インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの 作:すし好き
今回は、ギャグメインだったからか早くできました。
笑ってもらえれば幸いです。
「バクリュウマシンガン!」
魔弾キーを発動させたバクリュウケンドーが、拳を一発放つと
受けたロボットの装甲には拳の跡が10個刻まれ、体からはバチバチと
火花を散らす。
「もう一丁!ストームキッッックぅ!!!」
バクリュウケンドーは目にも止まらぬスピードでその場で駒のように回転すると
その勢いと熱を殺さぬままエンジンタイプのロボットの胴体に、蹴り込む。
「%&$#“@?>!!!」
蹴り込まれた後は、熱を帯びているのか赤く変色し空気を焦がしていた。
「なるほど。全身じゃなくて“体の一部分”を加速させているのか」
『どういうことだよ?』
「俺達の烈風は、自分自身を加速させて攻撃しているけど、
バクリュウケンドーは腕や足の一部分を加速させることで、普段と
変わらない速さの部分と合わさって、速さの差を出しているんだ」
「相手からしたら対応しにくいですね、それ」
「弾丸が、途中で加速するみたいなもんすか」
『太夏の体術も緩急をつけているな』
『それだけではない。
私達が行っている“連携”を一人で行っている』
バクリュウケンドーの戦いを見守っていた一夏達は、
その終わりが近いことを感じていた。
自分達が複数の敵を相手する時に、わざと相手がよけるように技を放って
敵を一か所に集めて倒すように、バクリュウケンドーも4体のロボットを
一か所に集めたのだ。
「止めだ!ファイナルキー、発動!」
『ファイナルブレイク!』
「バクリュウケン……無刀――魔弾斬り!!!」
バクリュケンドーは、右手を手刀に構え横へ一閃すると4体のロボット達を
真っ二つに切り裂いた。
「眠れ……今度こそ、永遠に――」
バクリュケンドーは背を向けたまま、ロボット達へ手向けの言葉を贈る。
心なしかロボット達の顔は、一瞬どこか微笑んだように見え、爆散した。
「すごい……」
『ああ』
「あれで、本調子じゃねぇのかよ親父さん……」
『私達と同じ更なる変身もできる可能性もある』
『てか、大丈夫なのかよカズキ?
彼氏にとって彼女の父親っていうのは、世界で一番面倒な相手だろ?』
「う~ん……どうしようか~?」
一夏達が、バクリュウケンドーこと太夏の強さに呆然としていると
ザンリュウジンがカズキを茶化してきた。
男にとって恋人の父親ほど、恐ろしい強敵はないのだ。
だが、カズキは大したことじゃないと言いたげに呑気にとぼけるだけであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さて、それじゃみんなの腕前を見せてもらいましょうか♪」
何の変哲もない平凡な家庭の台所。
一日中勉強したり、働いたり、遊んだりとしてお腹を空かせた家族のために
お母さんが腕を振るって晩御飯を作る戦場でもあるのだが、織斑家の台所ではまさに
世界大戦並の緊張感が漂っていた。
想い人に手料理を振るうまたとない機会であると同時に、
母親代わりである雅にも見てもらうこともあって、
恋する少女達は火花をこれでもかとバチバチとさせていた。
変わらないのは、食材とにらめっこして何を作ろうかとワクワクしながら
頭をひねっているラウラぐらいである。
「雅さん。ここに私がいる意味は、あるんでしょうか?」
「う~ん、私も彼女達の邪魔をしたくないって千冬の気遣いもわかるんだけど、
カズキ君から絶対に千冬を家にいさせるように頼まれたのよね~」
「カズキの奴が?」
「何でも、と~~~ってもびっくりするサプライズプレゼントを
用意できたらしいのよ」
「サプライズって、バラしたら意味が無いのでは……?」
「それが、バレていてもすっごく驚くプレゼントだから、寧ろバラしてほしいだって」
「何ですか、それは……」
カズキが去った後、たまにはのんびりと時間をつぶすのも悪くないかと
散歩していた千冬は、雅からの電話で家に戻っていた。
その理由を尋ね相も変わらず、騒がしい親友と同じく意図が読めないカズキに
千冬は呆れ交じりのため息を一つこぼす。
「中国4千年の技を見せてあげるわ!」
「この材料ですと赤が足りませんわね……」
「だから、見た目より味を気にしろセシリア!」
「ふむ……この“ほうちょう“というものより、ナイフの方が扱いやすいな」
「ラウラ、ちょっと待って!」
「流石にこれだけいると狭いわね、簪ちゃん?」
「準備だけでも一苦労……」
「譲り合う気はなさそうですね、みんな……」
そこそこ広い織斑家の台所だが、流石に8人も料理をしようとしたら
ものすごく手狭となり、なかなか料理は進まない。
しかも、中には常識をぶっ飛ばした調理をしようとする者もいるため、
