インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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2018年最初の更新です。
更新だけでなく、
貯めているガンプラや遊戯王のデッキ作成も頑張っていきたいです!


復讐者(オルガード)の答えと白き龍

時間が止まったように、その場所から音が消え……

Gリュウケンドーとデグス・エメルは背中を向けあいながら、立っていた。

 

「『…………』」

「…………がはっ!」

 

無音の静寂を破ったのは、デグス・エメルが崩れ落ちる音だった。

デグス・エメルの切り札は、交差する瞬間にGゲキリュウケンによって、

その体ごと斬り裂かれたのだ。

 

「こ、これが魔弾戦士の……人間の力……ですか。

 全く人間というのは、とるに足らないクズもいれば、あなたのような想像を

 超えた強さを持つ者もいて……本当に嫌になりますよ」

 

振り返って互いに、Gリュウケンドーとデグス・エメルは向かい合う。

致命傷を受けたデグス・エメルは、膝をつき悪態をつくもその声色はどこか喜びを

帯びていた。それは、一人の戦士として強者と戦えたことによるものなのか……。

 

「認めましょう……あなたの強さと私の敗北を……。

 ですが、勝負と勝敗はまた別!!!」

 

ふらつく体で立ち上がり、最後の力を振り絞ってデグス・エメルが右手の砲門からどこかへ

砲撃を放つと大地が揺れ始める。

 

「お前!何をした!」

「この近くには、休眠状態にある火山がありましてね……。

 私に、残ったマイナスエネルギーを火口に撃ち込みました」

『そんなことしたら眠っていた火山が目覚めて、大爆発するぞ!』

「ちょっと待て……確か、この辺りにはいくつか集落が!

 それにオルガードも!」

「悪党は、悪党らしくしませんとね……。

 あなた方なら火山の爆発を防ぐこともできるでしょうが、

 相応の痛手を負うはず。

 逆に、ここから逃れたとしてもオルガードや周囲の人間は葬られ、

 かなりのマイナスエネルギーを得られるでしょう……。

 どちらにしろ、大局的にほぼ私達創生種の筋書き通りとなる。

 それでは、さらばです……」

 

敗れた者とは思えない清々しさで、デグス・エメルは爆発と共に

Gリュウケンドーの前から消え去った。

 

「あの野郎……!

 最後の最後で、めんどくさいことをしやがって!」

『しかも、あの口ぶりからすると私達がどれほど危険でも爆発を

 防ごうとすることを確信しているぞ……!』

 

デグス・エメルの最後の悪あがきとも言える一手に、Gリュウケンドーと

Gゲキリュウケンは焦りを見せる。

火山の爆発から逃れるだけなら、何も問題はない。

そう、“魔弾戦士である自分達だけなら”だ。

作戦前に、オルガードを転送するポイント付近には戦闘には巻き込まれない

だろうが、それでも注意するようにと人が住む町の存在をカズキから

聞かされていた。

今から、そこの人達を全て火山の爆発から避難させるのは、ほぼ不可能である。

自分達の戦いに関係のない人々を一夏達が見捨てることなどしないと確信している

から、デグス・エメルはこの一手を打ったのだろう。

 

「これが……私の復讐の結末か」

 

敵の狙いがわかっていてもその通りに動かざるを得ず、歯嚙みするGリュウケンドーを

オルガードは背後から眺め、近くの岩にその背を預けた。

 

「もう、満足に動くこともできない……。

 奴らの力では、爆発を防ぐことも難しいだろう……。

 ここまでか……っ!」

 

自身の悲願である復讐を果たせぬまま、命がつきてしまう悔しさに

オルガードは地面へ拳をぶつける。

 

「Gリュウケンドー!」

『無事だったみたいだな!』

「おーい!あの変な怪物達は、全部片付いたぜ!」

『全員を確認』

 

刻一刻と爆発が迫る火山を見やりどうするかと頭をひねるGリュウケンドーの元に、

リュウジンオーとMリュウガンオーが合流する。

 

「火山が爆発しそうになっているのは、わかっている。

 何があった?」

「オルガードの命を狙ってきた創生種が、最後の悪あがきで自分の

 マイナスエネルギーを火口に叩き込みやがったんだ!」

「嘘だろっ!?」

 

Gリュウケンドーの説明に、Mリュウガンオーとリュウジンオーは驚愕と舌打ちをもらす。

 

