インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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2019年、最初の更新となります。

最近、溜まっていたガンプラやスーパーミニプラをせっせと
作っていますが、現代の技術ってすごいですね~。
スーパーミニプラなんか、昔のおもちゃがサイズが小さくなって、
可動範囲がグッ!と大きくなった感じですしwww

次は、遊戯王のカードを何とか整理して、デッキ作成を(汗)

今年もよろしくお願いしますm(_ _)m


高き壁――

「ははははは!

 久しぶりに、心が躍るぞ!!!」

「ここまで人間をやめている奴が、いるとは……なっ!」

 

IS学園のアリーナよりも広い闘技場で、エスデスとISを纏った千冬は

そこを壊さんばかりの激闘を繰り広げていた。

エスデスは、自分の力を存分にふるえることに歓喜しているが、千冬は

未完成とはいえ、ISを纏った自分と生身で互角以上に戦うエスデスの

戦闘能力に驚愕をもらす。

 

「いや。どっちも人間の身体能力とか色んなものを遥か彼方に、置き去りにしてますよね?」

「素晴らしい!!!

 彼女達にかかれば、高ランクの魔導士も相手にならないだろう!」

 

一方、闘技場の観客席で結界に覆われた箇所で、ジェイルとその助手兼秘書である

ウーノが観戦していたが、その感想は大きく異なっていた。

彼女は、人間って魔法も使わずに、何もない所から氷を出したり、

瞬きする一瞬で数十メートルの距離を詰めたりと特撮ヒーローもビックリな

ことってできたっけ?と自分の中の常識に疑問を持ち、最早苦笑いを浮かべるしかない。

反対に、ジェイルは自分の知る人間の力を大きく上回る二人の戦いに、喜々として

データの解析にいそしむ。

 

「おっしゃるように、お二方の力は高ランク魔導士だけでなく魔弾戦士にも

 勝るとも劣らないでしょうが……これはあくまで千冬さんの訓練を兼ねた

 新しい機体のデータ取りということをあの人達は、忘れていませんか?」

「はっはっはっ!

 可能性は十分、考えられるね~」

「笑いごとではありません!」

 

ウーノの言うように、エスデスと千冬の戦いは、カズキや一夏が何を言おうが

創生種との戦いに参戦するであろう千冬に、実戦の空気が如何なるものを

体感してもらうのと、彼女の新たなISを完成させるためのデータ取りが目的である。

しかし、当の本人達はその目的を忘れてしまったのか、互いに獣が獲物を狩る笑みを

浮かべて激しくぶつかり合い、闘技場の空気を比喩表現などではなく現在進行形で

実際に震わせていた。

 

「では、どうするのかね?

 あの二人の間に割って入って、本来の目的を思い出してもらうかね?」

「そんなことしたら、私は凍らされて切り刻まれますよ……。

 千冬さんの力を限界まで引き出せて、命のやり取りと言う戦場を知れる相手として

 エスデスさんしかいなかったとはいえ、ここまで千冬さんが熱くなりやすい

 というか負けず嫌いだったとは……」

 

呑気に笑うジェイルに、加速的にヒートアップしていく戦いをするエスデスと

千冬にウーノは、激しいめまいと頭痛に襲われた。

これが終わったら、一夏に噂のマッサージでもしてもらおうかと若干現実から

逃避しながら。

 

 

 

「…………」

「これは、驚きですね……」

 

一夏と弾に食義の修業をつけた食林寺師範代のシュウは、感嘆の声をもらす。

彼の眼前には、座禅を組んだ明と感謝の念を感じて火を灯すつくし、

たいまつくしがメラメラと燃えていた。それも、数十本もである。

 

「(上級コースの食義でも、たいまつくし10本を2時間も灯し続ければ

 合格なのですが、彼女は5時間以上も灯している。

 それも、一夏君や弾君よりも短期間で……!

