ここがどこだか分からない。どこだか分からないところに俺は倒れていた。服はほとんど破け、剣も折れていて、ボロボロの雑巾のようにただ雨に降られていた。そんな時だ。
「君、大丈夫かい?」
「…………?」
神様に拾われた。
「お腹が空いてるのかな?とにかく僕の所に来なよ。余り広い所ではないけど、ファミリアも一人だけいるんだよ」
それから俺の生活は一変した。食べ物は人から奪う物だと思っていたが、与えられる物になった。二人は俺に優しくしてくれた。服も、家も、温もりも与えてくれた。俺はこの恩を忘れない。この世界を敵に回しても、俺は2人を守ると決めた。
それから一ヶ月。
「エルくん。いい加減、君も働いてくれないか?」
俺のファミリアの神、ヘスティアが腰に手を当てて言った。
「るせーよガキ。働くも何も、どーせ俺なんて目付きが悪いってだけで面接すら受けさせてもらえねーんだよ。ていうか今ちょっとアレだから。マジ集中してるから」
「パズドラをやりながら何を言ってるんだ君は。ていうかタメ口か。まったく、僕もベルくんも毎日働いているのに」
「いやあいつはちげーだろ。女探しに行ってついでに金稼いでるだけだろ」
「なに!?ベルくんは女の子を探しに行ってるのか!?」
「あっやべっ。ま、いーや」
完全にニート化していた。
「こ、こうしちゃいられない!僕はベルくんを探しに……!」
「いやあんたこれからまたバイトだろ。俺が探してくるから働いてろよ」
「おいおい、君は冒険者ではないだろう。ステイタスも分からないし、君が死んだら僕もベルくんも悲しむよ」
「舐めんなよガキ。迎えに行くくらいやってやるよ」
「そ、そうかい?すまないね。見付けたら引き摺ってでも連れてきてくれるかい?」
「わーったよ。引き摺り回してくりゃいいんだな?」
「いやそこまで言ってないが……まぁなんでもいいさ、連れて来てくれるなら」
そんなわけで、俺は一ヶ月ぶりのダンジョンへ行った。
ダンジョン。俺の武器は木の剣一本。金の無いうちのファミリアで武器をもらえただけでもありがたい。
「おーいベルーどこだー」
気の抜けた声で探す。ていうかいねぇー、もう帰ろうかなぁ……。おい、俺根気とかなさ過ぎだろ。あ、そういえばもうすぐゲリラじゃん…帰って続きやらねぇと、ここ圏外だし。
『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオッ‼︎』
「ほぁああああああああああああああっ⁉︎」
………バカの声がした。今、キーンと来たよ耳に。向こうか。俺は歩きながら向かう。
『ヴゥムゥンッ‼︎』
「でえっ⁉︎」
段々近くなる声。くっそ、なんでダンジョンってのはこんなに広いんだよ……。あ、いた。
『フゥー、フゥーッ……!』
息を荒くするミノタウロス。って、ミノタウロス!?おいおい、こんな奴なんでこんな所に……!いや、考えてる場合じゃない。ベル腰抜けてるし。
俺は木の剣を抜いて駆け込んだ。
「どけこの牛野郎ォォォッッ‼︎」
壁を蹴って反対側の壁に移るという、バンビのような技で接近した。
「エル!?」
「ふんごぉぉぉっっ‼︎」
木の剣でミノタウロスの鼻を横からぶん殴った。が、所詮は木の剣、顔をそっぽ向かす程度の威力しか出ない。
『ヴォヴッ‼︎』
俺が着地すると共に上から蹄が降ってくる。俺は木の剣でガードした。一瞬でも力を抜けば潰される。
「ベル!早く逃げろ!」
「な、何言って……!」
更に力を加えるミノタウロス。
『ヴォオオッ……‼︎』
「ンギギギッ……‼︎」
クッソ……無理かこれ以上は……!責めて、ベルが逃げ切るまでは……!そう思いつつも、俺の体は段々と中腰になっていく。その時だった。ミノタウロスの体に一線が走った。
「え?」
「あ?」
『ヴぉ?』
俺達(ミノタウロスを含む)三人の間抜けな声。その瞬間、ミノタウロスから血飛沫が飛び散る。お陰で俺とベルはゾンビのように血塗れになった。
「………大丈夫ですか?」
声がした。女の声。だが見たことのない女だ。金髪。が、ベルは知っているようで、目を見開く。
「あの……大丈夫ですか?」
もう一度声を出すその女。その瞬間、ベルの顔は真っ赤になる。いや元々血で真っ赤なんだけど。そうじゃなくて、羞恥心と恋心で真っ赤的な意味。
「うわああああっ!」
なぜか逃げるベル。残された俺はどうしようか迷ったものの、とりあえずお礼だけ言ってベルを追った。