インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話です。

結末は、みなさん大体想像がついていると思います(苦笑)

遊戯王のデッキを組む時間が欲しい・・・


言葉は、話し合いの大事な道具だから、大切にしよう

「あの~皆さん?

 何ゆえ、わたくしはこんな罪人のように扱われているのでしょうか?」

 

手足を縛られ、十字架に磔にされた一夏は顔を引きつらせながら、

自分をこんな目に合わせている少女達に問いかける。

 

「何を言っている?

 乙女の純情を弄んでいる大罪人に、相応しい格好ではないか……」

「俺の命を弄んでいるのは、お前らだろ!」

 

目から光を消して妖艶な笑みを浮かべながら箒は、日本刀を一夏の

首筋に添える。

 

「オホホホ……一夏さん?

 あんまり、動きますと当ててしまいますわよ?」

「こんな距離で、外すも何もないよね!」

 

弓矢を構えたセシリアは、優雅に微笑み。

 

「ごちゃごちゃ、うるさいわね!

 男なら潔く諦めて、裁きを受けなさい!」

「諦めたら、ご先祖様に会うことになるだろうが!」

 

トゲつきのグローブをした鈴が、怒りの炎でツインテールを

逆立たせる。

 

「見て~、一夏~?

 ドリルみたいに回転することで貫通力を上げた、

 新しいシールド・ピアース♪」

「うん、すごいね。でも、人間に当たったら風穴開けるどころじゃすまない

 それを何で、俺に向けているのかな!」

 

無慈悲な天使の笑みを浮かべるシャルロットは、新装備を

一夏に向けていつでも放てる態勢をとる。

 

「疑わしきは、罰せよ……」

「その手に持っているたいまつで、何をする気!」

 

表情の抜け落ちた簪は、燃えるたいまつで点火の準備をする。

 

「ねぇ~一夏君~?

 人間の体の水を操れたら、おもしろいと思わない~?」

「すごいでしょうね……俺で練習しようとしてなければ!」

 

楯無は、一夏をできたら恐ろしいことになる新しい技の実験台にしようとする。

 

「みんな、頭を冷やせ!

 勢いで行動したら後で、絶対後悔するから!

 ゲキリュウケンも!

 何か言って止めてくれぇぇぇっ!」

『そうだな……。

 お前達、暴力はよくないぞ。暴力は。

 相手を苦しませるなら、顔を水につけた状態でくすぐるとか、

 小さい頃の作文を読むとかの方が、より長く苦しんで精神にもくるぞ?』

「何で、拷問のアドバイスを送っているのかな!?」

『いい機会だから、一度彼女達の怒りをきっちり受けろ。

 その方が後腐れ無くなって、すっきりするぞ?』

「すっきりするどころか、色んな意味で真っ白になるわ!

 そして、いいかも……って考えないで!?」

 

風前の灯火となる自分の命を守るために、必死に説得を試みる一夏は

ゲキリュウケンにも一緒に止めてくれと懇願するが、思わぬ裏切りに

あってしまう。

ゲキリュウケンの言葉に、血が上った頭が少し冷えたのか、少女達は

思案顔となり、一夏はこのままではマズイと脱出を試みる。

 

「あっ、いた!

 お前ら、何やってるんだよ……」

「弾!心の友よ!助けてくれ!」

「馬鹿やってる場合じゃねぇぞ。大変なんだ!」

 

一夏が十字架からの脱出を図ろうとしていると、弾がやってきて一夏は

歓喜する。

しかし、箒達と同じ目的で一夏を追っていた弾の顔は、深刻なものだった。

 

「明が……さらわれた……!」

「……なんだって――?」

 

弾の言葉を聞いた全員が、信じられないと言った表情を浮かべた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ひっ……ぐ……。ごべん……なざい……。

 おねえぢゃん……ざらわれだのに……なにもでぎ……ひっぐ……」

「ううん。ラウラは、何も悪くないよ。

 だから、泣かな~い、泣かな~い」

 

一夏達は、IS学園名物の青春騒動をとりあえずやめて、明の屋敷に

急いで戻った。

そこに、泣きじゃくるラウラから大まかな事情を聞くと、

冬音にラウラのあやしを任せて、すぐさま対策に入った。

 

「まさか、仙水湖の土地神がこのような……」

「何者かご存じなんですか?」

「はい……。

 あちらにある、山の中にある湖を治めている神霊です。

 数百年に一度、異種族の娘を妻に娶るのですが……

 あくまで双方合意の上で行ってきており、自ら人に敵対することも

 ないので大きな問題にはならなかったのです」

 

おばばが居間の窓から見える山に目をやり、明をさらった一族を説明するが

どうしてこんなことになったか、頭をひねるだけだった。

 

「まあ、今まで問題なかったとか関係ねぇよ!」

「ああ。こんなふざけた真似をして、ただですますかよ!」

「どどどどどどうしよう、おばば様!