果たして我が家の台所は原型を保っていられるのだろうかと、
若干不安になる千冬だった。
その光景と千冬を雅は、面白そうにニコニコ見ているのであった。
ピンポ~ン――。
時間と共に混沌としてきた織斑家に来客を知らせる音が鳴り響く。
「お客さんみたいね。悪いけど、見てきてくれるかしら千冬?」
「ええ、構いませんよ。どうせ、何か企んでるカズキでしょうが……」
「ふふふ……♪」
玄関へと進んでいく千冬の背中を見つめる雅の顔は、仕掛けたイタズラに
はまるのを今か今かと待っているような顔であった。
「はい、どなたですk……」
「よっ!ただいま、千冬♪」
「…………」
カズキが自分を驚かせるために何を仕掛けてきてもいいように多少身構えていた
千冬だったが、予想外の人物に面食らってしまった。
扉を開けた先で待っていたのは、IS学園の制服を着た一夏?だったのだから。
「ははは!感激で声も出ないみたいだな♪って、うごっ!?」
「何の真似だ、貴様……。一夏に変装などして……」
気さくに千冬へと声をかけた一夏?は問答無用で、顔面に拳を叩き込まれて
吹っ飛ばされる。
どうやら、カズキが一夏に変装したと千冬は思っているようだ。
「い……いい拳を放つようになって、俺はうれしいぞ千冬……」
「だから、いつまでふざけているんだ、カズキ」
「別にふざけちゃいないよ?千冬ちゃん」
「こんなことする意味、あったんですか?」
「一夏と違って、感動の再会とは程遠いっすね~」
拳をボキボキ鳴らして一夏?を見下ろす千冬の前に、カズキ、一夏、弾が
その姿を見せ、千冬は目を見開く。
殴り飛ばしたと思ったカズキだけでなく、一夏もいる。
……なら倒れているこの男は?
「えっ?何?ひょっとして、俺だってわかってなかったの千冬?」
「千冬ちゃんは、意外とうっかりさんなんですよ~」
「あ~確かに、しっかりしているけど冬音に似てうっかりな所もあったな~」
「冬音……?……まさか!?」
「そうだよ、千冬姉。俺達の父さん、織斑太夏だよ」
「おう!帰ってきたぜ、千冬♪」
開いた口が塞がらないとは、このことだろ。
11年間も音信不通であった父親が、何の前触れもなく
旅行から帰ってきたような気軽なノリで現れたのだから、色んなものが通り越して
千冬は言葉も出てこない。
「驚くのは、まだ早いぜ?」
「サプライズは、もう一つあるよ千冬ちゃん♪」
「そうだぜ、千冬姉。さあ……」
「なっ!?」
一夏が玄関から見えない陰から車いすを押してくると、
千冬は太夏の帰りよりも驚愕する。
車いすに乗ってるのは、ゆったりとした空気を纏った女性で
自分を見て微笑んでおり、その顔は自分とそっくりであった。
当然と言えば当然の可能性である。
父親の太夏が帰ってきたのなら、母親の冬音も帰ってきてもおかしくない
ことは……。
「か、母さ……ん?」
「うん、そうだよ千冬」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さぁ~て。用事も済んだし、冬音を迎えに行きますか~」
『敵の精神汚染から守るために私が憑依していただけだから、
肉体的には何の問題もないはず。
もう、目覚めているころだろ』
かつての敵の姿を模した人形を破壊し、太夏は体をほぐしながら
一夏達の元に戻ると想い人を迎えに行こうとしていた。
「あっ!そうだよ、父さん!ここに、その……か、母さんもいるって!」
『ということは……』
『織斑家、全員集合となる』
「おお!やったな、一夏!」
『ここから町までちょいと離れてるな』
「じゃあ、さっきみたいに風術で……」
「「断る!!!」」
冬音がいるであろう町まで、ここに来たように風術で移動しようかと
にこやかに風を手に纏わせたカズキが提案すると、一夏と弾は全力でそれを拒否した。
「この病院だな、バクリュウ?」
『ああ、間違いない』
「ここにねぇ~」
「ぜぇ……ぜぇ……。な、何でこの二人はピンピンしてるんだよ……?」
「お、俺達はけっこう、全力で走ってたよな?」
『弾、このままだと天に昇ってしまうのではないのか?』
『呑気に言っている場合か、ゴウリュウガン!』
『戻ってこい!弾!!!』
風術での移動をしなかった一行は、徒歩で町まで来たのだが、
とある病院の前で太夏とカズキが平然としているのとは対照的に一夏と弾は、
息も絶え絶えであった。
同じスピードで駆けてきたはずなのに、この差は鍛え方や体力の差なのだろうかと
口から出ている魂のような半透明状態の弾は、相棒に怒鳴るゲキリュウケンや
戻って来いと言うザンリュウジンの言葉を“天に昇る”ような感じで聞き流していた。
「……っと!ん?何か、騒がしいな?」
「だから、無理ですって!」
「あなたは、11年間も眠っていたんですよ!