「まずいな……。

 風術で上から見ただけだけど、この火山のマグマ溜りはかなりデカイ。

 それが、幹部級のマイナスエネルギーで活性化されたとなると……」

「一体どうすれば……!」

「マイナスエネルギーを放り込まれたんなら、俺達のプラスエネルギーで

 中和すれば……!」

「それだ!」

 

風術を用いて状況を確認するリュウジンオーは、事態の悪さに頭を抱えていると

Mリュウガンオーが逆転の策を思いつく。

 

「待て、二人とも。確かに俺達魔弾戦士のプラスエネルギーなら、

 マイナスエネルギーを中和して爆発を防げるかもしれないが、そのためには

 火口近くまで行かなきゃ行けない。

 だけど、火口の周りはマイナスエネルギーと火山のエネルギーの嵐だ。

 近づけば、俺達でも無事じゃすまないし、確実に爆発を止められる保証もない。

 それでも、行くのか?」

「何言ってんすか、カズキさん!」

「無事じゃすまない?止められる保証がない?

 だから、どうしたって言うんですか!

 そんなの足を止める理由には、ならないですよ!

 それに、カズキさん?

 最悪、自分一人でもなんとかするつもりなんじゃないんですか?」

「……」

「そうやって自分だけ無茶をすれば、犠牲は最小限で済むとか思っているんですか?

 ふざけんな!

 俺達だって、無茶なことだってわかっているよ!

 けど、今はその無茶をするべき時だろ!」

『一夏の言うとおりだ、カズキ』

『全員で無茶をすれば、それだけ危険も分散される』

『カズキ……こりゃあ、お前の負けだぜ?』

 

仮面越しでもわかる一夏と弾の頑として譲らない今の顔に、

カズキはため息を一つこぼして肩をすくめる。

 

「こうなるとは、思っていたけどね~。

 まあ、いざとなったら前にパワースポットの暴走を止めたみたいに、

 魔弾キーを使って封じればいいか」

「「はは……」」

 

カズキは軽口で代替案を口にすると、一夏と弾は苦笑で返した。

 

「それじゃ……腹くくりなよ、二人とも!」

「「はい!」」

 

迷いのない返事をして、三人の魔弾戦士は火口目指して駆けていくが……。

 

「っ!気をつけろ!」

「うわぁっ!」

「な、何だぁっ!?」

 

火口から吹き出る凄まじい炎に、Gリュウケンドー達は吹き飛ばされる。

 

「想像以上にエネルギーがあふれてるみたいだね……」

『近づくだけでも一苦労の話じゃねえぞ!』

「そうだ!バーニングキーを使って、炎に強くなれば……!」

『よせ!変身時の余波で、更に火山が活性化しかねない!』

「じゃあ、一か八かここからプラスエネルギーを撃ち込んで……!」

『いや、この地点では的確なポイントに撃ち込むのは困難である』

「くそっ!何とかして、近づくしかないってことかよ!」

 

Gリュウケンドー達は、吹き荒れる炎の嵐の中を吹き飛ばれながらも

進んでいく。

 

「うわぁぁぁ!」

「がぁぁぁっ!」

「ちぃっ!」

「何故だ……何故、奴らは立ち上がる?

 ここは、奴らとは関係のない世界だろ……」

 

火山の爆発を防ぐために、何度吹き飛ばされても進んでいく、

Gリュウケンドー達を見ていたオルガードは、その行動の理解に苦しんでいた。

 

「一体、何が奴らを突き動かす……!」

“兄さん”

「っ!クラード!?」

 

拳を震わせ声を荒げるオルガードの前に、死んだはずの弟……クラードが

白い花を持って姿を現した。

 

“兄さん……。兄さんは、わかっているはずだよ。

 あの人達が、諦めない理由を。だって、兄さんもそうだったんだから”

「クラード……」

“みんなを守るために戦って、兄さん”

「だめだ。だめなんだよ、クラード……。

 昔のようには戦えない……もう、私には何も守るものはない……。

 帰る故郷も、共に戦う仲間も、何より……お前がいない」

“守るものは、たくさんあるよ。

 助けを求める人が……。一緒に戦ってくれる仲間も。

 兄さんなら、昔みたいに戦えるよ。

 みんなや僕が大好きだった……星守の騎士(テラナイト)だった兄さんみたいに……”

 

クラードは、持っていた花をオルガードに渡すと彼に背を向ける。

 

“みんなを守って……兄さん”