 妻に娶るって、つまり明をお嫁さんにして味噌汁を毎日作ってもらったり、

 あああああ赤ちゃんを作ったりするってことだよね////////////!?」

 

とにかく、行動あるのみと弾と太夏がすぐに龍士がいる仙水湖に向かおうとすると

パニックになった虎白がさらわれた明がされてしまうかもなことを口にすると……、

弾と太夏は――――

 

 

 

“赤ん坊の時、母親に最初に抱かれた記憶”

 

 

 

 

が、頭をよぎった。

 

「「っ!!」」

「ん?どうしたんだよ、二人とも」

 

二人は、自分達の間に座っている一夏を反射的に見ると、そこには

普通に難しい顔をしている一夏がいた。

 

「い、いや……べ、別に……(今一瞬……とんでもない殺気が……。気のせい……?)」

「な、何でも……ない……ぞ?(ビビったぁ~!冬音が、怒ったかと思ったぜ……)」

『気のせいではないぞ、弾』

『一夏は、お前だけでなく冬音の血も色濃く受け継いだようだな……』

 

人生の始まりと言っていい記憶を思い起こすほどの殺気を感じた弾と太夏だったが、

発生源と思われた一夏に変わった様子はなく気のせいだと思うことにする。

気のせいだと、自分に言い聞かせて。

だが、ゴウリュウガンとバクリュウケンは、一夏がかなりヤバイ状態だと

感じ取っていた。何故なら……。

 

『あがががががggggggggggggg……』

 

一夏の腕に巻かれているゲキリュウケンが、壊れたスピーカーのような

音を上げていたからだ。

そんなゲキリュウケンを見て、バクリュウケンは冷や汗が止まらなかった。

かつて自分が体験した中でも、ベスト3に入る恐怖を感じさせた怒りに通じるものを

一夏から感じ取ったからだ。

その怒りを発した者は、よしよしと涙を流している女の子をなだめていた。

 

「まあ、心配しなくてもすぐに明がどうこうってことはないさ。

 異種族間で婚姻を結ぶには、魂を繋げるための儀式が必要だからね。

 その準備にも時間がかかるから、今からでも十分に間に合う」

「ならば、全員で乗り込もう!」

「ええ。女性を力づくで、自分のものにしようなんて許せませんわ!」

「ボッコボッコのギッタンギッタンにしてやるわ!」

「ラウラを泣かせた分も、しっかりお礼しないとね!」

「悪に正義の鉄槌を……!」

「こんな形で恋敵がいなくなるのは、本意じゃないしね~!」

「ここまで頭に来るのも久しぶりだな……」

「あらあら、みんなだけじゃなく千冬まで燃えちゃって♪

 普通に考えれば、このまま明ちゃんが土地神さんのものになれば

 都合がいいのに、取り返す気満々なんて……本当に、みんないい子ね~。

 だけど……フフフ。

 その土地神さんは、随分調子に乗ったことをするわね……」

『ん?…………っっっっっ!!!!!!!!!!!』

 

冷静に明を助けるための時間があると言うカズキだったが、その目は

笑っておらず、弾と太夏同様に怒りを感じているのは明白だった。

だが、彼ら以上に女性陣は怒り心頭であり、その様は太陽さえたじろかせると

思えるほど苛烈なものだった。

千冬もまた、彼女達のように鋭い怒りを静かに燃やしていた。

恋のライバルなのに、その救出に一切ためらいが無い彼女達に

雅はうれしそうに微笑むが、だんだんと顔を俯かせ

その声色は低く小さくなっていき……。

 

「どうしたんだ、ザンリュウジン?」

『雅を……おこらせちゃ……マズイ……』

 

