もうひとりの専用機持ちの日記   作:Maruwell

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マックスハート


心友日記 02頁目

E月A日

 

1組にまた転入生が2人入ったようだ。片方が男性操縦者らしい。

別にそんなことはどうでもいいんだ。

私が一番気がかりなことは、2人目の男性操縦者が転入してきたという話に柚紀ちゃんが興味ありそうにしていたことだ。

織斑一夏には何も反応しなかったのに、今度の男性操縦者の話には明らかに興味を持っていた。

一緒に見に行こうと誘われたくらいだ。やっぱり男の方がいいのかな…?

これはそろそろ私も本気で攻めないといけないかもしれない。

高校3年間で変えていけばいい、なんて思っていたんだけどな。

何にしても柚紀ちゃんは絶対誰にも渡さない。

あの日からずっと私の王子様なんだから。女の子だけどね。

 

 

 

 

 

E月B日

 

例の転入生と一緒に昼食を食べる機会があった。

柚紀ちゃんが織斑一夏に誘われて、そのメンバーの1人が例の転入生だった。

名前はシャルル・デュノア。フランスの代表候補生で2人目の男性操縦者。

だけど少し、違和感があった。

男と言われればそう見えなくもないけど、男にしては声が高い、背が小さい、体の線が細いなど、絶対に、とは言い切れないけど女じゃないかっていう疑惑を持つには十分だと思う。

それにもう1つ気になることがある。名前だ。フランスでデュノアと言ったら、IS関連の商品を扱っているデュノア社が思い浮かぶ。

後で聞いた話だとやはりデュノア社の人間だそうだ。

デュノア社は第二世代型最後期の量産機、ラファール・リヴァイヴを作り出したことで名を上げた会社だったはず。

ただその頃にはもう第三世代にシフトし始めていた時期だったため、結局乗り遅れてしまい今では経営危機に貧していると聞いている。

…怪しい、な。

おそらく最大の目的は本物の男性操縦者、織斑一夏とそのISのできる限り詳しいデータだ。

でなければわざわざ男性操縦者として入ってくる必要はない。

ただデータを集めるだけならば、ほかの候補生たちのように近くにいればいいだけの話。

それをバレた時の危険性をわかっていながらも、こんな行動に出ているということは、まず間違いなく会社の存続のためだろう。

注目性の高い2人目の男性操縦者という肩書き、たった2人しかいない男同士だからこそ手に入るであろう情報の数々、バレた時に発生するリスク。

…捨て駒、かな。

情報を集めるだけ集めさせて、宣伝をさせるだけさせて、バレて会社に危険が及ぶならその前に切り捨てる。

陽奈乃さんに調べてもらおう。あの人なら詳しいことを調べてくれるはず。

 

 

しかし、あぁ、これはまずいな…

柚紀ちゃんってこういう子を助けるのが癖みたいなんだよね…

本人は全然そんな気はないみたいなんだけど、むしろ友達を増やす為の努力とか言ってたけど。口下手な私にしてみれば話しかける内容が考えやすいから、だってさ。

近くからずっと見てた私からしてみれば、癖だって言ってもおかしくないと思ってる。

ここまで重い話じゃないけど、それでも悩みを持っていた子達を助けまくっていた過去があるし。

普通にアドバイスとかしてあげるくらいならいいんだけど、柚紀ちゃんの場合、そうじゃないんだよね。その子の親に直談判に行ったりとか、普通ならそこまでやらないだろうってことばっかりやっていた。

そんな柚紀ちゃんだからこそ、そのへんの男よりもかっこいいと評判だ。身長高いし、顔だって中性的な感じだからなおさらね。

そのせいで助けられた子の中には、中学卒業の日に告白してきた子までいたほどだ。

私もそれで助けてもらった中の1人だしね。

行動は非常識なはずなんだけど、私も含めて誰も迷惑だって突っぱねたりした人はいなかった。今思うと不思議だな。

 

けどまぁ、男じゃないだけマシかな。柚紀ちゃんは今はまだノーマルだからね、女の子ならまだまだ余裕がある。

目下の危険人物は織斑一夏だけだ。

知らない内に2人きりで訓練していたりとか、今日みたいに食事に誘ったりされる仲になっていたし。

全くあの3人は何をやってるんだ。誰でもいいからさっさとくっついてしまえばいいものを。それなら私がこんなに警戒する必要もなくなるというのに…。

 

 

 

 

 

E月C日

 

陽菜乃さんから連絡があった、というか直接学園まで教えに来てくれた。

万が一にも他人に渡ったらまずいから、ということだ。

それは確かにね。あの子の安全のためにもこの方が良かった。

それにしても仕事が早い、早すぎると思う。陽菜乃さんって、いや浅見家かな?あの家は一体何なのだろう。こんな情報まで簡単に持ってくるなんて普通じゃありえない。

まぁだからなんだという話ではあるけど。柚紀ちゃんと離れる気はないんだ。それならいずれ浅見家の秘密に関わることになるかもしれない。疑問の答えはその時までとっておけばいい。

 

それでわかったことは、

・本名シャルロット・デュノア

・現デュノア社社長の愛人の娘

・母親は2年前に死亡している

・デュノア家に引き取られたものの、愛人の娘ということで居場所がない。

・性別は女性

・経営危機に陥った会社のための広告塔

・唯一の男性操縦者、織斑一夏のIS「白式」のデータの収集

と、おおよそこんな感じ。

まぁ見事なまでに私が予想した内容と同じだった。

さすがに個人のことまではわからなかったが、会社の思惑は思ったとおり。

 

