名も無き一般人のフェイト   作:ハッシーツヴァイ

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夜なべ

 

 

前回のあらすじ//テレッ

 

 

雨が降る中、なんと寺の前で気絶してたメディアさんを自室まで連れ込んだ!

しかし脱がせた魔術礼装のローブから水滴が畳に垂れてヤベェ!ってとこまでだった!

 

礼装の水滴の他にも、部屋で最初に彼女を寝かせていた部分の畳も僅かに湿っていたり。

寺の人に悪いか?

いや、人助けだしなぁ!

人じゃないけど。

 

ちなみにあのローブの正式名称は『灰被りの花嫁(ヘカティックグライアー)』だったっけ。

ルールブレイカーとか道具とかも全部収納できる四次元ポケットみたいな機能もあったっけ。

 

僕はメディアさんが目覚めるまでは、机につきfate資料も見直していた。

 

 

でも動かないでいたらやっぱり自分も寒くなって、彼女に当て続けていたストーブを自動ウィ〜ンウィ〜ンなアレにして僕にも当たるようにさせてもらったりしていた。

人間、カンペキには行かないもんさね。

 

 

 

 

 

ゝゝゝゝゝ

 

メディアさんが目を覚ましたのはそれから約一時間後だった。

 

 

後ろでモゾモゾした音に振り返り、身体を起こした彼女に挨拶。

 

「こんばんわ」

 

「…………」

 

彼女は体は暖まったはずなのに氷のように冷たい目で睨んでいる。

 

とりあえずわかったこと。

 

メディアさんが胸元を隠すように抑えている手ぬぐいがどうしてもダサかったこと。

そんなん吹き飛ぶくらいメディアさんはやっぱり美人だったこと。

 

 

藤村さんや音子さんも十分美人だったけど、やはりメディアさんは別格だった。

生物学的にあんな整った造形は有り得るのかと思ったほど。

外国人だから余計、違和感あるしね。

 

 

「ご気分は、如何ですか?」

 

「………………最悪ね」

 

「あ〜……ハハッ……」

 

当然か。

彼女からすれば死に損ねたといったところだろうから。

 

どう順序だてて話そうかとか、いろいろ考えたけど。いざ起きた彼女を前にしたら不思議と、強張っていた肩の力を抜くことができた。

 

「率直にお願いします。この街を守るために力をかしてくれませんか?」

 

病室の士郎に初めて会いに来た切嗣のように、穏やかだけど真摯に切り出す。

でも流石に率直過ぎたか、メディアさんもあの士郎みたくポカンとしてるかも?冷静に。

 

「街を………守る?」

 

僕は首肯する。

ここに来て、多少なりとも余裕が出て来てから薄ぼんやりと考えいたこと。

 

 

「貴女なら、もう薄々感づいていらっしゃるかも知れないけれど。聖杯は悪いモノに穢れていて、完成すると街に、世界に……甚大な被害を催してしまいます」

 

「……………」

 

「まあこの世界には、あなた方英霊以外にも化け物じみたスゴい力を持つ人たちはいます。例え聖杯が災厄を撒き散らしてもきっと、どこかで誰かが食い止めるでしょう」

 

 

直死の魔眼持ちだの、埋葬機関だの、真祖の姫だの。この世界に存在するであろう“別作品”の人たちのことだ。

彼らなら根源によって繋がり、間接的に協力さえして世界が滅びる危機など軽く片付けてしまうかもしれない。

 

「でもその頃には………この冬木の街はとうに滅んでしまっているでしょう。それを何とか出来ないかと思って………」

 

 

「………つまりあなたは他のマスターのように聖杯に願望を託すのが目的ではないのね」

 

頷く。

 

「そう。で、私には何をしてほしいのかしら」

 

「え、何を?」

 

ようやく喋りだした彼女は気怠げだが、あくまで飄々とした風を装って、

 

「消滅寸前だった私を拾ってここまで連れて来たからには、その“街を守る”とやらのために具体的な望みがあったのでしょう?」

 

「え?ああ……」

 

具体的な望みか。魔術師らしい的を得た問いだ。

ただ漠然と冬木が平和になればいいなと思ってたけど、僕はどうしたいのか。

とっさに思考をなんとか整理する。

 

 

「単純に英霊ほどの方には是非とも力をかしてほしかったのと、キャスターの貴女に聖杯を上手く処理してしてほしかったというのはあります」

 

「フフッ。聖杯自体の破壊というわけね」

 

ん?

投げやりな彼女。

 

「わたくしを新しく拾った者が、まさか聖杯を手に入れるどころか、その真逆を願うなんてね。フフッ、フフフフッ、皮肉もいいところ」

 

メディアさんは心底可笑しそうに笑う。

まんざらでもなさそうに、

 

「聖杯の破壊。面白そうじゃない」

 

あ、ヤベェ。

イリヤちゃんが。

 

ちょっとだけ差違があるぞ。誤解が。

文字どうり破壊ってなったらイリヤちゃんもハートクラッシュされる。

僕はもちろんあの白い子も助けたいのだ。

 

メディアさんは自分が魔術師の英霊だとバレても、それは格好から誰でも推測はできるし、まだ僕を不信には思ってない。

でも説明は避けて通れない。

だから、ここからが正念場。

 

 

「あの……破壊というには語弊があります。もちろんそれも手段の一部ではあるんですが」

 

僕はジェスチャーも交えて、

 

「ただ物理的に破壊してほしいんじゃなく、魔術的にこう、上手く処理してほしいんです。こう、ね……」

 

「……なんだか、いきなり大雑把になったわねアナタ」

 

ジト目だ!ジト目が突き刺さるよ!