声を小さくしていき俯いた雅の顔をたまたま見てしまったザンリュウジンは、

声にならない叫びを上げて真っ白になってしまった――。

雅を怒らせることの恐ろしさなど、誰もが知っているのに

ザンリュウジンは何を言っているのかと、カズキは首をかしげる。

 

「みんな、落ち着けって。

 全員で行ったら目立つし、ここは龍繋がりで魔弾戦士の俺達が行くぜ。

 ねっ、カズキさん?」

「一夏の言う通り。相手は、仮にも一応は土地神。

 人間が戦うには、色々と準備が必要だ。

 だけど、龍の中でも最高位に位置する魔弾龍とそれに選ばれた

 魔弾戦士なら話は別だ」

「そういうことだから、みんなは待っていてくれ。

 その代わり、今夜はおいしい龍料理を……俺がごちそうするからさ♪」

 

怒る乙女達に臆することなく、自分達魔弾戦士で明の救助に行くと

言った一夏に彼女達は反論しようとするが、その理由をカズキから

述べられて渋々了承する。

しかし、それも一瞬。

誰もが見惚れるまぶしい笑顔で、冗談ともそうでないとも取れる

とんでもないことを言った一夏に、雅と冬音以外の全員が言葉を失った。

 

「何だ?

 今の一夏を見ていると、こう……思い出してはいけない何かを

 思い出してしまうような……。

 頭の霧がだんだんと晴れて……

 まるでこの世の終わりを目撃してしまった男が、母さんの前に座り込んで――」

「よせ、千冬!それ以上は、言うなっっっ!

 俺の心の傷が裂けるっ!!!」

 

一夏の笑顔を見て、記憶のカギが呼び起されたのかポツポツと封印した思い出を

語ろうとする千冬に太夏が大慌てで、止めに入る。

 

『太夏の言うとおりだ、千冬。思い出してはいけない。

 それを思い出したら、太夏だけでなくこの場にいる全員に

 トラウマが刻み込まれる……!』

「さっきの君の言葉から大体のことは、想像できるけどさ……。

 そのトラウマって、一夏によって刻まれるんじゃないかな?

 だって、トラウマを刻んだ本人……冬音さんにそっくりなんでしょ?」

『……』

 

バクリュウケンも太夏に続いて、千冬が記憶を思い出すのを止めるが、

カズキは意味が無いかもしれないと危惧する。

彼女が思い出さなくても別の人物によって、太夏に刻まれたのと同じ

トラウマを……一夏が刻むかもしれないと。

 

「ははは……。ふざけてる場合じゃないぜ、父さん?

 時間があるって言っても、早いに越したことは無いからさ♪」

『だ……だれガ……だじげ……』

「カズキさん?なんか、もうアイツだけで行かせた方がいいんじゃないですか?

 普段とあんま変わってないように見えるけど、今のアイツならカズキさんにも

 太夏さんにも勝てる気がする……」

「そうしたいのは、俺もやまやまだけどそれは悪手だ。

 今の一夏は、明をさらったバカ神を消しかねないからね……。

 土地神ってのは、その土地を司っているからもしも消滅とかしたら、

 どんな影響が出るか想像もつかない。

 だから、何とか穏便に落としどころをつけるためにも、一夏を

 一人で行かせるわけにはいかないんだ」

『何をしでかすか予測不能』

 

笑顔を浮かべているのに、手についているゲキリュウケンは息も絶え絶えという

一夏の異様な状態に、弾は逃げたい衝動にかられる。

だが、一夏を一人行かせた場合の危険を考え、カズキは魔弾戦士全員で

行くことを譲らない。

 

「まあ、いざとなったらお前と親父さんを置いて、俺は逃げるから大丈夫♪」

「なるほど、確かに大丈夫……じゃねぇよっ!

