俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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やっとここまで来た……!


第五十六話「明日に響け! ツインテールの鐘!!」

『シャイニングッ! パニッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 ディスプレイだけが光源となっている真っ暗な自室の中で、戦女神の鉄拳が巨大怪獣を粉砕する記録映像を食い入るように凝視しているエレメリアンが居た。

 その艇の内部に同僚は一人も居ない。彼は灰汁の強い上司と折り合いがつかずに出奔し、そのまま特定の部隊に所属せずに個人の移動艇で世界を渡り歩く一匹狼だ。

 画面の中で一時停止された巨大怪獣、進化王キングソフビと鋼の戦女神トゥアールオーの姿に、彼は怒りと悲しみの入り混じった視線を向ける。

 

「あの女から逃げおおせても、組織を抜け出しても結局はツインテール戦士に討たれたか……」

 

 ――――なあ、カイジュウギルディよ……せめて、お前の仇は俺がとってやろう……!!

 

 かつての友の最期を目にしたエレメリアンの移動艇は、一路地球へとその舳先を向けて突き進んだ。

 

 十一月の爽やかな青空の下。櫻田市のホテルダンデライオン内の結婚式場に、幸せいっぱいの花嫁と花婿を祝福する参列者たちが集まっていた。

 親族たちの顔合わせと歓談も終わり、新郎新婦の準備が整ったのでいざ入場しようとした矢先、彼らは視界の隅にとんでもない違和感が鎮座しているのに気付いた。

 

 ――――エレメリアンである。

 

「きゃあ修くん!!」「花ァ!!」

 

「プラズマスナッパー!!」

「オーラピラー! ――――フォトニックランサー!!」

「どうせならレッドとブルーに倒されたかったああああああああああああああああ!!」

 

 花嫁の悲鳴が上がり、花婿が花嫁を勇敢に庇うのと同時に勢いよく扉が開くや否や、すかさずテイルサンダーの電磁鞭が鉢植えの振りをしていた闖入者を一本釣りにする。

 駆け付けたツインテイルズによって招待状も持たない招かれざる参列者、花束属性(ブーケ)のガーベラギルディは名乗る間もなくホテルの外へ引っ張り出され、テイルミラージュの手でこの世から強制退去となった。

 

「――――急げ急げ!」

「よりによって、なんでこんな時に結婚関係のエレメリアンが出てくんのよ!?」

 人目につかない場所へ駈け込むと、ドライバーの転送装置を作動させたミラージュとサンダーの長友兄妹は一足飛びに目的地である神堂ホテルへ向かった。

 

 文化祭の振り替え休日の今日は、桜川尊の結婚式があるのだ。

 

 先んじて神堂家のリムジンで到着していた観束家津辺家一行と合流した二人は、どうにか間に合ったことに安堵しつつロビーで差し出されたドリンクで一息ついた。

 ――――ところが。

 

「エレメリアンがまた現れました……場所はこのホテルのすぐ近くです!」

「なんだって!?」

「あたしたちが行くわ。あんたたちは残ってなさい!!」

「任せたぞ二人とも!!」

 

 トゥアルフォンへの通知を見たトゥアールの言葉に、血相を変える総二たち。

 出撃したばかりの長友兄妹を残して披露宴に出席させ、転送ペンで基地へ向かうトゥアールと、物陰で変身したテイルレッドとテイルブルーが駆け出してゆく。

 

 イースナは今日、レギュラー番組の収録で来られないのだ……!!

 

「現れたなツインテイルズ! 俺は結婚属性(ブライド)のビャーキーギルディ!! かように素晴らしき属性力が満ち満ちたこの地でお前たちと出会えたことは僥倖と言えよう……今こそ友の仇を討たせてもらうぞ!!」

 

 駐車場上空に浮かびながらホテルを透視するかのように凝視していた、蜂とも蝙蝠ともつかない黄金のエレメリアンは、ツインテイルズの到着に気付いて名乗りを上げると凄まじい速度で急降下をかけた。

「――――速い!?」

「ならあたしが! チェンジ・フォーラー!!」

 テイルブルーがエクステンドリボンを装備し、高速形態フォーラーチェインに強化変身を遂げる。

 間一髪躱した強襲から再び上空へ急上昇したビャーキーギルディ目掛け、エクセリオンブーストを噴かし、ジェット戦闘機のように追いすがるフォーラーブルーだったが、それでもまだ追いつけない。

