東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~ 作:新影正虎
「‥‥‥もちろん、現人神として生きます。先輩」
‥‥そう言いながら立ち上がり、まっすぐに嵐を見つめる早苗の表情は‥‥いつもどおりのものだった。
「‥‥早苗」
「‥‥思い出しましたよ。外の世界で先輩と出会った時の事、そして出会ってからの事‥‥‥先輩は確かにそう言いましたよね」
まなじりに溜まった涙を拭いながらも笑顔を見せる早苗、そして嵐もそれに応じるように微笑むと、無言で手にしていた大幣を彼女に差し出す。と、早苗も無言で小さくうなずいてそれを受け取り‥‥
「‥‥そして、そんな生き方を選んだわたしと神奈子様に先輩が教えたのが幻想郷。外の世界と違って神への信仰がまだ存在する世界。そしてわたしがわたしらしく生きる事ができる世界。だからわたしはこの世界で生きる事を選んだ。
先輩‥‥ありがとうございます。それと‥ご迷惑をおかけしました」
そう言って深々と頭を下げる早苗に対し、嵐は照れからかそっぽを向いてこう言う。
「‥気にしなくていいって。それに‥‥悪いけどあたしは別に親切心でここに来るよう勧めたわけじゃない。もしかしたらこの先『外の世界で平凡な一生を送っていた方がよかった』と思う時が来るかもしれないわよ」
「‥‥?それはどういう意味ですか?」
「‥‥もし、その時が来れば、嫌でもわかると思うわ。そう‥‥‥本当にそんな時が来れば‥ね」
怪訝な顔をする早苗にそう予言めいた事を言う嵐。
「‥‥それよりも早苗、あなたずぶぬれな上に泥だらけじゃない。あなたも一応神様なんだから身なりはきちんとしないと」
そう言うと嵐は早苗に対して意識を集中し、指を鳴らすと、ずぶぬれだったはずの早苗の体や衣服についていた汚れが彼女の力によってきれいに落ち、消え去る。
「‥‥うん、これでよし」
「先輩~!ありがとうございます~!」
すっかり汚れの落ちた自分自身を見渡した早苗は、嵐の心遣いに目を潤ませる。
「さ、あの幽霊妖精の元へ戻るわよ」
「はい!」
そう言いあうと二人は連れ立って空へと舞い上がる。
一方‥‥
「‥‥どう?降参する気になった?なったのならこの弾幕を解いてもいいわよ」
「‥‥だ‥誰が!こ‥こうなったら‥‥ぜ、絶対かわしきってやる!」
絶え間なく銃を連射しながら行う自分の勧告に、虚勢と涙目で応じる幽霊妖精の態度を見た『もう一人の嵐』は思わず口笛を吹くと‥
「‥‥へぇ、この状況でまだそんな事を言えるなんて根性あるわね。
だったら‥‥‥こっちもきちんと最後まで相手をしてあげる‥‥それがあんたのその無謀な勇ましさに対するせめてもの礼儀よ」
そう言うと嵐は力を使い切った拳銃を収めると、別の拳銃を引き抜き、再度狙いを定めようとする‥‥が。
「ん?‥‥どうやらあっちは片付いたみたいね」
「‥え?」
早苗と『もう一人の自分』との対決が終わったことを知った嵐は手にしていた銃を収め‥
「‥‥じゃあ、あたしの出番はここまでね。まあ、だからといってこの弾幕は消えないけど」
そう言って『呼び出された側』の嵐が空間に穴を開け、その中へと消えるとまるで入れ替わるかのように『呼び出した側』の嵐が早苗を連れて戻ってくる。
「ふわ~、これも先輩の弾幕ですか~これはまた‥‥‥容赦ないですね~」
「‥‥まあね」
まるで何事もなかったかのように親しげな嵐と早苗の様子を見た幽霊妖精が牢獄弾幕の中で悲鳴を上げる。
「う‥うそ、こんなに早く思い出すなんて!は‥早すぎるよ!」
「ふっふ~ん!これが先輩とわたしの‥‥‥絆パワーなのです!」
幽霊妖精の言葉に対して、大幣を手に大げさな見栄を切って大げさな発言をする早苗。対して嵐はあさっての方向へと視線をそらしながら呟く。
「‥‥‥恥ずかしい事をさらっと言わないでよね‥まあ、絆云々はともかく‥‥あんまり人間って奴を侮らないほうがいいわ」
そう言うと嵐は視線を幽霊妖精へと向け‥