 仲間見捨てる気満々じゃねぇかっ!!」

「おい、弾……ふざけている場合じゃ……ないだろ?」

「はい。ふざけてごめんなさい」

『gggggggg……』

 

ゴクリと喉をならすような表情から一転して、ちゃっかり自分だけは

逃げる算段をつけていたカズキに弾は抗議するも、笑顔の一夏によって

黙らせられる。拳に青筋を浮かばせるほど握りしめた一夏に……。

 

「何……?何なのよ~……。あの一夏のぶっ飛び具合は……」

 

笑顔だが、花びらが落ちるような些細な衝撃でも押さえている”何か”を

爆発させそうな今の一夏を見てラウラ以外のIS学園勢と虎白は、顔面蒼白となる。

そんな一夏に虎白は、人生で最大の戦慄を覚えた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「この先みたいだね……」

 

明を助けるために出発したカズキ達は、目的地である仙水湖がある山の

ふもとにたどり着いた。

 

「こっからでも、感じられるぐらいの気配を感じますね……」

「じゃあ、さっさと行こうぜ。俺達の精神衛生の為にも……」

『『『うんうん』』』

「……」

『た、頼むから……さっ……気を……お、おさえて、く……れ』

 

最終的に行くべき場所を確認できた一同は、急いで駆け出す。

ニコニコ笑顔で何をするかわからない一夏を、早く何とかするために。

 

『そういやさ~。土地神は、明を嫁にするためにさらったんだよな?』

「らしいね」

『だったら、別に取って食われるとかねぇだろけど……。

 別の目にはあってるんじゃねぇか?』

「別の目って?」

『例えば、肌が大きく露出してるようなえっちぃ服を着させられたりとかさ~』

「っ!馬鹿っ!」

「……」

 

仙水湖に向かう道で、ザンリュウジンがふと思った疑問を

どういうものかと弾が尋ね、何気なしにザンリュウジンが答えた瞬間、

カズキは慌ててその口を塞ぐが既に遅かった……。

彼らは恐る恐る先頭を行く一夏を見るが、ピタリと止まったその姿は

前を向いているため、一夏が今どんな顔をしているかはわからなかった。

 

「…………みんな……先を急ごうか?」

『『『「「「はい……」」」』』』

『…………』

 

グルリと後ろを振り向いた“笑顔”の一夏は淡々と口を開くが、

カズキ達は余計なことを言ったら“きれいな川”を泳がされると直感した。

 

「あんなに怖い笑顔、人生で……ははは、初めて見た……」

「し……心臓が……と、止まるかと思った……。

 あれは、冬音が怒った時と同じ顔じゃねぇか」

「みんな、ここから先は、ザンリュウが言ったみたいに

 明がどういう目にあっているかを口にするのは、

 タブーだ。いいな?」

『聞きたくないが、もし……』

『口にしたら?』

「その時は……地獄絵図が展開される――」

 

弾と太夏が、笑顔だけど間違いなくハラワタが煮えくり返るほど

激怒している一夏の怖さを改めて体感すると、カズキがその原因となった

ザンリュウジンが想像したことを口に出さないように注意する。

そして、バクリュウケンがそれを破った場合に起きることを聞くと……

 

“おらぁ!おらぁ!おらぁ!おらぁ!おらぁ!”

 

高笑いをしたゴッドリュウケンドーが、マグナリュウガンオーを片手で

締め上げ、バクリュウケンドーを地面に踏みつけ、後ろの壁にリュウジンオーが

めり込む光景が全員の頭をよぎった。

 

『ひぃぃぃぃぃっっっ!!!』

「俺達、生きて帰れるんですかね?」

「わからない。

 話を聞く限り、明を誘拐した土地神は

 人の話を聞かないバカみたいだからね……。

 そういうタイプのバカは、何をしでかすか全く想像がつかない」

「なんかさぁ……すっげぇ~~~~~~~~~~嫌な予感がするんだけど、俺」

 

ザンリュウジンが悲鳴を上げるが、弾はそれに構わず、自分達が無事に

生還できるかを本気で心配する。

そして弾同様に太夏もまた、ここから恐ろしいことが起きるのを直感していた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おい!私をすぐに返せ!」

「何を言う?

 お前は、ここで余の妻として暮らすのだ!

 その服も可憐だが、我が妻として相応しいものをくれてやろう。

 ふん!」

 

明を誘拐した龍士は、相も変わらず人の話を全く聞かず、

手に光を集めて明へと放つ。

 

「なっ///////!」

「ははははは!!!

