東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~ 作:新影正虎
だが、それでも嘲笑の声は早苗の耳へと響き、彼女の心をズタズタにしていく。
そして早苗にとって最もショックだった出来事、彼女がひそかにあこがれていた男子も、それに同調していた声も聞いてしまう。
「‥‥そっか‥東風谷さんってそういう人だったんだ‥なんかショックだな‥‥」
ふとしたきっかけでその言葉を耳にしてしまった時に早苗が感じたショックはほかの比ではなかった。自身が抱いていた淡い思いまでもが無惨に踏みにじられた痛み、苦しみ、そして‥‥‥絶望。
そのときの記憶までもが、嫌でも鮮明に甦ってくる。
「やめて‥お願い‥もう‥‥‥やめてぇ‥」
まるで世界のすべてが自分を否定し、蔑み、哀れんでいるかのような孤独感を早苗が感じ始めた‥‥その時!
「早苗!しっかりしなさい!」
その声を聞いた瞬間、早苗は我に返る。そして顔を上げた彼女の目に映ったのは『つい一瞬前に放たれ』自分に向かって飛んで来る無数の魔力弾の輝きだった。
よけられない!
直感で早苗はそう確信し、直撃の衝撃に備えて守りの構えを取った‥次の瞬間!
『竜符!螺旋描きし三つの柱!』
その宣言が聞こえた次の瞬間!早苗がいる場所を中心に光弾を伴った巨大な竜巻が巻き起こり、迫り来る魔力弾の攻撃から早苗を守る!
そして次の瞬間、早苗が目にしたのは空間を渡って突然出現した『見知らぬ人物』の後ろ姿だった。
「‥‥これは耐久型のスペルカード。三つの大竜巻を生み出し、一つが術者もしくは任意の誰かを守り、残りの二つの竜巻から放つ弾幕で相手を攻撃する。つまり、これは相手を倒すためではなく、誰かを守るためのスペルカード」
そう言いながらその相手・嵐は早苗が手放した大幣を手に、早苗に対して背中を向けたまま油断無く周囲に視線を這わせる。しかし‥‥そんな嵐の後ろ姿に対して早苗は‥‥
「‥‥誰かを‥‥守る?‥ふふふ‥‥それって誰を‥‥ですか?」
「‥‥早苗?」
彼女らしからぬ、陰気でこちらを嘲るような呟きを不審に思いながらも彼女に背を向けたままの嵐。そんな彼女に対し、早苗は‥‥
「‥‥そんな事言って、あなたもどうせ心の奥ではわたしの事‥笑っているんでしょ?‥‥神だの奇跡だの言う‥頭のおかしい人だって‥思っているんでしょぉぉ!」
早苗はそう絶叫すると同時に両の手のひらを嵐の『背中』に向けると、そこに光弾を生み出し、嵐に対して容赦なく撃ち込んでくる!
「早苗!」
背後で膨れ上がる殺気で攻撃をいち早く察知した嵐は『空間を渡って』それをかわすと、同時にスペルカードを強制中断させて竜巻を消し、早苗との距離を取るとその顔を正視する。
そんな自分を見る嵐を睨みつける早苗の顔に浮かぶその表情は、先ほどまでとは別人のように変わり果て、そのまなざしからは嵐への敵意や憎しみすら感じられる。
「早苗‥‥」
「早苗?‥‥あなた、ずいぶんと馴れ馴れしいですねぇ‥‥現人神であるこのわたしをそんな風に気安く呼ばないでくださいよ!」
目で見えるほどに禍々しい負の気を立ち昇らせながらそう叫ぶ早苗の様を見た嵐は、思わず手にしている早苗の大幣を強く握りしめる。
「‥‥みんな‥みんな‥そうやって‥‥うわべでは仲良くしてくれる‥‥でも‥‥どうせ陰ではわたしのことを哀れみ、見下し、そして‥‥笑っている!‥‥‥あなたも同じなんでしょ?‥‥分かっている!分かっているんですからね!!」
早苗はそう一方的に言い放つと、同時に無数の光弾を生み出し、そのすべてを嵐に向かって一斉に撃ち込んで来る!
「早苗!‥‥くっ!」
その大量、かつ高速で迫ってくるその弾幕攻撃を嵐は、早苗との距離をさらに広げながらかわしていく。
だが、それでも完全にはかわしきれない光弾もある。それに対し嵐は、手にしている早苗の大幣にまだ残っていた彼女の力の残滓を自分の力で増幅し、『早苗の力』に対する反発力にすると、それを振るって彼女の光弾をあさっての方向へと弾き飛ばす。
「!」
それを見た早苗の動きがほんの一瞬、止まる。しかし‥‥
「‥‥あは‥あはははははっ!どおですかぁ?現人神であるわたしの力、思い知りましたかぁ?でもですねぇ‥‥わたしの力は‥まだ‥こんなものじゃ‥‥ないんですよぉぉぉ!」
今度は嵐を見下し、嘲りながら光弾を生み出し、絶え間なく高速で連射してくる!しかも、彼女の様子はさらに変化する!
「あはははははははっ!みんな‥みんな!‥二度とわたしを馬鹿にできないようにしてやる!もう!誰にも!二度と!!そんな陰口を言えないようにしてやる!!!このっ!このぉぉぉ!」
‥‥このように早苗の表情と攻撃から狂気が混じり始める。しかもその攻撃は嵐に対してだけではなく、早苗を中心とした全方位への無差別攻撃となり、一見するととても近寄れる状態ではない。
‥‥しかし、嵐はその攻撃にある隙をすでに見抜いていた。
「‥‥確かに攻撃自体は激しいけど、誘導もフェイントも無い単調な攻撃、これはかわすだけならそう難しくないわね。それにあんな無秩序な乱射攻撃が長続きするわけも無い。
‥‥あの子には悪いけど、攻撃し続けて疲れきった瞬間が狙い目ね‥‥」
そう冷静に分析しながら嵐はそのタイミングを待つ。しかし‥‥