「クラード!」

 

オルガードは自分の元から去っていく、クラードに手を伸ばすが

炎が彼の前をよぎると、もうクラードの姿はなかった。

果たして、今オルガードの前に現れたのは彼の願望が生んだ幻だったのか……。

それは、彼が握る白い花だけが知っているのかもしれない――。

 

「……」

「まだまだぁっ!!!」

「ぜってぇ、諦めねぇっ!」

「この程度で、止められるとでも!」

 

呆然とするオルガードに、微塵も諦めようとしない魔弾戦士達の姿が目に入った。

 

「…………っ!」

 

何かを決意したオルガードは、立ち上がり胸に手をやると太夏の意識を封じるために

突き刺したクラードの形見である短剣が現れ、それを引き抜く。

すると、短剣を抜いた傷からボロボロの道着を着た一夏によく似た男が現れた。

そして、オルガードの体は至る所がボロボロとなっていく。

 

「ぐっ……。お前には、帰りを待っている家族がいるからな……」

 

オルガードが、男の傍に短剣を突き刺すと男を守るような結界が展開された。

それを確認すると、オルガードはフラフラとGリュウケンドー達の元へと向かった。

 

「くっそ!全然、近づけない!」

『デグス・エメルの執念が炎に宿っているというのか!』

「このままじゃ……!」

『火山内部のエネルギー、尚も上昇』

「ああ、時間はもうあまり残されてない」

『ちくしょう!また、変身の魔弾キーを使って抑え込むしかないのかよ!』

「その必要は、ない」

「オルガード!」

 

思うように火口に近づけないGリュウケンドー達は、最後の手段である魔弾キーによる

制御をしようとした時、オルガードがその姿を現した。

 

「お前達の力は、まだまだこの先必要だ。

 ここは私がやる。爆発のエネルギーを吸収して、私の体内で爆発させる」

「なっ!?そんなことをしたら、あんたは!それに父さんだって!」

「おい。父さんって何だよ!」

『オルガードは、一夏の父親に乗り移って瀕死の状態から復活したんだ』

『ということは、彼が死ねばその父親も……』

『ふざけてんのか、てめぇ!』

「ああ、ふざけてるね……。

 でも、オルガード?その体は、どうした?」

「ふっ……」

 

リュウジンオーの言葉に、頭に血が上っていたGリュウケンドー達は

オルガードの様子がおかしいことに気が付く。

そんな彼らを見て、オルガードは微笑んだ。

 

「安心しろ。織斑太夏は……。一夏、お前の元に帰ってくる……」

「オルガード……」

「ふんっ!」

 

出会ってから初めて聞く、オルガードの穏やかな声に嫌な予感を感じる

Gリュウケンドー達だったが、それを口にする間もなくオルガードは自分の剣を

地面に突き刺し自分と火山を閉じ込める結界を張る。

 

「おい!待て、オルガード!」

「一夏……お前のおかげで、忘れていた……大切なことを思い出すことができた……。

 礼を言う……。

 本当なら生きて、犯してしまった罪を償うべきなのだが……

 もう、私にそんな時間は残されていないからな……。

 さらばだ……魔弾戦士達よ……」

 

オルガードは、別れの言葉をGリュウケンドー達に告げると彼らに背を向け、

火口へと歩んでいく。

 

「オルガード!」

「何だよ、この結界!ユーノのより硬い!?」

「まずいな……。この結界を壊せる威力の技を放ったら、火山を刺激しかねない……」

『黙って見ているしかないのか……!』

『オルガードの生命反応徐々に低下』

『待てよ!この野郎!』

 

あたかもこの世とあの世の境界線の如く、オルガードとGリュウケンドー達を

隔てる結界になす術がないGリュウケンドー達の前でオルガードは、火口から

吹き荒れるエネルギーの嵐にどんどん傷ついていく。

だが、オルガードはその歩みを止めず、一歩……また一歩と進み、

ついに火口へとたどり着く。

 

「はぁ……はぁ……。星守の騎士(テラナイト)とは、命を守る戦士……。

 みんなを守るぞ……クラード!!」

「オルガードぉぉぉっ!!!」

 

持っていた白い花を胸に抱え、オルガードは火口へとその身を投げ出す。

火口のエネルギーは、火口へと落ちていくオルガードへと吸い込まれていき……

彼の体は閃光と共に砕け散った――。

爆発は、彼が張った結界の中に留まったため、その被害は外には出なかった。

爆発が収まり、彼の結界が消えると同時に魔弾戦士達は、変身を解くと

弾は涙を流して崩れ落ちた。

 