いきなり、外に出るなんて!」
「ごめんなさい。でも、行かないといけないんです。
太夏が待って……」
「冬音?」
病院に入ると、何やら騒がしい声が彼らを迎えた。
看護婦、もしくは医者が壁伝いにフラフラと頼りない足取りで外へ
行こうとする女性患者を止めようとしているみたいだが、太夏はその患者の
顔を見ると呆けた声を上げる。
つられて一夏も声を失い、天に昇らず戻ってこれた弾も口をアングリと開けて驚く。
魔弾龍達も似たような反応の中、カズキだけがへぇ~と感心していた。
「冬音!」
「太夏……!」
太夏は、冬音を見ると傍に駆け寄り互いの存在を確かめ合うように
抱き合う。
そこに、言葉は必要なかった。
ただ、一番愛しい人が自分の手の中にいる。
それだけで、今までの離れていた時間が埋まっていくようだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「で、その後周りにいた俺達や医者なんか目に入らないって感じで
10分ぐらい抱き合っていたけど、俺や一夏がツッコまなきゃ
一日中ぐらいやってたんじゃないんすかね、あのお二人?」
「否定できないね、それは。
一夏と明のイチャイチャなんか、目じゃないんじゃないかな?」
冬音の登場に千冬が固まっている傍らで、弾は病院での出来事を
思い出して呆れた目でどこか遠いところを見る。
カズキは、クククと面白そうに笑う。
これから見れるであろうものを思えば、外に出るために必要な最低限の
検査や異世界での転院等の後始末にかかった苦労なんて、些末なことだと
ワクワクが止められなかった。
「ただいま、千冬。大きくなったね~」
「え……あ、その……」
「びっくりしたよ~。太夏やバクちゃんから聞いたけど、
私と太夏がいなくなって11年も経ってたんだね。
その間、一夏を守ってくれたってことも……」
「そ、そんな私は……べ、別に……。
み、雅さんがい、いた……から……で」
「よい……しょっ!
よく頑張ったね、千冬。流石、お姉ちゃんだ♪」
にこやかに語り掛ける冬音に、千冬はしどろもどろに返事をする。
一夏のように言いたかったことや文句は山のようにあるのに、あったはずなのに、
言葉が上手く出てこない。
そんな千冬に、冬音は車いすからなんとか立ち上がると手を伸ばして
千冬の頭を撫でる。
頑張った子供を褒めるように。
長い間、傍にいてやれなかった時間を謝罪するように。
「あ、あ……か、母さん……!」
温かい……。
長い間の憤りや不満が溶けていくように、冬音の手は昔と変わらず温かった。
千冬は自然と涙を流し、冬音に抱き着く。
「ふふふ♪何も変わってないようね、二人とも♪」
そんな千冬の姿を雅は後ろから温かい目でそっと見守り、彼女に続いて
覗いていた明達も言葉を失っていた。
「じゃあ、改めて紹介ね。
こっちのイタズラ小僧が大人になった感じの子が、千冬と一夏の父親の……」
「織斑太夏だ♪よろしくな!