 尋常じゃない集中力だ……)」

「……ふぅ。

 確かに、食義は私と相性が良さそうですね。

 技の多彩さには自信がありますが、一夏達に比べると攻撃力に

 不安があったのですが、食義のおかげで相手の急所を

 今まで以上に狙えそうです」

「ええ。今の明さんなら、針を突き刺すような一撃でも

 相手を倒すことができる攻撃を放つことができるでしょう。

 それこそ、一夏君達のような鎧を着た相手でも……。

 明さん。さらに上に行くために

 寺宝の調理に、チャレンジしてみませんか?」

 

シュウは、食義を身につけた明の更なるステップアップのために、

食義を身につけても難しい食林寺の寺宝の調理を提案する。

 

「調理……ですか?」

「はい。寺宝は、シャボン玉のような繊細な食材で、触れるだけでも

 困難な食材です。

 調理ともなると、食義を極めた者でもできるのは、ほんの一握り……。

 無論、やるかどうかはあなた次第ですが」

「いえ、ぜひやらせてください!」

「わかりました」

 

例え、どれだけ困難であっても止まる理由などない。

明は隣に立つだけでなく寧ろ一夏達、魔弾戦士を超える意気込みで

高みに昇るために自らの研鑽をためらわない――。

 

 

 

「おらっ、どうした!

 もう一丁!!!」

「はい!お願いします!」

「すごいな、彼は……。あれで、何人目だ?」

「ぶっ続けで……!23人目……だ……よ!

 まだまだ……っ!

 ……いけるよ、彼は!」

 

首にかけたタオルで汗を拭い、息を整えてクールダウン中の

クロノは、休むことなく組手を行うウェイブに驚きと称賛を口にする。

その傍らで、ユーノは汗で小さな水たまりを作りながら片腕で腕立てを行い続ける。

 

「彼を見てきたエスデスさんによると……彼の強さは、完成の域にある……

 らしい……!後は、経験を積み重ねての研鑽ぐらいしかないけ……ど!

 カズキさんが……“教える”ことをすれば、まだまだ強くなれるかも……ってさ!」

「教えることで強くなれる?

 ……そうか。

 誰かに、何かを……基本を教えるというのは意外と難しい……。

 そして、基本を教えるということは自身の見直しに繋がり、

 自分の基本を……土台を鍛えることになる!」

「人間……意外と諦めなければっ!

 限界なんて、簡単に崩せれるのさ……。

 実際、彼らも最初に比べて相当に強くなっているよ」

 

ユーノは、ウェイブに投げ飛ばされながらもギラギラと目から闘志を

燃やす局員達を見て、笑みを浮かべる。

彼らは、レジアスやクロノが集めた信頼のおける者達であり、

この組手もカズキ考案の強化メニューの一つであった。

 

「魔法であれ、何であれ……強い力ほど体にかかる負担も反動も大きい……」

「だからこそ、肉体を鍛えることでそれらに耐えられるようにすれば、

 自然と自身が傷つかないよう無意識で抑えられていた力が出せれるようになる

 ……か」

「健全な魂は……健全な肉体に宿るってね……っと!」

「お前の筋トレもそうなのか?」

「まあね。体力は、ありすぎて困るってことはないし……

 土壇場でものを言うのは、結局は基礎体力……。

 何より、守るだけじゃなく戦うのなら、僕にはもう体を鍛えるしかないからね」

 

ユーノは、自身のメニューを終えると自虐的な笑みを浮かべながらも確固とした芯のある顔を

クロノへ向ける。

 

「(こいつ、いつの間にこんなに“強く”なったんだ?

 僕も負けてられないな……っ!)

 ところで、こころなしか少し人数が少ないか?」

「ああ……それは僕も思ってた」

「みなさ~ん」

「あっ、セシルさん」

 

ユーノの言葉を聞いて、自分も強くなろうと改めて決意するクロノだったが、

訓練をしている局員の数が、少ないことに疑問を持つがそこに、セシルが

姿を見せた。その手には、バスケットが握られていた。

 

「お疲れ様、ユーノ君。

 差し入れ♪

 持ってきたわよ~」

「えっ……?」

「いっ!」

 

セシルの言葉に、ユーノは間の抜けた声を上げ、クロノも引きつった声を上げる。

 

「がんばるのはいいけど、一息入れるのも大事よ?

