イメージするのは常に最高の調理だ   作:すらららん

9 / 9
本編が進まない&文章を書くリハビリがてら息抜きに書いた番外編。
そんなに悪くはない出来だと思います。


追記

ネタなので、Fateの厳密な設定と抵触する部分がありますが「ヘラクレスすげー!」とスルーしてください。


更に追記

仮に大真面目に描写しても結果は変わらないと思います。ヘラクレスすげー!





もしヘラ ~もしもイリヤがヘラクレスをセイバークラスで喚び出すという暴挙に出たら~

 なんか思っていたより凄い早く触媒が届いた。

 欲しい商品をクリックした瞬間、玄関で配達員が荷物を持って待機していた……ぐらい早かった。

 

「ん~思ったより地味ね、でもいっか。要は英霊との繋がりになれば良いわけなんだし」

 

 まだ聖杯戦争は始まっていない。

 もしもの為の準備として用意した触媒だったが……考え様によっては、これは最大の好機かも知れない。

 だってヘラクレスだ。

 ギリシャ神話最強の英雄ヘラクレス、人の枠を超えて今や神の末席に存在する超常存在。

 

 僕が考えた最高のチート能力を持つあらゆる難敵や、かぐや姫でさえ考え付かない様な無理難題、抑止力ですらドン引きする程の制限を掛けられながら十二の試練を超えてきた英雄。

 並の英雄ですら人間では手も足も出ず負けると言うのに、その英雄を片手間でブッ殺せる程の英雄を超えた大英雄。

 由緒正しい超チート系主人公の先駆けである。

 

「善は急げ、ってね? ふふ~ん♪」

 

 残りのクラスが何かまでイリヤは把握していないが、まあどんなクラスで喚んでも『何とかなるよ絶対大丈夫だよ』と無敵の呪文を唱えながらサーヴァント召喚を行なった。

 

 PON☆

 

 恙無く厳かな儀式を終え、エーテルが嵐の様に吹き荒れながら一点に収束する。

 凄まじいまでの筋肉と申し訳程度の鎧と長剣を携えたサーヴァントが、イリヤに対して頭を垂れて恭順の意思を示していた。

 

「サーヴァント、セイバー。参上致しましたお嬢さま、何なりと御命令を」

 

 色々と(頭のおかしな)逸話が残っているので少しだけ心配していたが、喚び出されたヘラクレスはめっちゃ紳士だった。

 この闘い、我々の勝利だ!(死亡フラグ)

 

「宜しくねヘラクレス、早速で悪いのだけれど貴方の願いは何かしら?」

「何もありません、強いて言うならば……貴女の笑顔を、褒賞として頂きたい」

 

 丁寧に聖杯で願いは叶わない、ブッ壊すつもりだと説明し終えてもヘラクレスの態度は変わらなかった。

 従うフリをしているのかとも訝しんだが、溢れる程に濃厚な紳士オーラの前ではそんな邪推をする事自体が無意味だ。

 ただその在り方のみで誰もが心奪われる、これこそが大英雄たる者の証!

 

「さ、エスコートして頂戴。目指すは柳洞寺よ!」

「ご随意に」

 

 

 

 

 

 ・市街 対ランサー

 

「おっと待ちな、そこのサーヴァント!」

 

 その巨体を駆使して意外な程に乗り心地の良いお姫様だっこ状態で柳洞寺を目指していたイリヤ達の前にサーヴァントが立ち塞がった。

 鋭い眼光と、それよりも尚鋭い殺気と存在感を持つ全身を蒼の軽鎧で固め朱槍を持ったサーヴァント。

 ランサー。

 

「お下がりくださいお嬢様」

 

 油断なく主を降ろし、視線を遮る様に立ち塞がるセイバー。

 その間ランサーは微動だにせず、じっと精神を尖らせながら構えを取らず佇んでいた。

 

「ふむ、どうやら礼を言わねばならぬようですねランサー殿」

「んなもん必要ねぇよ。アンタ程の英雄と戦ろうってんだ、余計な事にかまけらてれちゃあ困る」

 

 イリヤが離れるのを見送った2人は互いの獲物を構え、臨戦態勢へと移行する。

 ああ、始まるのだ。

 今よりも神秘が濃く、強大な生命体が跋扈していた世界に於いてすら輝かしいまでの功績を残した英雄達の戦闘……いや“戦争”が始まるのだ!

 

「フッ、では尋常に……」

「へっ、いくぜっ!!」

射殺す百頭(ナインライブズ)!」

「ぐわぁあああああああああ!!」

 

 ヘラクレスの持つ最強技が炸裂した!

 超高速の九連撃は、最速のサーヴァントであるランサーの能力を以てしても回避する事が叶わなかったのだ!!

