東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~   作:新影正虎

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再会~神風の導き

「あ!ここだ~」

「どうも~」

 どうやってこの場所を知ったのか、エラミーとアスメルがやってくる。

「みんな~何やってるの~?」

「お、お二人共、よくここが分かりましたね!」

 ふわふわと舞い下りてきた二人に驚いた早苗がそう訊ねると、二人は‥‥

「うん!雨雲を吹き飛ばしたあのものすご~い風がこっちからふいてきたから、多分こっちじゃないかってアスメルが」

「はい~あの風はおねぇさんが吹かせたんですよね~」

「あ‥あはは‥‥ま、まあ‥‥そう言う事なのです!」

 まっすぐに自分を見つめるエラミー達からわずかに視線をそらしながらも、胸を張って早苗がそう言うとアスメルは‥‥

「はい~」

 と、相変わらずな笑顔で応える。

「‥‥ふ~ん、みんなして雨神様の社を直しているんだ~だったらさ、あたし達も手伝うよ。ね、アスメル」

「任せてください~」

 早苗から事情を聞いた二人は、興味津々にそう言って来る。それを聞いた嵐は‥‥

「‥‥ふむ‥‥力仕事はあたしや時雨子や萃香がやるし‥‥この子達に出来そうなのは早苗がやっている床と壁、屋根関係ね‥‥なら、瓦やなんかの屋根材を上に運んでくれるかしら?」

「うん、任せてよ!」

 作業現場を見渡し、彼女たちに出来そうな仕事を見つけた嵐がそう言うとエラミーはうなずき、アスメルと一緒になって河童が持って来ていた野地板や防水紙、瓦を運び始める。

 そうして嵐が一同に指示を与えていると早苗が小声で嵐に訊ねてくる。

「‥‥でも、いいんですか先輩?たしか神奈子様はこの件では他の人達の手を借りたくないようでしたが‥‥」

 そんな早苗に対し、嵐は手を振ってこう答える。

「‥‥ああ、いいのよ。要は『守矢神社の風祝である東風谷早苗がこの異変を解決した』って言う『体裁』さえ整えばね。現に雨雲は晴れ、あなたが時雨子をおとなしくさせることにも成功したわけだから」

「でも、あれは‥‥雨雲を晴らしたのは先輩がした事ですし‥‥」

 そんな、申し訳なさそうな早苗の言葉に嵐は肩をすくめると‥‥

「‥‥いいのよ、その程度の脚色は。実際異変を解決したのは確かにあなただし、あたしはその手助けをしただけ‥‥‥『あなたの成長を促し、現人神としての力を引き出す』という方法でね」

「あ‥」

 そう指摘した自分の言葉で、ようやくこちらの意図に気づいた早苗に嵐は苦笑すると‥‥

 

「‥‥全く、一体何のために神奈子に入れ知恵をして、天狗にあんな噂を流させたと思っているの?」

「て‥天狗に噂?神奈子様に入れ知恵?で、ではこの件にほかの人たちが関わらないようにしたのも、噂があっという間に広まったのも、全部先輩が仕向けた事だったんですか!」

 明かされた事実に唖然とする早苗に対し、首謀者である嵐は落ち着き払っている。

「そうよ。もし『他の連中が好き勝手してこの異変を解決してしまった』ら、せっかくの汚名返上の機会を失うでしょ?」

 まさか嵐が『自分達』のためにそこまでしていたとは思っていなかったのか、早苗は嵐の言葉を聞くと目に涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら感謝の言葉を口にする。

「!‥‥せ、先輩!‥‥あ、ありがとう‥‥ございます‥‥」

 そんな、感激を露わにする早苗に対し、嵐は冷静なままである。

「‥‥いいのよ。この件に関してはあたしにも責任があるわけだし、それにこういう手助けはあたしらにとってはいつもの事。だからむしろこっちの方がやりがいあるわ」

 そう言うと嵐は不敵に笑う。

「‥‥そう、自分が目立つのではなく、誰かを目立たせる。それには力ではなく知恵を使う必要がある。それが『あたしたち』の流儀‥‥むしろ今回は手を出すのが『多すぎた』わね」

 その嵐の言葉に再び唖然となる早苗。そんな彼女に対し嵐は‥‥

「それと、これは言っておかないと‥‥早苗、あんたも天候を操る者としてこれだけは覚えておきなさい。風にしろ、水にしろ、そして雷にしろ、形の無いものは決して力では壊せないし、従わせる事も出来ない。出来る事は『道』を作り、そこへと導く事。

‥‥これはヒトの心も同じ」

 厳しい眼差しでそう言う嵐の言葉を神妙な顔で聞く早苗。

「‥‥あんたは何も考えず力で時雨子をねじ伏せ、その結果起きたのが今回の異変。

‥‥月並みな言葉だけど、ただ力を振るうだけでは人の心を動かすことは出来ない。この先、幻想郷で信仰を広めたいのならその事を忘れないことね」

そう言うと嵐は表情を緩め、早苗の後ろでこちらを見ている文の方へと視線を向けると‥‥

「‥‥それに、伝聞情報なんていうのは伝言ゲームと同じでね、人伝いになるうちに少しずつ真実から離れていくのに、多くの人はそれが真実だと勝手に思い込む。そして、それがいくつも積み重なって歴史が出来る。歴史なんていうのはそんなものなのよ。だから今に伝えられている過去の歴史が真実かどうかなんて、もう誰にも分からない。

‥‥分かっているのは『歴史を創る』とか言うどこかのワーハクタクくらいね。もっとも‥‥たとえ彼女であってもあたしの事は‥‥」

 最後にいささか不可解な事を呟いた嵐の言葉に早苗は首を傾げるが、

「‥‥なんでもないわ。それよりもさっさとあのブン屋の取材を受けてきなさい。

‥‥‥念を押しておくけど、くれぐれもあたしの事は言わないように」

「は‥‥はい!」

 そう急かされると、早苗は手帖を手に目を輝かせている文の元へと向かう。

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