東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~ 作:新影正虎
「‥‥さっきまでは、相手が早苗だから手荒にしなかっただけ。でも、こんな真似をする相手なら、たとえ妖精一体であっても‥‥遠慮はしないわ!」
「ひ!ひぃぃぃぃっ!」
嵐のその怒気にとうとう恐怖が限界に達したか、幽霊妖精は嵐に背中を向けると一目散にその場から逃げ出そうとする。だが‥‥
「‥‥もう、遅い!」
『雨符!穏やかならぬ晴耕雨読の日々!』
その宣言がされた次の瞬間!嵐の周囲の空中に空を埋め尽くすほどの数の光弾が出現すると、それらはいくつかの塊となり、四方八方から幽霊妖精へと襲い掛かる!
「う!‥うひぃぃぃ!」
それに対し、幽霊妖精は悲鳴を上げながら右へ左へと必死にかわしていく。
しかし‥‥その弾幕は弾の密度こそ圧倒的なものの、その軌道はきわめて単純、動きをよく見ていればかわす事はそう難しくない。
「‥‥は‥はん!何だ、こけおどしか!そ、そんなの‥‥当たるもんか!」
それに気づいた幽霊妖精はぎりぎりではあるが、迫りくる光弾を何とかかわしていく。
「ほ‥ほらほら~どうしたの~?当たらないよ~」
顔を引きつらせたまま何度も回避していくうちに次第に余裕を取り戻したか、そう嵐をあざけり始める幽霊妖精。しかし‥
「‥‥そうね、まだ弾幕もろくに『完成』していないうちにあっさり当たられては興ざめというものよ」
「‥‥え?」
そう嘲り返してきた嵐の言葉に幽霊妖精はふと、周りを見渡し‥‥‥そして愕然となる。
いつの間にか、彼女の周囲には上下左右、おまけに前後も加えた360度すべての空間に光弾が『ある程度の距離』をとりつつも密集滞空し、彼女の動きをその空間内に抑え込んでいた、これでは‥‥逃げ場がない!
「ち、ちょっと!こんなの反則じゃないか~!」
周囲を見渡し、小柄な自分にすら抜けられる隙間が無いことが分かると、ようやく自分が『誘い込まれていた』事に気付き、幽霊妖精は悲鳴を上げる。だがそれに対し、嵐は傲然とした振る舞いで答える。
「‥‥どこが?‥‥これは博麗の巫女‥‥霊夢が提案した『スペルカード・ルール』をあたしなりに理解した結果よ。
このルール、どうやら相手が絶対に避けられない弾幕攻撃をしてはいけないって言うのが基本原則‥‥だからあたしはこう考えた。攻撃が来ない、あるいは回避できる場所さえあれば、絶対に避けられない弾幕を展開してもルール上何の問題は無い、と‥‥
‥‥覚えておきなさい、これが『発想の転換』というやつよ」
辺り一帯、まるで豪雨のように光弾が飛び交う弾幕の中、唯一の『安全地帯』にいる幽霊妖精に対しそう言い放つ嵐。
それを聞いた瞬間、幽霊妖精の顔から余裕や嘲りが完全に消え、再び怯えた表情が顔に浮かぶ。しかし、嵐はそんな相手に対しても容赦するつもりはないようで、懐にしまっておいた拳銃を取り出すと、その銃口を弾幕の中にいる幽霊妖精に向ける。
「‥‥妖怪の『賢者』と言われる八雲紫の弾幕が『結界』なら、あたしのこの弾幕は『牢獄』。一度入ったが最後‥‥‥‥ただでは出られないわ!」
その一喝と同時に嵐は拳銃の引き金を引く。そして放たれた一発の光弾が幽霊妖精に向かっていく。しかも、その光弾は嵐の意思によって不規則、かつ変幻自在に軌道を変えると、濃密な弾幕の間にあるわずかな隙間へと入り込み、その間を縫って幽霊妖精へと襲い掛かる!
「うひぃ!」
彼女は悲鳴を上げて何とかそれをかわすが、光弾は再び弾幕の隙間へと入り込み、その間を縫って進むと、別の場所から再び彼女へ襲い掛かる。
「ひ~!」
今度もかろうじて避けるが、今度は目の前には壁と化した弾幕が存在する。慌てて空中で停止して今度もぶつからずに済む‥‥が、弾幕によって閉鎖された空間の中で強制される、動けば壁に阻まれ、止まれば狙い撃ちにあうという状況が、精神的に彼女を追い詰めていく。
そして、そんな状態の幽霊妖精が必死の思いで放った光弾を嵐は余裕でかわし続ける。
一方‥‥