IS ~この地球(ほし)の光に導かれし者~ 作:メテオボーイ
IS学園生徒会室――――――ここは今、何とも言えない空気に包まれていた。イチカ、マドカ、クロエの三人と机を挟んで千冬、山田先生、楯無、簪、虚、本音、セシリア、鈴が座っている。
なぜこのような状況になったのか―――――それはイチカとマドカがセシリア達のもとに戻り、イチカが疲れて動けなかったセシリアを背負って千冬達のもとに帰還したところまで遡る……
セシリアを背負ってイチカはマドカと鈴と共にピットに戻ってきた。すると、楯無さんと簪が脱兎のごとく駆け寄ってきた。
「セシリアちゃん、鈴ちゃん、マドカちゃん、大丈夫――――――って、イチカ君!?」
「イチカ!?イチカも一緒だったの!?」
システムエラーのせいで彼女たちにもアリーナでの状況は入ってきていなかった。正常化が完了したのもつい先ほどであった。
「ああ……アリーナに侵入してきた敵機は俺とマドカで殲滅した。」
「そう、よかったわ……それよりもセシリアちゃん、いつまでイチカ君にくっついてるのよ‼うらやま……じゃなくて、離れなさい‼」
「セシリア……ずるい…。」
「あら、何のことですの?」
何か三人の間に火花が散っているように見えるんだが……気のせいか―――
「すまないセシリア……二人がああ言ってるし降ろすぞ?」
「あっ………」
そう言ってセシリアを近くにあった椅子に座らせた。セシリアは少し残念そうな表情をしていた。
「やはり兄様も……マドカの言っていた通りでしたね。」
そう言ったのはクロエ。クロエに続いて本音、虚、千冬、山田先生もピットに入ってきた。
「まあね……兄さん、あの時の電話もしかして束さんからだったんじゃないのか?」
「ああ…よく分かったな。」
「何を話してたのかは知らないけど、アリーナに現れた”アイツら”を見てすぐに分かったよ。」
「少し良いか?」
会話に割って入ってきたのは千冬。
「クロニクル兄、襲撃してきた敵機の事を教えてくれんか?」
「ええ、良いですよ。」
「良いのか、兄さん?」
「構わんさ…それに”アイツら”はセシリア達に刃を向けたんだ。これは俺の責任でもある…確かにみんなを巻き込みたくはない。しかし今回の一件でもうみんなも関係者なんだ、聞く権利はある。」
「………分かった。」
渋々マドカは頷き、クロエもこれに賛成した。
「それじゃあ俺たちが知っていることを話せる範囲でお話しします。どこか話せる場所はありませんか?他人に聞かれるとまずい話なので……」
「それなら生徒会室を使うといいわ。あそこなら他の人は入ってこれないし。」
「ありがとうございます楯無さん。」
楯無の了承を得たところで一同は生徒会室に向かった。
そして冒頭に戻る――――――――
「それじゃあ何から話すかな……」
「まずは襲撃してきた敵機について教えてもらおう。」
「分かりました――――今回襲撃してきた敵機の名称はありませんが…そうですね、今回はゴーレムと呼びましょう。ゴーレムは……俺が設計し、束さんの手によって創られた自律式活動兵器―――簡単に言うと、”無人機”です。」
「「「「無人機!?」」」」
イチカの言葉を聞いて一同が驚きの声を上げる。無理もない、無人機などという代物は世界中何所を探しても存在しないものなのだから……
「世界でも例のないものだぞ……」
「それを創ってしまわれるなんて……」
「イチカ……すごい…。///」
「でもでもイッチー、どうして無人機を創ったの~?」
「そうですね。悪く言ってしまうと世界を敵に回しかねませんね。」
「そうよね……人の乗らないIS…世界情勢を変えてしまうわね。イチカ君、どうしてなの?」
一同の視線がイチカに集まる。しかしイチカは一切表情を崩すことなく質問に答えていく。
「――――――――未来を守る為だ。」
「未来を守る?何から?」
「……みんなは”クリシス”って知ってるか?」
イチカの言葉に答えたのはセシリアだった。
「確か、篠ノ之博士が開発なさった光量子コンピュータですわよね?イギリスでもニュースになりましたわ。博士がIS以外の物を開発なさったと…しかし私もそれくらいしか把握しておりませんわ。」
「そう、そのクリシスだ…。すべては…そのクリシスの導き出した一つの予言から全てが始まったんだ――――」