 余の神通力を持ってすれば、服を変えることなど容易いことよ!」

 

光に眩んだ明が目を開けると、自分の服が

まるで竜宮城の乙姫のような煌びやかなものに変わっていて、驚きの声を

上げる。その様は、肩や胸元が大きく見えて扇情的であった。

 

「さて、次はあまりの色気に幻となったものよ!」

「今度は……って。ただのブルマじゃないか……」

 

次に龍士が明に着せたのは、ブルマ姿の体操服だったが、どんな服かと

身構えていた明は拍子抜けした様子だった。

IS学園での体操着が、同じものなのでだから何だと言った感じだった。

 

「いいぞいいぞ!どんどん行くぞ!」

 

脱力する明に構わず、龍士はテンションを上げて次々と明の服を様々なものに

変えていく。

太夏も好きな大人のウサギさんのバニーガール。

深いスリットで美脚を露わにしたチャイナ服。

誰もが一度は想像する眼鏡をかけたスーツ姿のイカンな教師姿。

 

「よーし、次は……!」

「いい加減に……」

「いい加減にしろ、ボケナス」

 

自分の意見を無視して、鼻の下を伸ばして勝手なことをする龍士に

我慢の限界が来そうになった明だったが、彼女ではなく従者であるサスケの

脳天チョップをガツ~ン!と金属を叩いたような重たいを鳴らして叩き込まれる。

 

「ぐぉぉぉ……サスケ、貴様~~~。

 主に向かって何をする……!」

「主だから、止めてんだろうが。

 すいませんね、お嬢さん。

 こいつ、見ての通り散々甘やかされて育ったバカ主でして。

 しかも、無駄に強いもので俺以外、誰もこいつの行いに

 口を挟まないんですよ~」

「は、はぁ……」

 

従者であるにも関わらず、何の遠慮もなしに主の龍士にズバズバと

口を挟むサスケに、毒気を抜かれた明は何とも言えない声を上げる。

 

「今回は、本っっっ当~~~にこのバカがご迷惑をおかけしました。

 すぐにお帰しますので……」

「おい!何を言っているのだ、サスケ!

 この者は、我が妻に……!」

「あんたがうるさいだろうから、彼女には来てもらっただけだよ。

 それに妻も何も、このお嬢さんの話を全く聞いていないでしょうが。

 恋人がいないならともかく、一緒にいた子がいるって言ってたでしょ。

 ねぇ?」

「えっ?あ~~~……た、確かにいる……その、恋……人が///////」

 

サスケは最初から明を龍士の妻にする気はないようで、すぐに

帰そうとするが、当然龍士は噛みつく。

だが、サスケはそれをバッサリと切って捨て、恋人がいることを

明に確認すると、明は頬を染めて指を突っつきながら答える。

 

「なっ――!!!」

「ほらね?

 お嬢さんにはもう相手がいるんだから、諦めて別の子を探しに行きましょう」

 

顎が地面についてしまうんじゃないかぐらいに龍士は、口を大きく

あけて驚愕し、それに構わずサスケは花嫁探しを再開しようとする。

 

「…………おのれぇぇぇっ!!!!!

 我が妻になる者を誑かしよって!

 ただでは、すまさんぞぉぉぉっ!!!」

「ん?」

「あれ?ちょっと。あんた、俺の話聞いてた?

 誑かそうとしているのは、あんただから」

 

何をどう解釈したのか、あろうことか、龍士は一夏が自分から明を

奪おうとしていると怒り狂う。

予想外すぎる行動に、明とサスケは呆然とするがもう龍士に

二人の声は聞こえていなかった。

 

「あ~どうするかな、これ?

 ごめんね。このまま、帰してもこのバカ、何やらかすかわからないから、

 ちょっと待ってね?

 何とか、落ち着かせるから」

「構わないが、あまり時間はないと思うぞ?

 私がさらわれたとなったら、みんなが助けに来るからな」

「助けに来るって……マズイじゃないか!

 こいつは、こんなんでも土地神だぞ!

 人間じゃ、相手にもならないのに……くそっ。

 罪のない人間を傷つけるわけには……」

 

龍士の暴走にサスケは頭を抱えるが、明から一夏達が助けに来ると聞いて

本気で頭に痛みが走る。

向こうは、ただ誘拐された仲間を助けに来るだけで、悪意はないのだが、

怒りに震えている目の前のバカがそれを理解できるとは、サスケは思わなかった。

どうするかと考えるが、もう手遅れであった。

彼らは、気づくべきだったのだ。

明が様々な衣装を着せられる度に、仙水湖の周りの生き物たちが

全力で逃げ出し、動けない木々が恐怖で震えていることに――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ここだね……♪」