てか、イタズラ小僧って何?」
「それで、こっちが……」
「織斑冬音です♪」
このままいつまでも玄関にいてもというわけで、頃合いを見て雅が
千冬達を居間へと移動させた。
昼間、写真を見せた千冬と一夏の両親を紹介される明達がだったが、誰も
声を出さなかった。
それは、想い人の両親の前だからというわけでない。
一夏と弾もこの状況をどうすればいいのかと、オロオロしていた。
「あ、あの……か、母さん。そ、そろそろ……///////」
「うん?」
あれからず~~~っと、千冬は冬音に頭を撫でられ続けているのだ。
そんな自分の姿を一夏やカズキ、雅だけでなく生徒達や弾にも見られているので
気恥ずかしくて顔を赤らめながら冬音に抗議するも、ただ“どうしたの?”な感じで
首を傾げられるだけであった。
冬音からしたら、頑張ってきたことを褒めているだけのつもりである。
「ははは!昔っから、千冬は冬音にそうされるの好きだよな~。
確か昔、夏にテレビで怪談物の映画をうっかり見ちまった時も
夜に怖くなって冬音の布団に潜り込んで……」
「余計なことを言うなぁぁぁっっっ//////!!!」
「ぐへっ!?」
口は禍の元と言わんばかりに、喉元に千冬の手刀による突きを受けた
太夏は椅子の上から引っ繰り返る。
「お、お前……冬音と扱いが違いすぎね?」
「あら、それは太夏だからでしょ?
全くいくつになっても子供なんだから。
昔からこんな風に手のかかる弟みたいだったのよ、皆?」
「けっ。何が、弟だよ。
実際は、一夏や千冬どころか俺や冬音が孫でもおかしくない年増だろうが……」
「…………」
太夏が千冬に文句を言うと、その理由を的確に雅が説明した。
それを聞いて、太夏は誰にも聞こえないように小声でボソリと反論すると雅には
バッチリ聞こえていたらしく一瞬、無言の笑顔となり……
太夏の体は宙に浮いて、何度もぶれて床へと沈んだ。
沈めたであろう雅は、やはり笑顔で倒れ伏す太夏を見下ろすのであった。
「えっ?何?」
「今何が起きたの?ス〇ートアップのスイッチを押したの?」
「それともマッ〇のカードを使ったの?」
「クロッ〇アップ?
ポー〇?」
目の前で起きた超常現象に、一夏達は目を白黒させ弾、鈴、簪が現象の正体と
思われるものを口にするが、雅はそれに微笑むだけであった。
「本当に成長しないわね、太夏は。
あなたも大変ね、バクリュウケン?」
『ふっ。もう、慣れたよ』
「「って、待たんかい!!!?」」
『な、何を普通に話して!』
『いや、その口調からすると……』
「あ~やっぱり、知っていたみたいですね。
俺達のこと」
『やっぱりって、カズキ!お前、この人に知られていること
わかっていたのかよ!』
気の置ける知り合いに話しかけるような自然に、バクリュウケンに話しかけた
雅に一夏達は再び驚愕するが、カズキだけは納得していた。
「別にわかってなんかなかったよ?
知られているかもとは、思っていたけど確かめようにも
俺以上に色々と鋭そうだったから、下手に探りを入れられなかっただけだよ?」
「ま、まあ……要するに“亀の甲より年の劫”って奴だな……」
カズキが肩をすくませながら、雅に自分達魔弾戦士のことを知られているかもというのを
確認しなかった理由を言うと、太夏がヨロヨロと立ち上がりながら余計な一言を
口にして、再び雅によって床へと沈められた。
殴られたのか蹴られたのか、どうやって沈められたのかは、誰の目にも捉えられなかった。
「と!言うわけで、私も冬音も魔弾戦士のことは知っているから、変に気遣う必要は
ないわよ?」
「じゃあ、何で知っているって俺達に言わなかったんですか、雅さん?」
「そっちの方が緊張感があったでしょ?」
一夏の疑問に答える雅だったが、本当はその方が面白そうだったから♪
ではないのかと、冬音を除く全員が思った。
『ところで気になっていたのだが、やたらと女子が多いな?』
『ん?ああ、彼女達は全員、一夏のクラスメートだ』
『弾だけ違う学校である』
『てか、一夏以外の生徒は全員女の学校だけどな~』
「なんだよ、そりゃ?女子高なのか、それ?」
「まあ、ある意味では女子高でしたね」
バクリュウケンがふと気になったことを口にして、魔弾龍達の説明を復活した
太夏が聞き返すと、カズキは面白そうにISについての説明を簡単に付け加えていく。
「女にしか使えないはずのパワードスーツを動かしたから、女の園に
入学ってそんなマンガみたいな話がねぇ~」
『それを言ったら、俺達もある意味マンガみたいな話と言うのではないか?』
「そりゃそうだけどよ~。でもよ、そんな男の夢みたいな場所にね~」
「弾達にも言ったけど、そんないいもんじゃないぜ?