 さっきの人達もよっぽど疲れてたのか、私の作ったおにぎりを

 食べた瞬間寝ちゃったのよ?」

「お、おにぎりです……か?」

「ち、ちなみに……中には……何が?」

 

自分達のことを気遣ってくれているのはわかるが、ユーノは恐ろしくても

聞かなければいけないと恐る恐ると言った感じで、彼女が作ったと言う

おにぎりの中身を尋ねた。

 

「碓氷君お手製の疲労回復ドリンク、リカバ茶をゼリーにしたものよ♪

 加えて、砂糖をたっぷりと加えてみました~♪」

「「うわぁ……」」

 

セシルの料理の腕前は、シャマルと似たり寄ったりと聞いていた二人だったが、

使われた材料(?)に頬が引きつるのを止められなかった。

普通に飲んでも、人を“寝かせられる”ものを更に改良し、おにぎりには

使わないような調味料まで加えられたものの味なんて想像もできなかった。

ちなみに、カズキと知り合っているユーノは言わずもがなだが、訓練メニューに

ノルマを達成できなかった者への回復薬(?)として、リカバ茶が用意されているので、

クロノもリカバ茶の味を知っている。

 

「あっ、セシルさんだ!」

「手に持っているのは、差し入れですか!?」

「うおぉぉぉっ!ありがとうございます!!!」

「はいはい。たくさん、ありますから慌てないでねぇ~」

 

爆弾解体係のように、目の前のものをどうするか考えるユーノとクロノ

だったが、それよりも早くセシルに気付いた局員達が我先にと彼女の元へと

駆け寄ってきた。

彼らも、リカバ茶の味は知っているがおにぎりの具が何か知らないため

笑顔でおにぎりを手に取っていく。

 

「ああっ!そうだった!

 ぼ、僕まだランニングが残っているんだった~。

 じゃあっ!」

「待て、ユーノ!僕も行く!」

「お、俺も走ります!」

 

もう、どうすることもできないとユーノはその場から離脱し、クロノと

セシルを目にしたウェイブもそれに続いてその場を後にする。

 

「なんだ、あれ?」

「ストイックっていうか、すげぇ体力だな~」

「まあ、いいじゃねぇか。それよりも、早く食べようぜ!」

「は~い、どうぞ召し上がれ♪」

「「「「「いただきま~す!」」」」」

 

意気揚々とおにぎりを食べた者達が、大きくてきれいな川を泳いだり、

ご先祖様と対面して追い返されたかどうかは――――ランニングから戻ってきた

三人だけが知るのみである。

 

 

 

「…………ま、参り……ました……」

 

Mリュウガンオーは、対面する相手に降参を口にすると、その場で両手両膝を

地面につけ、激しく息を乱す。

 

「おいおい、こっちは何もしてないのに終わりかよ?」

「いや、十分だよ。はい、約束の報酬」

「ふ~ん?

 まあ、こっちはもらえるもんもらえるなら、文句はねぇけどな」

「今日は、ありがとう。

 まあ、何かあったら依頼させてもらうよ。

 報酬を用意してね♪」

「まいど~」

 

崩れ落ちたMリュウガンオーとは、対照的に相対していた男は拍子抜けしたのか

肩をすくめ、カズキはその男にねぎらいと小切手を入れた封筒を渡し、

男は手をヒラヒラさせて去っていった。

 

「こ、これが……“最強”の……一人。

 マジで……死ぬかと思った……」

『時に引くのもまた勇気だ。

 必要以上に、自分を卑下する必要はない』

「しっかし、話には聞いてたけど、何なんだあの人は……!

 カズキさんが戦いの合図をした瞬間に、

 “あっ。これ、死んだ……”って、なったぜ……」

 

終わったにもかかわらず、弾は変身を解くことも忘れ、戦いにもならなかった

今の戦いを思い返す。

 

「攻撃をしようと……いや。

 何かしようと筋肉を動かそうとしただけでも、やられるってのがわかった。

 それも、殺気のひとかけらも出さずに……!

 庭の雑草を刈るような気軽さで……」

 

時間が経つにつれ、自分が相対した相手が規格外に分類される人間だったと

理解してきたのか、Mリュウガンオーは徐々に恐怖が湧いてくる。

そうやって、恐怖を後から気付くほど今の対戦は危険だったのだ。

 