 敗れたランサーは霊核を完全に破壊され、この世から消滅した。

 

「ふぅ……危なかった。貴方が能力を抑えられてさえいなければ、どちらが勝ってもおかしくない素晴らしい勝負になったでしょう。次に全力で闘う機会が有れば敗れるのは私かも知れませんね」

 

 勝って兜の緒を締めよ。

 勝利した後も油断するなと言う故事に倣ったわけでは無いだろうが、ヘラクレスは勝利を誇るでなく謙虚に敗れていったサーヴァントへの賞賛を口にした。

 名も知らぬままに消えていったサーヴァントだが、その力は決してヘラクレスに劣るものでは無かった。

 それは相対したヘラクレスこそが誰よりも理解している、紛れも無く先程の闘いは十二の試練と比べても遜色ないものだった。

 

「さあ、行きましょうお嬢様。掴まっていて下さい」

「……ええ、セイバー」

 

 予期せぬ戦闘にも関わらず勝利を勝ち取った己がサーヴァントに対しイリヤは内心で惜しみない賞賛を贈っていた。

 呆気なく決着がついた様にイリヤには見えたのだが、彼が言うのだから先程の戦闘は正に紙一重の勝利だったのだろう。

 そして同時にーーー

 

 “最強のサーヴァントを召喚したのだから勝てるに決まっている”

 

 そんなウッカリ染みた、もしくは最強厨ア〇ト翁の様な愚かしい思考をしていた事をイリヤは恥じた。 

 ヘラクレスと言えども絶対の存在では無いのだ。

 彼をも上回る英雄が居ないわけではない…………まあ過去未来含めても多くて3・4人居るか居ないかぐらいだろうが。

 

 安易に聖杯戦争を早期終結させようと考えて柳洞寺に向かっている現状を冷静に見つめ直す。

 引き返すべきなのかも知れない。

 今の戦闘を他の陣営が監視していた可能性もある、下手をすれば対ヘラクレスに特化したサーヴァントが召喚されている可能性もある。

 

「セイバー、あの……「ご心配には及びません」えっ?」

「私は貴女が喚び出したサーヴァントです。それが最強で無い理屈などありません(ニコッ」

 

 そうだった。

 またしてもイリヤは勘違いしていた。

 確かにどんな強敵が待ち構えているか分からない、けれど彼はヘラクレスだ。

 かの大英雄ヘラクレスなのだ。

 

 未だ見ぬサーヴァント、そのどれもが油断ならない強敵。

 それが何だと言うのか。

 こちらはヘラクレスなのだ。

 バーサーカーとかいうハンデも背負っていないヘラクレスが負けるはずが無い!

 

「ええ、そうよねセイバー。勝つわよ」

 

 事ここに至ってイリヤに出来る事は、ただ己のサーヴァントを信じるのみ。

 ならば問題ない、だってヘラクレスだもん。

 

 黙ってその分厚い胸板に頬を預ける、そこから感じられる温もりに身を委ねた。

 

 

 

 

 

 【ヘラクレスのつよさのひみつ・そのいち】

 

 ヘラクレスはとってもつよいサーヴァントなんだ。

 

 かれは十二のしれんをのりこえたことで、十一このいのちのストックをもっているぞ!

 

 だからぶっちゃけ、ランサーのこうげきがあたっても十二かいころされなかったらたいしてもんだいじゃなかったんだ!

 

 すごいぞヘラクレス!!

 

 

 

 

 

・柳洞寺 対キャスター&アサシン

 

「あ、終わったわ」

 

 イリヤが危惧していた通り先程の激闘を覗き見していた陣営があった。

 柳洞寺を居城にしているキャスター陣営である。

 そして決定的な事実にキャスターは気付いてしまったのである。

 ああ……この闘い、我々の敗北だ! と。

 残念ながら生存フラグには転じない、これはもはや決定事項だ。

 

「なんでヘラクレス!? よりにもよってヘラクレス!?!? どうして、どうしてヘラクレスなのぉっ!?!?!? もっと他に居るでしょ、セイバークラスに召喚される英雄なんてッッッ!?!?!?!?」

 

 さもありなん。

 キャスターはセイバーの正体であるヘラクレスを良く知っていた、それこそ自分がどう足掻いたところで敗北してしまうだろう事まで。

 恐怖と困惑と絶望のあまり錯乱する程度には。

 何故キャスターがこれ程までにヘラクレスを恐れるのか、その理由を簡潔に説明しよう。

 

 

  “ヘラクレスだから”

 

 

 うむ、この一言に尽きる。

 理不尽と書いてヘラクレスと読むのは当たり前、最強無敵と書いてヘラクレスと読み、絶対勝利と書いてヘラクレスとも読む。

 ついでに、紳士と書いてヘラクレスとも読む。これは常識だったかな? ハハハ。

 

 ヘラクレスはヘラクレスだからヘラクレスなのであって、そこに余計な言葉は必要無い。

 ましてやキャスターは生前、そのチートを超越したチートぶりを見せる生のヘラクレスを観賞してしまったのだ。

 そこらの英雄を弱者に変えてしまう程の圧倒的な大英雄、それこそがヘラクレス!

 

 今やサーヴァントとして劣化した状態とは言っても、それがヘラクレスにとってどれほどの意味があるだろうか? いや無い。

 例え全盛期の英雄や世界からバックアップを受けた守護者だろうが真祖の吸血鬼だろうがアルティミットワンだろうが。

 ヘラクレスの前では霞んで見える事だろう。

 

 せめてヘラクレスがセイバーではなくバーサーカー(失笑)クラスで召喚されていたら、理性を奪われ卓越した戦術や戦略を失いキャスターにも倒せる可能性が、コインを投げて百回連続なんの仕掛けも無く表を出し続ける事と同じ程度には可能性があった。

 しかしヘラクレスのクラスはセイバーだ。

 これなんてムリゲー?