「ウェイブセイバー!!」

 分離したスラスター群が青い軌跡を残しつつ、刃となって飛ぶ。

「甘いぞ!!」

 だがUFOのように慣性を無視した鋭角的な軌道で、ビャーキーギルディはその全てを回避してのける。

 

「受けてみよ! 黄金蜜月弾(ゴールデンスプラッシュ)!!」

「そんな……きゃああああああああああああああああ!?」

「ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 反撃に撃ち出された、黄金に光輝く無数の弾丸がフォーラーブルーに降り注ぐ。

 咄嗟に取り出したウェイブランスで防ごうとするが、槍を回転させる指が瞬く間に固まった――――弾丸の正体は蜂蜜めいた粘液だ。

 防ぐ手立てを失った彼女の身体を、黄金粘液の雨がたちまち覆い隠した。

 ベチャリと音を立てて墜落したフォーラーブルーに駆け寄るレッド。

 その粘液はかなりの粘度で、一度地面へ張り付いたが最後、テイルギアの力をもってしてもおいそれとは動かせないようだ。

『ブレイザーブレイドの炎なら粘液を剝がせます、ですが……』

 トゥアールの分析した対抗策、だがそうは問屋が卸さない。

 フォーラーブルーを庇う位置に陣取ったテイルレッドはブレイザーブレイドを手に、舞い降りたビャーキーギルディと対峙する。

 奴が抜き放った蜂蜜色の三日月刀が、陽光を反射してギラリと輝いた。

 負けじとブレイザーブレイドから炎がメラリと噴き上がる。

 

 タイムリミットが迫る中、テイルレッドを焦燥感が苛んだ。

 

□□□□

 

 披露宴の参列者が各自着席し、新郎新婦の入場を待ちわびている会場内。

 神堂家のメイドたちが準備に動き回っているのを横目に、穂村あけみは、敢えて近い席に配置された結維や慧理那と談笑しながら緊張を紛らわせていた。

 

 本当にこのホテルは制服で居ていい場所なのだろうか?

 目の前の慧理那お姉さんも、結維ちゃんも結お兄さんも、学校の制服だから平気なはずなのだけれど……

 さすがに大学生の恋香お姉さんはワンピースだった。

 

「披露宴なんておとなしく座ってごちそう食べてれば終わっちゃうよ、だから大丈夫!」

 以前親戚の結婚式に呼ばれた経験のある結維の言葉はなんとも心強い。

 だが問題はそこじゃない、披露宴での振る舞いではなくこのホテルが高級すぎるから庶民の私が困っているのだとわかってほしい。

 あけみは口に出さなかったが切にそう願った。

 

「――――え? ツインテイルズがホテルの駐車場で怪物と戦っている? いいえ、彼女らはこのホテルで行われている披露宴を守るために戦っているのです。中止になどしてしまっては彼女らの頑張りに泥を塗ることになります!」

 

 そんな中、ツインテイルズとエレメリアンの戦闘を知った神堂慧夢は、参列者へのお土産として数名のメイドたちに命じて写真撮影に向かわせた。

 なお、真っ先に飛び出していったのは暫定メイド長の一人、マコトだったという……

 

 ――――戦闘発生からさらに数分が経過しても、総二と愛香たちは戻ってこない。

 一般隊員程度の強さなら、来た見た勝ったであっさり片付けて帰ってくるはずだ。

 今度のエレメリアンは四頂軍並みか、下手をすれば幹部並みに強力なのでは……?

 

 慧理那は不安と焦りを募らせた。

 このままでは間に合わないかもしれない。尊の結婚を、ツインテール部みんなで祝ってあげたいというささやかな願いを、どうしても叶えたい。

 ですがわたくしまで抜けてしまっていいものか……

 

 そんな慧理那のツインテールを結維はテーブルの下でそっと握りしめ、目と目を合わせて頷いた。

 それだけで充分だった。

 

「――――わたくし、お花を摘みに行ってまいりますわ!!」

 

 鎖から解き放たれた犬さながらに、慧理那はまっしぐらに駆け出してゆく。

 

「テイルオン!」

 