「彼に依頼した甲斐は、あったみたいだね。

 お前の感想は、間違ってない。

 彼が命を狩ろうと思えば、ポケットに手を入れたままでも、

 できただろう。

 俺達魔弾戦士の鎧だろうが、ISの絶対防御だろうが、魔導士の

 バリアジャケットだろうが……彼の“斬る”という意思の前には、

 紙切れも同然さ」

「それが、自分が望む現象を精霊の力を借りて、現実に起こす精霊術師……。

 揺るがない確固たる“意志”が、強さを決める……か。

 話を聞いて、カズキさんが撮らせてもらったっていうあの人の戦いの

 映像も見せてもらって、とんでもないのはわかっていたつもりだったけど、

 本物は、全然違うな……」

「そりゃそうさ。

 彼は、間違いなく史上最強の風術師。

 超常の存在と契約を交わし、現代に蘇った伝説に載る存在だぞ?」

『見た目は、どこにでもいる兄ちゃんだけどな~』

 

座り込んで、どこか呆然とした感じのMリュウガンオーに、カズキは

彼に勝てなくても問題ないとばかりに、語りかける。

 

「カズキさんでも、勝てないんですか?」

「う~ん、難しい質問だな。

 簡単に負けるつもりはないけど、風術でやりやったら、

 技量や意志の云々関係なく風術師は彼には勝てないしね。

 彼はそういう存在の風術師だ。

 勝負するなら、体術や魔弾の力といった他の面での勝負になるな」

「……はぁ~。俺もまだまだだな……」

『当然である。

 確かに、この短期間で大きく力を付けたが、上には上がいるものだ』

「それを知ってほしかったのと、“最強”って言うのがどういうものか

 今回の目的だよ」

 

気付かない内に、若干慢心していた自分自身にMリュウガンオーは呆れ、

それにカズキは満足気に微笑む。

 

「最も、彼は“最強”の風術師だけど、何よりも強いって意味の最強じゃない。

 実際尻尾まいて逃げるぐらいの敵が、いたって聞くしね」

「あの人が尻尾まいて逃げるって、どんな相手っすか……それ?

 ところで……ひどくないですか?

 俺を戒めるためって言ったって、あの人を相手にするって!

 話に聞く限りあの人、カズキさん以上に敵には容赦しないんでしょう!?

 洗脳されていようが、女子供だろうが!」

「うん、そうだね。

 彼ほど外道って言葉が似合う奴もそうはいないだろうね~。

 だけど、彼に依頼する時に、命は奪わないよう念押しはしてたよ?」

「えっ?あ、ありがとうございま……す?」

 

落ち着いてきた所で、Mリュウガンオーはカズキに文句の声を上げる。

慢心して驕っている者に、強者によって叩きのめされるのはいい薬になるだろう。

しかし、一歩間違っていたらこの世と永遠に別れを告げる羽目になっていたかと思うと

文句の一つも言いたくなる。

そんな彼の文句に、カズキは笑いながら杞憂だったと返す。

 

「最初から、命の危険がないってわかっていたら何の意味もないからね」

『そうそう。実際に体験しなくちゃ、身につかねぇからな』

「ははは……」

「うんうん。治療の当てはあるから、

 命さえ奪わなければ、手足をぶった切ろうが、腹に風穴が

 あいても問題ないってね♪」

「そうですね。確かにグルメ世界には、こっちの常識を超えた治療が

 わんさか……って、ゴラァッ!!!?

 何、おつかい感覚でとんでもないこと言ってんだ、テメェっ!!!!!」

「いいじゃないか。無事に、終わったんだからさ~」

「よかねぇよ!

 じゃあ、一夏の奴もこんなことされてんの!?」

「ああ、最強とは違うかもしれないけど、飛びっきりの相手と

 戦っているよ。

 ある意味、お前よりも厳しいことになっているかもね」

 

聞き捨てならないことを口にしたカズキに、Mリュウガンオーは速攻でブチギレ、

激しく詰め寄るが、笑い話にしようとしているカズキはどこ吹く風とばかりに

受け流される。

そして、一夏も自分みたいにとんでもない相手と戦っているのかと戦慄するが、

カズキは意味深な笑みを浮かべるだけであった。

 

 

 

「うおりゃっ!!!」

「どわぁぁぁっ!!!!!?」

「どうした、一夏!それで、終わりか!」

「ま……だまだぁぁぁ!!!」

 

岩ばかりのとある荒野で、リュウケンドーに変身した一夏は、おそらく彼が

戦ってきた中でも一番の強敵とも言える相手に、苦戦を強いられていた。

どれだけ速く鋭くゲキリュウケンを振るい、技を放っても、相手は容易くそれらを

さばき的確にカウンターを放ち、幾度となくリュウケンドーを吹き飛ばす。

だが、何度吹き飛ばされても、何度地面に叩きつけられてもリュウケンドーは

立ち上がり、相手に向かっていく。

 

「そうだ!何度でも立ち上がってこい!向かってこい!

