東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~ 作:新影正虎
「‥‥よくやったわ早苗。これでこの社が完成すればこの異変もめでたく解決よ」
「はい!これも全て先輩のおかげです!ありがとうございます!」
まるで敬礼でもしかねない程に礼儀正しくお礼を言う早苗。だが、そんな早苗に嵐は‥‥
「でも、大変なのはこれからよ」
「‥‥へ?」
「これからは『あたしの助けなし』でもこの位の事が出来るようになってもらわないといけないんだから」
嵐にそう言われ、前にも同じ事を言われていた事を思い出した早苗は、表情を引きつらせて笑う。
「‥‥あ、あははは~そ、そういえば‥そうでしたね~」
と、そこに‥‥
「‥‥心配しなさんな、新入り」
不安げな早苗に背中から萃香が声をかける。
「‥あ‥えっと‥‥」
振り返り、まだ馴染みでない自分に戸惑いを見せる早苗に対し、萃香は不敵な笑みを浮かべながら言う。
「‥‥わたしは鬼の『伊吹萃香』‥‥‥わたしは外の世界でこいつとあんたがどういう関係だったか知らないが、こいつ‥‥嵐は誰にでも気安く手を貸すような奴じゃない。曲がりなりにもあんたのことを認めているからこそ、手を貸したんだ。だからもっと自分に自信を持ちな」
その萃香の言葉を聞くと、早苗の表情がぱあっと輝く。と、同時に嵐の表情は若干曇る。
「‥‥萃香‥‥この子をあまり調子づかせない方がいいわよ」
「‥‥なるほど!分かりました!では前に先輩から言われた通り『常識に囚われる事無く』今後も精進します!」
「‥‥‥ね」
その対称的な反応を見た萃香は面白そうにくくくっと笑うが‥‥
「‥‥なるほど‥‥だがな嵐、今日くらいはそいつの好きに言わせてやってもいいんじゃないのか?」
そう言うと萃香はあさっての方向へとあごをしゃくり、嵐にそちらを見るように促す。
「?‥‥‥そうね、確かにそうかもしれないわね」
それを見て、萃香が示した方へと目を向けた嵐はそう言ってあっさり前言を翻す。
「‥‥‥だろう?あの景色を見ればな」
萃香と嵐、二人の視線の先に広がる光景‥‥それは雲ひとつ無く晴れ渡った空が真っ赤に染まる夕焼け空と、それに映える紅葉鮮やかな山々。
二人の視線につられてそれを見た一同はその真紅の光景にしばし見とれる。
「‥‥きれいな夕焼けです‥‥」
「ああ‥‥そしてこれを見られたのは‥‥あんたのおかげだ、守矢の巫女」
その萃香の言葉に早苗は驚き、萃香の方を見る。
「確かに今回の異変は、あんた達が来たことで引き起こされたもの、それは事実だ。
‥‥だが、それを解決したのも紛れも無くあんた。そう言う意味じゃあこれで差し引きトントン、チャラって奴だ」
そう言うと萃香は早苗を見上げながら手を差し出す。
「‥‥霊夢達からも言われたかもしれないが、あたしからも改めて言わせてもらうよ‥‥‥『ようこそ幻想郷へ』、外から来た巫女。歓迎するよ、これからもよろしくな」
「あ‥‥ありがとうございます」
目にうっすらと涙をにじませながら、早苗はそっとその手を握る。