「う……あああっっっ!!!」

『……マイナスエネルギーの消滅を確認……』

「復讐者としてじゃなく……戦士としての最後を選んだ。

 それが、君が出した答えか……」

『ばかやろう……オルガード、お前……』

「生きてるよ、オルガードの魂は……ここに」

『一夏……』

 

カズキがオルガードの決断に思いを馳せる傍らで、一夏はオルガードの

剣を手に取り彼の魂がそこにあるのを感じ取る。

そして、一夏はふと感じた気配に目をやるとそこには、岩に手をかけながら

こちらへと近づいてくる男の姿があった。

男はフラフラとした足取りだったが、一歩一歩を確かめるように、一夏達の

元へ歩んでいく。

すぐに、こちらに駆け出したいという思いを醸し出しながら――。

 

「……っ!」

『まさか……っ!?』

「い、一夏……?」

『違う。似ているが、別人である』

「昔、見た写真の人だね。

 雅さんが、見せてくれた子供の頃の千冬ちゃんと一夏と一緒に写っていた……

 二人の父親……」

『……ってことは、あいつが織斑太夏か!』

 

男の正体がわかり、それぞれ言葉を失う中、男……織斑太夏が彼らの元へと

たどり着く。

 

「よぉ……。お前が……一夏だな……。

 はは……俺、そっくりだな……」

「え……あ……そ、その……」

 

太夏は一夏を見ると目に涙をためながら、笑みを浮かべる。

そんな太夏に一夏は、うまくしゃべれなかった。

もしも、会えたら言いたいことが

山のようにあったはずだったのが、それを言葉にすることができない。

 

「本当に……大きく……なったな!」

「っ!…………と、父さんっ!」

 

困惑する一夏の頭をクシャクシャと涙を流して撫でてくる太夏に、一夏は

もう堪えることができず、同じく涙を流して太夏に……父親に抱き着いた。

ただ一言、“父さん”と言って……。

 

「ううううう!!!よがっだなぁっ~。いぢが~」

『ぼんどうになぁ~』

『本人達より、泣いてどうする?

 だが……本当に良かった……』

『感動の再会である』

「そうだね……」

 

父と息子の再会に、弾とザンリュウジンは号泣し、ゲキリュウケンは本人達よりも

泣いていることに呆れるも彼の声にも、涙が滲んで喜んでいた。

ゴウリュウガンとカズキも言葉には出さないが、彼らの再会を心から喜んでいた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「収まったな……」

「先生!大変です!

 例のIEC(集中治療室)の患者さんに、覚醒の兆候が!」

「何っ!?11年間、何の反応も見せなかった、あの患者がか!?」

 

Mリュウガンオーが守り切った集落の、ある病院で火山の揺れによる影響が

収まったと思いきや慌ただしく医者達が駆け回る。

その病棟で眠る女性の中で、静かに目覚めの時が来たのを感じて動き出そうとする

龍がいることを誰も知らない――。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

最初に異変に気が付いたのは、風術で周囲の状況を見ていたカズキだった。

 

「ん?

 やれやれ……親子の感動の再会だっていうのに、それを邪魔するとか、

 クズはどこまでいってもクズだな……」

「へっ?」

 

頭をかいてボヤくカズキにつられて弾が顔を上げ、カズキが見ている方向を見やると

そこには4つの影が現れていた。

一つは、歯車。

一つは、電球やコンセント。

一つは、車のキーやエンジン。

一つは、原子モデル。

を彷彿させる意匠のボディだった。

 

『何だ、ありゃ?』

『先ほどの生物兵器とは違うようだ。生体反応なし?』

『ロボットか……?』

 

現れた敵は、リュウジンオーとMリュウガンオーが倒した生物兵器とは違う

鋼鉄の体をしたロボットであり、魔弾龍達が疑問の声を上げるも彼らは

一夏達を気にかけることなくまっすぐにある方向によろよろと進んでいく。

 

「ん?おかしいな……奴らが現れた場所は、あのクズの研究所からみたいだけど、

 いなくなったから暴走して外に出たとかじゃないのか?」

「どうします?あの先には、集落がありますよ?」

「おいおい、何であいつらが!?」

「父さん、あいつらを知ってるのか?」

 

現れた謎のロボット達が進む先には、人の住む集落があるがまだ距離があるため

カズキはどう対処するか考える余裕があったのだが、太夏はそのロボットを見て

驚きの声を上げる。

 

「知っているも何も……奴らは、俺と相棒が倒した“メタルエンパイア”の四天王だ!」

「何だって!?」

「ああ、間違いない。

 忘れたくても忘れられないぜ、あいつらの顔は……。

 だけど、あいつらは倒したはずだぞ!?」

「……ひょっとして、あのクズが倒したその四天王の残骸とかをたまたま手に入れて

 修復とかしたんじゃ?」

「ちっ!余計なことを!