何かと力仕事は押し付けられるし、カズキさんといると目をギラギラ
させて見てくる子とか何かと落ち着かないんだよ。
あれ?そう言えば、千冬姉。母さんは?」
「母さんは、私を撫でていると何かに気付いたのか
自分の部屋に行ったよ……」
「部屋って、雅さんが絶対に入らせてくれなかったあの部屋?」
感覚的に弾達に近いのか、太夏は若干羨ましそうに言うが一夏の言葉に
苦笑する。
そんな中、冬音はいつの間にか自分の部屋に戻っていたらしい。
「お待たせ、千冬~」
「ぶっ!か、母さん/////!」
「何だよ、その恰好は!」
戻ってきた冬音の姿に千冬と一夏は吹き出してしまう。
彼女は、フカフカモフモフなウサギの着ぐるみパジャマを着てきたのだ。
「気づけなくて、ごめんね~千冬~。
さっきから、止めてって言ったのはこっちで撫でてほしかったからなんだよね。
千冬、昔からウサギさん大好きだもんね♪」
「い、いや!そういうのではなくて!
だ、だからもう撫でなくていいから//////!!!」
冬音は再び千冬の頭をなでなでし始め、さっきまで以上に顔を赤くした千冬が
抗議するも聞く耳持たずといった状態で、ニコニコと千冬を撫で続ける。
「カ、カズキ!
その“わかっているよ。一夏やみんなに見られて恥ずかしいけど、
本当は久しぶりの感触でちょっとうれしいな////。って思っているのは”
みたいな温かい目はやめろぉぉぉっ////////!!!!!」
「こんな風に冬音大好きな千冬だけどよ?
昔、“おとうさんのおよめさんになる~”とか言って、俺のお嫁さんは
冬音だから無理だなって言われて大泣きしたこともあるんだぜ~」
「何、適当なことを言ってるんだ、このバカ親父!!!」
「また、そんなしょうもない嘘をついて。ね、冬音?」
「そうだよ~太夏?
千冬が大泣きしたのは、一夏も大きくなったら素敵なお嫁さんを
もらって自分で歩いていくんだよね~って話した時でしょ?
ね?雅さん」
「そうそう~」
「かあぁぁぁさぁぁぁぁぁんんんんん////////////////////////////////////////////!!!!!」
一夏達は、カズキとはまた違ったベクトルで千冬を翻弄する冬音に唖然としていた。
カズキと違って本人にからかう気が全くないのが、またすごい。
そんな母と娘の微笑ましい?やり取りを、カズキは“温か~~~~~い”目で
見るのであった。
「一夏が独り立ちするのが嫌で大泣き……違和感がないな」
「“パパのお嫁さんになる~”より、よっぽど真実味があるし、
簡単に想像できるわね、それ」
「…………」
暴露された千冬の知られたくない
頷きながら納得するのを感情が消えた目で千冬に見られ、太夏のように
頭から煙を出して床に沈められるのであった。
「ウサギが大好きって、だから千冬姉は束さんとも気が合うのか」
「あら、他人事のように言っているけど、あなたもよ一夏?」
「俺も?」
「あ~そうだった~そうだった~。
一夏もこのウサギの格好をした冬音に、抱かれるのが好きだったよな~。
こいつはよく、ぐずってな~?
俺があやしてもちっとも泣き止まないのに、冬音や千冬があやすと
すぐに機嫌がよくなってな……」
「ふ~ん?」
「へ~」
「昔から一夏は一夏……」
「な、なんだよ、その目は」
自分よりも妻と娘の方がよかったのかと太夏が遠い目をしていると、
明と楯無はジト目でそんな一夏を見つめ、簪がそれをまとめた。
「じゃあ一夏も久しぶりに撫でてあげるね?