 諦めさえしなければ、どんな強敵が相手でも勝てる可能性がゼロに

 なることはない!

 俺を超えれるか、一夏!!!」

「言われなくても超えてみせるさ……父さん。

 いや……バクリュウケンドー!

 ゴッドリュウケンキー!発動!」

『チェンジ!ゴッドリュウケンドー!』

「超ゲキリュウ変身――ゴッドリュウケンドー!

 ライジン!」

 

リュウケンドーはGリュウケンドーへと強化変身して、

自分の父である織斑太夏……バクリュウケンドーを超えるべく、奮い立つ。

 

「まさか、自分の息子とこんな風に戦うとは夢にも思わなかったぜ……!

 ライフって国でちゃんと体が治ったか、確かめる必要があるってカズキの奴が

 言ってたけど、まさかそれを確かめるための相手が一夏とはなぁ……。

 だけど、手加減なんてしねぇぞ!」

「させる気もねぇよ!!!」

 

ゴッドゲキリュウケンを盾となっているバクリュウケンで受け止め、両者は

鍔迫り合いとなり、互いに隙をうかがう。

 

「はっ!」

「ぐっ!」

 

均衡は長くは続かず、バクリュウケンドーが一瞬だけわざと力を抜いた瞬間、

Gリュウケンドーが体勢を崩したのを見逃さず、腹部に強烈な拳を叩き込む。

 

「……やるじゃねぇか。

 俺の攻撃をかわせないってわかった瞬間、後ろに飛んで

 オマケに武装色の覇気も使って防御したから

 多少なりにも、ダメージを減らしたな」

「……っ~~~。

 ダメだ……わかってたけど、俺達もやっている力の受け流しの

 技術は俺達の比じゃない……」

『食義や覇気を身につけていなかったら、とっくにやられているな』

「しかも、魔弾龍の強さに差って言うのは、あまり無いんだろ?

 お前とバクリュウケンに差がないなら

 これがそのまんま、俺と父さんの力の差ってことか……」

「さぁ~て……それじゃ、そろそろ本気出していくぞ!」

 

必死に喰らいつくGリュウケンドーだったが、バクリュウケンドーと

ここまで差がつく理由に仮面の下で顔をしかめる。

それを証明するように、いっぱいいっぱいのGリュウケンドーに対し、

バクリュウケンドーは余裕を持って、魔弾キーを取り出す。

 

「デコードキー!発動!」

『デコード・ソード!』

「行くぜ!デコード・ソード!」

「なっ!?」

『やはり、ただの盾ではなかったようだな』

 

Gリュウケンドーは、バクリュウケンが身の丈もある巨大な剣へと

変わり驚き声を上げる。

 

「驚いている暇はないぜ!」

「どわっ!」

 

巨大な武器を持っているにもかかわらず、バクリュウケンドーは無手と

変わらないスピードでGリュウケンドーに接近し、デコード・ソードを振り下ろす。

ゴッドゲキリュウケンと盾を使って、攻撃を受け止めるも、

見た目に違わぬ攻撃の重さに、Gリュウケンドーは後退させられていく。

 

「……りゃっ!!!」

「がっ!」

「次はこいつだ!

 エンコードキー!発動!」

『エンコード・シールド!』

「エンコード・シールド!」

「今度は、でかくなった!?」

 

バクリュウケンドーは、デコード・ソードを振りぬきGリュウケンドーを

吹き飛ばすとバクリュウケンを剣から巨大な盾へと変え、

それを突き出して走り出す。

 

「はぁぁぁ……っ!」

『気を付けろ!おそらく、ただの盾ではない!』

「わかっているよ!」

 

Gリュウケンドーは、ゴッドゲキリュウケンを盾と合体させ、大型剣で

バクリュウケンドーを迎え撃とうとする。

 

「あめぇぞ!」

 

だが、バクリュウケンドーは構えたエンコード・シールドから剣先を伸ばし、

エンコード・シールドを大型剣となったゴッドゲキリュウケンのように構える。

 

「うおおおっ!!!」

「あがっ!?」

 

アッパーを繰り出す要領で、強烈な突きをGリュウケンドーに叩き込む。

 

「どんどん行くぜ?

