東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~   作:新影正虎

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エピローグ 博麗神社にて‥‥
幻想への帰還~儚き月への序曲


‥‥あ~あ、罰が悪いわね~‥‥

‥‥確かに‥‥

‥‥別れ際、あれだけ盛り上げておいて結局、たった数日でこの世界に戻って来られたんだから‥‥

‥‥案ずるより産むが易し、ですな‥‥

‥‥早苗達に会ったら何を言われるか‥面倒ね‥‥

 あれから数日後、因果律の修復を初めとした諸々の不具合をすべて処理し終えた嵐は、博麗神社に来ていた‥‥ただし、『外界』の。

 東洋の島国、日本の一地方、豊かな自然に囲まれているとある街の外れの山中。そこには、時代の流れに取り残され、すでにその街の住人にすら存在を忘れられ、寂れ果てた廃村と神社があった。

‥‥人々は知らない、いや‥‥『気付かない』。『その神社を境とした廃村の周囲』には今なお、なんら人による開発の手が及んでいない事の不自然さに。そんな、『人里離れた神社』の鳥居の前に立った嵐は、幻想郷の事を思い浮かべながら歩みを進め‥‥その鳥居をくぐる‥と、彼女は『幻想郷側』の博麗神社の敷地に立っていた。

 幾多の平行世界を行き来し、幻想と現実を等価値とする彼女にとって、常識と非常識で世界を隔てる『博麗大結界』などあって無いに等しい代物なのである。

 そうして幻想郷に帰ってきた嵐は真夜中の神社の本殿に腰を下ろし、空を見上げて月見を楽しんでいた。と、そんな彼女の元に‥‥

「‥‥今回もずいぶんと活躍したようね」

「霊夢」

 博麗神社の巫女である博麗霊夢が本殿の奥から顔を出してくる。

「‥‥見たわよ、新聞」

「‥‥ああ、『早苗』の事ね‥‥でも、あんた前に天狗の書いた新聞なんて当てにならない、とか言っていなかったかしら?」

 自分の傍らに腰を下ろす霊夢にそう白々しく嵐が言うと、霊夢はじろっと彼女を睨み付けながら早苗の活躍が書かれている新聞を取り出し‥‥

「‥‥この件に『あんた』が関わっているのに、あの天狗が書いた『記事』はいつもどおりあんたの事は何も書かれていない。でも‥‥あんた、『いつものとおり』色々やったんでしょ?『あの子のために』」

「‥‥さあ?」

 追求する霊夢に対し、肩をすくめてすっとぼける嵐。それを見た霊夢は嵐を横目に見ながらわざとらしいため息をつくと‥‥

 

 「‥‥おかげであの神社の評判も思ったほど下がらないし‥‥全く余計な事をしてくれるわ~」

 そう、いささか忌々しげに呟く。

「‥‥そう思うのなら、あんたが自分で出て行って解決すればよかったじゃない」

「‥‥そんなの面倒くさいし、あいつらの不始末の尻拭いなんてごめんよ。それにあたしの仕事はあくまでも妖怪退治であって、悪さをした神様を懲らしめることは管轄外なの」

普段はお茶をすすり、神社の掃除をしてばかりな彼女のそんな呟きに嵐は‥‥

「‥‥ライバルの不始末を利用して自分が奉じる神の存在をアピールすることも、自分の神社の信仰拡大につながるんじゃないの?」

 と、少しばかりの皮肉をこめて彼女をからかう。

「‥う」

「‥‥あんたのそういう所って、つくづく巫女に向いていないわよね。布教っていうのはあんたの嫌いな『地道な努力』ってやつが必要なのよ」

 そんな正論を言われた霊夢は口を尖らせ、嵐に文句を言う。

「う‥‥‥うるさいわね、余計なお世話よ。それに‥‥最近はそうでもないし」

「?」

「‥‥紫がわたしに稽古をつけるって言って、ちょくちょくここに来るようになったのよ」

 怪訝な顔をする嵐の視線に気付いた霊夢がそう説明すると、彼女は‥‥

「‥‥ふぅん、あの紫がね‥‥一体なんの稽古だか‥‥」

 そう、何の気無しにそう呟くと、霊夢は‥‥

「‥‥あなたも巫女なんだから神の力を借りられるようになりなさい。とか言っていたわ」

「‥‥‥へぇ」

 その霊夢の言葉を聞いた嵐の眼差しが意味ありげに鋭くなる。

「‥‥全く、紫ってば雨が降っていようと何だろうとお構いなしなんだから‥‥」

 だが、霊夢はその視線に気付いた様子など見せずに、ぶつくさ文句を言い続ける。そんな彼女に嵐は、少し意地の悪い言い様をしてみる。

「‥‥そんな事言っていていいのかしら?早苗は出来るわよ。あんたと戦ったときもそうだっただろうけど、今回だって神奈子の神霊を宿らせる事が出来たし‥‥これならいっその事あんたに代わって早苗が博麗の巫女になった方がいいかも‥‥博麗早苗か‥それも面白そうね」

 それを聞いた霊夢はさすがに表情を引きつらせる。

「なんか‥冗談に聞こえないんだけど‥それよりも八百万(やおよろず)の神の力を借りる事が出来れば、本気のあんたに‥‥‥勝てるのかしら?この間の勝負はあんたが勝手に負けを宣言したようなものだったし‥‥」

 まるで嵐の実力を探るようにそう訊ねる霊夢。しかし、問われた嵐はというと‥‥

「そりゃそうよ、あれはいわばあんたたちの記憶を呼び覚ますための儀式みたいなものだったから、勝ち負けなんてのは二の次。

 ‥‥でも、そうね‥‥本気のあたしに勝ちたければ‥‥そう、一体の神を宿す程度ではだめね。せめて二体の神を『同時』に宿し、その力をうまく掛け合わせる位は出来ないと。

‥‥要は八百万に八百万を掛けての‥‥だいたい六兆四千億くらい技が無いと無理って事よ」

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