『『『「「「……」」」』』』

 

実にイイ笑顔で、目的地の仙水湖につづく洞窟の前に立つ一夏の後ろで

カズキ達は恐々としていた。

彼らの周りには、刀で斬られたような切り口の岩や石がいくつも転がっていた。

 

「我が息子ながら、とんでもねぇな。

 殺気を飛ばして周りのもんを斬っちまうなんて……」

「本人には、自覚はないでしょうね。

 抑え込んでいる殺気が無意識にもれているなら、何かのキッカケで

 爆発したりしたら……」

「ひぇぇぇっ~~~~~!!!」

「さあ、みんな。ここからは、変身して行こうか♪」

『アヒャ……ヒャヒャヒャヒャヒャノッ!ハッ~~~!!!』

 

何かを感じ取ったのか、体から黒いオーラをあふれ出している一夏に

心底おののきながらもカズキ達は、言われるまま変身していく。

一夏の殺気を至近距離でモロに浴びて、おかしな笑い声を上げるゲキリュウケンを

スルーして。

 

「さてと……勢いでここまできたけど、でっけぇなぁ~」

「ぐずぐずしてると、見つかって面倒なことになっちまうしな」

 

変身した彼らは、あっという間に洞窟を進んでいき、湖に浮かぶ城の門の前に

たどり着く。

幸いにも、誰にも見つかることなく進むことができたが、彼らの前に立ちふさがる

門はとてつもない大きさで、マグナリュウガンオーは呆けた声を上げ、

バクリュウケンドーはどうやって開けるか途方に暮れる。

 

「こういう場合は、わざと騒ぎを起こしている間に伏兵が忍び込むのが

 定石だね」

「まどろっこしいですね~。

 めんどくさいから、正面からいっちゃいましょうよ?

 ファイナルキー、発動♪」

『ファいなるぶrrrイくくくくkkkkk♪』

『『『「「「え?」」」』』』

「龍王魔弾斬り♪」

 

リュウジンオーは手堅く攻めようとするが、何を思ったのか

ゴッドリュウケンドーは、ファイナルキーを唐突に使うとためらいなく

ゴッドゲキリュウケンを門へと振り下ろし――

 

ドゴォォォォォッッッン!!!!!

 

「……よし♪」

「「いきなり、何してんのお前っ!?」」

 

跡形もなく巨大な門を吹き飛ばして、満足気に頷くゴッドリュウケンドーに

マグナリュウガンオーとバクリュウケンドーが全力でツッコミを入れる。

 

「だって、こっちの方が手っ取り早いじゃん。

 こうすれば、向こうからやって来るから明を探す手間も省けて

 一石二鳥~♪」

『ケロケロッパ!ケロ~ケロ~パッパッ♪』

 

全く悪びれる様子もなくあっけからと応えるゴッドゲキリュウケンと、

22世紀の子守ロボットが故障したように、変な歌を歌いだすゴッドゲキリュウケンに

一同は何も言えなくなる。

 

「あながち、間違った選択肢をしてないのが、恐ろしいな。

 単純な奴なら、こんな挑発でも……」

「貴~様ら~!!!

 正面から攻めて来るとは、いい度胸だな!

 何奴だ!!!」

「単純な奴だったね……」

 

ゴッドリュウケンドーというより、一夏のぶっ飛び行動に

リュウジンオーが相手のとる行動をいくつか考えていると、目の前に龍士が

城から飛び降りてやってきた。考えていた中でも、一番短絡的な行動に

リュウジンオーはため息をこぼす。

 

「へぇ~お前が、ここの土地神?

 それじゃあ、さっさと明を返せ。

 素直に返すなら九分九里ボコり、抵抗するなら三途の川“いき”ボコりにするよ?」

「どっちにしろ、容赦なくボコるのね……」

「おい、悪いことは言わねえから、早く明ちゃんを返せ。

 後は俺達が何とか、コイツをなだめるから……な?」

 

待ち望んだ相手が現れ、ゴッドリュウケンドーは穏やかな声で、

どっちを選んでもイタイ目という言葉で表現できないような目に合う

問いかけを龍士へと投げる。

もう、誰が見てもキレていると言えるゴッドリュウケンドーに、

マグナリュウガンオーは怯え、バクリュウケンドーはできるだけ穏便に済まそうと

事を勧めようとする。

 

「明……それがあの者の名か。

 だが、余をボコるだと?