 でも、待てよ?あいつらがまがいなりにも復活したのなら目的は……っ!

 ここはっ!?」

 

倒した敵と再び相見えることになった太夏は、忌々しく舌打ちするが

パズルが解けるように、カチリと様々なピースが頭の中で噛み合う。

 

「まずい……奴らを止めるぞ!」

「父さん?」

「奴らの目的は、冬音だ!」

「冬音って……」

「千冬ちゃんと一夏の母親だよ。彼と同じように行方不明だって、話だけど……」

「だから、いるんだよ!ここに冬音が!」

『ど、どういうことだよ!』

『説明を求める』

『分かるように話してくれ!』

 

太夏から話されたロボット達の予想もしない目的に、一夏達は混乱する。

 

「本人は知らなかったが元々、冬音は他人の力を増幅できる“目覚めの巫女”って

 呼ばれる存在なんだ。

 メタルエンパイアは、その力を利用して人間サイズしか作れない地球と

 奴らの世界を行き来できる穴を広げようと、いつも冬音を狙っていた……。

 もしも、蘇させられた奴らの行動プログラムがそのままだったら……」

『プログラム通りに、冬音って子を狙う……と』

「それで?ザンリュウの言う通り、奴らの行動目的はわかったけど、

 あなたの妻で、千冬ちゃんと一夏の母親の彼女が

 この世界にいるっていうのは?」

「この世界は、俺が一度倒してもしつこく地獄から這い上がって、

 冬音を連れ去った奴らのボスと……最後に戦った世界だ!

 冬音を相棒に守らせて、俺は一人で奴に最後の一撃を叩き込んで……

 次元の狭間に迷い込んだ」

「そうやって、迷った父さんをオルガードが見つけた……」

「こんな偶然って!」

『世の中に偶然はなく、全てが必然と言うが……』

『信じられない偶然、それを人は運命と呼ぶ』

 

太夏から語られた、冬音に隠された秘密と様々な偶然が重なった今の状況に、

一夏達が困惑していると、ロボ達は空へと浮き上がりその場から移動していく。

 

「やべぇ!あいつら、飛んでいちまったぞ!」

「変身している時間も惜しいな……飛ぶぞ!」

「飛ぶって、俺達の月歩じゃとても追いつけないぃぃぃぃぃ!?」

「うおっ!?」

 

カズキは、風術で自分を含めた全員を浮かして弾丸のように飛ばして、

ロボット達を追いかける。

だが、高速で移動している中で方向感覚を保つような細かな制御にまで

気にかけている余裕はないので、一夏と弾は再び、いやESミサイルで

飛ばされたよりも強烈な方向体感の破壊を嫌と言うほど味わう羽目となった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「見えた……!折角、外に出たところ悪いけど早急に

 退場してもらうよ!」

「おっ!正確にブースターを狙って、町外れに落とした!

 やるな、お前~」

 

ロボット達の後ろ姿が見える距離まで追いついたカズキは、ザンリュウジンの

アーチェリーモードで飛行ユニットを撃ち抜いていく。

その腕前に太夏は、感心する。

傍で洗濯機の中の洗濯ものが見ている光景を絶賛体感中で、顔を真っ青にしている

一夏と弾を華麗にスルーして。

 

「ギギギ……目標確保ノ障害ヲ確認」

「排除スル」

「ハイジョ」

「ハイジョジョジョ!!!」

「奴ら、冬音さんを探す前に俺達を消すつもりみたいだね」

「こ……こ、れ……が、狙いだったんでしょうが……」

「……うぷっ!」

『おいおい、大丈夫か?こんなんで?』

『私も同意見だ。

 乗り物酔い?はともかく、さっきの火山を防ぐためにかなりのダメージを

 受けている』

『長時間の戦闘は、推奨しない』

 

墜落させたロボットの元に降りると、ロボ達はカズキ達を敵と認識し

排除行動に入ろうとする。

迎え撃とうと構える一夏達だったが、デグス・エメルの最後の悪あがきによる

ダメージから魔弾龍達は、懸念の声を上げる。

 

「だったらここは、俺がやるとしますか……」

 

ゲキリュウケン達の懸念に太夏は両の拳をバキバキと鳴らして、一夏達の前に

出ることで答える。

 

「俺がやるって……父さん!」

「相棒を奥さん守らせに行かせたんだったら、今変身できないでしょ!