これはもうダメだな。絶対柚紀ちゃんは助ける。正確には助けてしまう。

この子は居場所がなかったってくらいだから、優しくされたら惚れてしまうかもね…。

ライバルか、しかも専用機持ちの。

いいよ、受けて立とう。確かに専用機の分はそっちのほうが有利かもしれないけど、私には心友っていう関係がある。絶対に負けない。

今はまだ違うけど、近いうちに必ずライバルになるであろうシャルロット・デュノア。

今ここに誓いを立てよう。何度だって宣言しよう。柚紀は私のものだ。絶対に渡さない。

 

 

 

 

 

E月D日

 

この頃柚紀ちゃんの反応が悪い。話しかけても生返事だったり、違う場所を見たりしている。

シャルロット・デュノアのことを気にしているみたいだ。柚紀ちゃん自身にそう言われたし。

あの食事の日から今日まで、柚紀ちゃんからほとんど離れていないからまだそんな機会も作れていないのだろう。

とはいえ、彼女の事情を知ってしまったからさすがにこのままにするわけにもいかないか。

柚紀ちゃんに任せればどんな形であれ必ず何かが変わるはずだし、はぁ、しょうがない。

今回だけは特別だぞ、シャルロット・デュノア。せいぜい助けられてしまえ。

敵になるかもしれない相手に塩を送るようなことなんてできればやりたくないけど、そんな狭量じゃ柚紀ちゃんの隣にいる資格はないからね。我慢してやる。

一応柚紀ちゃんには釘を刺しておいた。

まぁたぶんその意図は伝わってはいないだろうけどね…。

 

 

 

 

 

E月E日

 

就寝時間の少し前に、柚紀ちゃんは散歩に行ってくると出かけてしまった。

なんだか嫌な予感がしたから追いかけようと思ったけど、なんとなく今日はやめておいた。

…結論から言うと失敗だった。

たぶんシャルロット・デュノアと話をしたのだろうな。それで何かしらあったのだと思う。

でなければ織斑先生が寮長を勤めてることを知っているのに、時間までに戻らないなんてありえない。

でも今回は確実ではないんだよなぁ…。

もしほかの用事だったのならまだ話せてないだろうし、やっぱり近いうちに柚紀ちゃんが動きやすいような時間を作ってあげよう。

 

 

 

 

 

E月F日

 

朝からシャルロット・デュノアが柚紀ちゃんに話しかけてきた。

やっぱり昨日の夜は会っていたのかな?

まぁそれならそれでいいんだけど。どっちにしても時間は作ってあげるつもりだったから。

それにしてもあの子、現状は2人目の男性操縦者だと思われてるってことを忘れてない?

じゃなかったら、そこまで関わりがないはずの他クラスの柚紀ちゃんに、普通は相談なんて持ちかけないだろう。

しかも話したいことがあるってなんだ。言い回しには気をつけてほしい、言うタイミングも。わざわざ人が多い朝食中に言いにこなくてもいいじゃないか。

何か意図があっての行動なのか、何も考えてないのか…

一応それで柚紀ちゃんが他の生徒から敵視されるようなこともないみたいだから、特に何もしないけど自分の立場がどんなものなのか、それを理解してほしいものだ。

 

 

 

 

 

E月G日

 

明日、柚紀ちゃんが動ける時間を作ってあげようと思う。

だからその前に柚紀ちゃん成分を補給しておいた。あと柚紀ちゃんの隣には私がいるというアピールも兼ねて。

いつも以上に柚紀ちゃんと一緒にいるようにした。もちろん邪魔が入らないように事前の根回しもしてある。

たぶんそんなことをしなくても、今日の私の雰囲気から周りも関わってくるようなことはしなかったと思うけど、念には念を入れておいたほうが確実だからね。

柚紀ちゃんも不思議がってはいたけど、入学したての頃に戻ったみたい、たまにはこういう日もいいねと言ってくれたので嬉しかったのと同時に少し安心した。

こんなことした私が言うのは間違ってるかもしれないけど、もし寂しいとか言われていたら相当落ち込んでいたと思う。泣いてしまったかもしれない。

私のわがままで柚紀ちゃんが悲しむのは、誰よりも私が許せないから。

 

 

 

 

 

E月H日

 

学校ではいつも通りに過ごし、放課後には陽菜乃さんと連絡を取って話をした。

今日は柚紀ちゃんが動ける時間を作ってあげることが目的だったから、この前みたいに仕事の依頼じゃなくて、仲のいい友達として会ってきた。

当然のごとくIS学園の敷地内に入ってこれる陽菜乃さん、流石です。

今はまだ無理だけど、いずれそういう技術とか情報網とかも教えてもらえると嬉しいな。

毎回会うたびに思うけど、陽菜乃さんって本当に柚紀ちゃんのことが好きだな。

いつも会うときには必ず、陽菜乃さんの知らない柚紀ちゃんの話とか写真とかを欲しがる。

いじるためのネタだ、なんて言ってるけど本当のところはどっちなんだろうね?

案外一番の敵は陽菜乃さんだったりして、なんてね。




想定以上にすごく、すごいことになった
ひなねぇが出てこなかった裏話



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