この学校で一番重要ともいえるイベントが迫ってきた。
そう、中間テストだ。
進学校であるが故にかなりハイレベルな出題があり、全校生徒にとって最低最悪のイベントでもある。
それはなぜか。
3のEというクラスはほぼ成績不振者で構成されている。
つまり。このテストで悪い点数を取る=E組まっしぐらということになる。
今までさんざん馬鹿にしてきたやつらと一緒になればそいつらからどんな落とし前をつけられるかわかったもんじゃないし、何より先生からもかつての級友からもクズ扱い、なんてことになるわけだ。
一言で言えば、たまったもんじゃない。
図書館などは殺気だった雰囲気に包まれ、ペンの一つでも落とそうもんならすぐさまその場から追い出される。その雰囲気はあのカルマですら入るのを躊躇するほどで、
それほどこの学校ではE組に対する差別が徹底していると言っていいだろう。
「この時間は、特別強化授業を行います!」
次の日、今までは4、5人の分身が限界だったはずの殺せんせーはなんとクラス全員分の分身を見事に作り上げていた。
この驚異的な成長スピードは、やっぱり一年後、地球を滅ぼす準備なのかな、などとレイラが考えていた時。
突如先生の顔がぐにゃりとゆがんだ。
「急に暗殺しないでください、カルマ君‼それよけると残像が全部乱れるんです!!」
全部の分身が次々とゆがむのを見て、意外と繊細な分身なんだなぁ、とレイラはあきれつつ、
「この分身、どこまで歪むかやってみない?」
「いいね、乗った!」
「にゅいやぁ!?何恐ろしい相談してるんですか!!」
その間にまた先生の顔が歪む。今度は二か所。
そしてその歪みが修復される前に素早くナイフを振るう二人に、五か所ぐらい顔をへこませた先生がキレるが、
「終わりましたっと」
「ここの公式これであってんのっと」
止める気配は全くない。自前のコンビネーションプレイを生かして次々と残像を乱れさせる二人にクラス全員が思った。
(こいつら成績はいいんだから、マジ腹立つ!!!)
放課後。偶然通りかかったせいで理事長先生と殺せんせーのやり取りを聞いてしまい,何とも言えない気分になっていた磯貝とレイラに理事長先生が言った言葉。
「中間テスト、頑張りなさい。」
とても乾いた「頑張りなさい」は、一瞬で磯貝の心を暗殺者からエンドのE組の生徒へと引き戻した。
そんな磯貝を、レイラは心配そうに見ていた。
その日の帰り道。
あれからずっと暗い顔をしている磯貝を見てレイラはあきれ顔で大きくため息をつくと、歩きながら難しい顔で何かを考えているであろう磯貝に問いかけた。
「磯貝君はE組出たいと思ってる?」
いきなりの質問に面食らう磯貝。
「だぁかぁらぁ、この中間テストでいい点とってE組出たいって考えてるの?」
「いや、それはないけど・・・」
「だったら何も悩む必要ないじゃん。」
「!!」
「磯貝君さぁ、さっきの理事長先生の言ったことにプレッシャーみたいなの感じてるわけでしょ?」
「・・・・・」
「でもE組出る気ないんだったら無理にいい点取る必要もないし、大体良い点とろうが悪い点とろうがここに残る気ならプレッシャーなんて何もないはずだよ?」
言われてみれば・・・おっしゃる通り。
何を自分は悩んでいたんだろう、とちょっと馬鹿らしくなる。
「結城の言う通りだな。確かに悩むことなんて何もなかった。」
「でしょ?」
「ああ!中間お互い頑張ろうぜ!」
「うん!その意気だよ!」
夕日をバックに微笑むレイラがなんだかとてもきれいに見えて。
磯貝は不覚にもドキッとしてしまうのだった。
(あ、あれ?)
「おーい、何してんの!行くよー!!」
「お,おう!今行くー!」
磯貝が自分の恋心を自覚するまで、もう少し・・・。
次の日。
「せんせー、さらに頑張って増えてみました。」
案の定そんなことになっている先生を見て、レイラはちらりと磯貝に視線を向ける。
磯貝もちらりとレイラをみる。以下、無線機でのやり取り。
「やっぱり先生怒ったのかなぁ。」
「そりゃそうなるわ。スピードが全てみたいな先生にあんなこと言っちゃあ・・・」
「絶対プライドに火がついたよね・・・」
「だな・・・」
分身先生の目をかいくぐりながらする二人の会話を後ろから回路侵入した無線機(回路侵入の仕方はレイラが教えた)で聞いていたカルマだが、何の話かさっぱり分からない。
なんだかレイラが別の男子と自分には分からない関わりをしていると思うと、カルマは少し面白くなかった。
「な~んか先生完っ然にむきになってたな。」
「確かに。ああ見えて単純だから、まぁこうなるとは思ったんだけど。」
「だよなぁ。案外わかりやすいとこあるし。」
レイラと磯貝がそんな会話をしていると、中村がやってくるなり言った。
「なんか先生が全員校庭に集まれだってさ。」
なんでだよ、と聞くが中村は分かんない、の答えしか言わないので二人は中村とともに校庭に出る。
すると先生はゴールやネットをどかし、校庭の真ん中に背を向けて立っていた。
レイラは何があったかある程度は想像がついた。
それはカルマも同じようで、
「「いやな予感しかしないよね」」
二人同時につぶやいていた。
へんなところでブツ切りですいません!冬休みの宿題と戦ってるんです( ;∀;)