 

 セイバー。

 聖杯戦争でも最優と評され、必ず終盤まで生き残った実績もあるセイバーのクラス。

 ヘラクレスの能力が最も発揮できるアーチャーとして喚ばれるよりはマシかも知れないが、こちらが10の力しか無いのに150の力が130になっても大差は無いのである。

 

(詰んだわ。ああ、宗一郎様……申し訳ありません、メディアは此処で死にます)

 

 そんな風に茫然自失している間に事態は取り返しの付かない所まで進んでしまった。

 まあキャスターがヘラクレスを見付けた時点で手遅れだったのは今更言うまでもない。

 

 ドン!

 

 山門の方で派手な音がした。

 慌てて飛び出したキャスターは、ひゅるひゅる~と音を立てながら一人の男が空を舞い、その身体を構成しているエーテルを花火の如く散らしている様を見付ける。

 一切の描写すらなく山門で待ち構えていたアサシンが消えていく、その光景は決して他人事では無かった。

 

 門番が門を護れないなど死んで当然、敗北したアサシンが消えていく事に、本来ならば役立たずめ! と詰るぐらいはキャスターもしていた。

 しかし今回ばかりは話が違う。

 だってヘラクレスだぜ?

 寧ろキャスターは消えていくアサシンに対し、召喚してから初めて真摯に謝罪の念を送っていた。

 

「ふぅ……多次元屈折現象、かの第二魔法の一端と剣を交える事が出来ようとは。アサシンのサーヴァント佐々木小次郎殿、貴方に勝利できた事は私にとって最大の誉れとなりましょう。

おや、貴女は……?」

 

 また1人、辛くも強敵を下したセイバー。

 ランサー戦と同じく、どちらが勝ってもおかしくない名勝負だったんじゃないかな。

 たった一合での決着だったが、それは結果論だ。

 命のストックは1つも減っていないが、それはそれだ。

 そもそも当たっても問題なかった気もするが、多分アサシンの一撃なら通じたんじゃないかな?(名推理)

 

「おお、これはメディア嬢。この様な場で再会するとは何という奇縁。本来ならば旧交をーーー」

「あ、ああ……ああぁ…………!」

 

 戦意喪失。

 ヘラクレスは直ぐにキャスターの正体を思い出しにこやかに語り掛けて来るが、当のキャスターは言葉が耳に届かない程に錯乱している。

 錯乱のあまり魔術を乱発する、そんな状態でも極めて美麗な魔術がヘラクレスへとーーいや、その背後で「やっちゃえセイバー!」と何時の間にかチアガール姿になって応援しているイリヤへと迫っていた。

 

「危ないお嬢さま! 射殺す百頭(ナインライブズ)!!」

「きゃぁあああああああああ!!」

 

 何か凄い神秘を感じさせる長剣(凄い剣の宝具)でキャスターの創り出した魔弾を切り払い、渾身の一撃(九連撃)がキャスターへと炸裂した。

 霊核まで到達したダメージにより、キャスターは己がマスターへ最後の言葉を遺す事無く消えて行った。

 

「ふぅ、危なかった。貴女の戦い方を知らなければ苦戦は免れなかったでしょう、相変わらずの魔術の冴え。言葉もありません。流石はキャスターのサーヴァント、これが魔術戦ならばキャスタークラスへ適性の無い私では手も足も出なかったでしょう……」

 

 セイバーはキャスターへ惜しみない賛辞を口にする。

 生前、死後も合わせてこれ程の魔術師はない。魔術に関しては門外漢であるセイバーをして、彼女の能力の高さは異常の一言に尽きる。

 数々の難行苦行を乗り越えたセイバーをして、魔術の極みとは想像すら叶わない至高の領域であった。

 故に、キャスターのクラスとして喚び出されたメディアを心底から尊敬していた。

 

「手強い者達でした、ですがこれでお嬢様の目的への障害は無くなりました(ニコッ」

「うん、かっこよかったわセイバー! 素敵! 筋肉サイコー!」

「おっと、喜ぶのはまだ早いぞーーー」

 

 突如として響いたその声の主は、黄金の鎧に身を包んだ謎の男であった。

 

 

 

 

 

 【ヘラクレスのつよさのひみつ・そのに】

 

 サーヴァントは七つのクラスがあるぞ!

 

 そのなかで、ヘラクレスはキャスターいがいの六つのクラスにてきせいがあるんだ!

 

 ふつうのえいゆうでは、おおくても三つぐらいなのにね!

 

 すごいぞヘラクレス!

