弓塚さつきの奮闘記   作:第三帝国

30 / 47
今週中にドリフターズの短編ネタ
を投稿したい


午後12:30

金髪の少女が十字架を前に跪き、祈る。

願う内容は己の救いを求めず、ただただ人のため。

ひいては人類のため、少女は願い、信じる神へ祈り続け、宣言する。

 

「主よ。今一度、この旗を救国の―――いえ、救世の為に振るいます」

 

少女、否。

救世主、オルレアンの乙女。

奇跡を体現し、祖国を滅亡から救い出した少女が今一度信ずる神へ誓いを立てた。

 

そして、ゆっくりと立ち上がり、

背後に立つ人物、マスターに対して述べる。

 

「サーヴァント・ルーラー、召喚に応じ参上した。

 ……ですがマスター。調停者(ルーラー)のクラスですら、もはや一介の英霊にすぎないのです」

 

調停者(ルーラー)は本来聖杯戦争の運営役として、

戦いに秩序を保つことが期待された存在であり、マスターの存在を必要とせず、

如何なる陣営にも関わらず中立を維持していたが、今の彼女はその他の英霊と同じだ。

 

「秩序は燃え尽きた。多くの意味が消失した。

 わたしたちの未来は、たった一秒で奪われた」

 

回想し、悔やむように言葉を綴る。

目を伏せ後悔、悲しみといった感情を彼女は表現する。

 

だが、彼女。

調停者(ルーラー)は涙を流さなかった。

かつて姦計でその身を業火に焼かれてもなお、自身の選択肢を嘆かなかったように。

顔を上げ、自身の象徴である軍旗を床に立て、言った。

 

「聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不倒の英霊たちよ!

 本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても、今は互いに背中を預けよ!」

 

声を張り上げ、周囲にいるであろう数多の英霊達に語る。

姿は見えないかあちこちから突然の申し込みに動揺する雰囲気が流れる。

 

「我が真名はジャンヌ・ダルク。主の御名のもとに、貴公らの盾となろう!」

 

宝具たる旗を高々と掲げ、

高らかに、誇らしげに、奇跡の少女は宣誓した。

 

 

 ◆

 

『霊長の世が定まり、栄えて数千年』

『神代は終わり、西暦を経て人類は地上でもっとも栄えた種となった』

『我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの』

『そのために多くの知識を育て、多くの資源を作り、多くの生命を流転させた』

『人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理―――人類の航海図』

 

 

『これを、魔術世界では人理(じんり)と呼ぶ』

 

 

 ◆

 

『第一の聖杯 救国の聖処女

 AD.1431  ■■百年戦争 オルレアン』

 

「貴方の戦いは、人類史を遡る長い旅路」

 

  /

 

『第二の聖杯 薔薇の皇帝

 AD.0060 永続■■帝国 セプテム』

 

「ですか悲観する事はありません。貴方には無数の出会いが待っている」

 

  /

 

『第三の聖杯 嵐の航海者

 AD.1573 封鎖終局四海 オケアノス』

 

「この惑星(ほし)のすべてが、聖杯戦争という戦場になっていても」

 

  /

 

『第四の聖杯 ロンディニウムの騎士

 AD.1888 ■■■■■■ ■■■■』

 

「この地上のすべてが、とうに失われた廃墟になっていても」

 

  /

 

『第五の聖杯 ■■の白衣

 AD.1783 ■■■■■■ イ・プルーリバス・ウナム』

 

「その行く末に、無数の強敵が立ちはだかっても」

 

  /

 

『第六の聖杯 輝けるアガートラム

 AD.1273  ■■■■■■ ■■■■■』

 

「結末はまだ、誰の手にも渡っていない」

 

  /

 

『第七の聖杯 天の鎖

 BC.■■■■ 絶対魔獣戦線 ■■■■■』

 

「さあ―――戦いを始めましょう、マスター」

 

 

  ◆

 

 

「過去最大の規模で行われる聖杯戦争、

 開幕。――――それは 未来を取り戻す物語」

 

 

「Fate/Grand order」2014年冬、開戦予定!