 エクスコードキー!発動!」

『エクスコード・クロウ!』

「エクスコード・クロウ!」

 

バクリュウケンは、手甲となってバクリュウケンドーの両手に装着され、

そこからハサミのように、鉤爪が現れる。

 

「くらえっ!」

「まだ……だっ!」

 

ふらつくGリュウケンドーに、バクリュウケンドーは追撃を仕掛ける。

振り下ろされるエクスコード・クロウをGリュウケンドーは、

片方をゴッドゲキリュウケンで防ぎ、もう片方をダメージが重なる

体を無理やり捻ってかわそうとするも、かわしきれずに吹き飛ばされる。

 

「パワーコードキー!発動!」

『パワーコード・アーム!』

「パワーコード・アーム!」

 

バクリュウケンを、エクスコード・クロウよりもシャープな手甲へと変えた、

バクリュウケンドーは左腕の手甲を右腕に合体させるとそこから、クワガタの顎の

ような爪を伸ばし、それをGリュウケンドーへ向けて放つ。

 

「別に相手に近づかなきゃ、接近戦ができないわけじゃないぜ?」

「おわぁぁぁっ!」

 

ワイヤーで繋がれた爪は、Gリュウケンドーの足を掴み、バクリュウケンドーは

それを巻き取ることで、Gリュウケンドーを自分の元へと引っ張る。

 

「ふん!!!」

 

更に手甲内に内蔵されたブースターの勢いをプラスして、Gリュウケンドーの

鎧を砕くほどの拳を繰り出す。

 

「っっっっっ!!!???」

 

バクリュウケンドーの一番得意とする攻撃は、武器を用いたモノではなく拳。

それを肺の中の空気を強制的に吐き出されることで、Gリュウケンドーは理解

させられる。

 

「これで終わりじゃねぇぞ?

 トランスコードキー!発動!」

『トランスコード・キャノン!』

「トランスコード・キャノン!」

 

バクリュウケンドーは、追撃の手を緩めることなくバクリュウケンを大型砲へと

変え、吹き飛んだGリュウケンドーへその砲口を向ける。

 

「お前の力は、こんなもんじゃねぇはずだろ?

 なぁ、Gリュウケンドー!!!」

 

数秒でエネルギーチャージを終え、バクリュウケンドーはその引き金を

ためらいなく引く。

 

「あ……ったり前だぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」

『踏ん張りどころだぞ、Gリュウケンドー!!!』

 

バクリュウケンドーの叱咤が聞こえたのか、限界に近い体を気合で

奮い立たせ、Gリュウケンドーはトランスコード・キャノンの砲撃を

迎え撃つ。

 

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

Gリュウケンドーの気合の声と共にゴッドゲキリュウケンは、“黒く”染まり、

砲撃に振り下ろされる。

 

「くっ……のっ!」

『ぬおぉぉぉっ!』

 

想像以上の威力に苦悶の声を上げるGリュウケンドーだったが、

ゴッドゲキリュウケンと共に意地で一歩も引かず、

トランスコード・キャノンの砲撃を押しとどめる。

 

「『……っらぁぁぁっ!!!!!!!!!!』」

 

数分にも感じる数秒の均衡は、Gリュウケンドーが砲撃を斬り裂いた

ことで終わりを告げた。

そして、Gリュウケンドーはすかさずバクリュウケンドーに反撃すべく

接近しようと足に力を入れて…………

 

“吹き飛ばされたように視界に空が映った”。

 

「な……に……が?」

 

仰向けに倒れ、何が起きたのか上半身をヨロヨロと起こすGリュウケンドーが目にしたのは、

弓を構えたバクリュウケンドーだった。

 

「シューティングコードキー……シューティング・アーチェリー」

『トランスコード・キャノンを撃って、すぐさま次のキーを発動していたのさ。

 攻撃を退けた直後の隙を突くために……』

 

バクリュウケンの言葉を聞いて、Gリュウケンドーは自分とゴッドゲキリュウケンの

敗北を悟り、そのまま大の字に倒れる。

 

「……あ~。空が青いな~。

 ……ここまで、完璧に負けたのは久しぶりか」

『数え切れないほどの敗北はしてきたが、こんなにも気持ちよく負けたのは

 初めてではないか?』

 