 

 

 

 

 

・柳洞寺 対金ピカ

 

「ムッ! お下がりくださいお嬢様、今までのサーヴァントとは桁が違います!!」

 

 柳洞寺の上から見下ろす様な視線を向ける全身黄金色の男が手を振りあげると、空間が波打つ様に揺れて古今東西ありとあらゆる神話や英雄譚で語られた武器が出現した。

 

 それを見て、あまりの規格外さに驚くイリヤ。

 彼の存在は“知ってはいたが”ここまでとは想像すらしていなかった、普段はそれこそーーーいや、これ以上は本編のネタバレになるので止めておこう。

 

「我は海外でとある事をしていたが、何故だか知らんが唐突に気が変わって冬木へと戻って来た。そして貴様を見付けたのだ、半神の英雄よ!(最古の説明台詞)

我が名はギルガメッシュ、古代ウルクを治めた原初にしてこの世界、唯一無二の王である。

さあ、そなたも名乗りを上げるがよい。大英雄よ!」

 

 この男を知っている者がいれば驚くだろう、他者を全て取るに足らない雑種であると見下すだけの男がある程度の礼儀を払っている事に。

 

「問われたならば答えぬ訳にはいかないでしょう。

セイバーのクラスで現界しました、名をヘラクレスと申します。

御尊顔を拝謁賜り、光栄の極みでございます。英雄王殿」

「そう畏まらずともよい、この我が赦そう。

そなたは手ずから打倒するに値する相手だ、しかし履き違えるなよ? 例え大英雄ヘラクレスとも言えど、この我と同格ではない」

 

 ギルガメッシュ。

 最古の英雄王。

 またしてもイリヤが危惧していた通りの相手がヘラクレスの前に立ち塞がった。

 

 その財は世界の全てを手にしたとされ、それを納めた蔵の中には正にありとあらゆる物が存在する。

 もはや本人にすら全容を把握しきれていない程の大量の財を武器と成し、湯水の様に使い潰す。

 基本的に一つの武器しか持たない英雄には、決して出来ない次元違いの戦闘法。

 

「さあ、ここに神話の再現といこうか! 出し惜しみはせぬ、我の全力を以てそなたを葬り去ろう!!」

 

 天を覆い尽くす程に展開された蔵の中から手元に向かって光が収束する、その手に収まったソレを見てイリヤの背筋に悪寒が走る。

 何だあれは。

 あんなものが存在するのか。

 凡そこの世に存在する全てを超越しているであろうソレがゆっくりと回転を始める、雄大なセイバーの背中が見えていなければきっとイリヤは気絶していただろう。

 

「お嬢さま……」

 

 一度だけ、振り返ったセイバーと視線が合わさりーーーそれだけで全てが通じた。

 彼を信じる。

 そう、かの英雄王と言えども目の前にいるのは大英雄ヘラクレス。

 ヘラクレスが負けるはずが無い、ならばイリヤに出来ることは信じる事だけ!

 

「勝って、セイバー!!」

 

 パキィイイイン!

 

「うぉおおおお! 射殺す百頭(ナインライブズ)ッッッ!!」

「おのれぇえええええええええ!!!!」

 

 彼我の戦力差は、残念ながら総力でギルガメッシュが上回っていた。

 だから1つ目の令呪で攻撃速度を上げ、2つ目の令呪でギルガメッシュの目の前に空間転移させた。

 財宝も切り札も間に合わず、一瞬よりもなお刹那に神速の一撃(九連撃)で滅多打ちにされたギルガメッシュは、黄金の鎧ごと吹き飛ばされこの世から消滅した。

 

「貴方は間違いなく最強の相手でした、私1人では敵わなかったでしょう。しかし私は1人ではなく、勝利の女神が傍にいたのです。

くっ、膝に矢を受けてしまっていたか……」

「セイバー!」

 

 倒れ込むセイバーの前に慌てて駆け寄るイリヤ、何とか倒す事が出来たが英雄王は間違いなく最強の敵だった。

 本当ならば労い、ゆっくりと休ませる必要があるのだが……どうやら事はそう簡単にいかないらしい。

 イリヤを抱え込んでその場から飛び上がるセイバー、そこに鎖の付いた杭のような短剣が突き刺さる。

 

「くっ、まだ居たのねサーヴァントが!」

 

 

 

 

 

【ヘラクレスのつよさのひみつ・そのさん】

 

 一どうけたこうげきにたいせいをもつぞ!

 

 おなじこうげきはつうようしないといってもかごんではないんだ!

 

 こうそくではうごけないけどね!

 

 すごいぞヘラクレス!

 

 

 

 

 

・柳洞寺(負傷) 対ライダー

 

「流石に避けますか……」

 

 むっちゃエロい服装のサーヴァント、ライダーが現れた。

 その後ろでワカメがうねうねしている、勿論ワカメが喋る筈がないのでワカメに台詞はない。いいね?

