弓塚さつきの奮闘記   作:第三帝国

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某架空戦記掲示板でSS書いていたので遅れましたけど、
先日レイトショーで「未来福音」を見てテンションに任せて2日で書き上げました(キリッ)

所で思考は大人、けど小悪魔系ヒロインの未那ちゃんのパンツは何色なのだろうか?
純白の白は黒とは対照的で、パンツが強調されて映えるからいいけど、

父親同様黒づくめだからやっぱりパンツも黒なのだろうか?
幼女と黒パンツの組み合わせもなかなかそそると思いますが皆さんはどう思いますか?

おや、まだ日が高いと言うのに黒ずくめの男たちが……。


第14話「対峙」

「おやおや、お互い楽しそうでなによりです」

 

こんな穏やかな時間が永遠に続けばいい、そう思っていたが、

楽しげな言葉であるが冷やかな音声を伴った第三者の声が聞こえた。

 

「先輩…」

「こんばんわ、遠野君」

 

振り返った先にはカソック服を纏ったシエル先輩が佇んでいた。

先輩は何時ものように笑顔を浮かべていたが、学校で見せる笑顔とは違っていた。

そう、まるで獲物を見つけた肉食獣のような笑顔であった。

 

「弓塚さんも、こんばんわ」

 

現に弓塚に対しては眼がまったく笑っておらず、

言われた側は肩をビクリと震わせ反射的にアルクェイドの後ろに隠れた。

 

まさか、

シエル先輩はネロとやりあったあの日の夜と同じく、

弓塚を吸血鬼として今度こそ断罪するつもりなのだろうか?

 

だとしたら、させない。

なぜなら、今こうして3人で居られる光景こそが俺が望むものだから。

それが間違いだと言うなら俺はそれを否定してやる、例えそれが先輩であったとしても。

 

「先輩――――『まったく、遠野君ったら学校でも噂になっていましたけど、

 真夜中に女の子を2人も連れまわすなんて意外とプレイボーイなんですね』――――はい!?」

 

ポケットのナイフを手にして覚悟を決めて、

先輩に問いつめようとした矢先、先輩が言いだした突拍子のない話に呆けてしまった。

 

いやいや、待て女の子を連れまわしているとかまあ、

確かに事実と言えば事実かもしれないけど、学校で噂になっているってなんでさ!

 

「遠野君、知らなかったのですか?

 今日学校で夜な夜な金髪の美女と可愛い系の女子を連れまわしている、と噂になっていましたよ」

 

思わずアルクェイドと弓塚を見る。

確かに、考えて見れば金髪赤眼のアルクェイドは目立つ容姿をしている上に、

鼻立ち、眼の大きさ、といった1つ1つのパーツの精度が高く全体的に完成されており、

絶世の美女とは誰か?と言われたら俺はクレオパトラではなく眼の前の彼女を選ぶであろう。

 

一方、弓塚はアルクェイドほど派手な容姿をしていないが、

眼などの顔を構成するパーツのバランスが良く、こまめに整った顔立ちをしており、

アルクェイドが美女ならば、弓塚は美人というより年頃の可愛い女学生といった感じだ。

 

そんな2人と一緒に真夜中を徘徊する俺はどう見られるのだろうか?

――――怪しさ万点である、あるいはダブルデートをしている色男とでも見られても可笑しくない。

 

……有彦に知られたら、殴られるかもな。

 

「雑談するために来たのかしら?わざわざこんな極東の島国まで御苦労さまね、代行者」

 

アルクェイドが口を開く。

その言葉に普段の能天気さは消えて刺を含んでいた。

 

「なに、遠野君の学校における先輩としてちょっとだけ振舞っただけですよ。

 いくら私でも人間はそうした遊びが必要ですからね――――もっとも、吸血鬼である貴女には関係のない話かもしれませんが」

 

「へえ――――?」

 

ジクリと冷たい空気が肌を刺す。

先輩とアルクェイドが出し合う殺意がぶつかり合い、険悪な空気が流れる。

しばしの間ピリピリとした緊張感を漂わせ、睨みあいを演じていたがシエル先輩が口を開いた。

 

「まあ、警告ですよ、警告、主に遠野君に。そう、貴方は今とても危険な状態にいます」

「お、俺?」

 

思わぬ指名に驚く。

 

「吸血鬼の吸血衝動、というものを知っていますか遠野君?」

「吸血衝動?」

 

聞き覚えのない単語に首をひねる。

 