ほら。おいで♪」
「うぇいっ!?い、いや俺は別にいいよ……。
男だしそんな……」
「恥ずかしがる必要はないぞ、一夏?
お前も存分に母さんに撫でてもらえ……」
「ち、千冬姉……!?」
自分にも飛び火した冬音の天然に仰天する一夏は、遠慮するが
目が据わった千冬に肩をつかまれ逃げ場を失う。
自分が味わった恥辱を弟にも味わせる気のようだ。
『これは、腹をくくるしかないぞ一夏』
「ちょっと待てって!みんなも見てるから!
てか、何カメラ構えてやがるんだあんた!」
「俺やみんなのことは、気にしない~気にしない~♪」
「おいで、一夏♪」
「ちょっ!母さん待って////////!」
ゲキリュウケンにも匙を投げられ、冬音に抱かれた一夏は千冬と
同じくよしよしと撫でられる様をこれでもかと見られたり、カズキに
ビデオで撮られるのであった。
「ふふ、千冬と一夏のウサギ好きは太夏似よね、冬音」
「はっ?俺似?別に俺は、ウサギ好きって言われるほど好きじゃ……」
「うん。太夏も好きだよね、大人のウサギさん……バニーガール♪」
「ぶふっっっっっ!!!!!」
どこに持っていたのか、冬音が取り出したバニーガールの衣装に
太夏は思いっきり吹き出す。
「この子ったら、何も知らない冬音を縁日デートで人気のない所に
連れ込んだり、夜の海辺で……ふふ♪」
「あの時は星がきれいだったよね~太夏?」
「人気のない場所に連れ込んで……」
「夜の海辺……」
「???」
「いやぁぁぁぁぁぁっっっ//////////////////////////////////////!!!!!!
止めてぇっ!そんな、冷ややかな目で俺を見ないでぇぇぇ!!!!!」
千冬と一夏をいじったから、次は太夏の番とばかりに雅は彼をいじり始め、
女性陣は頭に?を浮かべるラウラ以外冷たい目で太夏を見る。
そんな視線に耐えられず、太夏は顔を両手で覆って床をゴロゴロと転がる。
「他には、やたら露出の多い服を着せたり、男の子がベッドの下に隠している
本のようなことを……」
「うぎゃぁぁぁぁぁっっっ/////////////////////!!!!!」
「雅さん、待って/////!親のそういうことは、聞きたくない///////!」
「何で、母さんは平気なの!?」
「うん?」
追い打ちをかける雅に太夏は奇声を上げ、千冬は顔を赤くして雅を
止めようとするも雅はただおもしろそうに微笑むだけであった。
もう一人の当事者である冬音は、どうしてここまで太夏が恥ずかしがるのが
わからないのか、ラウラのように首をかしげるだけであった。
「いい加減にしろよ、あんた!
そんなに俺をいじめて楽しいのかっっっ!!!」
「あら、いじめてなんかないわよ?
太夏をいじるのがすっっっごくおもしろいから、からかうのよ?」
「わかってたけど、何の迷いもなく言い切りやがったよ!
ちくしょうっっっ!!!」
『諦めろ。お前は、そういうからかわれる星の下に生まれたんだ』
「気の毒にな~。これからもっとからかわれるんだろうな~」
『うむ。カズキが喜々とするのが容易に想像できる』
『ああ、間違いなくな』
『面白れぇことになりそうだ♪』
「いぃぃぃっ!?」
太夏の心からの叫びに雅は毛ほども揺るぐことは無く、太夏はただ
悔し涙を流すしかなかった。
そして、魔弾龍達と弾がこれからはカズキにもからかわれるのかと
指摘すると雅と冬音、当の本人であるカズキを覗いて憐みの目を太夏に
送った。
「…………」
「やめてよっ!
もう、俺のライフポイントはゼロなのよ!!!
