青く輝きだし、空中にビット、アサルトライフル、ショットガン、ブラスト、キャノン、荷電粒子砲………etc―――――拡張領域にある全ての射撃武器を展開される。
「マルチロックオン・システム正常に作動、敵機全機をロックオン、展開装備との意識同調完了、システムオールグリーン――――ガイア、スタンディングバイ。」
「ポセイディア、スタンディングバイ。」
二人のコールに答えるかのように機体の輝きが増していく。
(暖かい…この感じ、ガイアとアグルが力を貸してくれているのか?)
マドカも同じことを感じていたようで視線を合わせ頷くと、二人は同時に決めにかかる。
「無限射撃《インフィニティ・ショット》――――ガイア、駆逐する‼」
「ポセイディア、狙い撃つ‼」
インフィニティ・ショットが敵機に命中し、一機残らず撃墜された。それと同時に一筋の光が雲を突き抜け空へと上がり消えた。
(何だったんだ、今の光は?)
「片付いたな……兄さん。」
「……ん、ああそうだな。」
「……?どうかしたのか兄さん?」
「いや、何でもない…(杞憂に終わればいいが………)―――マドカ、体調の方は大丈夫か?」
「何とか………前よりは慣れてきたけどやっぱりまだきついな……」
少しふらついているマドカを支えながら機体を解除し、セシリアたちのもとに歩を進めた。