「吸血衝動とは、要は吸血鬼が血を吸いたいという強い衝動です。

 吸血鬼は超越種としての特権の代償として血を吸わなければいけません。

 普段はそれこそ輸血パックで満足できますが、生命に瀕した時などは

『眼の前の人間を殺してでも』血を吸いたいという衝動に飲み込まれてしまいます、私を一度殺した弓塚さんのように」

 

さりげなく弓塚に視線を寄こす先輩。

先輩に恨みといった感情はなかったが、弓塚は気まずげに視線をそらす。

 

なるほど先輩の話は分る、だけど――――。

 

「けど、先輩。だったらそんな危険な目に合わないようにすればいいんじゃないのか?」

 

だったら、そういた状況下に俺が、

いや俺たち3人が協力し合えばいいだけだ。

 

だけど、なんで先輩はこんな話をするのだろう?

仮にロアと戦う事自体が危険だというなら目的が同じ先輩を含めた4人で戦えばいいだけなのに。

 

「成程、一理ありますが遠野君。

 まだ話の途中だったので勘違いしているようですけど、

 私が遠野君により注意して欲しいのは、弓塚さんよりもむしろ真祖アルクェイド・ブリュンスタッドなのですよ」

 

「え、アルクェイドを?」

 

またもや意外な答えに、

間が抜けたように言葉を出してしまう。

 

「アルクェイド、いいえ。

 真祖の吸血鬼と呼ばれる生き物は普通の吸血鬼と違って血は飲んではいけない物なのです」

 

「血を飲んではいけない?吸血鬼なのに?」

 

血を吸う鬼、

と書いて吸血鬼と読むにも関わらず血を吸わない。この矛盾はどういうことだろうか?

そういえば、弓塚こそ血を吸っていたがアルクェイドが血を吸う姿を俺は一度も見ていない。

 

「真祖とは吸血鬼というよりも精霊に近しいもの。

 彼らはあらゆる面で人類を超越する存在でしたが、1つだけ欠点がありました」

 

間を置き続けていう。

 

「それは血を吸いたいという、吸血衝動。

 その強さはもはや単純に精神のみで押さえ込めるようなレベルではなく、

 真祖の能力の過半が抑制に費やされてしまうほどで、

 1度血を吸った真祖はそれ以降の吸血衝動の苦痛は倍加し、

 これに耐えられなかった真祖は無差別に血を貪り、人間では打倒不可能な魔王と成ります

 ――――かつて彼女はそうした魔王の処刑人、いいえ兵器でした、ある人間の姦計に手に掛るまでは」

 

俄かに信じられない。

アルクェイドが人外的な強さを持っていることは知っていたけど、

そうした人外の存在を狩る役割をアルクェイドが担っていたなんて。

そして、「ある人間の姦計の手に掛るまで」と先輩は言ったけどまさか、それは。

 

「そう、その人間こそこの街を騒がす吸血鬼ことロアです。

 その男はアルクェイドに自らの血を飲ませて、

 自身は強力な吸血鬼になると同時に彼女は暴走して真祖を全滅させてしまいました。

 その上、一度遠野君に殺されて分っているはずです、アルクェイド・ブリュンスタッド。

 貴女はその吸血衝動を抑えるために永遠の眠りにつくか、自ら命を絶つしかない、ひびが入ったグラスであることを」

 

シエル先輩の険しい視線がアルクェイドに突き刺さる。

嘘だ、アルクェイドが永遠の眠りか命を絶つかの二択しかないなんて、そんなはずがあってたまるか。

だから、アルクェイド、いつものようにあの能天気な笑顔で否定してくれ――――。

 

「そんなことは――――」

 

けど、現実は非情であった。

口こそ否定の言葉を発していたが、

眼の前の彼女は何時ものアルクェイドには似合わない焦りと悲壮の表情を浮かべていた。

 

「そうですか、」

 

でしたらこの程度の動きに反応できますよね?