 

「さあ、皆も艦これに続いて課金して遊んでください、わん!」

「え゛??」

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

「と、いうわけで生憎ですが自分はFate/Grand order、

 に参戦が確定しているので、ゼロ同様今年は主人公枠となりました」

 

「くそっ!敵!

 やっぱりセイバーは敵よ!

 ええい!これが、ゴールドヒロインかつ、型月のドル箱の余裕か……」

 

「うう、セイバーさんはずるいです!反則です!」

 

澄ました表情で今年の出演を表明したセイバーに遠坂姉妹が悔しがった。

 

これまでFateはタイガーコロシアム、

エクストラと散々ゲーム化されてきたが今回はいよいよ課金ゲーム業界への参入が決まったのだ。

しかも、これまでマスター枠として活躍が期待できる桜と凛の出番は今回は望めない可能性が高いと来た。

 

「でも、セイバー。

 この場合、貴女のセイバー戦隊が一番のライバルになりそうね」

 

「はい、アルクェイド。

 たしかにヒロインとして私は負けるつもりはありません。

 ですが、黒から始まり白、赤、そして桜と増え続ける量産型ヒロインの猛攻に正直参っています。

 Apocryphaに至っては我が息子であるモードレットが活躍してしますし……元が自分なだけに色々と複雑です」

 

最初は「セイバーのアホ毛を握ると属性が反転する」という一発ネタに過ぎなかった。

だが、公式が月姫やその他Fateシリーズ以外への創作意欲の変わりにこの一発ネタに注ぎ込んだ結果、暴走が始まった。

 

純白の姫騎士である白セイバー。

アーサー王じゃないけどそんなの関係ねぇなローマ皇帝の赤王。

公式では設定のみだったがついに父親と続き聖杯戦争で活動を開始したモードレッド。

そして、コハエースの帝都聖杯奇譚で登場した桜セイバーと、ネタの暴走は留まる所を知らない。

 

というか、月姫2はよ!

そうでなくてもメルブラの続編でもいいから……。

 

「あー、セイバーさん、セイバーさん。

 セイバーさんのライバルは量産型セイバーだけじゃないと思うなー」

 

と、ここに第三者の意見が出る。

奮闘記の外伝と言いつつ、影が薄い主人公弓塚さつきだ。

が、太陽光対策のため、し○じろうの着ぐるみを着ているため、声でしか判別できない。

弓塚さつきのアイデンティティーともいえるツインテールも学生服も今はなく、さながら某パンダのようだ。

 

「あ、さっちん起きたの?」

「あー、はい。何とか……」

 

アルクェイドの問いに気が抜けた調子で答える。

椅子を並べて作ったソファーから起き上がった弓塚さつきだが、体の彼方此方が痛むようで動きが鈍い。

無理もない。セイバーとアルクェイドが来る前は英雄王(小)とキャス狐のどつきあいに巻き込まれたのだから。

DEADENDにならなかったのは、ここが何でもありのアーネンエルベであるお陰に過ぎない。

 

「それは良かったです。

 で、さつき、私のヒロインとしてライバルに何か意見があるようですが?」

 

介抱した者として安堵するセイバーであるが、

さつきが話したヒロインのライバルについて喰らい着く。

 

今でこそ型月のドル箱にして黄金ヒロインであるが、

Apocrypha、そして昨年のヒロイン十二宮でそのあざと過ぎる演技。

何よりもどれほどセイバーが努力しても得られない包括力(胸)を持つルーラーのように、

ゴールドヒロインの座を脅かすヒロインが後から後から登場しているので、さつきの話を聞き漏らすわけにはいかなかった。

 

そして、ヒロインとしての矜持を持つ、

その他の人物、アルクェイド、遠坂凛、間桐桜もさつきに注目している。

 

「セイバーにとって最大のライバルになり得るのはずばり……」

「ずばり?」

 

一拍。

ざわ、ざわ、ざわと某賭博漫画の緊迫した空気が流れる。

そしてさつきは言った。

 

「ヒロインにしてヒロインに在らず。

 ヒロインとは真逆の存在であるが時に最凶のヒロインとなりうる存在――――男の娘だよ」

 

「「「「な、なんだってーーー!!?」」」」

 

その時ヒロイン一同に電流が走る。

なぜならその発想はまったくなかったからだ。

 

男の娘。

それは男にも関わらず女のように可愛らしい、

というギャップ萌えを前面に打ち出したキャラクター属性である。

 

「男の娘?馬鹿な型月にはそんなキャラは……いや、アストルフォか!!」

 

「あーなるほど、それがあったかー。

 ウチの所には男の娘枠なんて、強いて言うならば、メレムかな?