 人間風情が随分舐めた口を叩いてくれる……!

 それより、貴様があの娘が言っていた“お兄ちゃん”か?」

「あの娘って、ラウラのこと?

 そうだな。確かにあいつは、俺のことをお兄ちゃんって呼ぶけど?」

「そうか~そうか~……。

 で?貴様、名は何と言う?」

「織斑一夏だけど、そんなのどうでもいいだろ?

 明を返すの?返さないの?どっち?」

「織斑一夏……いいだろう。

 仙水湖を治める土地神、湖月龍士が直々に貴様へ特大の礼をしてくれる……」

「な~んか、微妙にかみ合っていないな」

「あの者達は、まさか……!?

 龍士様、お待ちを!!!」

 

バクリュウケンドーの言葉に耳を貸さず、龍士は怒りに震えるが

ゴッドリュウケンドーとの会話になっていない会話にリュウジンオーは

肩をすくめる。

そんな彼らのやり取りを城より見ていたサスケは、明を取り返しに来た者達が

何者かを察すると慌てて、龍士を止めようとする。

 

 

 

後に、彼はこの決断が遅すぎたと語る……。

 

 

 

「“余の”明を誑かし、散々辱めた礼をたっぷりとな――――!!!」

『「「ど、どアホォォォォォォォっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」』

 

バカを極めた龍士の発言にマグナリュウガンオー、バクリュウケンドー、

ザンリュウジンは涙を流して絶叫する。

 

「あ~~~…………」

 

リュウジンオーは、天を仰いでこれから起きる現実から、目を逸らそうとする。

 

『即時、この場から撤退すべし!』

『急げ!!!』

『ははは~蝶々~蝶々~♪きれいな、蝶々~♪』

 

ゴウリュウガンとバクリュウケンは、大慌てで魔弾戦士達に逃げるように言う。

花畑にいる幻覚を見ている相棒を手にして、俯いている一夏から……。

 

「…………」

「そして、余は明と婚姻の儀を……!」

「オイ……面カセ――」

 

慌てふためく魔弾戦士達と魔弾龍達を気にかけることなく、

龍士はこの後のことを想像するが、一瞬で懐に入り襟をつかんだ

一夏に拳を叩き込まれて、地面へと叩きつけられる。

辺りを陥没させるほどのクレーターを作って。

 

「余の明って、いつから明がお前のものになったのかな?ん?

 明がそう言ったのか?お前に嫁ぐとか、好きって言ったのか?

 言うわけないよな?全部、お前の勝手な思い込みだろ?

 大体、自分が被害者みたいな感じだったけど逆だぞ?

 お前は人の女に手を出そうとしただけでなく、誘拐して

 無理矢理の力づくで自分のモノにしようとしたクソ野郎、

 そこ分かってる?ねぇ?

 ああ~、そんな子供でもわかることもわからないぐらい

 お前の頭は空っぽで、人の話を聞かないような耳と同じ飾りだから、

 こういうことをしたのか~。

 じゃあ、そんな悪党はボコっても無問題だよね~♪

 アハっ♪

 ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

「ぐっ!ぎょっ!ごべっ!ちょっ!まっ!ほっ!びょっ!」

 

ゴッドゲキリュウケンを地面に刺して、龍士に殴りかかる一夏は

怒りを感じさせないような明るい声色で笑いながら、龍士の顔面に拳を

何度も叩きつけ周囲を文字通りに震わせる。

 

「ひぃ……ひぃぃぃぃぃ!!!

 ブ、ブラックリュウケンドー……」

「いや、ブラックって言うよりイービルじゃねえか?

 ヒーローがする笑いじゃねえよ、アレは……」

『こういうのを地獄絵図と言うのか』

『どうすんだよ~、リュウジンオー~』

『下手に止めたら私達も巻き込まれて、

 壁にめり込まされるぞ』

『はっ!ここはダレ?私はドコ?』

 

余の明発言に、完全にキレた一夏を見て戦慄するマグナリュウガンオーは

腰が抜けて地面に座り込み、バクリュウケンドーも息子のキレた姿に

ブラックのようなヒーローの色ではなく、イービルと表現する。

完全な自業自得だが、このままにしておくわけにもいかず、魔弾龍達は

どうするかと思案する。

そんな中、一夏から離れたためかゴッドゲキリュウケンが彼方より帰還する。

 

「そうだなぁ~。とりあえず、お~い。

 従者の人~聞こえてたらまず、明を連れてきてくれ~。

 そうでもしないと、あいつを止められそうにない」

「は、はいぃぃぃ!

