「そういえば君、名前は?」
駅に向かう地中にあるカフェで二人は向かい合っていた。
「あぁ、赤羽カルマ、下の名前で気やすく呼んでよ。」
「オッケー。じゃああたしはレイラでいいよ!」
そこでカルマは気になっていたことを一つ。
「なんで俺と帰ろうとしたの?」
「ん~、なんか気になるんだよね、カルマ君て。あの人に似てて。」
「あの人?」
「昔の話.中一のころ、あたしも結構荒れててさぁ.そんな中、不良グループ同士の抗争に巻き込まれたんだ。その時あたしをかばってくれた人がいいぇ、その人を守れなかったこと、今でも後悔してるんだ。それでその人と君がびっくりするぐらいそっくりでさぁ。だからかなぁ。なんか君とは仲良くなれそうな気がして。」
それを聞いて、カルマは自分が何か大事なことを忘れている気がして、ちょっと考え込んでしまった。脳裏をよぎるオレンジ色のショートカットの少女。その子は微笑みながら「ごめんね」と言っていて。その少女に必死で手を伸ばしている自分がいる・・・。それが彼の忘れてしまった人だということに彼は一年以上たった今も気づいていない。
「カルマ君?」
レイラの呼びかけでハッと我に返る。
「ごめん、ちょっと考え事してた・・・そうなんだ。ちょっと残念だけどまぁ、いっか。」
自分で言ってから、カルマはちょっと赤くなる。が。レイラは全く気付いていないようなので、半分良かった、半分残念というところか、と思いながら、なんでもないよとわらった。そこでレイラはあれっと思って、
「そういえばさっきのジェラートは?」
「あ、これ?」
カルマは甘党なのでしっかり持ってきていたのだ。レイラはそれを見ると、ちょっと貸して、とジェラートを受け取り、スプーンですくってぱくっと一口食べた。
「おいしー!!これめちゃくちゃおいしいよ!でかした、カルマ君!!」
「!!///」
いきなり笑顔を向けられて柄にもなくどぎまぎするカルマ。レイラはそれを勘違いしたらしく、また一人分すくって
「むぐっ!?」
カルマの口に突っ込んだ。ちなみに同じスプーンで、だ。つまり、間接キス。いきなりのことにカルマは耳まで赤くなる。それに気づかないレイラはまた一口すくって食べる。カルマの顔がさらに赤くなる。レイラはくすっと笑うと、
「そんなに怒らないでよ。はい、あ~ん。」
スプーンをカルマに口までもっていく。
(これ、観念するしかないのかなぁ///)
店中の人間からの「リア充爆ぜろ」目線をビシビシ感じながら、カルマは口を開けてぱくっと食べる。レイラはスプーンを引いた後、
「どうしたの、カルマくん。顔真っ赤だよ?」
カルマの顔を覗き込む。自然と顔が近くなり、
「あ~もう!!///」
耐え切れなくなったカルマは机に突っ伏してしまった。
「カルマ君?」
「今、こっち見ないで。///////]
髪の間から出ている耳は髪と同じくらい真っ赤になっていた。
(今日は振り回されッぱなしだなぁ。///)
でも不思議と嫌な気はしなくて。そのことがさらにカルマの顔の熱を上げるのだった。
カフェから出た二人はしばらく歩くと、
「あれ、渚じゃない?」
レイラが声をかけようとすると、元渚のクラスメイトの二人が通りかかり、
「おい、見ろよあれ渚だぜ?」「すっかりE組になじんでんだけど」
「あ~あ、かわいそ」「ありゃ、もう絶対俺らのクラスに戻ってこれないな。」
それを聞いたカルマは何気なく隣を見て、
「!?」
ぎょっとした。レイラから見たこともないような怒りオーラが出ているのだった。そのままレイラは物凄く低い声で、
「ちょっとあの二人殺ってくるね」
と言ってガラス瓶を手に歩いて行った。自爆テロの際渚を守ったのは何を隠そうレイラなわけで、そのころから渚を傷つける者には激しい怒りをあらわにしてきたのだった。
「しかもよぉ、停学明けの赤羽までE組復帰らしいぜ?」
それを聞いて、レイラの中で何かが切れた。
「うっわ、最悪、マジ死んでもあそこ落ちたくないわ。」
ガッシャン!!
「「ひっ・・・」」
次の瞬間、二人に首に割れたガラス瓶が突きつけられていた。正確に言えば二人に頭上でガラス瓶を割り、その破片を突きつけたのだが、そんなことを気づく間もない程レイラの動きは早かった。
「へぇ~、死んでも?なら、ここで死ぬ?」
全身から殺気を放ちながら言うレイラに、
「「うわぁ~」」
二人は腰をぬかしてにげていった。
「渚、大丈夫?」「あ、うん・・・」「そっかぁ、よかったぁ。」
にっこり笑うレイラに渚の顔がちょっぴり赤くなる。
「にしても凄いね。さっきの、速すぎて見えなかったよ。」
「そう?ありがとぉ」
仲良さげに話す二人を見て、
「ふぅ~ん」
カルマはなんだかおもしろくなかった。それはレイラが渚のこととなるとあんなに腹を立てるのを見たからなのだが、本人はそのことに気付いていない。
「でもよかったぁ。あいつがただのモンスターならどうしようかと思ってたけど、案外ちゃんとした先生で。」
「どういうこと?」
あの後殺せんせ―がタコとか言ったら怒るかな、という話になったのだが、そんな中飛び出した発言に二人は怪訝そうな顔になる。そこに電車が入ってきて、
「ちゃんとした先生を殺せるなんて・・・ははっ、前の先生は、勝手に死んじゃったから・・・」
風に吹かれながら不気味に笑うカルマを見て、渚とレイラは顔を見合わせて思った。
(いったい何があったんだろう・・・?)
その夜、レイラははカルマに電話をかけた。
「もしもし、カルマ君?」
「そうだけど…って何で俺のケータイ知ってんの!?」
「ハッキングした!」
「明るい声で何言ってんの!?」
レイラはカルマさえも驚かせるほどの悪戯をやってのけるのだった。
「まぁ、これくらいは序の口だよ」
そういうレイラにカルマは軽い恐怖感を覚えた・・・。
「とにかく。明日も一緒に頑張ろうね!」
「なんで俺なの?」
「あたし、カルマ君のこと結構気に入ってるんだ!」
「~~~っっ!!/////」
(なんてこった。ちょっと動揺させるつもりが、携帯落とした。)
カルマは真っ赤になった顔を抑え、
「じゃあ、また明日!」
上ずった声で言った。
「うん、じゃあね、カルマくん」
「~~~~~~っっっっ!!!/////」
ただ名前を呼ばれただけで、顔の熱が急上昇だ。
(明日、どんな顔して合えばいいんだろう)
カルマはその夜、人生初の徹夜を経験した。
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