 いくら、何でもあれを変身しないで一人なんて……!」

「俺達と同じく、あなたのダメージも決して軽くはないはずだ。

 戦うにしても、全員でかかった方がいい」

 

太夏の無茶な案に、一夏達は全員で反論して今打てる最善策を取ろうとする。

 

「俺の心配をするなんて、百年早―よ。

 それにな……敵だったけど、何度もやりあった奴らがこんな風に……

 機械人形の姿にされるのは我慢ならねぇ……!

 機械でも、あいつらにはあいつらなりの魂があった!

 けじめは、俺がつける!

 そもそも……男なら、自分の女は自分で守るもんだろ?

 行くぜ!!!」

 

イタズラ小僧が浮かべるような笑みを浮かべて、ロボット達に素手で向かっていく

太夏に一夏達は唖然とする。

 

『いやはや、何というか……』

『無茶苦茶というか、考えなしというか……』

「噂にたがわぬ、やんちゃぶりだね。

 まあ、惚れた相手を守るっていうのはその通りだね」

「ですね~」

「いや、なんでそんな普通な反応なの!?」

『少女マンガのヒロインのように、顔が真っ赤である』

「何でって……え?父さん、何か変なこと言ったけ?」

「別に、おかしなことは言ってないよ?」

「これ、俺がおかしいの?俺がお子ちゃまなだけなの!?」

 

未だに好きな女子と友達以上恋人未満な自分に、太夏の聞いただけで恥ずかしくなる

大人なセリフは刺激が強いというのに、カズキはともかく一夏も普通にしていることに

弾は空を仰いで叫ぶ。

 

「大丈夫だよ、弾。

 未だに彼女と友達以上恋人未満なお前でも、いつか

 さっきのセリフが似合う男になれるさ♪」

「よく分からないけど、元気出せよ弾♪」

「うるせーよ!

 特に一夏にだけは、そんな上から目線の励ましはされたくねーよ!」

 

弾の肩を優し~く叩きながらカズキは爽やか~な笑顔で励まし、一夏も続いて

同じように励ますが、弾は涙を流して悔し声を上げる。

 

『弾をからかうのはそれぐらいにして、太夏の方を見たらどうだ?』

『弾はからかいがいがある為、仕方ない』

『てか、すげぇなっ!一夏の親父!』

「おりゃあぁぁぁっ!!!」

 

魔弾龍達がどこか諦めを含んで呆れている中、気合いの叫びを上げて

太夏は鋼の人形達を殴り飛ばしていく。

 

「いくらあいつらにそっくりでも、そこに魂がなきゃただの人形!

 あいつらの方が、100倍強かった……ぜ!」

 

流れる水のように、太夏は攻撃をさばき、かわし、偽りの人形に

拳を叩き込んでいく。

 

「おいおい……4対1なのに、押しているぜ、一夏の親父さん!」

「ああ。基本は、俺達と同じ敵の攻撃を受け流す形だけど……

 使いこなしも威力も俺達と桁違いだ!?」

「だけど、このままじゃ勝てない。

 彼の攻撃は、奴らに決定的なダメージを与えられていない」

 

体術で鋼の体を持つ異形達を押している太夏に、弾と一夏は驚くがカズキは

厳しい声を上げる。

確かに、太夏の拳は変身した一夏と弾よりも鋭く重いが、ロボット達を

倒すまでには至っていなかった。

 

「本来の力を出せてないのか、あいつらの体が直接攻撃が効きにくいような

 金属でできているからなのか……どっちにしろ、疲れを知らない機械相手に

 持久戦はまずい。そろそろ、俺達も……」

「ん?」

「何だ?」

『後方より接近反応』

『この気配は……』

『まさか……!?』

 

時間が経つにつれ疲労が蓄積してしまう太夏に手を貸そうとするカズキ達だったが、

背後から近づいてくる存在に、目を向けると――――。

 

「くそっ!人形でも体の硬さは、変わらずかよ!」

 

ロボット達の攻撃を紙一重でかわしながら、自身の攻撃を当てていく太夏だったが、

装甲の硬さに手を振りながら悪態をつく。

 

「けどな……それで勝ったと思ってんじゃねえだろうな?

