東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~   作:新影正虎

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消えさった、哀しき笑顔~命、その価値の重さ

「‥‥‥あれ?」

「エラミー‥‥さん?」

 早苗の腕の中には‥何が起きたか分からず、きょとんとした顔でほうけているエラミーの姿があった。

「‥‥あ‥あれ?あたし‥‥‥あれ?」

「え‥え?」

「こ、これって一体‥‥‥」

 エラミーも早苗もアスメルも何が起きたかまるで理解できない‥そんな中、真っ先に冷静さを取り戻した嵐は‥‥

「これはもしかして‥‥アスメル、あなた今、無意識の内に何かしたんじゃないの?」

「え?そ、そんな~わたしの能力ではとてもこんな事出来ません~おねぇさんが何かしたんじゃないんですか~?」

 唖然としたまま聞き返してくるアスメルの言葉に嵐は首を振る。

「いいえ、あたしだって何も‥‥‥ふぅむ‥では、早苗‥‥‥のわけは無いわね」

 その言葉を聞いた早苗は弾かれたように振り向き、涙目で抗議する。

「ひ、ひどいです先輩~!いくらわたしが起こす奇跡がそういう類のものじゃないからって~!」

「はいはい‥‥‥こんな『おとぼけ』、真面目に答えないの」

「あ!‥‥‥‥あ~う~、だって~」

 予想通りに自分の冗談を真に受け、肩を落とす後輩に嵐は苦笑する。

「‥‥ま、おふざけはここまで‥‥にしてもこの子、少し雰囲気が変わったわね、それに見た目も‥‥」

「‥‥そうですね‥‥エラミー様は幽霊と妖精の特徴を併せ持つお方。霊体としての部分が意識の大きな変化に伴って外見や人格、あるいは能力にも影響を与えたのかもしれません」

 その風の言葉に嵐はうなずく。

「‥‥人は九死に一生を得ると価値観が変わる、というけど、これはそれに近いのかも知れないわね」

 

 そう言いながら嵐と風は内心でやり取りをかわす。

 ‥‥全く、二人とも一途と言うか、まっすぐと言うか‥思わず手が出そうになったわ‥

 ‥主様はこうした方に弱いですからな‥

 ‥そうね‥結構きつかったわ‥あそこで『直接』手を出すのは『禁じ手』だし‥‥

‥我らが直接手を出せば、ヒト一人の生死を覆す事は容易‥‥しかし、それをするには世界そのものへ干渉しなければならず‥‥それはこの世界の理を崩す事にもなりかねない程に危険な事‥‥

 ‥‥ヒト一人を救うために世界を滅ぼすわけには行かない‥それに『命の尊厳』と言うものもある‥命がたやすく奪われ、また甦るようでは誰もが『命』と言うものを粗末に扱うようになる‥‥

 ‥だからこそ我らは‥‥‥人知れず‥

 ‥それにしても‥‥面倒よね‥助けられるのに助けてはいけないとは‥

 ‥然り‥

‥それにしても‥エラミーの能力を考えればこうした形での復活は十分ありえるとは思ったけど‥ここまで変化するとはね‥‥‥彼女を思う早苗やアスメルの真摯な思いが本当に『奇跡』を起こしたのかもしれない‥

 ‥東風谷様は現人神‥その思いは常人以上の何かを秘めていると‥‥いえ、人の思いそれ自体に奇跡を呼ぶ力があると言うことですか?‥‥

 ‥‥かもしれないわ‥

 そんな嵐と風のやり取りなど知りようの無いアスメルは先程の嵐の言葉に目を輝かせる。

「じゃあ、エラミーちゃんはこの先、誰かに悲しませなくても生きられるようになったんですね~」

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