それからイチカは包み隠さず全てを話した。―――クリシスの予言の事、破滅招来体の存在、自分たちの専用機の事、そして―――
「――――――俺たちはこの闘いに身を投じるにあたって、全てをこの闘いに費やすことを決め…戸籍を消し、表から姿をくらませた。……俺たちの以前の名前は『織斑一夏』、『織斑マドカ』―――――そこにいる織斑先生の弟と妹だ。」
この事実を知らなかったセシリア、虚、山田先生、鈴は目を見開きイチカを見つめていた。
「更識姉妹と布仏妹は知っていたのか?」
「ええ…さて、俺から話せることは以上です。セシリア、凰さん、今回は俺のせいで危険な目に合わせてしまった…すまなかった。」
「仕方ありませんわ、今回はゴーレムが破滅招来体に操られてしまったから起こってしまったことです…イチカさんは悪くありませんわ。」
「すまない……そう言ってもらえると助かる。襲撃してきたゴーレムは全て破壊したから再び襲撃してくる恐れはない…無人機の計画も練り直しあるいは凍結だな。」
「それではまた敵が襲ってきた場合はどうするんですの?」
「俺たちが出る。俺たちの全戦力を注ぎ込んで迎え撃つ……足が折れようとも、腕が千切れたとしても最期まで戦い抜き、その先の未来を掴みとる―――――そうあの日俺たちは決心したんだ。」
一同はイチカ達の強すぎる信念に圧倒され、言葉が出てこなかった。
「一夏、マドカ、クロエ、以前にも言ったが私も出来る限りの協力をしよう。これが私に残された唯一の罪滅ぼしの方法だからな」
「ありがとう、姉さん。」
「わ、私も手伝いますよ‼実戦は無理ですけど……」
「ありがとうございます、山田先生。」
まず、教師である千冬と真耶が意思表明する。それにつられて他の面々も己の意思を口に出す。
「私も戦いますわ‼そのような敵に私たちの未来までも奪われるところを黙って見ていろなんて…出来ませんわ‼」
「そうよ……そんなことあっていいはずがない‼私も戦うわ‼」
「私も……イチカ達の力になりたい‼」
「私たちも手伝うよ~‼」
「ええ、まあ…私と本音は整備の方が中心にはなってしまいますが。」
「みんなありがとう……感謝する。」
イチカがそう言うとみんなに向かって頭を下げる。マドカとクロエもそれに続いて頭を下げた。
「しかしイチカさん…私たちのISの装備では怪獣に効果的なダメージを与えることは出来ませんわ。」
「心配はいらない…みんなの装備をダメージが与えられる威力になるようにチューニングしてしまえばいい。普段はリミッターをかけて普通の出力、能力に抑えておけば何も問題はないだろう。」
「本当ですの!?それなら―――「ただし条件がある…」―――何ですの?」
「チューニングしたこととその状態の機体情報は誰にも話さないでもらいたいんだ。日本、イギリス、ロシア、中国の政府にもだ。それが守れるのであれば、機体のチューニングをする。」
「分かりましたわ。」
「技術の悪用や拡散を防ぐためね…分かったわ。」
「私も……誰にも言わない。」
イチカの提示した条件をセシリア、楯無、簪はすぐに飲んだ。
「みんな、すまない………」
イチカは三人から視線を移す。鈴だけが賛同の意を示さず黙ったままだったからだ。
「凰さん、君はどうだ?」
「……アンタ、本当に一夏なの?」
鈴の質問の真意が分からなかったイチカは取りあえず質問に答えていくことにした。
「今の俺はイチカ・クロニクルだが…さっきも言ったが俺の昔の名前は織斑一夏だ……」
「じゃあどうして私が分からないの!?同じ学校に通ってたじゃない‼転校してきたころイジメられてた私をアンタは助けてくれた…自分がどれだけ周りからひどい扱いを受けても。アンタはいつも独りだった…必死に耐えていた…そんなアンタを私はただ見てることしか出来なくて…今度は私が助けたくて…そう思ったら私が引っ越す前にアンタがいなくなって……こうしてやっと会えたっていうのに私とは初対面だって……」
「凰さん……(今の話…本当だったとしたら…)――――マドカ、クロエ、凰さんの話って――――」
鈴の話を聞いてイチカは、ある一つの考えにたどり着く。その確認のためにマドカとクロエに尋ねた。
「兄さんの考えは合ってる…鈴、兄さんは――――――」