一夏は、変身を解き悔しさを含みながらもどこか清々しい口調で青空を眺める。

ゲキリュウケンと出会ってから、今日までの敗北の数は両手両足の指の数より

遥かに多いが、負けたのにすっきりとした気持ちになるような

敗北は初めてであった。

一夏は、ほぼ全力だったのに対して、太夏には終始余裕があった。

それもカズキとは違った余裕が。

例えるなら、カズキの余裕が霧や雲のようにそこを見せないものなら、

太夏の余裕はどっしりと構えた、山のように堂々としたもの。

多くの戦いを潜り抜けてきた経験と自信、何より何があっても自分の背中に

あるものを守り抜くと言う信念。

どれも、今の一夏ではまだ太夏には及ばない。

 

「修行して、確かに強くなったけど……上には上がいるんだな、やっぱり」

『世界は広いようで狭く……だが、やはり広い……。

 精進あるのみだ』

「ゲキリュウケンの言うとおりだ」

 

ふらつきながら、体を起こす一夏に同じく変身を解いた太夏が近づき

手を差し伸べる。

 

「強くなるのに遠回りはあっても、近道なんてない。

 もし、あっても相応のリスクがあるし、必ずどこかでツケを払うことになる」

「うん……パワースポットの開放なんて、まさにそうだったしね……」

「一歩一歩登っていきゃいいんだし、男は負けた数だけ強くなれるんだ!

 そんなに落ち込むって!」

「それって、父さんの経験談?」

「へっ?あ……それは~~~」

 

新たな力を身につけても、自分より強い者は数え切れないほどいるのだと

改めて実感した一夏の肩を太夏はバシバシ叩いて、励ますが一夏のカウンターに

歯切れが悪くなり、明後日の方向に視線を泳がす。

 

『その通りだ、一夏。

 しかも、こいつはかなり調子に乗りやすいから負けた数は、お前よりも

 多いんじゃないか?』

『つまり、よく左手を開いたり閉じたりしていたと?』

『よく知ってるな』

『今は治っているが、一夏も同じクセを持っていたからな』

『おいおい、マズイんじゃないのか太夏?

 一夏が同じクセを克服してるのなら、お前を超えるのも時間の問題だぞ?』

「うるせーよ!

 てか、何あることないことをベラベラと……!」

『あることあること言ってるんだろ?

 大体、お前のその場しのぎの考えなしにどれだけ苦労したと!』

 

一夏とゲキリュウケンそっちのけで、太夏とバクリュウケンは子供じみた

口喧嘩を始める。

 

「なんか、父さんってさ……子供だよな」

『お前が言うな。お前が……』

 

きっと、昔も今自分が見ているのと変わらない喧嘩をしていたんだろうなと

呆れる一夏に、ゲキリュウケンがツッコミを入れる。

自分の相棒も太夏のように、いい意味で子供じみた大人になるのだろうかと

思いながら。

 

 

 

こうして、各々の修業に日々は過ぎていくのに反比例して、夏の終わりが近づいてきた。

 

 





エスデス対千冬。
互いに、人間辞めてるような身体能力の持ち主なので、ぶつかり合うことで
高め合ってとんでもないことに(汗)
ちなみに、束は千冬の新ISを製作中。

明は、グルメ騎士に近いので食義とは相性よさそうなので。

ユーノサイドは、肉体的な訓練メニューですが、差し入れが(汗)
彼もクロノ、ウェイブもセシルの差し入れを口にしたこと
があります。
更に、彼女はリカバ茶をおいしいと述べてたりします。

弾が相対したのは、最強の風術師。
カズキのモデルの一人でもありますが、やはり私ごときで
彼を描くのは無理とセリフも少なめです。
主人公なのに、外道なダークヒーローで敵対するものは
女子供、洗脳されているだけとか関係なく排除するキャラで
結構好きでした。
彼には相棒となる女性がいますが、後にカズキは彼女の学友と
知り合い、話があったとかないとか。
他には、彼の弟が女の子と間違えられた時は爆笑したともwww

一夏は、父親と激突。ですが、太夏という壁はまだまだ一夏には高く。
バクリュウケンが変形したのは、遊戯王VRAINSでPlaymakerが操る
「コード・トーカー」モンスター達のものです。

長かった夏休み編もやっと終わりが見えてきました。
感想・評価、お待ちしてま~す。


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