 

「ご無事ですかお嬢様!」

「ええ、ありがとうセイバー」

 

『ワカメ言語(訳:私は見つけました。隙を。だから攻撃しました、彼女が。結果にがっかりです)』

「申し訳ありませんシンジ、どうやら釣られてしまったようです」

 

 ワカメがうねうねと動いた中で何かしらの意図を悟ったライダーが謝罪を述べる。

 そう、膝に矢を受けてしまってな……と言うのはサーヴァントが潜んでいる気配を察したセイバーが行なった欺瞞だったのである。

 

「むむっ! 貴女のように見目麗しい方が、その様な破廉恥な格好をするものではありませんよ!」

「お気遣いありがとうございます、どうやら見た目にそぐわない紳士なようですね」

『ワカメ言語(訳:戦いましょう。それを望んでいます。私が。私が。手負いですよ)』

「ええ、シンジ。宝具の使用許可を」

 

 ライダーとワカメはセイバーが疲労している今がチャンスであると、宝具を使って一気にカタを付けようと画策した。

 その狙いは正しい。

 英雄王を倒す為に全精力を注いだセイバーの消耗は、規格外の魔力量を誇るイリヤを以てしても直ぐには賄い切れないものであった。

 

 あと5分あれば……いや、それは今更だ。

 既に美しい天馬を召喚したライダーはめがっさ速く天から流星のように降り注いでくる。

 

「セイバーーー勝って!」

 

 もう令呪は易々とは使えない、残りの1つは大聖杯を破壊する為に使わなくてはならない。

 だから信じる。

 かの英雄王を打倒するという新たな神話を創り出した大英雄ヘラクレスを!

 

騎兵の手綱(ベルレフォーン)!」

射殺す百頭(ナインライブズ)!」

 

 ガッシ

 

 ボカン

 

 流星の降り注いだ柳洞寺の境内は、気の毒なくらいボロボロに破壊されていた。この修理費は半端な額じゃないだろう、監視している教会関係者もコレには苦笑い。

 もうもうと立ち込める土煙の中で、イリヤはサーヴァントが消失していく気配を感じた。

 しかし心配はしていない。

 それは令呪による繋がりだとか、ラインの有無とか、そんなチャチな理由ではない。

 

「…………ふぅ、危なかった」

 

 立ち込めていた土煙を振り払うように剣を一振り、生み出された風によって砂が吹き飛ばされ残されたサーヴァントの姿が顕となる。

 

 巨体。←ん、誰かな?

 まだ分からない(首傾げ)

 

 筋肉。←ん、誰だろう?

 まだ分かんねぇなぁ(疑問符)

 

 紳士。←ヘラクレス!

 分かった、勝者は彼だ(納得)

 

 そう、一瞬先にライダーの駆る天馬へと一撃(九連撃)を当て生き残ったのはヘラクレスだった。

 

「互いに消耗していた身。もしも貴女の魔力量が少なくなければ、負けていたのは私だったでしょう。

今回の勝利の理由。私が貴女に勝ったのではない、私の主人の力が貴女の主を上回っていたのです」

 

 そう、イリヤは確信していた。

 ヘラクレスが負けるわけないんだから! と。

 

 謎のワカメは奇妙な音を発生させながら(おそらく地球外生命体)うねうねと逃げ出していった。

 今度こそ終わった、などと油断するようなイリヤでは無い。

 見知った魔力が、その存在を誇示するように此方を見つめていた。

 キッ、と山門を見やる。

 

「流石ね衛宮さん、それ程の大英雄を従えた上で一夜にして5体ものサーヴァントを打倒するなんて。

やっぱり貴女は、私が超えるべき壁の様ね!」

 

 今宵、最後となる強敵が姿を見せた。

 

 

 

 

【ヘラクレスのつよさのひみつ・そのよん】

 

 もうね、とにかくヘラクレスはつよいの!

 

 ヘラクレスはさいきょうなんだ!(かりやかん)

 

 すごいぞヘラクレス!

 

 

 

 

 

・柳洞寺(崩壊) 対アーチャー

 

「やれやれ、これはとんでもないサーヴァントと闘う事になりそうだな」

 

 誰かの為に生きて。

 この一瞬が全てでいいと駆け抜けた英雄が居た。

 神秘が薄れ、個としての力よりも普遍的な力による闘争の様相を呈する現代に於いて、独力で英雄となった存在。

 

「その出で立ち、佇まい。並の戦士ではありませんね、相手にとって不足はないでしょう」

「かの大英雄ヘラクレスにそこまで言って貰えるとはな、いや……この身も捨てたものでは無いらしい」

 

 対峙する英雄2人。

 本来ならばアーチャーは遠距離から弓で闘うサーヴァントであるが、こと聖杯戦争に限っては『弓が宝具なんて(ドン引き)アーチャーの面汚しっ!』とまで言われる程に弓が主体では無い。

 

 剣の英霊であるセイバーに対して、アーチャーも陰陽の双剣を携える。

 ハッタリではない。

 どれほどの腕かは分からないが、アーチャーの持つ剣技は油断していいものでは無い……とセイバーの戦士としての勘が告げている。

 さらに、そこに加えてーーー

 

「凛!」

「ええ、我がサーヴァントに命ずる! 汝が宝具を此処に示せ!」

 

 事前の取り決め通り令呪によってアーチャーが持つ宝具が強制発動されーーー世界が変革する。

 地面を這うように吹き上がった炎が柳洞寺を包み込み、次の瞬間には空に巨大な歯車が浮き大地には無数の宝剣が無造作に突き刺さっている。

 一面の荒野、急に自分達の周囲が“入れ替わった事に”イリヤは心底から驚愕した。

 

「そんな、固有結界だなんて!?」

 

 固有結界・無限の剣製。

 世界を、己の心象世界で上書きして創り変える魔術の禁忌にして究極の奥義。

 その難易度たるや、キャスタークラスでも最高レベルの能力を持つメディアにすら不可能と言えば理解出来るだろうか?