「―――――――小学校に入学してから姿を消したあの日までの約8年間の記憶がないんだ。」
「ちょっとマドカ‼それってどういうことよ!?」
告げられた事実に鈴は驚愕しマドカに詰め寄った。
「―――あれは第二回モンド・グロッソに出場する姉さんの応援に行った時だった。私と兄さんはそこで姉さんの連覇を阻もうと企んだ輩に誘拐されたんだ。そのことに気付いた束さんに私たちは助けられたんだが………」
『一番ひどいのは撃ち抜かれた左肩だね…。』
『束さん、兄さんは……』
『大丈夫、治療用ナノマシンを注入して傷口塞いじゃったから一週間で完治するよ‼でも、もしかしたら銃創は残っちゃうかもしれないな…。』
『そうか……でもよかった、助けてくれてありがとう束さん。』
『いいよいいよ~‼』
『……………ん、マドカ、束さん、クロエ…』
『大丈夫か兄さん?』
『ああ…大丈夫だ。……傷は残るのか。まあ隠せば何の問題もないか。』
『そうだな…。中学の奴らや周りの人にばれたらまた何を言われるか分かったもんじゃないからな。まあ、鈴は心配するだろうが…』
『……ん?マドカ、中学の奴らって?…鈴って誰だ?』
一夏の言葉に三人の時間が止まった――――――
「兄さんは小学一年から誘拐される日までの出来事、かかわった人物、それら全てをきれいサッパリ忘れてしまっていたんだ…。それ以外の事は覚えていたんだが………。束さんが言うには今まで兄さんの内側に限界まで溜まっていた精神的ストレスと肩を撃ち抜かれたことが引き金となって兄さんの脳に一番強く残っていた排除したい記憶を忘れさせるきっかけになったらしい―――――と言ってしまえば聞こえが良いが最終的に兄さんは自分で記憶を消したってことらしい。だから鈴…兄さんは鈴の事も覚えていない…いや、”知らない”んだ。」
「そんな……」
マドカから告げられた真実に鈴は愕然とし、膝をついた。助けてもらってからこれと言って親しくしたわけでもなかった。助けてもらったお礼も出来ず、ただただ一夏が日に日に傷ついていくところを見ていることしか出来なかった。今思い返せばやっていたことは一夏の事を蔑んでいたやつらと何も変わらなかったのだ、一夏の中では自分とイジメてたやつらは同じだったのだと気づかされてしまった――――
「凰さん……」
真実を目の当たりにして打ちひしがれている鈴にイチカは心の内を言葉にしていく――――
「記憶を自分の意思で消してしまった今、俺が君と親しかったのか、それとも恨んでいたのか、ましてや凰さんの話が正しいのかどうかも覚えていないし分からない……だが―――」
膝をつき俯いている鈴の眼前に右手を差し出した。
「―――俺がこんなことを言うのはお門違いかもしれないが……俺と友達になってくれないか?」
「―――――えっ!?」
イチカの言葉に勢いよく顔を上げるとイチカの顔には少し不安の色が見て取れた。
「出来るのであれば……一からやり直したい。―――――ダメか?」
一夏が悪いなんて微塵も思っていない。むしろ謝らなければいけないのは自分の方だ―――そう思っていたら『やり直したい』と一夏が言ってくれた。私は迷うことなく一夏の手を取った。
「――――中国代表候補生の凰鈴音、鈴で良いわ。これからよろしく、”イチカ”‼」
「――――イチカ・クロニクルだ。それでこっちが妹のマドカとクロエだ。よろしくな、”鈴”。」
こうして二人は改めて”見知らぬ人”から”友達”になった。たったこれだけの事だが二人にとってこれは大きな、大きな一歩であった―――――。
「何なんだこの映像に映っている機体は!?こんなもの、どこの国にもないぞ‼」
「なんという威力……第三世代の機体をもはるかに凌駕している‼」
「これでは世界のパワーバランスが崩れかねないわ‼」
「この機体の攻撃力なら怪獣に対抗できる‼すぐに調査してくれ‼」
「彼らの顔と名前が分かりました‼…これです。」
一人の男が持ってきた資料には―――――
「イチカ・クロニクル…マドカ・クロニクル…クロエ・クロニクル…」
三人の顔と名前があった。
「―――――彼らは一体何者なんだ……」
イチカ達の知らないところで様々な思惑が動き始めていた――――――
若干鈴とモンド・グロッソの時間軸を弄りました………スンマセン