 お嬢さん、一緒に来て!」

 

一夏が拳を振り下ろす度に地面が揺れて、グシャ!ビチャッ!とか

出てはいけない音が聞こえる中、リュウジンオーは事態を打開するべく

従者に明を連れてくるように呼び掛ける。

 

「――っ!お連れしまたっ!」

「よし、無事だったみたいだねって、どうしたのその格好?」

「これは、その、まあ……」

「ああ、うん。大体わかった」

「この度は、私どものバカ主が大変失礼しました!!!」

「とにかくまずは、笑いながら殴っているアイツを止めようか。

 話はそれからだよ」

 

すぐさまサスケは明を連れ去った空間転移の術で、リュウジンオー達の元に

明を連れてくると頭を地面につけて平謝りをする。

そんな彼は後回しと、リュウジンオーは明を連れて一夏の元に向かう。

 

「お~い、一夏~。

 明はこの通り無事だから、その辺にしておけ。

 土地神を消すと、後が面倒だ」

「う~ん?おっ!明!よかった~無事だったんだな!」

「ああ、何とかな/////////////」

 

リュウジンオーは、内心冷や冷やしながらいつものように気軽に

土地神(笑)をゲンコでボコる一夏に話しかけると、一夏は明の姿を

見た瞬間、纏っていた真っ黒なオーラを霧散させる。

 

「一瞬で元に戻ったよ、あいつ……」

『一夏だからな』

「なんて単純な奴……」

『単純なお前の息子だからな』

『一体、何があったんだ?

 明の屋敷を後にしたあたりから、記憶がないのだが……』

 

一夏の変わりように、マグナリュウガンオーは肩を落とし、

バクリュウケンドーは呆れかえった。

最早、見る影もなく腫れあがった顔になった龍士を

放り投げて、いつもの二人っきりの空間を展開する一夏と明に

口の中が甘くなるのを全員が感じた。

その傍で、数時間の記憶を失ったゴッドゲキリュウケンは説明を求めるのだった。

 

「おい、さっさと起きろ、バカ神」

「ぐべっ!」

『お前も結構、たいがいだよな。今更だけど』

 

イチャつくバカップルを無視して、リュウジンオーは気絶している龍士を

蹴り起こして、目を覚まさせる。

 

「さ~て、土地神君?互いに納得のいくように話し合おうじゃないか~。

 そもそも明は、俺達の大事な仲間なんだ」

「ふへっ?」

「仲間に手を出そうって言うなら、俺達は誰が相手でも容赦はしない。

 だけど、俺達は宿敵と戦うために修行したりと何かと忙しい……。

 そんな忙しい俺達に、まさか土地神が消えた後の後任やら

 決まるまでの土地の管理とかの面倒なことを……させるつもりなんて、

 もちろん無いよね♪」

『どこが、話し合いなんだよ』

『『「「(話し合いじゃあない……。脅迫だ!!!)」」』』

 

龍士を起こしたリュウジンオーは、この誘拐騒動に落としどころを

つけるために話し合いをするが、マスクに影を浮かべ怪しく光らせて

行うそれは、どう聞いても話し合いと呼べるものではなかった。

 

「あれって、要するに

 “これ以上、ごちゃごちゃ言うならめんどくさいけど消すぞ、コラ”

 って、ことっすよね?」

「それ以外に、どう聞こえるんだよ……

 あいつの方がブラックってのが、似合うんじゃねぇか」

 

マスクの下で黒い笑顔を浮かべるカズキの顔を想像して、マグナリュウガンオーと

バクリュウケンドーはそろって、重~~~いため息をつくのであった。

 

 





はい、というわけで一夏ブチキレでした(笑)
イメージとしては、暴走キングフォームやヤベ~イ感じです(汗)

バクリュウケンの言うように、昔太夏は今回の一夏と似たような
殺気を向けられたことが何回かあります。
怒った姿を想像するのが難しい女性から・・・。

真っ白になったザンリュウジンが見た雅の顔は、
どんなものだったのか。

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