 俺の準備運動は、万端だぜ?

 さあ!お前も起きる時だぜ……バクリュウケン!!!」

 

太夏が右手を上げるとそこには、龍を模した色あせたブレスレットが巻かれており、

そこに向かって一夏達の後ろから頭上を取り越して、光の龍が飛び込む。

そして、ブレスレットは鮮やかな金色となり生命の息吹を感じさせる。

 

「よっ!遅かったな、相棒。

 寝坊するなんて珍しいじゃないか?」

『ふん。

 お前じゃあるまいし、そんなわけないだろ。

 貴様がいつまで経っても、冬音を迎えに来ないから起きるに起きれなかったのさ』

「ははは!相変わらず、口が減らねぇなお前は!」

『その言葉、そっくりそのままお前に返してやる。

 で?

 なんで、倒したはずのメタルエンパイアの四天王が復活しているんだ?』

「どっかのバカが、こいつらの残骸を回収して直したっぽいぜ?」

『全く、面倒なことを……』

 

ブレスレット……バクリュウケンは、ぶっきらぼうな口調で一夏達と魔弾龍のような

漫才を太夏と繰り広げる。

そして、かつて倒した敵が蘇った理由を聞き、苛立ちを隠せない。

 

「……と言うわけだ、一夏やその仲間もいるんだけど、

 こいつらは、俺“達”の手で倒したい。

 行けるよな?」

『やれやれ、まさかお前の息子も魔弾戦士となるとはな……。

 その息子達の手を借りれば、楽だというのにお前という奴は昔から……。

 まあいい。

 それが織斑太夏という男だというのは、よく知っている。

 ……行くぞ!』

「おお!」

 

バクリュウケンは、光を放つと一瞬でブレスレットから右腕を覆う盾へと

姿を変えた。

 

「バクリュウケンキー!発動!」

『チェンジ!バクリュウケンドー!』

「バクリュウ変身!」

 

太夏が、取り出した魔弾キーをバクリュウケンに差し込むと

光り輝く白い龍が飛び出し、咆哮を上げると太夏へと向かう。

太夏が光に包まれると……

 

「バクリュウケンドー!……ライジン!」

 

右手に盾を構え、白いスーツに白銀の鎧を纏った、リュウケンドーと同じ

出で立ちの戦士が現れた。

 

「バクリュウケンドー……」

「あれが、魔弾戦士としての父さん……!」

「親子っていうか、一夏とそっくりじゃねぇか!」

『てか、何で剣じゃなくて盾?』

『いや……武器に使う力を身体能力に回しているのなら……!』

『動くようだ』

「ぶっ飛べぇぇぇっっっ!」

 

バクリュウケンドーが、素早くロボットの一体の懐に入り込むと

真っ直ぐ右ストレートを叩き込む。

変身前はぐらつかせる程度であったが、今度は部品をまき散らしながら

吹き飛んでいく。

 

「ハイジョスル、ハイジョスル」

「ハイジョハイジョジョジョジョ!!!」

「ハイ……除、排ジョ」

「排除排除って、それしか言えねぇのか!

 アクセルキー、発動!」

『アクセラレーション!』

 

バクリュウケンドーは、魔弾キーを発動させ拳を唸らせる――。

 

 

 





ギンガマンのブルブラックと同じく、オルガードは今回で
退場です・・・。
しかし、その魂は!

そして、帰ってきた一夏と千冬の父親は
一夏を大人にした感じですが、どこかイタズラ小僧の面影を
におわせています。
道着は、太極拳のようなイメージです。

復活させられた四天王は、「熱血最強ゴウザウラー」の
幹部四人です。ですが、自分の意志はなくプログラム通りに
動く魂なき人形です。

太夏とは敵でしたが、敵としての絆というものがあるので
今の姿を太夏は我慢できません。

そんな彼が変身した姿は、原作のマスターリュウケンドーと同様に
リュウケンドーの色違いですが、剣を持たず相棒は
ゴッドリュウケンドーの盾のようになります。
基本形態のこれでサンダーリュウケンドー以上のスペックと
なっております。


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