 

「すご、本当に固有結界なんだアンタの宝具……」

「疑っていたのかね?」

「まあね、見直したわアーチャー。確かにこれなら、あのヘラクレスにも渡り合えるかも知れない」

 

 ヘラクレスの能力の要は、その圧倒的な肉体能力である。

 加えて凛は知らない事であるが、12回死ななければ倒せずAランク以下の攻撃は無効にし、更に1度受けた攻撃に対して耐性を持ち、戦術眼や戦略眼も高いレベルで備えている。

 そんなヘラクレスに対して、無限に剣を内包しているこの固有結界の中には英雄王と比べれば見劣りするが様々な聖剣・魔剣の類が幾つも存在している。

 

 奇しくも英雄王が行おうとして失敗した(令呪ブーストによる瞬殺)対ヘラクレスに特化した、物量による殲滅戦をアーチャーは行えるのである。

 加えて固有結界の中ではイリヤが身を隠せる所は存在せず、ヘラクレスは防戦を強いられる事となる。

 

「さあ、いくぞ大英雄ヘラクレス。躱してもいいが、その場合ーーー背後の少女の命は諦めろ」

 

 この世界の支配者、アーチャーが手を翳しただけで30以上にも及ぶ宝剣がセイバーへと襲い掛かる。

 危うしセイバー!

 

「おおおおおおおおおお!!」

 

 四方八方から襲って来る剣の群れをセイバーは難なく打ち払い、じりじりと進む。

 その動きに合わせるようにイリヤもセイバーの後ろに追随する。

 

 実をいえばアーチャーは個人的な事情でイリヤを狙う気は無いのだが、それを知る由も無いセイバーは僅かにでもイリヤに当たる可能性がある以上下手に動く事は出来ない。

 一発だったら誤射かも知れない(売国感)なんて理屈は通用しないのが現実だ。

 

「衛宮さん! 貴女は私が相手よっ!!」

「くっ、お嬢さま!」

「させると思うかねッ!?」

「セイバー!」

 

 セイバー対アーチャー。

 イリヤ対凛。

 単純な能力差で言えば、どちらもセイバー陣営の方が2つも3つも上回っている。

 

 互いに格上の相手と闘うアーチャー陣営だが、意外にも押しているのは彼らの方であった。

 

「そら、私ばかりにかまけていても良いのかね? 掃射!」

「させないっ、射殺す百頭(ナインライブズ)!!」

 

 無限の剣製内でアーチャーに把握出来ない事は無い、彼は凛をサポートするようにイリヤへと剣を向け、セイバーはそれを防ぐ為に気を回さざるを得ず、凛に対して攻撃をしようとすればその隙をアーチャーは逃さず大威力の宝具を叩き込んでくる。

 普段のイリヤならぶっちゃけ凛は楽勝なのだが、アーチャーの無駄に正確な射撃により行動を著しく制限されており、おまけに魔力がものっそい減っておりセイバーの維持にも少なからず魔力を割かなければならない。

 大英雄であるが故の弱点が露呈した形だ。

 

「いけるわっ、今日こそ貴女に勝つっ!」

「リンのくせに生意気なのよっ!」

 

「おや、我々の決着よりも彼女達の方が先につきそうだな」

「っ!! ぬぅう……うおおおおおぉおおおおおおああああ!!!!」

 

 しかし、まだ彼ら“3人”は理解し切れていなかった。

 

「アーチャー殿、貴方との戦闘は心躍る。このまま何時までも闘っていたい程に……しかし」

「っ?!」

「これ以上お嬢さまを、危険に晒させる訳にはいかないっっっっ!!」

 

 

 

 大英雄ヘラクレス。

 彼がイリヤからの召喚を受けた本当の理由。

 それは彼の本体が存在する英霊の座にて、一つの“記録”に過ぎないある次元での出来事が切っ掛けだった。

 

『バーサーカーは強いね』

 

 冬の城で出会った1人の少女。

 狂化によって理性を失っていても尚、護ると決めた1人の少女をーーー護り抜けなかった記録。

 並行世界の何処かに喚び出されたヘラクレスの分霊が経験した苦い思い出、数ある記録の中に埋没する記録。

 当然だ。

 英霊の座に存在する者は、もはや時間の流れから切り離されており成長も劣化もする事なく存在し続けている。

 そう。

 だがそれは、一般的な英霊の話だ。

 彼は誰だ?

 ヘラクレスだ。

 只の記録に過ぎなかったソレは、本体であるヘラクレスの魂に深く刻まれた。

 

 だから応えたのだ。

 何もヘラクレスも、自分が救えなかった少女の元にもう一度喚び出される事を願ってなどいない。

 ただ、誓ったのだ。

 この身の全てを、死力を尽くしてでも、あの少女と限りなく同一で限りなく別人に喚びだされようとも!