 変身機構起動略語(スタートアップワード)と共に飛び込んだ個室で展開される電光のフォトンコクーンが弾け、幼く愛らしい神堂慧理那は凛々しく美しい大人の姿のテイルイエローに変わる。

 

『慧理那さん、敵はフォーラーチェイン以上のスピードと、厄介な粘液を駆使するなかなかの強敵です! スピードさえ奪えれば総二様は勝てます、翼を狙ってください!!』

「わかりましたわ!!」

 

 トゥアールとの通信で状況を把握しつつ外へ飛び出したテイルイエローは、属性玉変換機構(エレメリーション)髪紐属性(リボン)を使用してホテルの屋上へ飛び上がると、戦場を見下ろし左腕のビーム砲を起動した。

 テイルギアによって強化された視力が、テイルレッドと切り結ぶビャーキーギルディと、粘液にまみれて倒れ伏すフォーラーブルーの姿を捉える。

 トゥアールが警告するだけあって流石のスピードだ。

 蝙蝠のような翼から繰り出される、蜂のような軌道の低空飛行。

 あのテイルレッドを翻弄する、有効打を取られないように寄せては退き、退いては攻める緩急自在の立ち回り。

 

 この一撃に勝負は懸かっているのだと、狙いをつけるテイルイエローのまなざしが険しさを増す――――フォーラーブルーが、粘液だけを残して姿を消していた。

 

 属性玉変換機構――――学校水着属性(スクールスイム)

 

 大地を水面と化す能力で身体に纏わりついた粘液を透過し、地を泳ぐツインテールシャークとなったフォーラーブルーはビャーキーギルディの足元から躍り出て動きを阻害する。

 

「――――今よ!!」

 

 すかさず放たれた光条が、奴の翼を撃ち抜いた。

 これでもう、たとえブルーを振り払っても奴が飛ぶことはできない。

 

「オーラピラー!!」

「ぐおわああああああああああああああああああ!?」

 

 ブレイザーブレイドの切っ先から放たれた火球が、捕縛結界となってエレメリアンを拘束する。

 着弾寸前で飛び退いたフォーラーブルーはそのまま地を蹴って跳び、レッドの構えるブレイドの腹に着地。

 フォーラーブルーがもう一度フォースリヴォンを叩き、ウェイブランスをもう一振りその手に握った。

 

 ――――完全開放(ブレイクレリーズ)!!

 

「行けっ! ブルー!!」

 バッターが渾身のホームランを打つように、全力で振りぬかれたブレイザーブレイドはカタパルトとなってフォーラーブルーを勢いよく射出。

 フォーラーブルーもまた、息の合ったタイミングで刀身を蹴り、蒼き弾丸は解き放たれた。

 

「メイルシュトロームウェェェェェェェェェェイブ!!」

 

 荒ぶる大渦巻と共に高速回転する双槍が、エレメリアンを穿ち貫き粉砕する。

 着地し、槍を振って残心したフォーラーブルーに、かろうじて残った上半身から断末魔のスパークを迸らせるビャーキーギルディは、自嘲するように亡き友へ叫んだ。

 

「すまぬカイジュウギルディ! 仇は討てなかったがせめてあの世で……貴様が好きだった豊胸させ甲斐のあるまな板女子について心ゆくまで語り明かそうぞ……!!」

 

「――――カイジュウギルディって、誰だ……?」

 

 その問いに答えるものは爆散し、もはやこの世界のどこにも居ない。

 フォーラーブルーは道端の害虫を見る目でアスファルトの焦げ跡を見やると、ウェイブランスを収納してレッドの手を取り大急ぎで駆け出した。

 

 変身を解除したツインテイルズたちは息を切らして駆け戻り、どうにか披露宴の会場へ滑り込んだのだった。

 

『桜川先生! 結婚おめでとうございます!!』

 

 幸せいっぱいの尊の笑顔に、陽月学園ツインテール部の祝福が唱和した。




櫻田市は昔そこの県を治めてた大名の子孫が地元の名士やってる感じの都市です。
そして、原作のフォーラーチェインならビャーキーギルディの速度に対抗できました。
こっちのは初期のスピード形態、原作のは後半の上位互換形態くらい差がある設定なので。

それにしてもキングソフビの元の名前って何だったんでしょうね?
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