これ以上、僕のガラスのハートを傷つけないで!」
床に手をついて涙する自分へと無言で近づいてくるカズキに、
太夏は首を横に激しく振りながら来るな来るなと言うが、カズキは止まらず……
無言で太夏の肩を優しく叩いた。
「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
「ん?」
「あら?」
『へっ?』
『は?』
『む?』
『?』
カズキの予想外の行動に、一同は間の抜けた声を上げる。
「……お気持ちは、わかります……すごく――。
俺には、姉弟子というのがいまして……。
いきつけの酒場に呼び出されたら、ツケを踏み倒したと怖いお姉さん達に
身ぐるみはがされて、皿洗いさせられたり……。
修行と言って、極寒の海をシャケと一緒に泳がされたり……っ!」
太夏の肩に手を置きながら、過去の思い出したくない記憶を吐露していく
カズキは我慢できなくなったのか口に手を当て涙声になると、
顔を皆から背けて震え出す。
チラリと見える彼の横顔からは涙が頬を伝っていた。
『マ、マジ泣きしてるぜ……俺の相棒……』
「ね、ねぇ?何なのよ、その姉弟子って」
「いや、鈴。俺達もそんなに詳しくは知らねぇんだよ。なあ、一夏?」
「ああ。
俺達が聞いているのは、負けや借りは必ず返すカズキさんが絶対に二度と
戦いたくないというより関わりたくない人らしいってことだな。
何でも、人生ワースト2の敗北だったみたいだけど……」
『話している時も苦い顔で、小刻みに震えていたな』
『ゲキリュウケンの言うように、苦虫を嚙み潰したような青い顔であった』
「ね、姉さんや千冬さんを手玉に取れるカズキさんが……」
「関わりたくないだなんて……」
「どんな、とんでもない人なんだろう……?」
「だが、シャルロットよ。兄様さえ恐れるすごい人なら、私は一度会ってみたいぞ!」
「待つんだ、ラウラ!」
「無謀な好奇心は身を滅ぼすわよ!」
「触らぬ神に祟りなし……」
「そうか……お前も苦労したんだな……っ!」
ヒソヒソとカズキの姉弟子について意見を述べる一夏達を尻目に、太夏は
カズキと同じようにカズキの肩を優しく叩き涙する。
『待てよ?そこのバンダナの少年は一夏の友人みたいだが、
カズキとやらはどういう関係なんだ?
お前の娘とも親し気のようだが……?』
「っ/////!」
バクリュウケンが発した言葉に、ピシリと何かにヒビが走る音が響き渡り、
千冬は顔を赤くする。
「…………そう言えば、千冬のことを“ちゃん”づけしてたよな……お前……」
「ははは。俺と千冬ちゃんの関係は……どう言えばいいんだろうね、千冬?」
引きつりながら低い声でドスを利かせてくる太夏に、カズキはいつもと変わらない調子で
千冬に話を振る。
ありのままを自分が言ってもいいが……。
「(こんな場面で千冬に振るとか……)」
「「「「「「「「「「(どんだけドSだよっ!)」」」」」」」」」」
『『『(ドSだ……)』』』
身内や生徒の前で告白させようとするカズキのSっぷりに、盛大に引きつる
少年少女達と魔弾龍達であった。
「カ、カズキは……その……。
……です////////」
「ごめんね、千冬。よく聞こえない」
「だから/////////////!!!
こ……こここここ恋人だよ/////////!私の///////////!!!」
逃げ場はないと観念したのか顔を真っ赤にして、千冬は聞き返してきた冬音と
太夏の前で自棄気味に自分とカズキの関係を明かした。
「そうなんだ~。よかったね、千冬。素敵な王子様と出会えて♪」
「カズキさんは、王子様って言うより言葉巧みに相手をだまくらかす魔法使いだと
思うけど……」
「ふふふ…………ハハ……あはははははは!!!!!!!
上等じゃねえか!
千冬と付き合いてぇのなら、俺を倒してからにしやがれ!!!
表に出ろぉぉぉっっっ!!!!!」
案の定というかお約束というか、一瞬で怒りのゲージをMAXにした太夏は
カズキと決闘しようとする。
「あら?
11年もほったらかしにしてた父親に、娘の恋路に口を出す権利
があると思っているの?」
「ぐぎゃぶっ!?」
決着は第三者の正論が、急所に当たり一瞬でついてしまった。
効果はバツグンである。
一夏と千冬の両親を出すと決めてから、父親はいじられ役で母親は
天然と考えていました。
ウサギの着ぐるみパジャマは、今週の食戟のソーマで出てきた
イメージです。
余計な一言で雅の制裁を喰らう太夏ですが、他にも知られたくない
恥ずかしい秘密とか、全部知られております。
ギュグ風で書くのは楽しかったです。
次回もギャグは続くかもwww