 

 

 

射殺す百頭(ナインライブズ)×千ッッッ!!」

 

 必ず。

 

「なんでさぁあああああああああ!!」

 

 護り抜くと。

 

「アーチャー、この闘いだけは勝たねばならなかった。今回は私の勝ちですが、貴方の剣の冴え……恐ろしいモノでした。この闘いを忘れる事は無いでしょう」

 

 それだけを誓い、召喚に答えた。

 

「っ、アーチャー?! うっ……」

「残念ねリン……“私達”の勝利よ」

 

 一瞬、凛はアーチャーの敗北に気を取られ……その一瞬で背後にまわりこまれ昏倒させられ敗北した。

 

 

 

 

 

【ヘラクレスのつよさのひみつ・さいご】

 

 だってヘラクレスだから!

 

 

 

 

・円蔵山内 対大聖杯

 

「これでお別れねセイバー」

「ええ、お嬢さま」

 

 小聖杯の不在により緊急措置として大聖杯に溜まっている英霊の魂により、大聖杯は何時暴走してもおかしくは無かった。

 此処まで来るのに時間は大して掛からなかったが、濃密な半日を過ごした。

 もう直ぐ陽が明けるだろう、教会関係者の尽力によって柳洞寺内に居た人間は全て運び出されている。

 これで何が起こっても、円蔵山がブッ飛んでも誰も被害を被らない。

 

「ねえ、セイバー……」

 

 じっと見上げてくるイリヤの視線と合わせて見つめ合う、若干だが潤んだ瞳と頬に熱を帯びているイリヤは恥ずかしさや悲しさを堪えて、精一杯の賛辞を告げた。

 

「セイバーは、強いね」

 

 そう言ってニッコリと笑ったイリヤの小さな体を脳裏に焼き付けて、セイバーは大聖杯へ向かって歩み出した。

 何と勿体無い言葉か。

 様々な美辞麗句を並べ立て褒めそやすよりも、飾らない一言がセイバーの……ヘラクレスの胸を震わせる。

 

「お別れです、お嬢さま。どうか御家族と元気にお過ごし下さいませ。貴女が笑っている姿が、私にとって何よりもの褒賞なのですから」

「うん……分かったわ。第三の令呪によってヘラクレス、貴方にお願いするわ。

大聖杯を、壊して!」

 

 キィン。

 

 最後の令呪が発動し、ヘラクレスの剣に大聖杯を確実に吹き飛ばす能力を与えた。

 外に向かって走って行くイリヤの足音を限界まで聴き続け、やがて被害範囲から完全に離れた事を感じ取ったヘラクレスは己が最強宝具を解き放った。

 

射殺す……百頭(ナイン……ライブズ)!」

 

 ズガガガガン…。

 円蔵山をくり抜く様に吹き上がった魔力の柱は、一足早い陽光となって冬木の街を明々と照らした。

 イリヤの中に僅かに残っていた聖杯としての機能が告げているーーー大聖杯の崩壊を。

 

「ありがとう、ヘラクレス」

 

 もはや彼とのラインは繋がっていない、けれど別の繋がりはキチンと残っている。

 それは絆。

 半日にも満たない関係だけれども。

 確かな主従の絆が、しっかりと心に残っている。

 それはとても暖かくて、大きすぎて、だからだろうか。

 

「さようなら、ヘラクレス……」

 

 笑っているのに、溢れ続ける涙を止める事が出来なかった。

 

 

 

「イリヤ、行ってきます」

「うん。行ってらっしゃいシロウ」

 

 何事も無く朝を迎えた衛宮邸。

 普段と変わりなく出掛けて行った弟を笑顔で見送り、何時もの様にアニメ鑑賞に精を出すーーー事をせず、無意識にヘラクレスを喚び出した中庭へと向かっていた。

 

 聖遺物を取り寄せたのは万が一の為だった。

 

 サーヴァントに対して戦力以上の期待はしていなかった。

 

 全てが終われば達成感に包まれるものだと思っていた。

 

「……ヘラクレス」

 

 彼を喚び出した触媒を握り締めて、胸へと抱き寄せる。

 こうしていれば彼の胸に抱かれているような暖かな気持ちでいられる、目を閉じれば短くも確かに心の通じ合った彼との思い出が蘇る。

 殆どが戦いの中だったけれど、そんな中で2人は形だけの主従から本当の主従へとなれた。

 無意識にニヤけてしまう、あんなにも凄い英雄を従者にしたのだという誇らしさで胸が一杯だ。

 

「……っ!」

 

 だから、こんな無様な真似は今日限りだ。

 ポタ、ポタと涙が頬を伝い膝へと落ちていく。

 あんなにも泣いたというのに、1人切りになると……涙を堪える事が出来なくなった。

 

(お母様……切嗣……ヘラクレス……会いたいよぅ)

 

 かつて。

 まだ冬の城で母の死と父の裏切りを告げられた時は、悲しくもあったがアインツベルンと言う地獄では、その感情だけに身を浸す事は叶わなかった。

 だから無理矢理にでも、少なくとも表向きには感情をコントロールする事が出来た。

 

 父に地獄から救われ、新しい家族が増えて母の喪失という悲しみを意識しなくなった頃ーーー父が目の前で死んだ。

 その悲しみは。アインツベルンで結果だけを聴かされた時とは段違いの衝撃をイリヤに与え、心の中に今も残る大きな傷を残した。

 それでも立ち上がれたのは、まだイリヤには家族が居たから。

 大切な弟。

 強くあらねばと思った。

 イリヤに残された最後の家族。

 弟を護るのは、姉である自分の役目なのだからと。

 