彼女は胡乱な瞳で、

 

「まさか………聖杯を浄化した後、自分の願いを叶えたい………などとたくらんでるのではなくて?」

 

「い、いやいやいややややや!」

 

僕は両手をブンブン振る。

 

「そんなつもりは一切無いです!そりゃあ何でも願いが叶う聖杯なんていいなあとは思いますけど………」

 

落ち着け、落ち着け!

すぅ〜と静かに調子を整える。

悟りを開いた菩薩………とまでいかなくても、自然と目尻も下がる。

 

「………そんなのは“おとぎ話”だからいいんですよ。本当にそんなもの用意されたって困ります。きっとろくなことにはならない」

 

「貴方………」

 

「ただ、聖杯戦争に関わって辛い目を受けた――もしくわこれから受けるかもしれない人たちは助けたいと願っています」

 

イリヤちゃん、桜ちゃん。あ、もしかしたら………目の前にいるこの人だって………

 

「……どう、ですかね?」

 

「…………」

 

うかがうと、メディアさんはスネるような素っ気ない素振りをしつつも、

 

「詳しく話してみなさいな。裏の事情も知っているみたいじゃない」

 

「はい。ただ………」

 

最初はき然とした宣誓を。

 

「僕に力をかしていただくかは関係なく、お教えした情報を決して悪用しないと誓っていただきたい」

 

「悪用……ねぇ」

 

「悪用というのはもちろん現代の一般的な倫理観や価値観に乗っ取った意味で、ということです」

 

言葉の綾を使って、ひねくれたヤツみたく自分にとっては正義だなんで事で済ましてほしくない。

 

「……わかりました。どう誓うのがお望み?セルフギアススクロール?それとも人体血印?」

 

前者がフェイトゼロでも切嗣とケイネスの取引で使用された………

後者がプリズマイリヤとクロイリヤの契約で使われていたやつだな………

 

そうか。

彼女、僕のこと魔術師だとふんでるのか。

僕のスペックがショボい一般人並みなのはとうに見抜いているとしても、ここまで事情通ならただ者ではないと判断してるのかも。

 

だったら、

 

「魔術的な誓いは結構ですよ」

 

どうせ一般人の僕には認識出来るかもわからん、らち外の技法だしな。

 

「ただご自身に誓って欲しい。英霊の誇りなんて柄じゃなかったなら一魔術師としての誇りでも、なんなら女としての意地とかでもかまいませんよ」

 

多少ジョークを交えるもここはすぐ真面目に、

 

「ハッキリと誓っていただけるなら、僕もそれを………信じますよ!」

 

「へぇ〜………」

 

「…………ッッ」

 

魔女の目からそらさず見て、挑む。

 

彼女は了承してくれたのか、息をつくと、胸に手を当てた。

 

「誓いを此処に。此度の聖杯戦争でキャスタークラスにて喚ばれたわたくしは、貴方からどの様な事情を知らされても、それを決して悪用いたしません………………………………………………これで満足かしら?」

 

「恐れ入ります………あ」

 

さて、どこから話そうか。そう頭を切り替えた時、ようやくひどく口が渇いていたのを自覚した。

苦笑いして、

 

「なんか飲み物ついできていいですか?」

 

「……まったく、節操がないこと。いいわよ、行きなさいな。待ってますから」

 

シッシッと追い払う仕草のメディアさん。

 

「へへっ、スンマセンね」

 

僕はそそくさと座布団から立ち上がり……アイテテテッちょっとシビれる……寒い廊下に踏み出したのだった。

 

 

 

食堂へ向かったら意外にも照明がついていた。

日の出とともに起床するくらいの僧たちはもうとっくに寝たハズだ。

 

1人で茶を飲んでいたのは葛木先生だった。

 

「先生……!まだ起きてらしたんですか。明日もお早いのに」

 

「眠れなくてな」

 

彼は湯のみをかたむける。僕も隣でお盆と二人分の湯のみをとった。

メディアさんの分だ。あったほうがいいよね?お飲みになるかわからんけど、念のためね。

そんなことを考えてると、

 

「彼女は目を覚ましたか?」

 

「おかげさまで………」

 

あまり、事情を打ち明けるわけにもいかないので言葉少なに沈黙するしかない。

 

「やっぱり先生も……気になりますか……?」

 

「ああ」

 

「彼女はですね―――」

 

給湯器から熱湯に近いホカホカの湯を注ぎながら、なんとか言い訳しようとしたが彼はいやと遮った。

 

「君はわたしと同じ目をしている。帰るべき場所を失った者の目を」

 

「………!」

 

彼が気になっていたのは僕のほうだったということか?

 

「いや失敬。だが今は一筋の希望の光が垣間見えるのだ。枯れ果ててはいない、生者としての輝きが」

 

「そう、見えますか?」

 

先生は肯定する。

 

「それがなんなのか。彼女とどう関係しているのか。わたしには知る由もないが」

 

こちらに眼鏡のレンズを反射させ、

 

「それはきっとかけがえのないものだ。大事にするがいい」

 

「はい……」

 

 

 

第六話 夜なべ

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