 出番がない月姫のせいで随分前に出版された「Character material」以来出てないしなー」

 

型月にそのようなキャラがいないと否定しようとしたセイバーであったが、

男の娘として息子と共に活躍している聖杯戦争、Apocryphaのアストルフォを思い出す。

 

アストルフォ。

シャルルマーニュ十二勇士の1人。

中世における武勲詩に登場する人物で性格は極めて陽気。

というより、元ネタの作品でも「理性が蒸発している」という設定であるほどだ。

なお、女装しているのは「狂えるオルランド」と呼ばれたローランを鎮めるためと言われている。

 

どうして女装することでローランの狂気が静まったのか、実に気になるが……。

そして、なぜかApocrypha material 「C86 ver」ではヒロインと混ざって乳比べをする男の娘であった。

 

「く、たしかに強敵です。

 あのけしからん胸を持つセイバー系ヒロインが負けられない戦いがある、と言わしめたほどの敵ですし」

 

「それだけではないわ、セイバー。

 色々なキャラ属性のヒロインを抱える型月世界の中で、現段階で男の娘属性はアストルフォただ1人。

 例え、キャラの人気でナンバーワンでなくても、彼女、いいえ彼は誰もが持ち得ないオンリーワンのキャラよ」

 

セイバーが戦慄し、

凛がアストルフォを彼女なりに考察する。

思わぬダークホースにその他のヒロインもまた戦慄を覚えるが、さつきがさらに爆弾を投下した。

 

 

「ついでに言うとアストルフォの髪はピンク、そうあの淫乱なピンクなんだよ!」

 

 

この時、くうきがこおりついた。

 

淫乱ピンク。

その語源はどこから来たかは定かではないが、一説によると。

二次元においてピンク色の髪を持つヒロインは18禁の作品等において、

金髪ヒロインと並んで高い確率でヤリ易い……ゲフンゲフン、攻略しやすかったためだと言われている。

 

そして、アストルフォの髪はピンク。

さらには小説においてマスターのSMプレイを受けるなど淫乱要素を有していた。

つまりアストルフォは淫乱ピンク、キャラ立ちとして、これ以上濃いキャラはいないだろう。

 

「男の娘で淫乱なピンク、だと」

 

セイバーが衝撃のあまりよろめく。

 

「く、淫乱なのは桜だけかと思ったのに!」

「そうです、淫乱腹黒枠は私だけの席…って、何を言わせるんですか!!」

 

凛、桜も衝撃を受けるが、

さり気に酷い事を言う姉とそれを自覚する妹がそこにいた。

そして、アルクェイドの反応だが彼女だけは違った。

 

「待ちなさい、さっちん。

 淫乱ならエロイエロイといわれている、

 月姫だって負けていないわよ!お尻プレイをしていたシエルのように!

 シスターのくせにけしからんお尻をしているし、志貴なんて舐めていたし!」

 

「あ、はい、ソウデス、というかそれ誇るところですか?」

 

尻カレーの異名を着けられたネタを暴露したアルクェイドにさつきは若干引いた。

少しばかり後ろに下がり、彼女から距離をとった刹那――――先程までいた場所に剣が通り過ぎた。

 

そして、剣がアルクェイドに直撃し、吹き飛ぶ。

受身の体勢をとる事ができず、そのままカウンターの方まで飛び皿やコップが割れ、内装が砕ける派手な轟音が響いた。

 

「さっきから、監視も兼ねて黙って聞いていれば、

 何て事を言うのですか、アルクェイド!!エクストラでサーヴァントとして出演して以来最近調子に乗っていませんか!?」

 

ヒロイン達が振り返った先には、

黒鍵を指に挟んだシスターこと、シエルがそこにいた。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。