 そんな弟が魔術の鍛錬で失敗し“身体の内部から剣を生やして”生死の境をさ迷った時、イリヤの心に刻まれた傷は更に広がり深く抉り込んだ。

 何とか一命を取り留めた弟を叱る事無く、ただただ三日三晩無様に泣き続けた。

 それからだ。

 

 大切なモノを失う悲しみに、己が耐える事が出来ない事を悟った。

 だから弟以外を心の中から追い出し、大河や雷画、桜など周囲の者達と一歩だけ線を引いて付き合い始めた。

 他者との深い関係を拒絶し、イリヤは生きて来たのだ。

 

『貴女の笑顔を、褒賞として頂きたい』

 

 それだと言うのに。

 ヘラクレスという英雄は、イリヤが作った心の壁を容易く打ち破って入って来た。

 不快感は無かった。

 気付きもしなかった。

 だって心から、好きになったから。

 気付いた時には。

 イリヤの中からヘラクレスという存在は決して消える事なく刻まれていて。

 その喪失で、また大きくイリヤの心は深く抉られた。

 

「っ……ぅ……っ!」

 

 堰を切ったかの如く溢れ出してくる悲しみは、せめて彼との約束である笑顔でいようとする気持ちをも濁流の如く呑み込んでいく。

 鏡が無くて良かったと思う、きっと自分の表情を認識してしまっては。

 理解してしまったら。

 心が折れてしまっただろうから。

 

 

   ザッ……

 

 

 笑わなくてはいけないのに、どうしてこんなにも身体は言う事をきいてくれないのか。

 ボヤけた視界に映るものをなんとは無しに見る。

 涙で濡れた自分の膝と、庭の土色と……太陽光を遮る大きな影と、差し出されたハンカチ。

 ハッとして顔を上げ……。

 

「何か悲しい事がありましたか……?」

「……ううん、そうじゃないの」

 

 ああ、そもそもどうして自分は彼を喚び出したのだったか?

 

 唐突に胸に湧いた疑問に対して、その答えもまたフッ……と胸に湧いた。

 そうだった、これは聖杯戦争。

 7人の魔術師と7体のサーヴァントが争う戦争に参加する為だった。

 最後の1組は、どんな願いも叶う聖杯を手にする事が可能となる戦争に。

 

(……こういうの、日本語で何て言うんだったかしら)

 

 ああ、そうか。

 どんな願いも叶うというのが真実ならば。

 第五次聖杯戦争の実質的な勝利者であるイリヤの、その願いが叶わない道理は無かったのだ。

 

 そう、主であるイリヤの願いが叶った。

 ならばその従者の願いも叶わないなんて道理は無い。

 

「では、どうされましたか?」

 

 心配そうに訊ねる男の、その巨体からは想像もできない優しげな瞳を見つめる。

 まだまだ涙は止まらないが、胸を引き裂くような激情は感じない。

 

 と、こんな風に自分1人で納得していても仕方がない事にやっと思い至った。

 未だに困惑気味の男は頬を掻きながら、黙ってハンカチを差し出し続けている。

 そんな、肝心なところで察しの悪い男からハンカチを奪い取って今日一番の飛び切りの笑顔で答えた。

 

「これはね、嬉し泣きって言うのよーーーヘラクレス」

 

 この日、衛宮家に新しい“家族”が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【Ending of “S”】

 

 エンディングNo.0

 

 難易度:スーパーイージー

 

 士郎生存度:120(100)

 

・ルート突入条件 イリヤの頼んだ触媒が1日早く届く

      特徴 突入した時点で士郎の生存と聖杯戦争終結が確定する特殊ルート

 

    ヒロイン 無し

 

 

・備考

 

 本編とは別の番外編、設定等は共通。

 ギャグ8割、シリアス2割。

 

 バーサーカー、実は一切の描写もなく巻き込まれて消滅している。哀れ。

 その正体はアル……いや、よそう。

 俺の勝手な想像で皆を混乱させたくはない(棒読み)

 

 溢れ出した聖杯の魔力を浴びて受肉、呪いは圧倒的な紳士力によって無効化した。

 謎の居候クレスさんとして衛宮邸に居候、士郎の卒業と同時にイリヤと共に世界を回る旅に出る。

 

 イリヤとの関係は主従と言うよりは親子の関係に近い、恋愛感情は互いに存在しない。

 その圧倒的な紳士力によって幾つもの紛争を紳士的に解決し、名実共に“現代の英雄”として名を残す。

 オリンピックに新種目『紳士道』が誕生した。

 

 

 

 




番外編は他にも

・料理で闘う聖杯戦争 ~エミヤ無双~

・騎士王のぶらり円卓共を殴る旅 ~先ずはお前だランスロット~

・ギルガメッシュ異伝 ~〇〇〇〇〇〇〇~(本編ネタバレの為に伏せ字)

・どうやったらメディアさん勝てるの? ~MU★RI~

等を予定しており、残念ながら掲載順も掲載日も未定です。


では年末までにまたお会いしましょう。

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