そう言い終わると先輩は弾丸のごとくアルクェイドに肉薄し、

アルクェイドから、え?と気が抜けた言葉が出た刹那、彼女はシエル先輩に吹き飛ばされた。

 

「な――――!?」

 

俺がようやく反応できたのはアルクェイドが派手に土埃を上げて、転がって行った時であった。

弓塚もまた反応できず、アルクェイドに巻き込まれる形で吹き飛ばされた。

 

「驚きました、弱体化していることは予想してましたけど、まさかここまでなんて」

 

拳を突き出した姿で淡々と呟く先輩。

アルクェイドに仕出かしたことに腹が立つ前に、

一瞬で人を吹き飛ばせ、なおかつ冷静、というより冷酷すら思わせる態度に俺は戦慄を覚えた。

 

「遠野君の傍から立ち去りなさい、吸血鬼。

 おままごとはここまでです、アルクェイド・ブリュンスタッドそして弓塚さつき」

 

懐から投剣のようなものを取り出し、2人に突き付ける。

どうやら、先輩は俺のためにしているようだけどさっきから俺の話は聞いてもいない。

まったく、どいつもこいつも俺を除者にして事を進めようとする。

 

「さっきから聞いていれば、いい加減にしてください先輩!」

「………………」

 

先輩はピタリと動きを止め、視線を俺に変える。

青い瞳には遊びはなく、一寸の隙間もない冷酷さを宿していた。

 

「先輩は俺のためといっているけど、

 俺は俺の意思でこうやって一緒に居たいと思っているんだ。

 先輩がそれでも、駄目だというなら――――俺にだって覚悟はある」

 

ナイフを取り出して構える。

魔眼殺しの方ははずしていない。

というよりも、俺は覚悟があると言いつつも結局先輩を殺すことなんてできない。

 

先輩は言った、この街に来たのはロアを倒すためだと。

だから、こうしてシエル先輩を先輩と認識しているのは多分偽りの記憶なのだろう。

けれども、俺はそれでもシエル先輩は先輩だから、先輩を殺すことは出来ない。

 

「……浅はかですね、たしかに遠野君は驚異的な体術と魔眼を使いこなしていますが、

 たかがナイフ一本で代行者、それも埋葬機関第七位にして「弓」の二つ名を頂く私に立ち向かうおつもりですか?」

 

ネロに匹敵するプレッシャーが襲いかかる。

この現在、俺と先輩との関係は学校の先輩後輩ではなく、殺し合いを演じる関係であった。

 

いや、違う。正確には狩るか狩られるかの関係、

それも狩る方は先輩で狩られるのは俺であり、襲いかかるプレッシャーで脂汗が吹き出て胃が悲鳴を上げる。

 

「………………」

「………………」

 

お互い言葉を発さぬまま沈黙の時間がただ流れる。

見つめあった状態で動かなかったが、先に行動に出たのは先輩の方であった。

 

「はぁ、まさか遠野君が、

 ここまで頑固者だったなんて。

 前に関わらないように言ったつもりでしたのに」

 

肩を落とし、ため息をつく。

 

「先輩…その、」

 

「突然ごめんなさい、遠野君。

 けど、真祖が暴走したさいに、

 真っ先に犠牲となるのは彼女の傍にいる遠野君なのです」

 

剣をしまい、話し続ける。

 

「それに遠野君はわざわざこちらの世界に入らなくてもいいのです。

 ロアにしろ、何にしろこんなことは私のような人間に全て任せてもいいのです。

 帰るべきです、こんな暗闇の世界ではなく、日の当たる人の世界に帰るべきなのです、それでも――――」

 

「それでもなお2人と共にいますか?」そう先輩は質問した。

そんなこと始めから分り切っており、迷いはなかった。

 

「ああ、元々そのつもりだから」

 

「……そうですか、後は遠野君の判断に任せましょう、

 私が言える義理じゃないですけど後悔がないように頑張ってください」

 

話はこれでおしまい、

とばかりに先輩は背を向けて公園の外へ歩き出した。

そして、俺は2人が転がっているはずの場所へ振り返ったが――――あれ?

 

「アルクェイド?弓塚?」

 

そこには誰もおらず、

僅かに乱れた土の跡が人がいた証拠を残していた。

くそ、2人共どこにいったんだ!?

 

「遠野君、アルクェイドは公園東の方角に走った後に気絶しています。

 恐らく遠野君に吸血衝動の事実が聞かれた事にショックを覚えて逃げたけど、

 弱体化していたから途中で倒れたのでしょう、弓塚さんは先ほど彼女のために水を取りに行きました」

 

背を向けたまま、東に指を指し先輩は淡々と見たことを口にした。

 

「ありがとう、先輩。

 やっぱり先輩は先輩で優しいのですね」

 

「優しい、

 じゃなくて自分はただ甘いだけです。

 ついでに、これはただのお節介、贅肉のようなものです。

 さあ、早く行きなさい、あの2人の下に行くべきです。」

 

言い終わると先輩は一度も振り返らず立ち去った。

先輩は自虐していたけど、何だかんだと言って俺が知っている先輩で嬉しかった。

 

さて、俺は2人の所へ行こう――――。


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